連載マッキンゼーのDNAを受け継ぐ、9名の起業家たち

「ベストな人材を惹きつけ、育てる」
ザ・ファームの血筋を引く“マッキンゼーマフィア”(前編)

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アメリカのスタートアップシーンでは、Elon Musk(イーロン・マスク)、Peter Thiel(ピーター・ティール)、Reid Hoffman(リード・ホフマン)など、 PayPal出身の大物起業家が、“Paypalマフィア”と呼ばれ注目されている。FastGrowでも過去に日本の大企業を題材に、リクルート博報堂出身の起業家を紹介してきた。

だが、まだまだ起業家人材を輩出する企業として注目すべき会社がある。第5弾として紹介するのは、ボストンコンサルティンググループ(BCG)と並んで「2大コンサル」と呼ばれ、人材輩出企業としても名高いマッキンゼーアンドカンパニー(以下、マッキンゼー)だ。

“ザ・ファーム”の異名を持ち、これまで幾多の優秀な起業家たちを送り出してきたマッキンゼーでは、「クライアント・インタレスト・ファースト(顧客利益第一主義)」に加え、「ベストな人材を惹きつけ、育て、引き止めること」というミッションが、全員に課せられるという。

今回は、1926年の本社設立から脈々と続くマッキンゼーのDNAを受け継ぎ、多様な業界で躍動する起業家たちをピックアップ。前編では、DeNA、エムスリー、プロノバ、ロコンド、オイシックスを生み出した5名を取り上げていく。

  • TEXT BY HUSTLE KURIMURA
  • EDIT BY MONTARO HANZO
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南場智子(株式会社ディー・エヌ・エー創業者・代表取締役会長)

株式会社ディー・エヌ・エー

1962年生まれ。津田塾大学学芸学部英文学科ではトップの成績を収め、4年次の1年間をブリンマー大学(アメリカ)で過ごした。津田塾大卒業後の1986年にマッキンゼーへ入社。2年後、ハーバード・ビジネス・スクールに入学し、1990年にハーバード大学でMBAを取得した。

帰国後はマッキンゼーに復帰し、34歳でコンサル最高位のパートナーに就任。1999年にディー・エヌ・エーを設立し、代表取締役社長となる。2017年3月には、同社の代表取締役会長に就任した。

マッキンゼーに新卒入社した直後は、思うような結果を残せなかったという南場氏。一念発起して留学を決意し、MBAを取得した後、かつての自信を取り戻すべくマッキンゼーへと復帰した。その後は、次々にプロジェクトを成功へと導き、パートナーにも就任。しかし、「企画した事業で、自ら製品やサービスを生み出し、人に役立つ商売をやり倒したい」という思いが募り、ディー・エヌ・エー創業を決断した。

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エー

ミッションは「Delight and Impact the World 世界に喜びと驚きを」、ビジョンは「インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデライトを届ける」。“永久ベンチャー”を「常に新しい価値の提供に挑戦し続ける組織であるということ」と定義する同社は、主軸であるゲーム事業から、AI事業やオートモーティブ事業スポーツ事業まで、幅広くビジネスを展開。SHOWROOM株式会社代表の前田裕二氏や、株式会社ミラティブ代表の赤川隼一氏など、次代を担う若き逸材を送り出す、人材輩出企業としても注目が集まっている。

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谷村格(エムスリー株式会社創業者・代表取締役)

1965年生まれ。国際基督教大学を卒業後、1987年にマッキンゼー入社。10年以上にわたって同社でコンサルタントの経験を積み、1999年にパートナーとなる。

マッキンゼー時代は、主にヘルスケア業界を担当していた。ソニーの小会社であるソネットエンタテイメントに、医療サービスのアドバイザーとして参画していた際、自らも共同出資で経営を担うことになり、2000年にソネット・エムスリー株式会社として会社を設立。同年10月には、最新の医療情報、医薬品情報を、製薬企業のMRが医療従事者向けに提供するサービス「MR君」をローンチした。

エムスリー株式会社

エムスリー株式会社

時価総額は2019年7月時点で約1.3兆円超え。日本最大級の医療従事者専用サイト「m3.com」をはじめとする、医療従事者を対象とした様々なサービスをインターネット上で提供している。先述した「MR君」は、アメリカや中国などの国外でも提供されており、世界中で約450万人以上の医師が会員に登録。2019年2月には、LINEと協業してLINEヘルスケア株式会社を立ち上げことでも話題となった。

