“移民版リクルート”目指し、ブルーオーシャン市場で成長率350%──LivCo佐々氏が描く「外国人が暮らしやすい日本」実現までの道筋とは

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インタビュイー
佐々 翔太郎
  • 株式会社LivCo 代表取締役 

中央大学4年次には文科省『トビタテ留学JAPAN』第6期奨学生に選出され、NPO法人『e-Education』の現地責任者でミャンマーに駐在。映像教育を広める傍らミャンマー初のキャリア・進学メディアLive the Dream Co., Ltd.を現地の若者と学生起業し、ユーザー100万人の規模まで成長させ事業売却。その後株式会社リクルートに新卒入社し『じゃらん』の新規事業であるホテル向けSaaS事業に関わる。その後、ミャンマークーデターを契機に株式会社ASEAN HOUSE(現:株式会社LivCo)を設立し外国人材紹介事業を始動。朝日新聞、共同通信、Huffpostなどメディア掲載多数。座右の銘は「失敗しても当たり前。成功したら男前。」

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人口減少による労働力不足が深刻化し始める中、日本企業による外国人雇用が実はじわじわと拡大しているのをご存知だろうか?外国人雇用支援ビジネスは、超巨大市場の一つ・HR産業の中に残された唯一のブルーオーシャンであるとの見方もある。

なんと2023年末時点で外国人労働者数は過去最高の約204万人まで増え、遠くないうちに1,000万人規模まで増えるという見立ても現実味を帯びている。この成長市場で頭角を現しているスタートアップが、わずか2年で業界最上位レベルの紹介実績を残し始め、売り上げを前年比350%で伸ばすLivCo(リブコ、2024年8月にASEAN HOUSEから社名を変更。プレスリリースはこちら)だ。

同社は「外国人も暮らしやすい社会を創る」というビジョンのもと、2022年のサービス開始からたった数年の間に外国人向けの総合ソリューションプラットフォーム事業へと多角化を実現。大きな先行優位性を持つようになっているのだ。

代表の佐々翔太郎氏は、ミャンマーでの学生起業と事業売却、そしてリクルートでの新規事業立ち上げの経験を持ち、最近は政策関連議論にも参加する気鋭の起業家。経営手腕も“したたか”で、リスクの小さくない外国人育成事業に加え、人材紹介の周辺業務を請け負い安定したキャッシュフローを構築。横展開検討にも余念がなく、複数事業体制で企業成長を継続させているのである。

今回はそんな佐々氏へのインタビューで、今機運が高まる市場の動向、その中でLivCoが何を目指し、どのように成長を遂げているのかをじっくり聞いた。

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三つのパラダイムシフトにより機運の高まる外国人材紹介ビジネス

佐々人材紹介事業ではフロー収入がメインとなるため、会社経営を安定させるためには常に新規の成約が必要になります。もちろんそのための仕組み構築に注力してきたわけですが、同時にサブスク型で収入を得られるモデルの事業をいくつも構築しています。

ビジョンに掲げる「外国人も暮らしやすい社会」のためには、企業として安定性も持ちながらさまざまな挑戦をしていく必要があります。なので、キャッシュフローの安定にはしっかり向き合い、継続的な成長投資ができるようにしています。

ビジョンから逆算した戦略を、冷静に語り始める。佐々氏は、学生時代にミャンマーで生活しながら事業を立ち上げ、新卒入社したリクルートではプラットフォーム事業の広告営業や新規SaaS事業の立ち上げも経験してきた。そして、日本の人手不足と途上国の雇用機会不足という、二つの課題を同時に解決するため、LivCoの前身となる事業を個人で立ち上げ、東南アジア労働者の日本企業への紹介を始めた。

昨今、コンビニや飲食店をはじめ、日本国内のさまざまな場所で外国人労働者を目にする機会が増えた。十数年ほど前までは、留学生によるアルバイト勤務が多く、定住し続ける例も多くはなかった。だが現在では飲食や製造、介護といったさまざまな業界に、フルタイム勤務で働く外国人が増加している。

