役員総辞職から事業転換まで。
陰の立役者が明かす、モバイルファクトリー成長の軌跡
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2001年10月に創業されたモバイルファクトリー。
着メロ事業の躍進をきっかけに上場を目指すも、ライブドアショックの影響により頓挫。
BtoB事業から完全撤退し、BtoCであるソーシャルアプリ分野への注力投資を発表するや、当時の役員は総辞職。
赤字に苦しむ3年間を乗り越え、現在は東証一部上場企業である同社を採用・人材育成面から支えた1人の男が小泉啓明氏だ。
そんな小泉氏が同社に入社するきっかけを生み出したキープレイヤーズ高野氏が、激動の10年間の軌跡に迫った。
- TEXT BY REIKO MATSUMOTO
- PHOTO BY YUKI IKEDA
10年前も変わらぬ「社長の熱量」「20代の活躍」
高野小泉さんはベンチャー人事としては相当珍しく、私が紹介して入社されてから10年以上、モバファク(モバイルファクトリーの略。以下同じ)に在籍していますよね。
小泉そうですね。気づいたらそんなに経ってしまいました(笑)。最初に高野さんに会った時、「今は人事コンサルをやっているけど、今後は事業会社の人事のほうに進みたい」っていう相談をして。
そしたら、高野さんに「入社して2年では今の会社に恩返しできてないから、責任を果たせるようになってから転職は考えなさい」って言われたんです。その通りだなと思って、そこから半年くらいがんばって結果を出してから改めて転職先を紹介してもらったと覚えています。
高野それがたしか2006年くらいのことですよね?モバファク自体、今とやってる事業内容もだいぶ違っていた気がします。当時はiモードなどでの着メロ配信事業がメインだったと記憶していますけど、あれってもうやってないんですか?
小泉いえ。モバイル向けコンテンツ事業は今でも継続している事業の1つです。入社時には、インターネットの領域で10年以上も続く事業に自分が関わることになるとは思いもしませんでした。
高野モバファクは創業時から私としてもイチオシの企業でしたが、入社する決め手はなんだったんですか?
小泉社長の採用に対する情熱の強さです。ものすごい勢いで入社を迫られましたね(笑)。社長の宮嶌には最終面接で会ったんですけど、「今ここでモバファクへ入社決めてよ」って言われたんですよね(笑) 。
勢いに驚きましたが、一次面接で当時人事部長だった方と話して「この人と働きたい」って思ったし、次に面接した事業部トップの方も、当時27歳くらいなのに役員を任されていて、「すごい人たちがいる会社だな」と思っていたこともあり、その場で入社を決めました。
社内一丸となり支えたゲーム事業への集中投資
高野小泉さんが入社して数年後にBtoB領域でプロモーション事業やSEO事業も展開していましたよね。BtoBの事業を撤退してBtoCのソーシャルゲームに振り切ったのは何故なんでしょう?
小泉モバファク自体の本来持っていた強みを活かした、ということだと思います。当時行なっていた広告ビジネスは、売り上げは作りやすいけど利益率が低いし、不景気がくると真っ先に予算を削られますよね。リーマンショック前後でそのことを痛感しました。
そして根本的に、サービスを作るという観点においてモバファクの強みである開発力にBtoCが合っていたんだと思います。じゃあBtoCに注力するとして何やりますか?と考えていた2009年の終わりごろから、まさにソーシャルゲームビジネスが伸び出してきたんですよ。
高野そのタイミングでモバファクも一気にソーシャルゲームに集中投資したら、実際当たったってことですよね。やっぱり着メロの事業がストック型の収益として底堅く利益を生み出していたから、ソーシャルゲームの領域にも大きく投資できたところがあったんですか?
小泉その通りです。ソーシャルゲームは2012年くらいまでは全然当たらなくて結構な金額の赤字を出していたんですけど、その間ずっと着メロ配信のコンテンツ事業部の利益が会社を支えてくれていました。
高野ガラケー時代から続くコンテンツ事業って、スマホシフトが起こってユーザー獲得に苦労したコンテンツメーカーも多いと聞いています。
小泉モバファクの場合は、そういう苦労はなかったですね。スマホへスムーズに移行ができたと思います。モバイルコンテンツを制作するチームが大切にしていたのは「スピード感」。スマホの波が来る前に、ガラケー時代に培った知見を生かして、開発体制の仕組み化とコストマネジメントを徹底的に行い、少人数で最大の成果を出せる体制を作っていったんです。
また、10年以上自社のみで広告出稿管理を行っていたため、ノウハウやデータが蓄積していました。そのノウハウによって、スマホユーザーのニーズをいち早く捉えることができたんです。
モバファクがスピード感を大切にし、知識を蓄積していたからこそ、スマホへの順応を迅速に行えたんだと思います。
高野サイバーエージェントの広告代理事業やディー・エヌ・エーのゲーム事業もそうですけど、1つでも継続的・安定的に利益を生み出せる企業は新規事業への投資がしやすいですよね。そうはいっても、ヒットアプリが生まれるまでの赤字の3年間には、社内でいろいろ変遷があったのではないですか?
