「オープンイノベーションに絶望したあなたへ」──協業に泣いた起業家が、起業家を救う?UNIDGEに学ぶ、大企業との共創の秘訣
Sponsored大企業とスタートアップの協業。その可能性に期待を抱きながらも、「話が進まない」「結局、何も始まらない」といった失望を味わったスタートアップ経営者は少なくないだろう。この背景には、大企業特有の複雑な組織構造や慎重な姿勢がある。
「このままでは日本経済の発展はない」──。
そう奮起し、オープンイノベーションの課題に挑むのがUNIDGE(ユニッジ)だ。新規事業支援を手掛けるAlphaDrive(アルファドライブ)のグループ会社として同社は2022年に誕生。大企業とスタートアップのマッチングだけで終わらない、徹底した伴走支援を強みとする。
事業開発のスペシャリストたちが、大企業側の課題設定からゴール設計、リソースの可視化、意思決定者の確立まで綿密にサポート。スタートアップ側には具体的で実現可能な協業案を提示する。これらのアプローチにより、UNIDGEはわずか2年で70社以上の支援実績と複数の事業化成功を達成した。
なぜUNIDGEはこれを実現できるのか?その秘策とは?本記事では、オープンイノベーションの成功確率を飛躍的に高めるUNIDGEの仕組みを紐解く。読めば、スタートアップ経営者も「オープンイノベーションは捨てたものじゃない」と感じるはずだ。
- TEXT BY YUKO YAMADA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
そもそも、大企業とのオープンイノベーションが実らない理由は、事業開発の仕組みがないからだ
- 失われた30年の間、大企業も社内外で新規事業開発に挑戦してきた
- しかし、既存事業との軋轢、短期的成果の追及、組織文化のミスマッチなどが原因で、いずれも成果の創出には至らなかった
- 大企業の新規事業開発に精通するAlphaDrive出身・現UNIDGEの共同経営社である土井氏と土成氏によれば、その原因は新規事業開発における「仕組みの欠如」にある
- 仕組みとは、新規事業開発において、誰が主要な推進者となり、どのようなプロセスで事業化を進め、どのような基準で事業化の可否を評価するかを定めたもの
新規事業開発の仕組みづくりを支援するAlphaDriveの誕生で、日本の大企業に新規事業開発の仕組みが根付き始める
- 2020年初頭は数社程度だった大企業の支援先が、数年で50~60社に増加
- 今では100社以上の大企業がAlphaDriveの支援によって新規事業開発に成功
- 秘訣は、同社の「新規事業創出モデル」にあり
- これは企業の特性に合わせて新規事業が持続的に生まれる組織風土を作り、事業化から拡大まで専門家がハンズオンで支援
- さらに、誰でもイノベーションを実践できる標準化した手順を確立し、持続的なイノベーション環境を提供するものである
大企業とスタートアップの「協業を科学する」。
事業開発の専門集団UNIDGE
- 2022年設立で、「大企業×スタートアップ」を中心に既に50社以上のオープンイノベーション支援実績を打ち出す
- スタートアップからは、「協業に求められるリソースやタイムラインが明確で、実現可能性が高そう」「事業化までに必要なプロセスが詳細に明記されており、事業化or撤退をスピーディに意思決定できる」との声
- その他、スタートアップの事業フェーズに応じた支援プログラムも整備されている
UNIDGEが「大企業 × スタートアップ」のオープンイノベーションに懸ける理由
- 「大企業×スタートアップ」のオープンイノベーションこそが日本の「失われた30年」に終止符を打つラストピースだと考えている
- そのためには、「オープンイノベーションなんて眉唾物だ…」と捉えているスタートアップにもっとその可能性を伝えていきたい
- 事実、UNIDGEはAlphaDriveの流れを汲む事業開発のプロフェッショナル集団であり、マッチングではなく事業化まで伴走することで数々の実績を打ち出している
- 大企業の社長直案件も多く、いざとなれば「この場で協業を決断」してもらうことも可能。とにかくスタートアップのリソースを無駄にはさせない
- そうまでする理由は、土井氏&土成氏もオープンイノベーションに悩んだ人材であり、また、自身も起業家でありスタートアップの立場を理解しているためである
- スタートアップ起業家は是非、一度UNIDGEの募集案件に触れてみてほしい