佐々氏は、「巨大HR産業で残された唯一の市場が、外国人材紹介ビジネスである」とも見ている。まさに今、参入する支援事業者も増えている。

佐々人材系大手企業の参入がどんどん増えていますね。その背景には近年、外国人材紹介ビジネスを加速させるきっかけとなった「三つのパラダイムシフト」があると見ています。

佐々氏が指摘する一つ目は、買い手市場から売り手市場への市場感の変化だ。人口減少による人手不足が多くの産業で顕著になっている。コロナ禍を経て、さらに外国人労働者への需要が高まり、求人を出す企業が著しく増加し外国人求職者の数を凌駕し始めている。そうなれば「外国人だから」と買い叩きされていた紹介単価も自ずと上がり、マーケットが拡大していく。

二つ目は、「特定技能」制度の導入。従来の「技能実習」制度では、海外からの人材供給に限られていたが、2019年に開始された「特定技能」制度により、既に国内にいる外国人材の採用が可能になった。技能実習から特定技能への転職も可能となり、外国人材のキャリアパスも多様化。制度が創設された2019年には特定技能人材はたった520名だったが、2024年5月の速報値では約24.5万人に達しており(出入国管理庁「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」を参照)、飛躍的に増加している。

三つ目は、民間企業の参入が可能となったことだ。人材紹介企業の参入が可能になったことで、市場競争が活性化し、サービス品質が向上した。そして競争原理によって採用単価もリーズナブルになり外国人採用のハードルがガクンと下がった。これら企業の努力の結果として、外国人雇用の受け入れ企業も増加し、市場全体の拡大につながっている。

特に注目すべきは、東南アジアからの人材流入である。直近の増加率を見ると、インドネシアが前年比56.0%増、ミャンマーが前年比49.9%増と突出した成長を見せる。日本に働きに来る層は以前と変化してきているが、東南アジアの若者からの日本への関心は未だ高い。日本はまだまだ身近で魅力的な選択肢である。

こうした流れを、佐々氏の言葉「外国人雇用3.0」を使って整理するとこうなる。

ビジネストレンドとしての市場成長の経緯や外国人雇用制度の歴史について、詳細は別途公開している市場研究記事をお読みいただきたい

このような市場環境の中で、LivCoは独自のポジションを確立し、急速な成長を遂げている。サービス開始2年で業界上位4.8%の規模となった同社には、高度人材ではなく、今後の最も高い成長率が期待される「特定技能」という在留資格人材に注力してきたという特徴がある。

佐々2019年、特定技能の人材紹介に民間企業が参入できるようになりました。「これは、私の経験を大いに活かせるチャンスだ」と感じ、一気に事業として立ち上げました。

ミャンマーでの学生起業時代の経験、そして前職の経験から、「途上国側から来日して働きたい若者が今も多くいること」そして「日本の受入企業側ではサービス業などにおいて人手不足が顕著になり始めていること」を実感を持って知っていたので、需要は激増するだろうと考え、思い切って決断できたんです。

同社の強みは、単なる人材紹介にとどまらない包括的なアプローチにある。現在展開する事業は「グローバルHRプラットフォーム事業」「外国人向けライフサポート事業」「外国人向け不動産事業」「外国人向けメディアプラットフォーム事業」「インドネシア人材育成事業」の5つ。

「外国人も暮らしやすい社会を創る」というビジョンのもと、採用・就職だけでなく、その後の定着・活躍までをゴールに設定する。業界平均26%という高い離職率を、同社紹介人材に限っては12%という低さを実現。住まいや日常生活、メンタルケアなど、外国人労働者の生活全般をサポートしているのだ。

受け入れ企業に対しては、紹介だけでなく「登録支援機関」としての継続的なサポートを実施。「登録支援機関」は、企業が特定技能人材を受け入れるために必須とされている、事前ガイダンスや出入国の際の送迎、生活オリエンテーション、教育機会の提供など一連の支援を代行するもので、これらがサブスク型サービスとなっているため、企業としての収益安定も担保できているのだ。

さあここから、したたかであり、かつ熱い想いの載った戦略を詳しく見ていこう。

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SNSを駆使、25のメディアで、在日東南アジア人の約3割に当たる約18万人からフォロー

