教育改革のカギは、学研が持つ全世代向けの多様なサービスと顧客接点──元マッキンゼー・現Gakken LEAP代表の細谷氏が語る、次世代の教育事業の在り方

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インタビュイー
細谷 仁詩
  • 株式会社Gakken LEAP 代表取締役社長CEO 
  • 株式会社学研ホールディングス 取締役 

1986年生まれ。大学卒業後の2008年にJPモルガン証券に入社。13年にマッキンゼーアンドカンパニーに入社。同社パートナー就任後、21年4月に学研ホールディングス執行役員に就任、22年に上席執行役員、23年に取締役就任。21年12月にはGakken LEAPを設立し、代表取締役CEOに就任した。

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「学研」といえば、教育や出版業界をリードしてきた‟歴史ある企業”である。

FastGrowの読者の中にも、小学生向け学年誌『科学』と『学習』を思い出す人もいるだろう。ピーク時の1979年には、両誌合わせて月に670万部という発行部数を記録している。

顕微鏡や人体模型、カブトエビの観察など、子どもたちの好奇心をかき立てる付録で人気を博した両誌だが、少子化のあおりを受けて2010年に休刊。その後、学研グループは教育や出版事業だけにとどまらず、福祉や介護事業へも進出を果たし、事業を拡大させてきた。

そんな学研グループから、次世代の教育事業の創出を目指し、2021年12月に設立されたのが、今回の取材対象であるGakken LEAPだ。

これまでテクノロジー・デジタルといったキーワードとは縁遠いイメージだった学研グループの中で、テクノロジーを活用した教育の新規事業創出を牽引するGakken LEAP。新規事業でどのようなイノベーションを起こそうとしているのか。また、既存の教育系ベンチャー / スタートアップと比べてどのような優位性があるのだろうか。

本記事では、Gakken LEAPの代表取締役・細谷 仁詩氏にインタビューを実施。最新のEdTech界隈全体の市況感とそのポテンシャルを紐解きながら、Gakken LEAPだからこそ成し得る社会変革の魅力に迫った。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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教育業界は「拡大と変容」のステージを迎える

新型コロナウィルスの感染拡大を契機にスピードアップした少子化やインフレによる家計圧迫など、昨今のマクロ動向は教育事業にとってはネガティブに見えることが多い。細谷氏は逆にこれを新たな事業機会と考える。

細谷私は楽観主義者なので、教育業界は今後飛躍的に拡大していく可能性があると思っています。確かに、コロナ禍で、世界情勢が3年掛けて大きく変化し、少子化、格差拡大、インフレ・家計圧迫など、教育出版や物販などの既存事業にとってはネガティブな側面が多いのは事実です。

一方で、身に迫る危機感が醸成され、教育の重要性を身近に感じる人も多くなっています。より良い教育を受けるための進学意欲や、スキルを身に着けるため学習に対する意欲は逆に高まっているのです。

但し、教育ニーズは「拡大」だけでなく「変容」もセットです。社会人教育の市場では、政府の1兆円支援もあり、ステージが変わっていくでしょう。その代わり、実践的なスキル習得や、その後のキャリアアップなど、目に見える効果への要求は高まってくるでしょう。

大学進学率が向上しているように、進学意識が高まっていますが、このトレンドも加速していくでしょう。その代わり、入試形態も変化していくので、従来型の教科学習(国語・社会・算数・理科・英語を中心とした知識・技術の学び)だけでなく、情報技術や金融教育など、従来にはなかった科目の重要性も拡大していきます。こうした学習内容の変化は、中学校、小学校、幼児教育にも広がっていくと思います。

教育業界は「拡大と変容」を迎えるという細谷氏。格差拡大や家計圧迫などによって「身に迫る危機感」が醸成されることを契機に教科学習の早期化や、社会で活躍できるリーダーに求められているスキルが教育にも落とし込まれていき、学習内容も大きく変化していくという。それでは、今後の教育業界ではどのようなプロダクト・サービスが勝っていくのか。

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マスプロダクトによる1点突破が通用する時代は終わった

細谷今の教育業界で顧客ニーズに応えていくためには、1つのマスプロダクトではなかなか難しい。サービスの種類やアクセスが良くなっている中、顧客のニーズを満たしていくには、複数の事業ポートフォリオと顧客接点が必須です。私たち学研グループは業界でも幅広いポートフォリオを持つ数少ない企業ではないかと思います。

そう語るGakken LEAPの細谷氏。顧客の教育ニーズが多様化・細分化する現在においては、従来のマスプロダクトによる1点突破だけでは、ニーズを満たしスケールしていくことは難しいとのことだ。

