ラクスル福島、SmartHR倉橋に続け!
元“戦コン”COOが導く、次なる急成長スタートアップ5選──2022夏まとめ
スタートアップのCOOといえば、戦略コンサルティングファーム出身者が多い。そんなイメージを持つ読者が一定数いるだろう。例えばラクスル取締役COO福島広造氏、あるいはSmartHR取締役COO倉橋隆文氏といった人物の存在から来るものだろうか。
“スタートアップ”の定義をそろえることがそもそも困難なため、抜け漏れなく数え上げることはできていない。だが、FastGrowでこれまでに取材やイベント登壇の関係を持ったCOO約60名のうち、11名がコンサルティングファームでの勤務経験を持っていた。
今回は戦略コンサルティングファームのバックグラウンドを持つCOOたちから、今後より大きな企業成長の牽引で話題を呼びそうな人物を、独断と偏見で7名選出し、まとめた。キャリアの参考に、CxO採用の参考に、事業創造の参考に、楽しんで読んでみてほしい。
ファンファーレ
A.T.カーニー出身、王玲氏
A.T.カーニー出身のスタートアップパーソンといえばおそらく、ラクスル代表取締役社長CEO松本恭攝氏を挙げる読者が圧倒的に多いだろう。そんな中、ファンファーレのCOO王玲(おう・れい)氏が、同じくらいに存在感を高めていくかもしれない。
日本生まれ日本育ちの王氏は、ファンファーレ創業者で代表取締役の近藤志人と、リクルートで一緒に働いた経験を持つ。PMFが見えるころまでは副業として支援し、プレシリーズAラウンドの資金調達を進めていた2022年にジョインを決めた。
近藤さん、私よりも私の紹介が上手な気がする...
— Rei Oh*Fanfare COO (@rei_fanfare) July 20, 2022
(といわけで丸パクリしてプロフィール更新しました) https://t.co/fAdDX3Vwaa
A.T.カーニーではインフラから消費財まで、非常に幅広い業界・業態の企業に対して支援を行ってきた。そして事業会社へと移り、リクルートや大手アパレル企業などで新規事業開発の成果を残す。さまざまな経営・事業の経験をひっさげ、ファンファーレにジョインしたかたちだ。
Coral CapitalのJames Riney氏は「SmartHRでいうCOOの倉橋隆文さんが入社して、成長スピードが飛躍的に上がったようなインパクト。王さんはプレッシャーを感じるかもしれませんが(笑)」と、大きな期待を寄せている(ファンファーレ公式noteの記事から引用)。
他にも前田ヒロ氏やWiLの伊佐山元氏、Crewwの伊地知天氏ら、スタートアップシーンを代表するキャピタリストや事業家の期待を一身に集める同社(コーポレートサイトに掲載されるコメントは圧巻)。王氏が、急成長スタートアップCOOの新たなロールモデルとしてどのような存在になっていくのか、乞うご期待。
Leaner Technologies
A.T.カーニー出身、田中英地氏
A.T.カーニー出身者をもう一人、紹介したい。Leaner Technologies(リーナー・テクノロジーズ)の取締役COO、田中氏だ。同社は、創業者で代表取締役CEOの大平裕介氏に加え、前述のラクスル松本氏がアドバイザーを務める。さらに、創業メンバー兼アドバイザーとして、これまたA.T.カーニー出身の事業家、菊川航希氏もいる。
まさに、戦コン出身者によって構成されたスタートアップと言える。誤解が起きないために書き添えておくと、ほかのメンバーには事業会社出身者も多くいるわけで、組織のバランスが悪いということはないようだ。
さて、田中氏の話に戻ろう。一橋大卒業後、新卒でA.T.カーニーの門を叩く。早くから成果を残し、マネージャーに昇進すると、あらゆる業種・業態のクライアント企業に対して、新規事業やビジネスデューデリジェンス、中期経営計画、調達改革など、戦略にかかわるあらゆる経験を積んだと振り返る。
公開してみました~! / 戦略コンサルから3人目スタートアップ(Leaner)に参画したウラ話 https://t.co/3CbYtMcDxl #Meety
— 田中 英地 / Leaner(リーナー) COO (@Eichi_Leaner) March 16, 2022
インタビュー記事やPodcastといったコンテンツがこちらのページに集まっているので、興味を持ったら覗いてみるのがいいだろう。
Leaner Technologiesは2022年9月にシリーズAラウンドの資金調達を行い、累計調達額が10億円を突破したところ。田中氏も取締役COOとして、事業の連続成長と非連続成長を両立させるべく力を発揮しようと、肩を温めているところだろう。どのようにその存在感を発揮していくのか、楽しみでならない。
hacomono
ローランド・ベルガー出身、平田英己氏
こちらも外資系戦略コンサルティングファームの著名企業、ローランド・ベルガーでの経験を基に、存在感を示そうとしている人物だ。ウェルネス産業の大変革を目指す、hacomonoの取締役COO、平田英己氏。しかも新卒はNHK、そして直近は楽天で執行役員を務めていたという、ユニークな経歴の持ち主だ。