改めて紹介すると、LivCoの外国人材紹介サービスは、2022年4月に代表の佐々氏が立ち上げた。サービス開始からわずか2年で約500名の人材紹介を達成、実績として売上前年比350%という成長率を保っている。

注目すべきはなんと言っても、紹介した外国人材の離職率の低さ。業界平均が26%であるのに対し、LivCo経由の人材は平均12%程度。高い定着率は、同社のサービス品質の高さを示すものといえるだろう。

従業員数はここ1年で10名から35名に増加し、2024年度は2倍以上の80名到達を目標に掲げる。

LivCoがなぜこれだけの成長を遂げられているのか。もちろん市場環境の良さは前提にあるが、競合他社と比較しても現状圧倒的な存在感を放っているのには理由がある。まず重要なのは「働き手の確保」だ。

佐々特定技能制度の創設以前は、人材紹介事業者は基本的に海外からの新規の人材しか紹介を行うことができませんでした。しかし、制度創設以降、国内にいる留学生や技能実習満了者を含む外国人材へのアプローチが認められ、民間事業者の参入も可能になりました。

外国人受け入れ需要が膨らみ、売り手市場になっていくと「優秀な候補者をいかに抱えるか」がエージェントの重要な観点となります。国内にいる外国人材は、新たに海外から来日する人材よりも日本語が堪能で即戦力になることが多く、受け入れ企業にとって雇用メリットが大きい。そのため今は、より多くの日本在住の外国人材を紹介できる状態をつくることを重視しています。

LivCoが国内人材を確保するための施策として強さを発揮しているのがWebマーケティング、具体的にはSNSの活用だ。

従来の技能実習制度下では、そもそもWebマーケティングが事実上、不可能だった。なぜなら国内在住外国人材を集客したとしても転職が認められていなかったため支援ができず、海外在住者に対しての支援は現地での斡旋ライセンスを所持する必要があり日本企業には取り組みにくい話だったからだ。

しかし特定技能制度の導入などによって規制が緩和されると、インターネットを駆使して効率的にマーケティングを行うことが容易い民間企業の参入が増え、日本国内在住の優秀な外国人材に直接リーチすることが当たり前の市場環境となった。そこでLivCoはいち早く、東南アジア各国の現地語で、各国出身者が日常的に使用するSNSに特化してコンテンツを配信。在日の東南アジア人の約3割にあたる18万人のフォロワーを抱える25の自社SNSメディアを持つに至っている。

株式会社LivCo提供

佐々たとえばFacebook上で、インドネシア語で「特定技能 介護」と検索すると、たいてい弊社のコンテンツが上位表示されます。このようなニッチな領域で認知を取っています。特にFacebookはミャンマー人向けの日本での就職情報メディアとして国内最大規模となっています。

私も出演しているため、先日新宿駅を歩いているときに突然ミャンマー人のフォロワーさんから声をかけられました(笑)。こうした経験が何度もあります。

また東南アジアには、日本とは異なる特殊なカルチャーがあります。特にミャンマーは少数民族も多いのでコミュニケーションに注意が必要です。たとえばSNSでの発信は、それが公用語での発信だったとしても字体そのものに抵抗があるケースが多い。そこで図や動画を増やすなどビジュアルで伝える工夫をしています。

株式会社LivCo提供

佐々氏は東南アジア在住経験を持ち、現地で100万フォロワーのSNSメディアの売却経験を持つ。そのため東南アジアに存在する特殊なマーケットを肌で感じ、それぞれに合わせたマーケティングを行っているのだ。その結果、日本在住の外国人材に関しては、広告出稿を一切しなくても週500件ほどの問い合わせが入る状態がつくれているという。

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現地人材の人材プール確保と教育は、泥臭く丁寧に

とはいえ日本在住の外国人材の数には限りがあるのでは……?と感じる読者もいるだろう。もちろん、佐々氏は海外現地からの新規入国人材という観点でも手を打っている。いや、むしろこちらが同社の強みを物語っていると言っても過言ではない。