スタートアップ起業家も絶賛。「UNIDGEの協業案件は具体性が高く、すぐに本質的な議論に入れる」
土成UNIDGE(ユニッジ)が手がけるオープンイノベーションプログラムの募集要項は、極めて「具体的」かつ「実現可能性が高い」といった特徴があります。
「〇〇業界の大手A社が抱える〇〇の課題解決に向け、〇〇の効率化を実現したい。A社が保有する〇〇データと〇〇のネットワークを活用し、新アルゴリズムの開発を求めている」といった具合に、募集側の企業が持つ課題や目的、活用できるリソースを明確に示していきます。それが証拠に、あるスタートアップからはこんな声を頂いています。
「UNIDGEの前に別のオープンイノベーションサービスを活用したところ、「では、何をやりますか?」という点からコミュニケーションが始まり、驚きました。一日でも早く事業成長しなければならないスタートアップにとっては、ゆっくりと議論している余裕はありません。その点、UNIDGEのプログラムは案件の具体性が高く、すぐに本質的な議論を進めることができました」。
この具体性の高さは、UNIDGEの共同創業者でCo-CEOの土井氏や土成氏らが大企業 × 事業開発のプロフェッショナルであることと、自らも“スタートアップ起業家として”事業成長にコミットしていることに起因する。
土井私たちのアプローチは、大企業の経営層や新規事業部門と直接対話し、組織内の現状を深く理解するところから始まります。言うなれば、新規事業開発が実現しないと困るといった当事者意識を持った方々と直に何度も議論を重ねるからこそ、具体的かつ現実味のある案件にまで落とし込めているのです。
次に、その「案件」を成功させるために必要な「仕組み」を大企業と一緒に構築していきます。
プロセス設計や審査設計、予算設計、人事設計、リソース設計といった項目を明確に規定し、「誰がどの段階で意思決定を行うのか」「どのリソースをいつ投下するのか」といった内容を各企業に合わせて設計します。
特筆すべきは、UNIDGEが導入している「ステージゲート」方式だ。
これは、協業プロジェクトの進行を複数のステージに分け、各ステージの終わりに評価ポイントを設ける手法である。その達成度合いによって次のステップに進むか、あるいはプロジェクト自体を撤退するかを判断する。プロジェクトの進捗を細かく管理することで、リスクを早期に特定することが可能となる。
土成私たちがステージゲートを設けているのは、「早く判断できること」にこだわっているからです。
スタートアップにとっては時間や資金、労力といったリソースは極めて貴重な経営資源です。一方、大企業側にとっても定期的に進捗を評価し、継続か撤退かの判断を迅速に下せるようになります。
土井私たちは、案件の創出から仕組みづくりまで大企業との調整に約1年かけています。
なぜなら、大企業とスタートアップの協業は、両者を引き合わせれば「何か面白いものが生まれるのでは」という漠然とした期待で始まってしまうケースが少なくありません。しかし、具体的な目標や評価基準が曖昧なままでは、望む成果は得られません。
大企業側の意思決定プロセスを理解した上でプロジェクトを調整することで、大企業とスタートアップの間で生じやすい“悲しいすれ違い"を未然に防ぐことができるのです。
こうしたアプローチにより、UNIDGEは表面的なマッチングを超え、成功率の高いオープンイノベーションを実現している。
スタートアップの事業を足止めしない支援プランや意思決定スピード
UNIDGEがスタートアップに提供する価値は先に挙げたものだけではなく、他にも多様なニーズに応える支援体制を備えている。土成氏は、UNIDGEの支援パターンを3つに分類する。
土成1つ目は、ある程度までプロダクトが完成しているスタートアップへの支援です。大企業などの協業先が実証実験の場となり、比較的短期間で成果が見えやすいのが特徴です。
2つ目は、シードステージにいるスタートアップへの支援です。プロダクトの方向性がまだ固まっていない段階から顧客ニーズを探り、事業を形づくっていきます。
3つ目は、研究開発(R&D)スタートアップへの支援です。技術は確立していても事業化の道筋が見えていないケースが多いため、プロトタイピング(試作品開発)から大企業との協業による製品化、さらに事業化までをサポートします。現在ならディープテック企業、大企業の研究所、大学発ベンチャーなどが対象になります。