そうした教育業界全体に起きている変化や、昨今EdTechと呼ばれる界隈の現状について、細谷氏の見解を伺っていく。

細谷ここ数年で、教育(Education)とIT(Technology)を掛け合わせたEdTech企業の躍進により、教育業界のイノベーションが加速しました。全体的には盛り上がってきており、いいムードになっています。

今年2022年には英語コーチングのプログリットが東証グロース市場に上場していますし、2021年7月にはatama plusがシリーズBラウンドで約51億円の資金調達をしています。これらの企業の共通点としては、一人ひとりの能力に適応した進度やレベルで教育コンテンツやサービスを提供し、顧客が求める効果を実感させている点です。

細谷一方、教育のトレンドは、基礎学力に加えて、社会に出たときにグローバル水準で活躍するために必要な能力の習得に向かっています。英語力はもちろんのこと、STEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)や、ロジカルシンキング、問題解決力、ネゴシエーション力などの習得は欠かせません。

しかし、現状の公教育の枠の中で、これらを十分にカバーすることはおそらく難しい。今後、入試試験においてもこの領域の力はますます重視されていく中で、民間サービスが果たしていく使命は大きくなると思います。

現在、日本は少子化の分、1人あたりの教育に掛ける時間とお金は上昇していくでしょう。リスキリングへのフォーカスが高まっていることからも言えるように、ITリテラシーや英語教育など、今後の社会で活躍する上で必須の能力に直結する教育は早期化し、需要は一段と高まっていくと思います。

コロナ禍で、GIGAスクール*の取り組みが加速し、すべての子どもたちが1人1台のタブレットやパソコンで教育コンテンツにアクセスできるようになった。この数年、オンライン教育を提供するEdTech業界にとってはまさに追い風と言えよう。

しかし、「EdTech業界で大きく事業を展開しようとすると、教育事業が共通してぶつかる壁がある」と細谷氏は指摘する。その理由について次章で詳しく説明していきたい。

*文部科学省が2019年に開始した取り組み。全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを提供し、ICT教育を推進。「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」を意味する。

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事業ポートフォリオとマルチチャネルの重要

教育の新規事業が共通してぶつかる壁、それは1商材が得られる顧客数と販売チャネルの問題である。とくに子ども向けの販売チャネルは学校、家庭、塾が大方を占めるため、単一事業ではサービス成長が頭打ちになるリスクが高い。

細谷toS(学校)は、予算総額の課題もあり、特定のニーズをとらえた商材のスケール化が難しい局面を迎えるケースはよくある。一方、toC(家庭)で成功を収めているサービスも少なからずあるが、マーケティングの効率が上がらず撤退する経験を学研でも数多くしている。また、toJ(塾)は、基本的に塾を介して間接的に子どもたちにプロダクトを届けることになります。成功モデルがある一方で、事業を浸透させ、拡大することに苦しんでいる企業も少なくないはずです。

そもそも教育業界を大きく2つに分けた場合、コングロマリット(複数事業を有する組織連合)で事業を展開している代表的な企業がベネッセと学研だ。あとは学習塾や英会話スクールなどの単一事業が大勢を占める。

学研の特徴は、出版する本に触れたことがない人はいないくらい、昔から多くの日本人にとって馴染みのある企業だということだ。とはいえ、あらためて考えてみると、ベネッセが有する「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」のような特定のプロダクトの存在は見えてこないというのが本音だろう。これには細谷氏も頷きを見せつつ、次のように話す。

細谷学研グループ内には、出版社、物販、学習塾など教育サービスが豊富です。

例えば出版社では、年間1,000点以上の新刊を出していますので、「買ってみたら、学研の本だった」というケースもあるはず。また、学研教室や、進学塾の運営も全国で行っています。

こうした多様な事業ポートフォリオと、出版、塾、学校、幼稚園、保育園というチャネルを持っていることが学研の魅力です。単一のプロダクトで事業を進めていく企業とは、教育事業の考え方が異なることもあります。

長年、教育分野をリードしてきた学研グループ。既存の事業ポートフォリオをデジタル技術によって新たな仕組みを構築し、多様化したユーザーのニーズに応えていく。教育業界で、一人一人の人生に寄り添い、インパクトを与えていくためには、学研のように、多様な事業ポートフォリオと顧客チャネルを持っているかが1つのポイントとなるのは間違いない。

次章では、Gakken LEAPが生まれた背景から、事業の特徴や強みについてみていきたい。

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学研のプロ編集者も巻き込むプロダクト開発。
そしてCVC投資も

