イノベーションは因数分解できる?──オープンイノベーションをプラットフォームで実現するeiiconの「Innovation as a Service」構想。果たしてそのポテンシャルは本物か
Sponsored内閣府の施策や特許庁の契約ガイドライン発表など、国としても積極的に推進している「オープンイノベーション」。この取り組みの「民主化」を目指し、誰もがオープンイノベーションを実現できるよう、SaaS型のプラットフォームを提供しているスタートアップが存在する。その名も、eiiconだ。eiiconが提供するプラットフォーム『AUBA』(アウバ)は、企業あたり年平均1つの新規事業が生み出せる、「Innovation as a Service」として、既に1,700件以上の新規事業の芽を育んでいる。具体的には、『AUBA』を活用することで、企業の事業目的に適ったパートナー企業で出会うことができ、そこから効率的に新規事業を創出できるようになるというものだ。
これまでのeiiconの記事では、オープンイノベーション市場のポテンシャルや、同社のエンタープライズ事業による事業創出の現場実例などを紹介した。そしてシリーズ3作目である本記事では、エンタープライズ事業と対をなすプラットフォーム事業のプロダクト『AUBA』にフォーカスを当てる。
「オープンイノベーションを型化することなどできるのか?」──。
この記事を通じて、その疑問が解消されることを願っている。
- TEXT BY MAAYA OCHIAI
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
「新規事業化への支援」を重ねてきたからこそできる、オープンイノベーション・プラットフォームの提供
なぜ、プラットフォームを通じてオープンイノベーションを実現することができるのか?この疑問に対し、eiicon取締役副社長の富田氏は次のように述べる。
富田一言で言えば、オープンイノベーションの創出に必要な条件を理解し尽くしているからです。
2016年にeiiconを立ち上げて以来、我々は多数の企業様のオープンイノベーション創出をご支援する中で、「事業化に至るまでにどんなステップを踏む必要があるのか」「それぞれのステップで必要なことは何か」を必死で体得してきました。
そうした地道な経験から得た知見やノウハウを、プロダクトに落とし込んだのが『AUBA』なんです。なので、『AUBA』は決して「企業同士のマッチングの場」ではなく、あくまで「事業化までのステップが仕組み化された場」であると考えています。
2016年、パーソルイノベーションの新規事業としてスタートした当プラットフォームは、今や累計法人登録社数が29,000社に達し、オープンイノベーションの共創実績は1,700社と、手前味噌ながら日本最大級の実績を生み出すことができていると思います。
一般的に、新たに事業を生み出す0→1のフェーズでは、不確定要素が多い。特に、「イノベーション」と聞くと、何かアートのようなセンスが求められると感じる人も少なくない。
しかし、eiiconはこうした新規事業の創出をアートだとは捉えていない。むしろ、ロジックで説明可能なものだと──。
この主張について、富田氏は過去のインタビューで『AUBA』を婚活アプリに例えているが、一人目の出会いがそのまま結婚につながる確率は極めて低いことは誰でもわかるだろう。何度も出会いを繰り返す中で、ようやくゴールを迎えることができるというものだ。
そしてこれはオープンイノベーションにおいても同じことが言える。最初に出会ったパートナー企業と直ちに新規事業が芽吹くことは奇跡に近い。ゆえに、多くのパートナー企業と出会い、自社が実現したい未来をブラッシュアップしていきながら、新規事業の創出というゴールに向かっていく。この流れを念頭に置いてオープンイノベーションに取り組むことができれば、どんな企業でもいずれはゴールにたどりつくことができる。
ことオープンイノベーションにおいては、
- ゴールの設定:何を目指すかを定める
- アクション実施:ゴールに向け、複数アクションを実施
- 事業化に向けた進捗:事業化に向けてネクストアクションをきる