しかし、R&D案件においては課題も浮上する。事前に設定したプログラムと実際の研究開発の進行スピードが合わず、そのギャップがプロジェクトの進行を妨げる要因となり得るからだ。
土井研究開発と事業開発はまったく別物なんです。しかし多くの場合、大企業側はこの2つを混同してしまうためプロジェクトを停滞させてしまいやすいと感じています。
例えば、長期的な研究開発が必要な案件を、短期的な事業成果を求める枠組みで進めると、結果がすぐに出ないことに焦り、プロジェクトの方向性に迷いが出てしまいます。
この課題に対し、UNIDGEは事業開発と研究開発を明確に区別し、それぞれに適したステージゲートを設定する。各フェーズに適した予算や時間などのリソースを配分し、プロジェクトのスムーズな進行を支援している。
土井分析してみてわかったことなんですが、オープンイノベーションには実に110種類以上ものパターンが存在することがわかりました。
そのため、すべてのプロジェクトに対して画一的なプログラムを当てるのは難しい。案件ごとの特性に応じる柔軟さが欠かせません。
実際、私たちが支援している案件の中で、設計したプログラムどおりに進行するのは6割から7割ほど。残りは、プロジェクトの進行状況によって随時必要な支援を行っています。
こうしたUNIDGEの支援の柔軟性は、大企業の経営層との直接的な連携によってさらに強化されている。
土成私たちは、プログラムの設計段階から大企業の役員や社長と面会し、連携を進めています。そのため、通常のプロセスでは時間がかかるような局面でも「社長案件」として迅速にトップ層に持ち込み、素早い判断を引き出すことができるんです。
例えば、R&Dスタートアップの最近の案件では、プログラムの最終審査の前に国からの補助金を獲得するなど、特許を取得するために迅速な意思決定が求められました。私たちが事前に役員や社長を巻き込んで進めていたため、特別ルートで「今すぐこの場で判断してください」と社長に直接持ちかけることができたんです。
UNIDGEの強みは、大企業の内部構造と意思決定プロセスへの深い理解にある。この知見を基に、実践的かつ実態に即したスタートアップ支援を展開し、オープンイノベーションの成功率を高めているのだ。
「事業を継続するに十分な収益が得られた」。
UNIDGEの支援でスタートアップに生まれた成果
「マッチングで終わらないオープンイノベーション」を掲げ、協業を科学するUNIDGEは、2022年1月にAlphaDrive(アルファドライブ)のグループ企業として誕生した。設立からわずか約3年、同社は次々とオープンイノベーションを実現している。ここではその実績の一部を紹介しよう。
まずは、スタートアップのシード期からUNIDGEが支援した事例だ。
事例1:リコー × Flooowの事例
-
課題
リコーは、独自の高速オンデマンド印字技術を活用したデジタルサービスの開発を検討していた -
対策
アクセラレータープログラム「TRIBUS2023」で自社技術アセットを活用した新サービスの協業先を募集 -
結果
アクセラレータープログラム「TRIBUS2023」に採択されたFlooowと協業し、Flooow社が個別QRコードを活用したマーケティングサービスを開発 -
UNIDGEの提供価値
リコーとFlooowの協業を支援し、新たなデジタルサービスの開発を実現
土成マーケティング支援のスタートアップFlooowは、創業わずか1ヶ月でUNIDGEが支援しているリコーのアクセラレータープログラム「TRIBUS」に参加し、リコーの「個別QRコード」技術を活用した新サービスを開発しました。この技術で小売業の顧客行動の可視化と分析を可能にし、効果的なマーケティング戦略立案を支援しています。
Flooowからは「リコーとの協業では、企業を越境したワンチームを実現することができた」とポジティブなコメントを頂いています。
次に、異業種間同士の大企業が協業し、新たな市場開拓に成功した事例もお届けする。
事例2:コーセー × アルプロン × 森永製菓の事例
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課題
コーセーは、顧客の健康や美容に対する多様なニーズに対応するため、新たなサービスを模索していた -
対策
コーセーはオープンイノベーションプログラムを実施し、事業化アイデアを募った。そのうちの一つでインナービューティーブランドの立ち上げに際し、アルプロン、森永製菓と協業・開発を進めた -
