隆盛するノーコード領域の新星・オーティファイに学ぶ、市場“再定義”術──130兆円の「テスト自動化」マーケット攻略の展望

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インタビュイー
清水 隆之

2011年4月にDeNAに新卒入社、エンジニアとして複数の海外向けソーシャルゲームの開発・運用を経験。スタートアップ、フリーランスを経て、2014年12月 FiNC Technologiesに最初の中途エンジニアとして入社。法人向けサービスの立ち上げを牽引し、のちにエンジニアリングマネージャー、プロダクトマネージャー、品質部門の責任者など開発現場における様々な経験を経て、2018年 執行役員 VP of Engineeringに就任。全社のプロダクト開発やエンジニアチームの組織変革・マネジメントに従事。2020年7月、オーティファイ株式会社の取締役COOに就任。

松浦 隼人

サーバ等の販売・ITインフラ構築を行う技術商社を経て、大手Webサービス会社にて、主にブログサービスなど大規模なコミュニティサービスのインフラ面を担当。各サービスのサーバからミドルウェア(OS、データベース、アプリケーションサーバ、構成管理、監視など)まで幅広く担当するインフラエンジニア、またチームのマネージャーも兼務。その後、GitHubにてRailsアプリケーションとその技術スタックに関わるテクニカルサポートエンジニアを担当。MySQLや監視ツールに関わる独自の見解を生かし、オライリー・ジャパン出版の「入門 監視」を始めとする技術専門書の翻訳も手掛ける。2019年4月より業務委託のエンジニアとしてオーティファイに携わり、同年9月リードバックエンドエンジニアとしてオーティファイに入社。

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プロダクト開発における、ローンチ前の最後の砦である「ソフトウェアテスト」。開発したソフトウェアが、正しく動作をするかを検証するテストのことだ。実はソフトウェアテスト市場が、いま大きく変革しつつある巨大市場だということをご存知だろうか。

ソフトウェアテストは、開発予算の約1/3が投じられている領域で、潜在市場の規模は世界で約130兆円とも言われている。しかし現状では、73%の企業が手作業によってソフトウェアテストを行っているという。

ここに「自動化プラットフォーム」という形で変革を起こしているのがオーティファイだ。ソフトウェアテストを自動化することで、開発スピードが大幅に高速化し、プロダクトの構想や改善により大きなリソースを割けるようになるという。テスト自動化プラットフォームが普及することで訪れる未来像と、そこに至るまでのマーケット開拓の道のりを、COOの清水隆之氏とCTOの松浦隼人氏に聞いた。

  • TEXT BY RIKA FUJIWARA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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プロダクト開発において
「最もインパクトが大きく、テコ入れがしやすい領域」

「僕たちはソフトウェアテストの他企業とは、一線を画するビジネスを展開しています。ソフトウェアテスト市場で唯一、100%システムのみで、しかもNo Codeでテストが完結する世界を作ろうとしているんです。労働集約的に手動でテストを請け負っている会社とは、わけが違います」

開口一番、清水氏は「ソフトウェアテストを請け負う会社でしょ?」と誤解されることが多いが、それは明確に違うと断言した。

「ソフトウェアテスト市場」と聞き、そのポテンシャルやビジネス的な面白さにピンと来る読者は多くないかもしれない。だが、知れば知るほどそのイメージが覆っていくのが、この市場のユニークなところだ。

今や大企業であっても、アジャイル開発を採用または採用予定の企業は7割にのぼる。アジャイル開発においては、いかに高速で開発サイクルを回せるかが、競争力を左右する。事実、アジャイル開発を採用している企業の約7割が「週1回以上、ソフトウェアをリリースしたい」と望んでいるという。

だが、それを阻む大きな壁が存在する。ローンチ直前に避けては通れない工程、ソフトウェアテストで蔓延する“非効率”だ。多くの企業が、Excelに書かれた検証項目を、一つひとつ人力でチェックしている。時にはテストだけで、2週間の開発サイクルにおいて10日のうち3日ほどの時間を割くこともあるという。検証作業を人手で続けている限り、いつまでもソフトウェア開発のスピードは上がらない。

ディー・エヌ・エーとFiNC Technologiesで、エンジニアリングマネージャーやプロダクトマネージャー、品質管理の責任者などを歴任してきた清水氏は、ソフトウェアテストを効率化することの意義をこう語る。