この構造さえ理解できれば、新規事業創出の過程で企業が陥りがちな「最初のパートナーとの出会いこそが運命だ」という幻想や、「大手企業と手を組めば何か画期的なものが生まれるはずだ」という曖昧な期待から脱却でき、確実にオープンイノベーションを実現できるようになる。
一方で、婚活アプリと『AUBA』の間には、目的や考え方の面で明確な違いが存在する。ここでCTOの池田氏が口を開いた。
池田『AUBA』は、単に企業間のマッチングを目的としているわけではありません。一般的な婚活アプリでは、マッチングが成功した時点で目標が達成され、それ以降の関係構築は利用者に任されていますよね。しかし、我々の場合は違います。
「マッチングはあくまでスタートライン」と捉え、その先の「事業化に至るプロセスまで伴走する」ことを重視しています。つまり、単なるマッチングを超えたサポートを提供するという意味において、我々のプラットフォームは大きく異なるのです。
マッチングから事業化の過程にまで深く入り込むeiiconのプラットフォームは、見方によっては「婚活アプリ(出会いの場の提供)」と「結婚相談所(成婚までの伴走支援)」が融合したものに見えるかもしれない。しかし、この比喩に対しては富田氏はきっぱりと否定の意を示した。
富田伴走するとは言っても、我々の場合は協力、属人性を排除していっています。つまり、「eiiconのコンサルタントによる支援がないとオープンイノベーションを実現できない」という状態は望んでおらず、あくまで「eiiconのプラットフォームを活用して、企業が自らの力で新規事業を創出する」という状態を目指しています。
なぜかと言うと、オープンイノベーションを実現するのは結局のところ企業自身であり、我々ではないからです。もちろん、企業によってはeiiconのコンサルタントがプロジェクトに入って伴走支援するケースもありますが、基本的には「企業自身が自分たちの力で共創先を見つけ、オープンイノベーションを実現していける」ことを目指しています。
あくまでも「事業化」がゴール。マッチングのその先を実現するために凝らされる工夫
eiiconはなぜ、「出会いの場の提供」ではなく「事業化までの支援」を重視するのか。その理由は、同社の過去の経験に根ざしている。
2016年の立ち上げ当初は今と異なり、「オープンイノベーションに情熱を持つ人々が互いに繋がることで、自ずと新たな事業が芽吹くであろう」という仮説の下、マッチングを主としたプラットフォームの提供を行っていた。(当時のサービス名は『AUBA』ではなく『eiicon』)
しかしそこから数年が経過するうちに、「このアプローチでは、誰もがオープンイノベーションによって新規事業を創出するのは難度が高そうだ」という結論に至る。
富田『AUBA』の初期形態であるマッチング中心のプラットフォームによって、企業間の繋がりや交流は活発化しました。実際に、多くの参加者が意気投合し、「このプラットフォームに参加して良かった」というお声も多数頂きました。しかし、これらの繋がりがもたらした成果は、残念ながら「売上を立てるような事業化」と言うには程遠いものもあったんです。
この現実を受け、「これではeiiconが掲げるミッションは実現できない」と深く反省し、戦略の大転換を決断しました。それは、単に企業同士を「繋げる」だけでなく、実際に「新しい事業を創出する」ことを明確な目的としたプラットフォームづくりを行う、というものです。
ここから、新たなる挑戦がeiiconによって始まった。
「どんな要素が組み合わされば事業が生まれるのか」「事業化に適したタイミングとはいつなのか」「そのために必要なリソースとは何か」──。これらの問いの答えを探すべく、eiiconはクライアントと共にオープンイノベーション実現に向けたプロセスを歩み、そこで得られた知見やノウハウをデータとして蓄積していく。
そして、その全てのデータがCTOである池田氏のもとに届けられ、『AUBA』に反映されていく。今日のプラットフォーム『AUBA』とは、こうした経緯を辿って進化を遂げてきたのだ。
ここで、同社が本気で、「出会う」だけでなく、「共創先との事業化」を目的としていることを示す一例として、『AUBA』のある一面を紹介しよう。