hacomonoといえば、フィットネスクラブ向けのバーティカルSaaSを開発するスタートアップだというイメージが強いかもしれない。もちろん、間違ってはいないのだが、その刺さり具合がすでにものすごい。業界大手総合フィットネスのトップ10社のうち9社が顧客となっているのだ。
PMFどころではなく、産業変革を確実に起こしていくための基盤が整っている。平田氏が魅力を感じたのも、まさにこの点である。
ジョインの決め手や、これから取り組みたいことは、こちらの記事にあるため参照されたい。この記事では、ローランド・ベルガー時代の仕事についてもう少し深掘りしよう。
どちらかといえば企業再生の案件が多かったという平田氏。担当した業界・業態は消費財が中心で、戦略の策定から実行支援まで進めるプロジェクトに従事していた。当時について、以下のように振り返る。
中期経営計画策定や赤字企業の経営を立て直す企業再生プロジェクトなどを担当し、ひたすら戦略策定のためのデータ分析やディスカッションに明け暮れる日々でした。とても大変でしたが、わずか半年前につくった資料を見て「何てレベルの低い資料をつくっていたんだ」と反省するぐらい、自分が成長していることを実感できる日々でした。
現在hacomonoでは、ビジネスサイドの統括をミッションとしつつ、社内コンサルのような立ち回りで戦略策定や業務改革の支援を行うこともあるという。
hacomonoが進める前代未聞の産業変革を、いかにスピーディーに実現させていくのか。平田氏の手腕によって、その進捗が大きく変化するフェーズであることは間違いないだろう。
クレジットエンジン
ベイン・アンド・カンパニー出身、新色顕一郎氏
こちらも外資系戦略コンサルティングファームとして著名なベイン・アンド・カンパニー出身者だ。クレジットエンジンで取締役COOを務める新色顕一郎氏を紹介する。しかもMBA留学も経験。経営者人材と言って過言ではない印象を、あなたも受けるだろう。
ベイン・アンド・カンパニーでは、製造業のクライアント企業への対応を中心として、戦略プロジェクトやNPO向けプロボノなどを経験してきた。
ここまでに紹介した他のCOOたちとやや異なるのが、ファイナンスの専門知識と経験を持つ点だろう。事業開発だけでなく、資金調達といったファイナンス面(つまりCFO的な担当業務)まで、クレジットエンジンでは担ってきた。
まさに、「経験をひっさげ、経営現場で躍動する」といったイメージだ。ところが当人はあくまで謙虚にこう語っている。
途中から飛び込むという観点でのコメントになりますが、踏み入れると自分の想像以上に今までの経験が役に立つことが多いと思います。正直な話、私自身はコンサル時代は劣等生だった認識ですが、外に出ると予想以上にスキルや考え方が役に立ったりします。あとは興味があったら勇気を出して踏み込むことです。今はこれだけ人材の流動性が高まっているので「一度失敗したら人生終わり」ではなく、それを糧にして次に行けばいい話だと思います。
クレジットエンジンは、国内での新規事業展開に加え、海外展開も積極的に進めるフェーズだ。となれば、ファイナンスに明るく、事業開発も統括する新色氏の活躍がより一層重要となるはず。これから改めて、その実力を見せてくれるのかもしれない。
ACROVE
ベイン出身、守屋智紀氏
AIスタートアップとして注目を集め続けるエクサウィザーズにおいて経営企画部長を勤めていた守屋智紀氏。この2022年7月、E-commers Platformerとしての地位を確立し始めたスタートアップ・ACROVEへジョインした。独自のBIツールときめ細やかなコンサルティングによってECブランドの売上拡大を支援するほか、足元ではECブランドのロールアップによる急成長をめざす骨太なEC事業を展開する企業だ。
代表取締役CEOの荒井俊亮氏をはじめとしたメンバーは非常に若く、約40名の組織で平均年齢は24.2歳。そんな中に飛び込んだ経験豊富な守屋氏は37歳。同社では初の、30歳以上のメンバーだ。
さて、戦略コンサルティングの経験はと言うと、ベイン・アンド・カンパニーで培われた。売上高が半減してしまったクライアント企業で抜本的な戦略策定と組織変革を進め、V字回復をなしとげるというダイナミックな経営支援などを担当。このプロジェクトが特に印象的だったと振り返る。さまざまな壁を乗り越え、4年間で3回の昇格を果たし、シニアマネージャーにまでポジションを高めた(エクサウィザーズ在籍時のインタビューより)。
そんな経歴をひっさげてジョインしたエクサウィザーズでも、全社戦略や資金調達、2021年の時価総額約1,000億円での上場などを牽引。
現在、ACROVEでの肩書は社長室長だが、担う仕事はまさにCOOだ。人事・採用の統括に加え、事業戦略策定とその実行を、かなり年下のツートップ、20代半ばのCEO荒井氏・CFO吉田氏と共に推し進める。この2022年に実施した約5億円の資金調達で、事業をどのようにドライブさせていくのか。守屋氏のチャレンジが、楽しみで仕方がない。
Meetyでのカジュアル面談も実施しているので、気になる読者は是非コンタクトを取られたし。
こちらの記事は2022年09月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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