その象徴的な例の一つが「インドネシア人材育成事業」だ。人口240万人を超えるインドネシアの大都市バンドンに200人規模の日本語学校を建設し、人材育成を行っている。

なお、この日本語学校、単に日本語能力を高めるだけの施設ではない。

佐々受け入れ企業様の人材要件に基づいてカリキュラムをカスタマイズし、即戦力人材を育成しています。たとえば介護の仕事をすると決まっているのであれば、入学1カ月目から高齢者との話し方をロープレで鍛えていくのです。全寮制で、生活やマインドセットから6ヶ月間キャンプ式で徹底的に指導できるのも強みです。

インドネシアに設置した日本語学校における介護実習授業の様子(株式会社LivCo提供)

実は外国人材に対しては、受け入れ企業から「時間を守らない」「チームプレーが苦手」など、日本語以外の部分で不満が上がることが多い。しかし、教育制度の整っていない国の方がルールに厳しい国民性の日本人と協働するのが難しいのは仕方のないこと。そのためLivCoでは、日本語の学習だけではないところも重要視しているわけだ。

佐々東南アジアと日本では、教育や文化の前提が全く違います。日本人が思っている以上に複雑な環境で育っているので、日本人の常識は通じない。だからこそ、日本語能力だけでなく、マインドセットから育てていく必要があります。

学校では体育の授業や音楽系のイベントも行い、社会性を養える機会を意図的につくり出すなど、手間とコストをかけて教育投資をしています。

もちろん日本語教育も重要なので、他社の日本語学校の教師が平均N3(日本語能力試験*でのレベル)のところ、弊社の学校ではほとんどの教師をN1レベルに揃え、質の高い教育を行っています。

*……(あくまで目安だが)N1は、ビジネスシーンで不自由せず、敬語も使えるようなレベル。N3は日常会話に困らない程度のレベル

インドネシアでの実習授業の様子(株式会社LivCo提供)

また、ローカルの学校とは違い、日本で紹介事業者としてアフターフォローまで行うLivCoが運営している学校だからこそ、授業料は日本で働き始めてからの後払いも可能となる。これにより、以前なら経済的な理由で来日を諦めていたようなポテンシャルある人材にも機会を提供できる。貧困層にいる「ダイヤの原石」を発掘することで、質の高い人材プールを確保できるのだ。他の現地資本で設置されている学校と違い、日本に拠点があるLivCoだからこそ実現できるかたちだ。

さらにLivCoは、現地の専門学校や高校の教師、さらには村長といった、地域社会におけるキーマンとの関係性も地道に構築し続けることで、集客や採用を加速させている。連絡先を交換するといったレベルではなく、地域に足を運び、盃を共にするといった形で関係性を紡ぎ、独自のマーケティングチャネルとしているのだ。この「泥臭い」アプローチが今、他社には真似できない強みを生んでいる。

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受け入れ企業のパートナーとなり、広く信頼を構築し、定着率・活躍率を向上へ

こうしたLivCoの強みは、外国人材の紹介だけでなく、日本における受け入れ企業側へのきめ細やかなサポートに表れている。「外国人材の定着・活躍がゴール」という方針に基づき、企業側の外国人雇用リテラシー向上を支援する取り組みを行う。

入社後の外国人材に対する高頻度の定期面談などのものだけでなく、入社前に受け入れ部署の上司や人事に外国人材とのコミュニケーション方法を指南する外国人雇用研修、日本語講座の開講など、登録支援機関として法で定められている以上のサービスを提供し、外国人材が「働き続けたい」と思えるような体制を企業内に構築しているのだ。

佐々これまで多くの日本企業は、外国人材に対し、N1やN2の日本語レベルを求めてきました。しかし日本語は世界一難しいと言われる言語です。中でもN1は、新聞の論説や評論の読解ができる、会話や講義における複雑な論理構成を把握するなど、本当にハードルが高い。

そこまで求めてしまうとかなり数が絞られます。この要件がネックになり、優秀な人材が日本で働くことを諦めてしまうことが今までもありました。

多くの読者が納得する話だろう。身の回りに、日本語ネイティブではないビジネスパーソンがどれくらいいるだろうか?FastGrow読者層が務める多くの企業では、そうした人数は非常に少ないというのが実情だろう。