富田『AUBA』に実装されている機能には、オープンイノベーションの共創先企業を探す機能より先に、「自社理解」するための機能が実装されています。これは、先ほど申し上げた構造の”(1)ゴール設定”をするための機能となります。
オープンイノベーションを実践するその前に、”会社として何を目指していくのか”のところから始めなければ、新規事業は生み出せません。ただ、「会社の戦略を書いてください」といってもそう簡単にかけるものではありません。だからこそ、我々はこれを”Q&A形式”でユーザーである顧客企業に問いを投げかけることによって、より簡単に、明確に自社の目指すべきゴールを明確にできる仕組みを構築しています。
ここではゴール設定のシーンに触れたが、他にも、オープンイノベーションを行うための機能は網羅的に実装されているので、以降も触れていきたい。
「実現したい未来は何か?」オープンイノベーション実現に必要なたった一つの問い
『eiiconが、単なる「出会いの場の創造」ではなく、「オープンイノベーションの実現、すなわち新規事業化」に向けたプラットフォーム構想を描いていることは分かった。では、そこで生み出されている実例には、どれだけ革新的なものがあるんだ?』──。読者の疑問を代弁するとこのような具合ではなかろうか。
ここでは、『AUBA』を通じたオープンイノベーションの創出事例について、富田氏に問う。
そこで語られたのは、宮崎県における近海カツオ漁業で知られる浅野水産が持つ、地域の伝統産業である漁業の知見と、東京・渋谷に拠点を置くデータサイエンスに特化したベンチャービルダーであるFACTORIUMとの間で展開された、共創プロジェクトである。
地方の第一次産業と、テックベンチャーのコラボ。お互いに余程の強い目的意識がない限り、出会い、繋がることはなさそうに見える。これはまさに、『AUBA』のプラットフォームが、異なる背景を持つ企業同士の共創を促進し、予想外の連携から革新的な事業展開を生み出す機会を提供していることを示している。
富田ご存知とは思いますが、水産業は高齢化と人手不足によって衰退している産業の一つです。ある時、その状況をどうにか変えられないかと、浅野水産様からeiiconに対してご相談を頂きました。そこで、我々のプラットフォーム『AUBA』を通じて、水産業の実情や課題、望む未来について発信していただいたところ、その想いに応える形でFACTORIUM様が反応を示したんです。
富田 両社の間で行われた話し合いの結果、特に注目したのは、ベテラン漁師が長年にわたって培ってきた「漁師の勘」と呼ばれる実務上の意思決定プロセスを解析し、それをAI化することでした。
この取り組みにより、若手の漁師でもベテランと同様の漁獲量を確保できるようになるだけでなく、従来よりも人手が少ない状況でも十分な漁獲量を維持できる可能性が見込まれ、現在急ピッチで事業化に向けたプロダクト開発が進められています。
この共創が実現した要因として、浅野水産が自らの実現したい目標をプラットフォーム上で明確に言語化し、発信していた点が挙げられる。
浅野水産は決してAIの専門知識を持っていたわけではないが、同社の「実現したい未来」が明確に表現されていたため、AI技術に長けたFACTORIUMがそれに呼応することができた。
「何を目指しているのか、何を達成したいのかをはっきりとさせること。それができれば、必要な解決策や協力者は集まってくる」「世の中の多くの企業がイノベーション実現に苦心する理由は、そもそもの『目的』を曖昧にしているからだ」との富田氏の弁が、非常に説得力を帯びて伝わってくるだろう。
eiicon秘伝。
オープンイノベーション創出までの7つのステップ
こうしたオープンイノベーションを「仕組み」として再現性高く生み出していくことが、eiiconが『AUBA』を通じて実現する「Innovation as a Service」構想だ。
ここではいよいよ、『AUBA』の中に実装されている事業化までのステップを惜しみなく紹介したいと思う。
0.コースの選択とコンセプトベースの作成
1.アプローチ:企業が他の登録企業を検索し、可能性のあるマッチングパートナーに接触する
