連載LIFULL主催「LEAP」
アントレプレナー・イノベーターから若い世代へ。
LIFULL主催「LEAP」社会起業の秘訣
2018年1月14日、LIFULL社の主催で、熱い想いを抱くアントレプレナー・イノベーターたちによる未来を担う学生のためのサミット「LEAP」が開催されました。
レポート第4弾は、株式会社LIFULL Social Funding代表取締役CEOの佐藤大吾氏をファシリテーターに、株式会社LITALICO代表取締役社長の長谷川敦弥氏と、認定NPO法人カタリバ代表理事の今村久美氏による
「社会起業の秘訣」の様子をご紹介します。
- TEXT BY FastGrow Editorial
LITALICO代表取締役社長 長谷川敦弥氏
長谷川みなさん、こんにちは。LITALICO代表の長谷川です。出身は岐阜県多治見市、名古屋大学理学部数理学科で数学の勉強をしていました。卒業論文はGoogleの検索エンジンのアルゴリズム読解をテーマにしたのですが、読解できませんでした(笑)。
新卒でLITALICOに入社し、1年後、社長に抜擢されていたという少し変わったキャリアなのですが、当時の29歳の社長は、24歳の僕にいきなり100人の会社のバトンを渡してきました。
長谷川LITALICOは、障害者支援の会社です。最近は、「社会的意義のある仕事をしたい」という若い人からの応募が非常に増えており、応募は年間約3万5000人、そのうち毎年200~300人を採用しています。現在の従業員数は約2000人です。
私たちが実現したいのは、障がいのない社会を作ること。障がいとは「障がい者」ではなくて、社会の側にあると考えて取り組んでいます。たとえば、昔は視力の悪い人はモノを見るのが困難でしたが、今は社会の側に眼鏡やコンタクトができたことで、その困難さは軽減されましたよね。
同じように、障がいのある方が抱いている「働く困難」や「学ぶ困難」、「移動する困難」などを解決するようなプロダクトやサービスを作り、それが当たり前の社会になれば、障がいのない社会ができるのではないか。すると、もっと多様な生き方ができる、幸せな社会になるのではないかと考え、事業を展開しています。
障がいは、人ではなく社会の側にある
長谷川現在、注力しているのは教育です。なぜなら、就労支援サービスをやる中で、精神疾患、たとえば統合失調症の方が多くいらっしゃったから。幻聴が聞こえます、幻覚が見えますという方が多く、日常生活に支障があるだろうと思いました。そこで、ある方になぜ精神疾患になったのかを聞くと、小学校2年生の時から勉強が分からず、その分からない状態で学年だけ上がっていくことがストレスになって発症してしまったと。
その方にとっての障がいは、子供の頃に自身にあった教育が社会の側に無かったということだと考えたんです。そこで、LITALICOジュニアというサービスを始めました。今約8000人のお子さんがサービスを受けに来ており、待機児童も数千人いる状態です。ユニークなお子さんが多く、もっと一人ひとりにあった教育を提供して、多様な社会と多様な子供の個性をつなげていくような、教育の仕組みを作りたいと考えています。
長谷川また、社会課題の解決には、テクノロジーの活用が必須です。僕らは就労支援サービスにおいて、2年前から人工知能を活用して自殺の予兆を発見する取り組みを進めており、精度はかなり上がっています。障がいのない世界というのは、みんなが幸せになる世界ということ。僕らだけで実現することは難しく、社会全体で課題を解決する流れを作っていきたいですね。
認定NPO法人カタリバ代表理事 今村久美
今村岐阜県高山市で生まれ育った、カタリバ代表理事の今村です。カタリバという団体を作ったのは、大学4年生のとき。当時は、大学生、特に女子学生は百何件エントリーしても内定をもらえない就職氷河期でした。
当時、私の周りにはIT企業を立ち上げるなど優秀な学生がたくさんいて、自身のキャリアについてはどうしようかと考えていたとき、「なりたい職業を決めよう」と書かれた本に出会いました。私はこの言葉にアレルギーを感じました。「これからどうなるんだろう」という不安と、就職できない友達や先輩が多くいるなか、「夢を選びなさい」という言葉を信じることは、本当に正しいことなのか分かりませんでした。
自分の時間の使い方は自分で決めたいし、自分の人生は自分で選択したい。どんな環境に身を置いていたとしても、希望する未来を作り出せる社会にしたいと思うようになりました。学校や家庭など所属しているコミュニティとは異なる人たちとの新しい関係を作りづらい世の中の課題を解決すべく、「憧れる誰かを見つけられる社会にしたい」と、カタリバを立ち上げました。
今村最初はアルバイトをしながら活動を続けていましたが、設立から17年経った今、職員は約100人、ボランティアとして全国で関わっていただいている方は4,000人を超える組織になっています。
事業モデルは、寄付を募るほか、行政や学校などから補助金ではなく委託を受けるパートナーとしてやってきました。具体的には、創造性や意欲を持つべき思春期世代をターゲットに、悩みを相談できたり憧れる人をつなげていく活動をしています。
たとえば、高校にカタリバの職員が常駐し、先生と一緒に議論しながら生徒や先生を外の世界とつなげることをしたり、休学している大学生に被災地で学習支援をしてもらったりしています。
就職する選択肢は持っていなかった
佐藤ありがとうございます。今村さんは大学を卒業後、企業に就職しようという選択肢はなかったのですか?
今村大学時代、周りに起業する人が多かったですし、父が自営業をしていたことも影響し、就職する選択肢はほとんど持っていませんでした。当時、ある大学の先輩が研究室に連れてってくれたとき、その研究室に「いつか日本中の人がインターネットで買い物をする社会を作る」と書いてあったんです。それが今の楽天。野望を語り、就職ではなく次の階段を上がっている人たちに憧れました。
ただ、社会人としてのマナーや姿勢など教えてくれる人は周りにいなかったので、就職するとそういったことが価値になるかもしれないですね。
佐藤僕の場合は、「インターンシップを日本に広める」というやりたいことがあって、いてもたってもいられなかった。寝ても覚めてもそのことばかり考えていたので、就職する時間はないと思っていました。
学校教育には変革が必要
佐藤ここからは学生さんからの質問に答えたいと思います。
学生長谷川さんに、今後日本の教育にどう取り組んでいくのかをお聞きしたいです。今、IT教育などを国が盛り込もうとしていますが、手探り状態だと思っています。子供たちが1日の3分の1を過ごす学校教育を変えられたら、障がいのない世の中にうんと近づくのではないかと思うのですが、どうお考えですか?
長谷川教育は、民間のパワーが大きくなると変革が起こると思っています。その意味ではLITALICOもそうですが、家庭でのお子さんとの関わりも重要です。親になる前後での教育や、子育ては重労働なので親御さんを支える仕組みを作るのも大事だと思っています。
小中学生の大多数が公立学校に通っていて、その影響はとても大きいので、それを変えたいです。一つは、、学校内でもLITALICOのような多様な子供に合わせた教育支援を行うこと。もう一つ、リーダーシップが発揮されづらい学校の仕組みは、ドラスティックな変革が必要だと思っています。
今村私は、東京に集まっている優秀なエリート学生しか社会を変えていけない風潮が嫌でした。既存の教育システムにはひずみがあるけど、客観的な立場で入り、アイデアを出すことで、学校が良くなる実感はあります。
佐藤貴重なお話ありがとうございました。
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こちらの記事は2018年02月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
FastGrow編集部
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