Gakken LEAPは、学研グループが中期経営計画『Gakken2023』で掲げている“DXの加速”を担う新会社として誕生した。

細谷2021年4月に学研ホールディングスに入社し、執行役員としてグループの経営に参画しました。入ってすぐに実感したのは、学研の教育事業はポートフォリオが幅広いため、より多くの顧客に様々なニーズでリーチできる一方で、グループ会社間が連携して新しい創造をしていくことは簡単ではないということでした。

そこで、まずは学研グループの教育事業の方針を定めるためのプロジェクトを発足させました。グループ各社の経営陣と喧々諤々な議論を繰り返し、半年間で一定の方向性を定めることはできましたが、既存組織の再編を含む改革は、数多くのハードルがあり、時間も要します。

学研グループは、企業規模に対して意思決定は決して遅くないと思います。しかし、既存のやり方では世の中の変化やスピード感に対応することが困難だと痛感しました。そこで、モダンなサービス開発を通じて、次世代の教育業界にインパクトを与える、そんな人材の育成を目的とした新会社の設立に向けて、まず動き出してみたのです。

もともと学研グループでは従来からデジタル化を進めていましたが、日本の“グローバルリーダーの育成”と同グループの“DXの牽引”とをビジョンに掲げ、2021年12月にGakken LEAPを立ち上げたんです。

このGakken LEAP、当初は細谷氏とGakken LEAP取締役CTOの山内氏の2名が主メンバーとなって立ち上げたが、1年経たずにメンバーは25名まで拡大。事業は、保護者と学習塾をつなぐアプリ『マナミル』、オンラインライブ授業『学研オンエア』、そして近々ローンチ予定のプロダクトを中心に手がけるほか、CVCとしての投資にも積極的だ。

細谷私たちは、新しく業界に参画する新企業が持つことが難しい教育業界の知見・ノウハウ・ネットワークなどのアセットを用いた強力なバックアップが可能です。新しいテクノロジーを用いて開発するスタートアップ企業への投資や、シナジー性の高い企業との協業を通じ、新たなプロダクト / サービスの創出を目指しています。

また、学研グループ内にエンジニアやデザイナー、UI/UXの改善、データ分析ができるメンバーが入り、今まで外注していた学研プロダクトの開発が自社で内製化できる体制となりました。その結果、従来よりも飛躍的に開発の質は上がり、コストも下げることができました。

細谷さらに、UI/UXを改善し付加機能を追加したことで、現場からは「使いやすくなった」と好評です。また、顧客ニーズに早く対応ができるようになり、スピード面においては体感で30倍は早くなったと思いますね(笑)。

Gakken LEAPは、大企業のSIerやスタートアップ出身のエンジニア、コンサルティングファームでPMOを経験した人材など、多彩なバックグラウンドを持つメンバーで構成されている。そんなGakken LEAPのメンバーがこだわるのは、何よりも顧客が接するコンテンツとUI/UXの質だ。

細谷当初はDXを掲げていることから、エンジニアを中心とした組織を考えていたんです。しかし、教育界隈における深い知識やインサイトがなければ、新しい企画を生み出すことができません。機能の開発は順調に進むものの、コンテンツの企画の部分で躓いてしまって。そこで最終的に、学研の出版編集者に参画してもらいました。

編集者が持つ企画力、本を1冊読ませるテクニック、プロデュース力、ライターや動画制作者と連携するコミュニケーション力は素晴らしい。何より、最高のコンテンツを作るためには妥協を一切しない根気強さがあります。それらとテクノロジーがマッチしたおかげで、他社と差別化できる斬新なコンテンツを開発しています。

スピーディーに事業・組織体制を整えていく細谷氏の経営手腕は目を見張るものがある。そんな細谷氏とは一体、どんな経歴の持ち主なのだろう。そもそも教育業界の出身ではないというが──。次章ではそんな細谷氏の人物像も掘り下げていきたい。

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人生を変えた、‟学研を1兆円にするプラン”

細谷氏のキャリアは2008年から始まる。大学卒業後、JPモルガン証券に入社し、株式調査部でアナリストとして従事。だが、入社して半年後にリーマンショックが起き、チームは解散となった。

細谷上司も同期も次々と社内から姿を消していく中、「いつ自分もクビになるか分からないな…」と不安な状態が数か月間ほど続きました。ところが、幸運なことに自分はクビには至りませんでした。運良くその後、株式調査部長の直属の部下となり、周りには他に上司がほとんどいなかったこともあり、早期から責任ある仕事を負う経験を積むことができました。