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岡島悦子(株式会社プロノバ代表取締役社長)

株式会社プロノバ

1966年生まれ。筑波大学卒業後、新卒で三菱商事株式会社に入社。その後ハーバード大学経営大学院でMBAを取得し、マッキンゼーに転職した。2002年にグロービス・マネジメント・バンク事業の立ち上げに参画し、2005年から代表取締役に就任。2007年には、「日本に“経営のプロ”が集積したマネジメント・プールを創り上げる」という理念のもと、プロノバを設立。

現在は、株式会社マネーフォワード、ランサーズ株式会社、株式会社リンクアンドモチベーションなど、計8社の社外取締役も務める。

マッキンゼーでの仕事を通じて、「人を動かす」ことに興味を抱くようになったという岡島氏。“ベンチャー界のゴッドマザー”が、“プロの場”をつくり上げるに至った背景には、同社での経験から得た気づきがあったようだ。

株式会社プロノバ

株式会社プロノバ

岡島氏がこれまでに培ってきたビジネスの知見や経営ノウハウを活かし、企業の経営課題を解決に導くサービスを複数展開。幅広い経営者・株主ネットワークを基盤に、経営のプロを志す候補者を目利きする「エグゼクティブサーチ」に加え、「経営チーム強化コンサルティング」、「リーダー人材開発」、「エグゼクティブコーチング」など、文字通り多種多様なサービスが提供されている。

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田中裕輔(株式会社ロコンド代表取締役社長)

Twitter

1980年生まれ。一橋大学経済学部を卒業しマッキンゼーに入社。2007年、26歳でマネージャーに昇格したのち、2009年にカリフォルニア大学バークレー校でMBAを取得した。その後、アメリカでの起業と事業売却、DeNA Global社マーケティング・製品担当上級副社長を経て、2011年に「ロコンド」を運営する株式会社ジェイド(現株式会社ロコンド)の代表取締役社長に就任。同社は2017年、東京証券取引所マザーズ上場を果たした。

大学時代に出会った、マッキンゼー出身の教授の話が非常に面白かったことが、入社を決めるきっかけとなった田中氏。「お前は何を成し遂げたいのか」と徹底的に問い続けられる環境で働くいた経験が、のちに「靴業界を変えたい」という意思の芽生えにつながったという。2012年には著書『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』を出版した。

LOCONDO.jp

LOCONDO.jp

約2,000の公式取扱ブランド商品を即日出荷、サイズ交換無料、返品無料で買うことができる靴とファッションのEC。靴を「自由に試着できる」がキーコンセプトとなっており、まさにロコンドのミッションである「業界に革新を、お客さまに自由を」が反映されたサービスといえる。

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高島宏平(オイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役社長)

オイシックス・ラ・大地株式会社

1973年生まれ。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。マッキンゼーでは、入社当初からEコマースグループの主力として活躍する。2年在籍したのち、オイシックスを設立。起業から13年後の2013年に東京証券取引所マザーズへ上場。その後、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやとの経営統合を経て、現在の社名となった。

1998年の入社当初から、「ネットビジネスに詳しい人」と思われるように、社内で自らをブランディングしていた高島氏。次々に仕事を振ってもらえる環境を自分で生み出し、着々と頭角を現していった。マッキンゼー時代、メンターだったのは、エムスリー代表の谷村氏。ちなみに、その谷村氏のメンター的存在が、ディー・エヌ・エー創業者の南場氏だったそうだ。

オイシックス・ラ・大地株式会社

オイシックス・ラ・大地株式会社

個人向け食品宅配事業をはじめ、食品宅配の事業運営で培った独自のソリューションを用いた法人向けサービスも展開。食材の定期便「Oisix」や、日本初の有機農産物宅配サービス「大地を守る会」、無添加食品や環境負荷の少ない日用品を届ける会員制宅配サービス「らでぃっしゅぼーや」「産直おとりよせ市場」などの宅配事業にも注力している。

こちらの記事は2019年07月29日に公開しており、
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執筆

ハッスル栗村

1997年生まれ、愛知県出身。大学では学生アスリートを取材し、新聞や雑誌の制作・販売に携わる。早稲田大学文学部在学中。

姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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