オーティファイ株式会社 COO 清水隆之氏

清水プロダクト開発は、サービスの企画を出し、要件定義と設計を考え、実際に開発をし、テストをするという5つの工程に分けられます。ただ、企画立案やコーディングを抜本的に効率化・高速化するシステムを開発するのはなかなか難しい。最もテコ入れがしやすく、インパクトを出せる工程は何かと考えると、ソフトウェアテストなんですよね。この領域を変えれば、開発の工程が大幅に短縮しうる。場合によっては、丸々一工程分カットできます。

大手Webサービス企業やGitHubでテクニカルサポートエンジニアとしてキャリアを積んできた松浦氏も、この言葉に大きく頷く。

松浦人がやる必要がなく、もっとも非効率が蔓延しているのがソフトウェアテストだと、私も感じています。テストは開発コストの1/3を占めているので、ここを改善すればインパクトが大きいはず。未だに非効率がはびこっているソフトウェアテストを自動化させられれば、開発スピードは上がり、コストがグッと下げられる。

オーティファイ株式会社 CTO 松浦隼人氏

これだけの課題意識がありながら、ソフトウェアテストの自動化が進まないのはなぜか。その理由は、人材不足と技術的な難易度の高さ、そしてソフトウェアの変更に追随して、テストシナリオを更新し続けるコストの大きさだ。

テスト自動化に必要な知識は、テスト設計や計画、テストケースの作成や実施、そして実際にコードを書く能力、自動化用のサーバー・環境構築の知識など多岐にわたる。そのため、人材が不足している状態だ。自動化を専門とするエンジニアは、全体の2〜3%ほどしかいないという試算もあるそうだ。また、テスト自動化を実装できたとしても、ソフトウェアのUIは頻繁に変わる。多大なメンテナンスコストがかかり、対応に追われてしまうのだ。

この課題を解決すべく、オーティファイは「誰もが簡単にテストを自動化できる」プラットフォーム『Autify』を提供。コードを書かなくても簡単にテスト全体の流れを作成・実行できるうえ、リリースの度に変更されるUIのズレなどをAIが検知し、自動で修正を行う。

「ソフトウェアテスト市場」に目を向けている企業は、オーティファイの他にも存在する。ただ、その多くは、外注サービスという労働集約型のビジネスモデルで請け負い、テスト戦略の立案や実行をしてきた。オーティファイは、それらをプロダクトの力によって自動化しようとしているのだ。

松浦既存の企業は、ソフトウェアテストをよりクオリティ高く、手作業でやろうとしています。一方で私達は、「そもそも手作業がベストなのか?」と前提から疑っている。

テストの中には、人間より機械がやったほうが効率の良い工程が存在します。そういったところを自動化して、人間が本当にクリエイティブな価値を発揮できる「戦略」や「戦術」の部分にフォーカスしてほしい。私たちの目的は「ソフトウェアテストの自動化」そのものではない。ソフトウェアが普及していく社会におけるインフラになり、人間がよりクリエイティブな仕事に専念できる世界を作っていきたいんです。

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目指すのは「誰もがGAFA級のスピードで開発サイクルを回せる状態」

オーティファイは、2016年にシリコンバレーで創業。2019年1月には、米国トップアクセラレーターAlchemist Acceleratorを、日本人として初めて卒業した。

ミッションに掲げているのは、「技術の力で、人の創造性を高める」。その世界に向かうために描いているのが「テストケースの自動化比率を高める」「テスト全体のカバレッジを高める」「テストフェーズをなくす」という3つの成長戦略だ。

清水フェーズ1で、ユーザーが「テストをしたい」と考えているものの自動化を可能にします。続くフェーズ2では、『Autify』が自動で分析をして、ユーザーが気づかないところに対して「ここもテストした方がいい」「あれもテストをしましょう」といったサジェストが入る状態を実現。そしてフェーズ3で、仕様書などテストより前段階のアウトプットからテストケースを自動生成し、開発が終わると同時に『Autify』が率先してテストをしてくれる。そもそもテストのことを考える必要がなくなるので、テストフェーズが文字通りなくなり、もっと上流の戦略などに集中できる状態を作ります。

オーティファイがミッション実現に向けて描くロードマップ

これまでは第1フェーズの実現を目指し、手動で行われてきたテストの自動化に取り組んできた。例えば、エラーの頻度が高かったり、重要度が高かったりする箇所のテストなどだ。そして、次の大きな一手として、スマートフォンアプリ向けのソフトウェアテストの自動化に踏み切った。