佐々氏は、そんな現状にも少しずつ風穴を開けていこうとしている。

佐々外国人雇用に一定成功している企業は、N4の人でも働ける環境づくりをしています。間に日本語が上手な東南アジア人を挟んだり、業務マニュアルを現地語で作成したりなど、日々のコミュニケーションで日本語をそこまで使わなくて良い状況をつくり出している。

ただ、これらを実践するには、我々のような支援のプロが入らないかぎり限界があると思います。私たちは外国人材の教育を行うとともに、受け入れ企業への研修や面談を通して、受け入れリテラシーを上げようと取り組んでいます。こうした積み重ねが、定着率を高め、離職率を下げ、一人ひとりの活躍の場をつくるために今最も必要なことだと思っています。

このような手厚い支援の結果、受け入れ企業からのアップセル・クロスセルや、リファラル集客の増加にもつながっていく。外国人雇用を検討する企業にとって、LivCoは不可欠なパートナーとしての地位となり始めているのだ。

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想いだけではない、ビジネスセンスの光る経営戦略

佐々途上国の問題を解決しながら、同時に日本のレピュテーションを上げていく。それは長期的に見て、必ず日本のためになります。

このような佐々氏の強い使命感と想いに惹かれた人が集まり事業が推進されていることは間違いない。しかしそれだけでは佐々氏の魅力は伝えきれてはいない。

取材時、佐々氏は国内の有力HR企業や外国人支援企業、SaaSベンチャーなどの動向、ビジネスモデルなどについて次々と口にした。広く市場について理解し、他社研究を通して知見を深めていることの表れである。

また、冒頭で「したたか」とも表現したように、佐々氏が優れたビジネス感覚を持つ経営者であることも、LivCoの現在をかたちづくった大きな要因だ。そのセンスはLivCoのビジネスモデルの洗練度に表れている。

佐々「グローバルHRプラットフォーム事業」でのマッチングと同時に、登録支援機関として外国人材の定着をサポートするサブスクリプションビジネス「外国人向けライフサポート事業」を少しずつ拡大させていっています。

リカーリング型の収入をどんどん大きくしていき、事業の安定性を格段に向上させていきます。たくさんの事業・サービスをまだまだ増やしていこうと思っています。

登録支援料の他にも、佐々氏は多様な収益源の確保に注力している。たとえば、SIMカードの代理販売。外国人材が空港に到着したその場でSIMカードを提供し、使用してもらうことで、1人当たり毎月数百円の収入が発生する仕組みだ。こういった細かなキャッシュポイントの積み重ねが、事業の安定性につながる。その結果として、LivCoは現在までエクイティなしで成長を続けている。もちろん、この後の成長戦略も緻密に練られている。

佐々「グローバルHRプラットフォーム事業」が柱であることは間違いないので、事業効率化のために、垂直展開としてインドネシアの日本語学校の運営を開始して紹介人材の教育の内製化を進めています。それ以外にもITテクノロジーを活用することによりオペレーションフローのDX化、プラットフォーム化を構想しています。ミッションとして「移民版リクルート」という言葉も掲げていますが、プラットフォーム事業に着目すれば「外国人雇用版SmartHR」あるいは「越境版ビズリーチ」とも言えそうですね(笑)。

加えて、「グローバルHRプラットフォーム事業」の利益率やLTV向上のため、事業の多角化も検討しています。不動産、結婚、教育、金融など、HRとの高い親和性があり、外国人の生活に関わるさまざまな領域に展開していく水平展開を予定しています。日本は少子化のスピードも世界随一であり、課題先進国。アジアの中では実は移民受入先進国でもある。より効率的な移民受入モデルをLivCoが業界に先んじて創ることができれば、これから深刻な少子化を迎える中国やタイなどのアジア各国にも輸出していくこともできる。日本の重要な産業にもなり得るのがこの「外国人材業界」なんです。