その後、細谷氏はより現場感を持って事業を伸ばす術を身につけるべく、2013年に外資系企業のマッキンゼーに転職をする。

細谷マッキンゼーでは、自動車業界、半導体、ハイテク産業など、多岐に渡る業界や多種多様なテーマのプロジェクトを経験し、2020年にパートナーになりました。その後、2021年4月に学研ホールディングスの執行役員として入社したんです。

コンサルタントのパートナーとは、ファーム全体の経営を視野に入れた活動が求められる立場である。当然、コンサルタントであれば誰もが憧れる地位。そのパートナーを辞めて、なぜ学研ホールディングスへ転職をしたのだろうか。

細谷「日本からグローバルリーダーとなる人材を輩出したい」という想いを実現するのに、自分に最も適した場所は学研だと感じたからです。もともとコンサルタント時代、多くの企業を支援する中、ボトルネックになるのは硬直した制度や人材育成の欠如からくる、個々人のモチベーションや能力不足によるものが大きいと感じていました。

それは学校教育のような平等性を重んじる公共教育や、硬直的な制度を守る企業では身に付けられないものです。多様な事業ポートフォリオを持つ学研であれば、一人でも多くの人々にブレークスルーを与えられるチャンスがあるはずだと確信したんです。

細谷氏は、もともと学研ホールディングスの代表取締役社長の宮原氏と、入社する前から、ある人物の紹介で出会っていた。最初に宮原氏と会食したのは2020年3月。当時はコンサルタントとして事業に関する意見交換を目的に顔をあわせる。それから3ヵ月後、2回目の会食の際に、細谷氏が200ページに及ぶ“学研を1兆円にするプラン”を持参したところ、宮原氏の目の色が変わった。

細谷宮原社長から「この取り組み、細谷さんの次のキャリアにしたらおもしろいんじゃないの?」と言われまして。「いやいや、社長がやってください(笑)」と思っていました。けれど、学研の課題は頭ではよく分かっていたものの、確かに経験しないと分からないことはあるなと思ったんです。

そこから毎月、会食の席で学研の役員を一人ずつ紹介してもらい、学研ホールディングスの経営陣全員と話をした上で、最終的に入社を決意しました。どの経営陣たちも、最終的に“子どものため”、“顧客のため”、“日本の未来のため”という視点で物事を意思決定するんですよ。その一貫した姿勢や価値観が印象に残りました。

「教育とは、人の才能を見出し、伸ばすものである」と定義づけるならば、その教育を提供する側には人の可能性を信じ切る姿勢が必要だ。細谷氏が対話を重ねた学研の経営陣たちは、全員本気で「人は教育で変わる」と信じていた。だからこそ、細谷氏はここで未来のリーダーを生み出したいと決意できたのだろう。

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細谷流・グローバルリーダーとは、
自らの意見を持ち、相手に伝えることができる人

日本からグローバルリーダーとなる人材を──。Gakken LEAPが掲げるミッションの1つであるが、あらためて細谷氏がイメージするグローバルリーダーとはどんな人材を指すのか尋ねてみた。

細谷グローバルリーダーと言っても、なにも経営人材、ビジネスリーダー育成や、語学堪能な人材を育成するといった文脈ではありません。我々が考えるグローバルリーダーとは、個人の心構えやスタンスについてを指します。

具体的には、“国や文化の違い、言葉の壁がある中でも、自分の意見を持ち相手に伝えることができる人材”です。世界を相手にした時に物おじしない、堂々と主張ができる力があれば、将来誰もがグローバルで活躍できる人材になれると私は思います。

では、なぜ今の日本ではグローバルリーダーがなかなか生まれないのか。それは、日本では、学校が敷いたレール、企業が用意したキャリアプランに乗り続けていれば、ほとんどの人が大きな挫折や将来不安を抱えずに職業人生を終えられたことが大きいと思います。

そこで周りと同じことをしていれば、まるで金太郎飴のようにみんなと一緒の状態になってしまう。そうなってしまうと、周りと違う意見を持つことができません。全員が同じ発想をする国から、世の中を変えるリーダーが生まれるのか。

かつて、親の都合で海外生活を余儀なくされたという細谷氏。日本とは言葉も文化も違う中で何度も挫折を味わい、孤独を感じていた。妥協を強いられることもあった。日本で暮らしていたら経験しなかったであろうそれらの感情に、小さい頃から向き合い続けてきたのだ。

細谷当時は、「なんで自分だけがこんな経験をしなければならないんだ…」と思っていました。しかし、今となっては、そういった経験があったからこそ、英語が話せるようになり、どんな環境でも自分の意見を持つことができるようになったんです。

グローバルリーダーが生まれるきっかけというのは、人がしない経験をどれだけしてきたかだと私は思います。人がやらないことにチャレンジするからこそ、人が手に入れられないものを手にすることができるんです。