松浦自動化できる範囲をできるだけ増やしていこうとしているのが、今のフェーズです。これまではWeb版に限定していたのですが、ソフトウェアテストを前進させていくためにも、モバイルを避けて通ることはできないと考えて着手しました。

2021年1月現在はPoCの段階だが、すでに多くのユーザーから必要とされていることを実感しているという。

松浦お客さんに実際に使ってもらいながら検証を進めていく中で、「Webのように頻度高く更新できず、品質で失敗したときのインパクトが大きいアプリこそテストの重要性が高いので、非常に待ちわびていた」「開発や改善のスピードが格段に上がりそうだ」といった声をいただいています。そうしたリアクションに遭遇するたびに、ユーザーの課題にアプローチできているのだなと実感します。

自らに課したミッションに向かって、オーティファイは着実に山を登り続けている。第3フェーズの「テストフェーズをなくす」が実現したら、開発スピードは現在の2倍以上になるといっても過言ではないと、清水氏はGAFAの例を出しながら語る。

清水『Autify』が第3フェーズに突入し、先回りしてテストを実行する状態が作れれば、リリースまで2週間かかっていたものが1週間で完了するようになるのも夢ではありません。GAFAのような世界のトップレベルの開発チームでは多数の優秀なテストエンジニアと資金を投入して、すでにこの状態を実現させています。Amazonは平均11.7秒毎にデプロイ、Netflixは1日1,000回デプロイしていると言われています。開発をしながら、テストエンジニアが関連するテストも同時に実装しているので、改善のスピードが圧倒的に速いんです。テックジャイアント企業と戦っていくためには、リリースに1カ月などかけているようでは、勝ち目がない。

でも、『Autify』を第3フェーズの状態まで進化させられれば、多額の資金や多くの人材といった豊富なリソースがなくても、全ての企業がGAFAのようなスピードで開発する世界も実現しうる。昨今はDX化の潮流もあり、ますますソフトウェア開発のスピードが激化していくはず。その中で、人間がやらなくてもいいことは徹底的に自動化して、変化のスピードを推し進めていきたいですね。

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広告ゼロで急成長。
グローバル展開も見据え、急ピッチでBiz部門を立ち上げていく

他方、「ワンプロダクトを開発し、売る」というシンプルなビジネスモデルゆえ、事業の拡張可能性が低いイメージを持つ読者もいるだろう。その疑問を率直に投げかけてみると、清水氏はこう答えた。

清水SaaSモデルには、成長パターンがあるんです。それは、一つのプロダクトラインで完結させないこと。『Salesforce』や『SmartHR』も、様々な機能が追加されて、クロスセルやアップセルを重ねることで、成長率を高めています。私たちも新たな機能を追加したり、外部サービスと連携したりすることで、さらなる成長を重ねていこうと考えていますから、ワンプロダクトで終わるつもりは全くありません。

もちろん今はまだ、一つのプロダクトラインしか存在しません。どういった付加価値をつけていくか、ここからクロスセルやアップセル、ときにはアライアンスといった事業開発をビジネスサイドの人材が積み重ね、プロダクトを拡張していくフェーズなんです。

加えて『Autify』には、「プロダクト力」という大きな武器がある。2019年10月の正式ローンチ以降、広告を一切打たずに、約半年で累計導入企業が100社、2020年8月には200社を突破した。ディー・エヌ・エーやGA technologies、ZOZOといったビッグネームも名を連ねる。

清水プレスリリースを出したら、多くの方々が興味をもってくださって。すぐに良い事例ができ、それを拡散したらさらに問い合わせが増え、導入につながっていきました。

現状、マーケティング担当は0人ですし、セールス担当も1人だけ。これからが、ビジネス部門を立ち上げていくフェーズ。マーケティングややセールスにも力を入れることで、どれだけのグロースが期待できるのか、非常に楽しみです。

オーティファイはグローバル展開も見据えている。市場が未形成な日本はもちろん、海外においても、競合は存在し始めているが、まだ売り方を模索している段階だ。そんな中、オーティファイは明確な差別化ができているという。

松浦海外の競合のプロダクトと『Autify』は、決定的に違うんです。アメリカは日本よりもソフトウェアテストが進んでいて、中規模以上の企業は自動化できる仕組みが整っています。プラスアルファの性能が求められるため、ある程度スキルのあるエンジニアをターゲットにした多機能なものが多い。