2.マッチアップ:インタレストが合致した企業同士がメッセージを交換する
3.面談:実際の対話を通じて、双方の目的や可能性をさらに掘り下げる
4.継続検討:具体的な協力の形を模索しながら商談を進める
5.基本合意とNDA締結:双方の間で基本的な合意に達し、機密保持契約(NDA)を結ぶ
6.共創(POC)開始:実際のプロジェクトが始動し、概念実証(Proof of Concept, POC)が行われる
7.事業化::POCが成功し、新たな事業としての道筋が確立する
『AUBA』では、これらのプロセスを通じて日々、オープンイノベーションが推進されている。仮に、自社の強みや目指す目標が明確でない状態で導入に踏み出す企業に対しては、eiiconが問い合わせ形式でのガイダンスを提供し、導入企業の目的意識を明確化するフォローも行う。eiiconのミッション実現から考えると当然だが、単に導入先が増えて売上が上がれば良いという話では毛頭ない。
こうした事業化までのステップや付随するフォローはすべて、eiiconが長年にわたって培ってきた経験からつくり上げた「型」「仕組み」である。そしてそれが『AUBA』というプラットフォームに組み込まれ、多くの企業のオープンイノベーション創出に結びついていくのだ。
富田私たちは、誰もが当たり前のようにオープンイノベーションを実現できる時代を創り出したいと考えています。
繰り返しますが、今の社会における新規事業開発やイノベーションといったものは、まだまだファジーであり、個々人の感覚に頼って推進されているケースが多いように感じます。しかし、私たちは、このイノベーション領域においても人に依存することなく、仕組みや型を適用できると信じており、また今の日本の主たる社会課題を踏まえると、絶対に実現していく必要があると考えています。
もちろん、マッチングを主としたプラットフォームでもある程度事業を拡大することは可能です。しかし、「Innovation as a Service」として、誰もが意図的に事業を創出できる社会を創るためには、それだけでは不十分。だからこそ、我々はプラットフォームにおいて「事業化」にまでこだわるんです。
「何となく」で成功できるほど、オープンイノベーションは甘くない
『AUBA』には、事業化までのステップが細かく組み込まれており、それに沿って進めていくことで、どんな企業でもオープンイノベーションを実現できるようになっている。
そうはいっても、『AUBA』を導入する企業のすべてがオープンイノベーションの創出に成功しているとは限らない。中にはオープンイノベーションの創出が進んでいる企業とそうでない企業があるはずでは?
そんな疑問が残るであろう読者の意を汲んで、スムーズにオープンイノベーションを実現できる企業にある共通点とは何かを訊いてみた。
富田最も重要なことは「企業としての意思」です。
抽象的に聞こえるかもしれませんが、事業化に向けた組織体制の整備や予算の確保など、企業としてオープンイノベーションにどれだけ真剣に取り組むかが、結果に大きく反映されることは間違いありません。
実際、オープンイノベーションに向けて企業のリソースを割く意思決定がしっかりと行われている会社は、特にステップ6(共創「POC」開始:実際のプロジェクトが始動し、概念実証「Proof of Concept, POC」が行われる)や、ステップ7(事業化:POCが成功し、新たな事業としての道筋が確立する))への移行が迅速です。
PoCや事業化への意思決定は、企業内におけるハイレイヤーの方が実施するケースが多いので、始めから企業としての強い意思があると、オープンイノベーションの創出に向けたプロセスがスムーズに進む傾向にありますね。
そしてもう一つ、富田氏が述べる成功要因は「相手目線」だ。オープンイノベーションが「共創」の精神に基づくことを考えれば、これは当然のことかもしれないが、意外と抜け漏れるケースも少なくない。
というのも、人間とはどうしても相手のことより自分のことを主体に考えてしまう生き物。たとえば、高度な専門技術を持つ企業がパートナー企業へアプローチする際、有り余る情熱ゆえ、受け取り側の企業には理解できない専門的な長文メッセージを送ってしまい、機会損失となってしまうケースがある。