結果
美容と健康をサポートする新しい商品を開発し、正式販売を開始 -
UNIDGEの提供価値
異業種の大企業同士を繋ぎ、協業による新規事業開発の検証活動を支援。これによりコーセーの新商品開発をスムーズに実現
土成私たちはスタートアップと大企業のオープンイノベーションだけでなく、大企業同士や中小企業同士の協業も手がけています。オープンイノベーションはあくまで手段なので、こうしたユニークなコラボレーションも多数実現しています。
これらの事例は、UNIDGEのアプローチが単なるマッチングにとどまらず、具体的な事業開発の成果を生み出していることを示している。大企業の課題解決とスタートアップの成長支援、さらには異業種間の協業まで、幅広いオープンイノベーションを実現しているのだ。
オープンイノベーションは何度も注目されてきたが、いずれも失敗に
ここまでで、UNIDGEが大企業とスタートアップのオープンイノベーションにおいて圧倒的な解像度を持ち、「仕組み」を起点に成果を挙げてきたことはわかった。
しかし、スタートアップ読者としてはまだ払拭しきれていない懸念があるのではないだろうか。そう、「ではなぜ、これまでの世の中ではオープンイノベーションがポジティブな結果につながってこなかったのか?」という点だ。
この背景を掴むべく、少し時間を巻き戻そう。2016年、日本のビジネス界でオープンイノベーションへの取り組みが加速した。そこには、日本企業の国際競争力低下への危機感と、社内リソースのみに依存したイノベーション創出の限界があった。政府の「日本再興戦略2016」を受け、大企業はイノベーション部門やCVCを設立。同時に、大企業とスタートアップをつなぐマッチングサービスが急増した。
この渦中にいたのが土成氏だ。当時、コンサルティングファームにて大企業とスタートアップの事業創出イベントの運営を行っていた彼女は、次のように振り返る。
土成2016年頃、首都圏を中心に大企業とスタートアップのオープンイノベーションイベントが頻繁に開催され、まるでお祭りのような盛り上がりを見せていました。開始当初は、日本のイノベーションを加速させる新しい動きとして大きな期待が寄せられていたんです。
しかし、徐々に課題が浮き彫りとなっていく。
土成スタートアップは社運を懸けて挑んでいますが、大企業側の体制が整っておらず、決裁権のない人や、そもそも誰が決裁者なのか社内でも明確になっていない人たちがハブとなっていることで、具体的な協業に至らないことが殆どでした。
結果、本気で動いていたスタートアップが、「オープンイノベーションなんて眉唾ものだ」と目の輝きを失っていく様子を何度も見てきました。また、販売実績や営業狙いで参加するスタートアップも増え、当初の目的とはかけ離れた場となっていたんです。
しかし、こうした状況下で土成氏は一筋の光を見出す。
前職のコンサルティング企業で、土成氏は事業再生部門に籍を置いていた。携わっていた町工場は大手メーカーの下請けを長年務めていたが、製造が海外へ移ったことで、売上が激減。一般的には生産性の向上や営業力の強化で収益増を狙うところ、土成氏は「新規事業開発」による活路を模索した。
そこで、ものづくり企業を集めた「新規事業立ち上げプロジェクト」をスタート。支援先の20代前半の若手社員が、会社への恩義や危機感をエンジンに目覚ましい成長を遂げるとともに、外部の協力者を得てオリジナルブランドを設立。自社商品を開発し、クラウドファンディングも大反響を呼ぶ。自社が手掛ける技術と外部からのリソースを掛け合わせて前例のない商品を完成させた、オープンイノベーションの実例を目の当たりにした。
この経験から、「やはりオープンイノベーションには日本企業を活性化させる可能性がある」と確信した土成氏は、さらなる新規事業開発支援の知見を得るべく、2021年にUNIDGEの親会社であるAlphaDriveへと活動の場を移した。
「失われた30年」の間、大企業は新規事業にもがき苦しんでいた
「“失われた30年”の間、日本の大企業は新規事業開発に向けて試行錯誤してきたんです」──。
トヨタで物流改善業務に従事する傍ら、有志で新規事業に取り組み、社内新規事業提案制度で2年連続グランプリを獲得した土井氏。役員付き特命担当を経て、トヨタ初のベンチャー出向を自ら企画しAlphaDriveへ出向するなど、大企業内で新規事業開発に深く関わってきた。
現在、UNIDGE共同創業者でCo-CEOを務める同氏は、この30年間で大企業側に起きていた実態を以下のように説明する。