しかし、オーティファイは「エンジニア以外も使えるように」開発をしています。テストの悩みは万国共通なので、海外でも価値を発揮できると思うんです。もちろん海外に対しては、国内とは違う売り方をしていかなければなりません。いかにその国ごとに異なる適切なかたちを模索していけるかどうかは、マーケティングやセールスの腕の見せどころですね。

実際オーティファイは、アメリカでのIPOを視野に入れて、早くからグローバル化に力を入れてきた。『Autify』は開発当初から、英語と日本語の両方に対応している。メンバーも19人中5人が外国人で、2020年12月には、アメリカで1名のセールス担当者も採用したという。アメリカはもちろん、インドネシア、タイ、パキスタンなど、メンバーの国籍が多岐にわたるため、公用語は英語だ。

松浦ソフトウェアテストの悩みは、世界共通。『Autify』は、間違いなく世界にも持っていくべき製品ですし、自分たちの力でこのソリューションを世界に広げていく可能性があるのだと思うと、非常に開発のしがいがありますね。

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求む、未来のVP・CxOクラス。
「なくてはならない」プロダクトの拡大に向けて

オーティファイが目指す世界を実現するためには、テスト自動化の意義を啓蒙していく必要があると清水氏は指摘する。前職での経験から、この啓蒙の必要性を実感したそうだ。

清水前職で、かなり初期の頃から『Autify』を導入していたんです。ただ、導入するにあたり、経営層の理解を得るのに苦労しました。経営層からすると、「テストの自動化に資金を費やすことに対して、本当に開発の速度が速まるのか?」という疑問があったんです。

当然ですが、経営陣が見ている事業の成果とプロダクトの品質管理の接続点を見出せないと、導入に至りにくい。テストの自動化がソフトウェア開発、ひいては事業成長においてどう影響していくのか。その重要性を説いていくための方法を、模索する必要性がありますね。

言ってみれば、まずは日本においてマーケットメイキングをしていく必要がある。PR、マーケティング、顧客との対話……あらゆる側面から、「テスト自動化」の意義や価値を、社会に広めていかなければいけません。また、先ほどもお伝えしたようにグローバル拠点の立ち上げも進めているので、世界で戦っていきたい方も大歓迎です。

市場形成の渦の中心にいる二人は、何を原動力に励んでいるのだろうか。

松浦実際に入社してみて感じたのですが、ユーザーから「テストが辛い」「『Autify』のようなプロダクトを待っていた」といった声がよく届くんです。明確に社会から求められているプロダクトに関われていると思えますし、そうした要望にしっかりと応えていきたい。

今はまだまだ、テストできる領域を広げている最中です。理想とのギャップを感じてしまって焦ることもあるのですが、「人に求められているものを作る」というモノづくりの純粋な面白さを、日々感じています。

清水「あったらいいな」ではなく、「なくてはならない」もの、ユーザーに本当に必要とされているものを、作れている実感はあります。しかも、ソフトウェア開発のスピードはこれからますます重要性が増していくはずなので、長期スパンで挑戦する意義がありますよね。そうした領域にコミットできるのは、非常に有意義で面白いです。

そんな挑戦に一緒に取り組んでくれる方を、切に募集しています。手前味噌ですが、これだけの巨大市場で、市場創造・市場啓蒙を経験できるスタートアップは他になかなかないのではないでしょうか。

先ほども触れたように、オーティファイは現在、レバレッジを効かせていくためにも、ビジネスサイドを本格的に組成していくタイミングだ。今入れば、CxOやVPクラスで活躍できるチャンスも広がっているという。

清水市場自体も私たちも、まだまだ確立されていない。それは同時に、自分たちで新しい価値を作っていける可能性に、満ちているということでもあります。日本だけでなく、世界を舞台に新しい価値を切り拓いていこうと考えている人と共に、「技術の力で人々の創造性を高める」というミッションに向けて歩んでいきたいです。

こちらの記事は2021年01月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

藤原 梨香

ライター・編集者。FM長野、テレビユー福島のアナウンサー兼報道記者として500以上の現場を取材。その後、スタートアップ企業へ転職し、100社以上の情報発信やPR活動に尽力する。2019年10月に独立。ビジネスや経済・産業分野に特化したビジネスタレントとしても活動をしている。

写真

藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

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