富田それこそ婚活アプリじゃないですが、見知らぬ相手からいきなり専門的で長文のメッセージが送られてきたら、「なんだか怖いな」と感じてしまいますよね…。もちろん、「いざ実際に話してみると意気投合した」というケースもありますが、大抵の場合は「一緒に事業を進めていくにはコミュニケーションが大変そうだ…」と感じてしまうのではないでしょうか。
せっかく革新的なイノベーションが生まれる可能性があるのに、そうしたコミュニケーションのすれ違いで機会を失ってしまうのは勿体ない。『AUBA』においては、こうした事態を防ぐ意味も込めて、「求社票」のようなフォーマットの用意や、そこに記載すべき情報のサンプルに至るまでフォロー施策を徹底しているんです。
きめ細かいサービス設計で、一社でも多くの企業がオープンイノベーションを実現できるようなプラットフォームを構築するeiicon。まさに「Innovation as a Service」を掲げるに相応しい取り組みではないだろうか。
オープンイノベーションの民主化に向け、IPOやグローバル展開も視野に
オープンイノベーションの浸透・民主化に向けて、「Innovation as a Service」としてのプラットフォーム運営を進めていくeiicon。既に生まれているオープンイノベーションの実例や、プラットフォームに施されるユニークネスを見るに、確かに日本企業にオープンイノベーションの文化をもたらしていることはうなづける。
しかし民主化と言うには、世の企業を見渡した際に、あの企業もこの企業もいずれもがオープンイノベーションを実現できていなければならない。しかし、今はまだその状態とは言えないはず。
そう、つまりeiiconとしてはこの先いつの時点でオープンイノベーションの民主化が達成されると踏んでいるのだろうか。そして、そこに向けてどんな取り組みが必要となってくるのだろうか。本記事のクライマックスでは、eiicon、そして『AUBA』が見据える未来について話をうかがっていこう。
富田eiiconのビジョン達成に向けて、現在の進捗は3割くらいの感覚です。キャズムと似ていて、プラットフォーム展開の初期フェーズにおいては殆どの企業が事業検討にまでは進まず、そこから2〜3割の企業が事業検討に進むようになるまで、多くの時間を要したイメージです。しかし、現在はキャズムを超えており、ここから更に加速していくと思っています。
というのも、イノベーションに積極的な大企業とスタートアップはもちろんのこと、相対的にイノベーションへの意識が高くない、かつ日本で最も数の多い中小企業までもが徐々にイノベーションの創出に向けて動き出しているからです。事実、ここ1〜2年でeiiconが商工会議所と共催するオープンイノベーション・セミナーにおいても、熱量のある中小企業の参加者が増えてきているんです。
「このままではなんとなくまずい気がする」といったあいまいな危機意識から、「動かなければ」と思って実行する人が体感としても増えてきている。こうした企業たちの熱量を一つとして漏らさずに形にしていくには、まさしく「Innovation as a Service」としてのプラットフォームが必要になってくるでしょう。
富田氏の見立てでは、3年後には日本の大多数の企業に、5年後には国内のすべての企業にオープンイノベーションの文化がインストールされていくとのこと。当然ながら、その拡大にあわせてeiicon自体も進化する必要があり、IPOも視野に入れた上で、引き続き『AUBA』の発展に力をいれる。
富田「グローバル向けのサービスを展開したい」という目的意識ではありませんが、オープンイノベーションを国内だけにとどめておくことは勿体ないと感じています。例えばですが、発展途上国のアセットも使えるようになると、オープンイノベーションの可能性もより一層広がっていくと思うので、国境を越えたプラットフォームづくりも模索していくつもりです。