土井歴史を振り返ると、多くの企業ではまず「社内起業家制度」に注目し、従業員のアイデアを活用した新規事業開発を試みてきました。しかし、期待した成果は上がらず、次に目を向けたのが社外のリソースを活用する「オープンイノベーション」です。ところが、いざやってみると相互の組織文化のミスマッチなどで連携が取れず、苦戦を強いられる結果となりました。
その反動で、今度は社内に「新規事業開発の専門チーム」を設置する動きが広がるのですが、既存事業との軋轢や短期的成果への圧力に悩まされます。そして再びオープンイノベーションに注目が集まるも、以前と同じ課題が再び浮上するという悪循環に…。
このようなサイクルをくり返す中、大企業は長い間、画期的なビジネスモデルや市場を変革するような成果の創出に苦心していたんです。
事実、土井氏が2015年に入社したトヨタにおいても、こうした新規事業開発に向けた試行錯誤が行われていた時期だった。
土井2016年には大企業とスタートアップによるオープンイノベーションが再注目され、トヨタも例にもれず挑戦しました。ですが結果はと言うと、期待通りの成果は得られませんでした。
こうした背景の中、私はトヨタ社内の仲間と共に有志でビジネスコンテスト「A-1コンテスト」を立ち上げたんです。さらに社外のハッカソン(短期間で新しいアイデアやプロダクト開発するイベント)を自身で企画・運営するなどし、これらを通じ新規事業創出の実践経験と社内外の仲間を増やしていきました。こうした活動が社内で認められ、その後トヨタの「社内新規事業提案制度」に一人のプレイヤーとして参加することになったんです。
しかし、いざ社内の新規事業開発に携わってみると、多くの企業が失敗する原因が見えてきた。
土井その原因とは、新規事業開発に精通した人材の不足に加え、誰が主な推進者となり、どのようなプロセスで事業化を進め、どういった基準に則って事業化の是非を評価するのかといった「仕組み」が整っていなかったことです。これでは、いつまで経っても新規事業やオープンイノベーションは進まないですよね…(苦笑)。
この経験を通じて、社内で新規事業開発のノウハウを得ることの難しさを実感した土井氏。より実践的な新規事業開発の知見を得るべく、2020年1月にAlphaDriveへの出向を決意する。
「大企業に限らずですが、自社単独の力だけでは真の意味でのオープンイノベーションの実現は難しい。だからこそ、外部の視点と専門性が必要なんです」と土井氏は語る。この決断が、後のUNIDGE設立へとつながっていったのだ。
オープンイノベーションは、「失われた30年」に終止符を打つラストピース
土井氏がAlphaDriveに参画した2020年初頭、同社のクライアントはわずか数社だった。しかし、大企業社内での新規事業開発支援が評価され、日本企業全体での新規事業創出への機運上昇も追い風となり、わずか数年で取引先は50〜60社へと拡大した。
この変革の原動力となったのが、AlphaDriveの創業者で、後にUNIDGEの後見人となる麻生 要一氏が確立した「新規事業創出モデル」だ。このモデルは、企業の特性に合わせて新規事業が持続的に生まれる組織風土を作り、事業化から拡大まで専門家がハンズオンで支援する。さらに、誰でもイノベーションを実践できる標準化した手順を確立し、持続的なイノベーション環境を整えている。
土井AlphaDriveのアプローチは、日本企業が長年抜け出せずにいた新規事業開発における負のサイクルを「止めた」という手応えがありました。大企業内に新規事業開発の仕組みが定着し始めると、各企業内にかつてない熱気が芽生え始めたんです。
土井氏は、涙を流しながら覚悟を持って新規事業のピッチを行う社員や、リスクを恐れずに大胆な意思決定をくだす役員の姿を目の当たりにした。これらの変化は、これまでの大企業ではなかなか見ることができなかった。
実際に、AlphaDriveの支援によって大企業では続々と成果が生まれ始めた。例えば、トヨタではBE creationの構想を具体化し、毎年複数案件の売上げがあがる新規事業が創出される状態に進展。小野薬品工業では新規事業コンテスト「HOPE」を立ち上げ、初年度で83件の応募中3件が事業化検討段階に進んだ。
一方、社外との協業においては依然として課題が残る。大企業特有の組織力学や意思決定プロセス、リスク回避の文化が根強く残っているためだ。しかし、国際市場での競争激化を背景に、この壁を打破することは喫緊の課題となっている。