HR以外の領域に踏み込む意欲は大いにあるものの、まずは市場規模が大きい順にサービスを提供していく戦略を立て、着実に実行していこうという算段だ。「外国人雇用」という、想いの強い社会起業にも見えがちな領域で、抜け目のない戦略を持って進めている起業家・経営者が佐々氏である。

そして、このような多事業展開を加速させるべく、2024年8月に社名を変更。「シェアハウスから人材紹介を進めてきた」という背景で名づけられたASEAN HOUSE改め、ビジョンの『外国人も暮らしやすい社会』をグローバル言語で表現した“Co-Living”を基にした「LivCo」となったのだ。

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既存のレッドオーシャンで戦ってきた人にこそチャンスがある環境

「グローバルHRプラットフォーム事業」を起点として、不動産、結婚、教育、金融など、外国人材の生活全般をサポートする事業への拡大を視野に入れる同社。一方で、旧社名に含まれるASEAN、つまり東南アジア人材の採用や育成に関するビジネスでもまだまだ成長の余地は広大にあり、かつ、将来的には南アジア、中東、アフリカなど、同様の課題を抱える地域への展開も当然のこととして考えている。

そんな事業の可能性だけでなく、働く環境としても魅力があると強調された。その一つが、大きな裁量権だ。

佐々新卒2年目のメンバーに、インドネシアの事業立ち上げを1人で任せたことがあります。こうした機会をこれからどんどん増やしていきたい。なぜなら、新たなチャレンジの機会とともに人は成長すると思いますし、やはり「よそもの・若者・馬鹿者」にしか世界は変えられないと思うのです。

また佐々氏によれば、外国人業界全体のビジネス水準はまだまだ未成熟な段階にある。豊富なビジネス経験を持つ人材が入ることにより、多大な成果を挙げられる可能性が他の業界に比べて高いのが面白みの一つだ。

佐々外国人業界はまだまだ発展途上です。IT業界などレッドオーシャンな領域で競合と切磋琢磨してきたビジネスパーソンの方が持っている知見やノウハウを少しスライドさせて、この急成長でブルーオーシャンな業界で活かして頂き、一緒にマーケットリーダーとして頑張っていきたい。わざわざ敵の多い業界で頭を悩ませているなら、必要とされる仲間、お客さんがいる場所で頑張った方が楽しいと思います!(笑)

そしてもう一つ、ダイバーシティという観点でも非常に魅力的なスタートアップだ。LivCoのオフィスは、新宿にいながらにしてグローバルを体感できる環境となっている。4カ国の国籍で構成され、40%が外国籍。東南アジアの言語が飛び交う現場で、副業、業務委託、インターン、時短勤務など、多様な働き方が認められる。待遇面でも、多くの社員が年収アップを実現している。平均で年間90万円、中には200万円ほど上がった社員もいるとのこと。

佐々英語や欧米だけがグローバルではありませんし、必ずしも日本から飛び出すだけがグローバルというわけではないと思います。日本社会に大きな課題が山積していますから、今こそ“グローカル”の意識が大切で、ダイバーシティに対する柔軟性も求められます。

実際に、我々の紹介から外国人労働者の出稼ぎが始まり、彼らの仕送り等によってすでに100戸の家が東南アジアに建設されています。それを現地の方や外国人材が喜んで報告してくれる様子を見るときの嬉しさはひとしおです。

文化や言語の異なる人々をマッチングし、定着させることは、日本人の斡旋よりもはるかに難易度が高い。しかしだからこそ、まだまだブルーオーシャンであり、可能性は無限大だ。巨大HR産業で残された唯一の市場が、外国人雇用支援ビジネスであるとも繰り返した佐々氏は最後にこう締めくくる。

佐々政治から文化、宗教、言語まで、さまざまな視点が身につき、マクロ視点とミクロ視点を行き来しながらスケールの大きな経験ができます。IT企業やSaaSなどの既存のレッドオーシャンで、もしくすぶっている人がいるなら、ぜひ飛び込んできてほしいです。社会を大きく変えられる可能性と、自己成長の両取りができる環境がここにはありますから。

こちらの記事は2024年08月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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