池田そうですね、経営方針として明確に定められたわけではありませんが、グローバルを見越した開発ももちろん視野に入れています。『AUBA』では既に海外のリージョン*も使っていて、プラットフォーム・プロダクトとしてスケールできる環境は構築してるので、事業のフェーズにおいて必要な開発を粛々と行っていくのみですね。直近でUI/UXの大幅なアップデートも控えていますし、これからが本領発揮という具合ですよね。
「ゼロから市場を生み出す気概」。
これさえあれば好きにせよ
プラットフォームとしての大幅なアップデートや、先々はIPOやグローバル展開も見据えるeiicon。当然ながら、そこには優秀な人材の活躍が求められてくる。もし、この記事を読んでeiiconのビジョンや「Innovation as a Service」構想に共感した読者は、ぜひ次の挑戦の機会としてeiiconも選択肢に入れてみることをオススメしたい。
では最後に、そんなeiiconというスタートアップで挑戦する醍醐味や魅力について、富田氏や池田氏の観点からうかがって幕を閉じよう。
池田eiiconの良さですか。そうですね、とにかく本当に自由なところです。プロダクトづくりにおいて「どう創るか・どのようにステップを踏むか」などに関しては、ほぼ開発側の意思に委ねてくれていますよね。
今の自分が持っていない技術の活用にチャレンジしたいのであれば、すんなりと了承してくれる。ただし、実際につくりあげたプロダクトに対しては、適切にフィードバックしてくれる。「良いものは良い、悪いものは悪い」という具合にですね。
また、既にeiiconで活躍しているエンジニアたちは、私がマイペースにAPIをつくっているのがとんでもなく遅いと感じるくらい、開発スピードがあり優秀なメンバーが揃っています。その背景には、やはり自主性を重んじてくれる自由な環境があるからでしょうね。みなさん、水を得た魚のようにプロダクトづくりに励んでいますよ。
こうした環境に興味をもった方は、ぜひ一緒に良いプラットフォームをつくっていきましょう。
富田池田さんのメッセージに重ねると、私は「プロフェッショナルな人たちが集まっているからこそ、自由であれる」のだと思います。ここで言うプロフェッショナルとは、「説くべき課題を自ら設定し、主体的に動ける人」を指します。
そこがeiiconの強みですし、共に事業を進めるメンバー同士、刺激になっている点だと思います。なので、反対に言われたことしかできないタイプの方だとストレスを感じる環境かもしれません。
先ほども触れたように、これからのeiiconにはIPOや海外展開の話もあり、挑戦する機会としては申し分ないと思います。事業としての勝ち筋も見えていますし、これまでの地道な経験から、ビジョンを達成する自信も十分にあります。
ただし、それを現実のものとするのはeiiconの一人ひとりの活躍次第。決して今のまま連続成長していけば達成できる目標だとも思っていません。ですので、「自らも一緒にゼロイチの市場をつくっていくんだ」という気概がある人にこそジョインしてもらいたいですね。
日本企業にオープンイノベーションを浸透させ、果ては世界へ──。
日本の生産年齢人口減少という社会課題に対し、オープンイノベーションという切り口で解決に挑むeiicon。その活動は2016年にスタートし、7年目を迎える今、いよいよ大きく飛躍しようとしている。
「イノベーションに再現性を持たせる?そんなこと無理に決まっている」。eiicon立ち上げ当初は、おそらくこんな指摘が数多くあったことだろう。しかしどうだろう、今となっては国もオープンイノベーションを推し進めており、eiiconのプラットフォームには数千社、数万社の企業がオープンイノベーション実現を求めて集結している。
オープンイノベーションの民主化という、「Innovation as a Service」構想。これが理想で終わるのか、現実のものとなるのかは、読者の手腕によって変えられるのかもしれない。
こちらの記事は2023年10月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
落合 真彩
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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