土井「協業を科学する」と私たちは銘打っているのですが、大企業とスタートアップ、この両者を結びつけるオープンイノベーションの実現こそ、日本企業の「失われた30年」に終止符を打つラストピースになると確信しています。
大企業にとって、自社の強みと革新的なアイデアや技術を持つスタートアップとの連携は、新たな競争力となる。同時に、スタートアップにとっても、リソースやノウハウを持つ大企業をいかに巻き込めるかが、スタートアップエコシステムを加速させる鍵となるのだろう。
「優れた技術はあるが、事業化は苦手…」
そんなスタートアップこそ救いたい
UNIDGEは、「大企業側に軸足を置く」という戦略で、オープンイノベーション支援企業の中でも独自のポジションを確立しつつある。
しかし、土井氏と土成氏の視線はすでに次のステージを見据えている。
土井私たちの目標は、日本企業が「失われた30年」を取り戻し、次々と新しい価値の創造が組織や立場を超えて生まれ、日本をもっと元気にすることです。
そのためにはオープンイノベーションの市場全体を底上げする必要があります。オープンイノベーションの支援企業がそれぞれの強みを活かし、連携することが大事だと考えています。
例えば、マッチングプラットフォームに強い企業もあれば、私たちUNIDGEのように事業開発のプロが大企業側から入って支援する企業もあります。こうした異なるポジションを取るプレイヤーが相互に補完しあうことで、オープンイノベーションに取り組む人たちにより多くの選択肢を提供でき、持続可能なエコシステムが形成されると信じています。
一方、土成氏はスタートアップ側の支援にも注力する意向を示す。
土成特に、優れた技術を持ちながらも事業化に苦戦しているスタートアップを支援していきたいです。
大企業や事業会社との協業がなければ、世に埋もれてしまうかもしれない技術やアイデアを発掘し、AlphaDriveグループの事業開発力や、UNIDGEが持つ大企業のネットワークを活用して、そうしたスタートアップの成長を後押ししていきます。
具体的には、アクセラレータープログラムの拡大・強化や、スタートアップの販路開拓支援などを計画している。
土井現状、UNIDGEの案件は大企業側のニーズに基づいた事業開発が中心です。しかし、今後はスタートアップの販路拡大や商材のバリューアップを後押しする協業パターンにも注目しています。スタートアップの事業提携に関するリリースの半数以上が販路拡大を目的としていることからも、そのニーズの大きさを実感しています。
もちろん、大企業にとっても、顧客の課題解決に直結するスタートアップの技術やプロダクトは魅力的です。私たちは、こうした両者のニーズを的確にマッチングさせる新たな協業パターンの開発にも注力していきたいと考えています。
最後に、土井氏は大企業向けに今後の戦略を、土成氏はスタートアップへの期待を語った。
土井オープンイノベーションの成功には、大企業とスタートアップがフラットでリスペクトし合える関係性を築くことが欠かせません。
大企業は、これからはスタートアップに「選ばれる存在」へと変わる必要があります。両者の利害が一致するような仕組みづくりが大事。例えば、大企業が協業の初期段階でリスクを取って資金やリソースをスタートアップへ提供し、その後は成果に応じてリスクや利益を再分担するなど、Win-Winとなれるような関係構築が重要ではないでしょうか。
土成私たちは、本気で事業開発に取り組むスタートアップを全力で支援する覚悟です。
スタートアップへのアプローチは、メルマガの一斉配信などではなく、厳選した数社に対して個別に行っています。例えば、ある案件では約50社のスタートアップをリストアップして、そこからさらに厳選した数社に対して個別にアプローチを行いました。
もし私たちからオファーをお受け取りになった際には、ぜひ一度内容をご確認ください。そこには1年以上かけて練り上げた大企業の具体的な事業案件についてのご相談が記されているはずです。
こちらの記事は2024年11月11日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
山田 優子
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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