中国ミレニアル・Z世代とはどのような世代か?──6億人以上の巨大市場を攻略せよ
「中国人の買い物」と聞いて、どのようなイメージを持っているだろうか。
日本では「爆買い」という言葉が使われさまざまな報道がなされたため、消費欲旺盛というイメージを持っているひとが多いかもしれない。
たしかに中国における中間層は急速に拡大しており、消費が増えているのは間違いない。
しかし、ミレニアル世代とZ世代が台頭する中国コンシューマー市場では、これまでに見られない変化が起きており、その本質を見抜くには先入観を捨てて観察する必要があるだろう。
そこで今回はさまざまなデータを参照しながら、中国のミレニアル・Z世代コンシューマーの特徴に迫ってみたい。
- TEXT BY GEN HOSOYA
6億人を超える巨大市場を形成する中国ミレニアル・Z世代
中国の人口は約13億7000万人。このうちミレニアル世代とZ世代がどれほどの割合を占めているのか、いくつかのレポートが試算を出している。
ゴールドマンサックスのレポートによると、1980年代と90年代に生まれた世代(ミレニアル世代)は4億1500万人。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、ミレニアル世代は都市部人口の40%ほどを占め、2021年までには46%に拡大すると試算している。
1995年以降に生まれたZ世代に関しては、中国統計局のデータから2億5000万人ほどいるとされている。つまり、ミレニアル世代とZ世代を合わせると「人口の半分」を占めることになるのだ。
BCGによると、ミレニアル世代はすでに中国の消費拡大の65%に相当する部分を担っており、今後も2021年までに年間11%の拡大を続けていく見込みだ。
また、中国Eコマースの「Secoo」によると、ミレニアル世代とZ世代の合計可処分所得は2015年に全体の34%を占めていたが、2025年には50%まで拡大するという。
中国ミレニアル・Z世代の「4つの特徴」を抽出
デロイトがこのほど発表したレポートでは、中国ミレニアル世代について欧米の同世代と比較しながらその特徴を抽出している。ここでは「4つの特徴」を紹介したい。
1つは、中国ミレニアル・コンシューマーはトレンドを探すとき(特にラグジュアリーブランドに関わるトレンド)、ファッション雑誌やブランドウェブサイト、ファッションウェブサイトを参考にしており、意外にもソーシャルメディアやインフルエンサーの影響は比較的小さいことだ。
レポート調査の「最新のハイエンドファッションやラグジュアリーアイテムをどのように見つけるのか」という質問に対して、中国ミレニアル・コンシューマーは「ブランドウェブサイトから見つける」が18.3%で最多となった。
次いで「ファッション雑誌から」が17.6%、「ファッションウェブサイトから」が16.4%となった。一方、「ソーシャルメディアから」は15%、「有名人の発信情報」は10.8%となった。
米国のミレニアル・コンシューマーと比べるとより分かりやすい。同じ質問に対して米国ミレニアル・コンシューマーは、「ソーシャルメディアから」が23.1%で最多となったのだ。2番目は14.3%で「ファッション雑誌から」、そして3番目に13%で「有名人の発信情報」となった。
2つ目の特徴は、中国ミレニアル・コンシューマーは欧米の同世代に比べてパーソナライズされたプロダクトやサービスにはあまりお金をかけないことだ。
「ブランド品がパーソナライズされた場合、通常より高くても購入するか」という質問に対して中国ミレニアル・コンシューマーの40.6%が「購入する」と回答したのに対して、米国では71.4%、イタリアでは61.6%、英国では56%となった。
レポートはこの理由について市場の成熟度の度合いが関係していると指摘している。
欧米ではラグジュアリーブランドが広く購入可能で、そのなかでユニークネスを獲得するためにパーソナライズ・プロダクトを選ぶミレニアル世代が多いのかもしれない。中国でもラグジュアリーブランドが広まっていけば、パーソナライズ・プロダクトの選択が欧米並に増えていく可能性がある。
3つ目は、中国ミレニアル・コンシューマーがブランドに求めるものは「品質」と「ユニークネス」であることだ。
「ラグジュアリーブランドに惹きつけられる最大の理由は何か」という質問で、中国ミレニアル・コンシューマーでは「プロダクトの品質」が31.4%で最多となった。次いで26.4%が「プロダクトのユニークネス」と回答している。
「品質」と「ユニークネス」が1番目と2番目の理由である点は欧米のミレニアル世代とは同じであるが、中国では若干「プロダクトの品質」の割合が低く「ユニークネス」の割合が高い。「プロダクトの品質」の割合は、米国43.3%、英国43%、イタリア38%。「ユニークネス」の割合は、米国18.6%、英国22.8%、イタリア21.5%だった。
2つ目の特徴を考慮すると、中国ではパーソナライズでユニークネスを実現するのではなく、もともとユニークなブランドを選ぶことでユニークネスを実現しようという傾向が若干強いといえるだろう。
4つ目の特徴は、購買の際にプロダクトやブランドの「持続可能性」や「倫理性」を考慮するコンシューマーが多いことだ。
「購入前にブランドの持続可能性や倫理性を確認するか」という質問に、中国ミレニアル・コンシューマーの53.1%が「ときどき確認する」と回答。また、38.1%が「常に確認する」と回答している。
「常に確認する」の38.1%は、米国の48.9%に次ぐ割合で、イタリアの20.3%、英国の18.8を上回る。これらの数字は、環境汚染問題が深刻化する中国で、若い世代のなかで持続可能性や倫理性への意識が高まっている表れとも見てとれる。
「目指す生き方」にもジェネレーションギャップ
ここまでデロイトレポートによる中国ミレニアル・コンシューマーの特徴を紹介してきた。一方、マッキンゼーのレポートでは、中国の90年代生まれとそれ以外の世代を比較し、特徴を抽出している。同レポートからもいくつか特徴を紹介したい。
1つは「成功」の定義の変化だ。「幸せな人生を送ることが成功であると思うか」という質問に対して全体の43%が「そう思う」と回答している一方、90年代生まれは86%が「そう思う」と回答しているのだ。自分が幸せであると思うことを追求する傾向が強くなっているようだ。
一方で「裕福になることが成功である」と考える90年代生まれは64%で、全体の55%を上回っており、経済的な成功を求める傾向も若干強くなっている。
消費に関して、「環境に優しいプロダクトであれば多少高くてもよい」という質問に90年代生まれの53%が「そうする」と回答し、全体の46%を上回っている。デロイトレポートが示した「持続可能性」への意識の高まりと合致する。
このように中国ミレニアル・Z世代は、海外の同世代だけでなく、国内の異なる世代と比較しても何らかの特徴を示す独特の世代と言える。
中国ミレニアル・Z世代が生まれた80〜90年代は、1978年の改革開放が始まり経済が勢いづく真っ只中。また、これらの世代は多感な時期に中国のGDPが世界第2位まで上り詰める変化の激しい時期を経験している。
急速に変化する経済と社会のなかで育ち、インターネットやデジタルデバイスを通じてさまざま価値観に触れたことで、中国ミレニアル・Z世代独特の価値観が醸成されたのではないだろうか。
こちらの記事は2018年01月18日に公開しており、
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シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。
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