その中で、学研に注目すると人にブレークスルーのチャンスを与えられるポテンシャルが非常に高いことが分かります。例えば学研の本は、日本を動かすような政財界のリーダーはもちろん、我々や読者のみなさん含め、どんな人も学生時代に一度は手に取ったことがあるはずですから。むしろ、学研の本を手に取ったことがない人って日本にいますでしょうか?(笑)。

細谷幼児から小・中学生、高校生、大学生と多様な顧客接点を持つ学研だからこそ、自ら未来を切り拓くチャレンジを、学校教育では得られない個々のニーズに応じた最適な教育環境を届けられると思っています。将来グローバルで活躍できる人材を1人でも多く輩出することが、今のGakken LEAPの目指すところです。

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リカレント教育・‟大人の学び”で
教育市場にインパクトを

現在のGakken LEAPの事業は、主に2つだ。1つ目は自社で内製できる体制をつくり、学研が長年積み上げてきた教育のノウハウや知見を活用してプロダクトを生み出していくこと。

2つ目は、教育業界におけるスタートアップやベンチャーに積極的に投資を働きかけ、新サービスを創出していくこと。

この2つの軸で教育業界のDXを推進しながら、グローバルリーダーの創出を目指す組織だということが分かってきた。そんなGakken LEAPは、今後どのような事業展開を描いているのだろうか。

細谷この1年でフォーカスするのは、まずは“大人の学び”です。スキルアップやキャリア形成のための資格取得や、語学またはITスキルへの需要は今とても高いです。

現在はそこに向けて、Gakken LEAPおよび学研グループ全体の総力を挙げ、コンテンツを制作しています。おそらく世の中にあるような教育サービスとは一線を画すプロダクトになるはずです。

大人の学びのフィールドは広いので、それを1つずつコンテンツ化していければ、教育市場へのインパクトはかなり大きいと思いますね。

大人の学びが分かってこそ、大学生、高校生、中学生、小学生、幼児など、下の学齢の教育に活かせることも生まれてくる。それを落としていくことで、新しい学研の教育事業の波を作りたいと思っています。

その発言からは、確かな自信と、早く世に届けたくて仕方がないといった期待感が伝わってくる。そんなGakken LEAPがビジョンを成し遂げていく上で、課題となる点はあるのだろうか。

細谷コロナ禍でオンラインが加速しましたが、リアルと比較した際、そこに明確な差分やメリットがなければリアルには負けてしまいます。

また、単にデジタル化してオンライン上で教育サービスを提供するだけでは、顧客からは選ばれません。なぜなら、顧客のニーズを正しく掴みきれていないからです。まずは、ニーズにしっかりと応え、「オンラインだからできることってあるんだ」という世界観に変えていくところから始めなければなりません。

教育サービスは、それぞれの顧客が目的に見合ったものを見つけるために、特に慎重になります。じっくりと比較検討した上でサービスを決めるため、派手な広告を打っても顧客がすぐに反応するとは限りません。いわゆる「老舗」が評価される非常に保守的な側面もあります。だからこそ、品質にこだわって、より多様なニーズに応えられるように進化させていきたいと思っています。

「リアルをなぞるようなオンラインは絶対に選ばれない。だからこそ、質にこだわる」その姿勢を貫いているからこそ、学研グループは総力を挙げて世の中にない新しいコンテンツを本気で生み出そうとしているのだ。

「学研グループが培ってきたあらゆる教育コンテンツ・顧客との接点を活用し、これからの日本の教育のスタンダードを創る。そんなダイナミックなチャレンジができる会社は、Gakken LEAP以外ないと思う」と細谷氏は言ってのける。

細谷教育で世の中にインパクトを与えたい人、コンテンツを生み出す力に魅力を感じる人には、Gakken LEAPは最適です。コロナ禍をきっかけにオンラインが普及し、新しい学びの形が続々と生まれています。その最前線で共に事業を創っていきたい方は、ぜひご一緒しましょう。

おそらく読者のみなさんは、「学研?そんなレガシーな会社、今更おもしろいの?」と思うでしょう。正直、私も以前はそうでした。学研ホールディングス社長の宮原と出会うまでは。でも、私は今ここにいます。なので、一度みなさんとお話させていただく機会が持てれば、必ずや教育事業の虜にさせてみますよ。

学研グループの総力をあげた教育変革。EdTech業界の勃興も相まって、日本の教育業界に旋風を巻き起こすことは必至だ。幼少時代、大いにお世話になった学研へ、そろそろ恩返しをしにいかないか?

こちらの記事は2022年11月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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