小泉正直言って、BtoB事業からBtoCのソーシャルゲーム事業にシフトする時には、当時の役員陣含め社内のメンバーは結構入れ替わりましたね。BtoB事業の主力メンバーや、ゲームに興味がないエンジニアも辞めていってしまいました。
その中で、ミッションを理解しているメンバーが残って頑張ってくれたのは、今のモバファクにとって大きかったと思います。
我々のミッションは、「わたしたちが創造するモノを通じて世界の人々をハッピーにすること」。
別に着メロだろうがゲームだろうが、世界中の人が楽しめるものを時代に応じて創る。こういう柔軟な考え方を持ったミッションドリブンなメンバーがいたからこそ、赤字の時代も乗り越えて、ここまで踏ん張ってこれたんだと思います。
高野この仕事をしていると感じますが、うまくいっていない時こそミッションやビジョンといった気持ちに関わる部分で成否が決まりますよね。うまくいっていない時でも退職者が増えない組織は、ミッション浸透度が高い。かつ、そういうメンバーこそ次世代の幹部クラスの活躍をしてくれます。
小泉その通りです。そのとき退職しなかったメンバーは今では役員や部長、プロダクトマネージャーになったりと今でも大活躍しています。
成功例に裏付けられた「やる気ある人に任せる」カルチャー
小泉誰もゲームを作ったことがなかった当時、ソーシャルアプリ事業を立ち上げると決めてから、「誰も正解がわからないんだからやりたい人に任せてみよう」ということで、アプリを創りたい人を社内公募しました。
そのメンバーが主体となって合計20本くらいアプリを開発したのですが、結果的に新卒2年目の子が創ったアプリが1番ヒットした。1勝20敗という感じでした。
高野1勝20敗だったソーシャルアプリ事業が今成長してきたということは、それでも投資とチャレンジを辞めなかった、ということですよね。
小泉はい。とにかく最初の頃は、失敗してはまたチャレンジして、の繰り返しでした。
でも2年くらい経っても大きなヒットが出せず、「そろそろ潮時じゃないの?」とメンバーも思い出していたときに、やっとヒットが生まれた。それが、1人のエンジニアが考えた位置情報連動型ゲーム「駅奪取」でした。
当時はディレクターやプランナーなどのビジネス職のメンバーが新規アプリの企画を考えてソーシャルアプリを作っていたんですが、あるときエンジニアが「面白い企画を考えたから自分たちで開発させてくれ」と言い始めて。それでいくつかのチームが組成されたのが「駅奪取」開発のきっかけでした。
高野失敗を重ねた末に花開いた事業が、新卒入社の若いメンバーや、自ら手を挙げる人のパワーによって 立ち上がってるのが興味深い。
小泉年齢を問わず、自ら志願するやる気あるメンバーに任せる、というカルチャーがモバファクにはありますね。会社として「逃げずにやりきれる人に任せよう」というカルチャーを後押ししています。
駅奪取以外にも、漫画好きな社員が恋愛シミュレーションゲームを創りたいと宮嶌に直訴したこともありました。
その企画は2回宮嶌にダメ出しされていて、その者が「3回目もダメだったら退職して自分でやろう」と思っていたところ、やっと事業化OKになった。そこから文字通り不眠不休で開発していたのですが、そのアプリもヒットしましたね。
高野「ダメなら退職してやる」くらいの覚悟で新規事業に取り組もうとしていたら、経営陣としても「そこまで言うならやってみろ」と言いたくなりますよね。
小泉実際、子供が産まれたときでも、病院のベッドでゲームのシナリオを書いていたらしいんですよ。
新卒や中途問わず採用のキーワードにも入れていますが、そのような“主体性”はものすごく大切。そのような「絶対にやりきる」という想いがある人には、最大限のサポートを提供する、というのがモバファクらしさだと思っています。
高野「駅奪取」以降はどんなサービスが生まれたんですか?
小泉現在主力サービスとして伸び続けている「ステーションメモリーズ!」、通称「駅メモ!」が生まれました。
当時新卒3年目の若手社員が責任者に抜擢されたんです。関わっていたプロジェクトが失敗した後でした。初めて携わっていたプロジェクトでは炎上するような経験もしていましたね。
失敗するのは誰にでもあることですが、そこで腐らず、学んだことをしっかり次に活かしてくれたことが「駅メモ!」の成功に繋がったと思います。
高野モバファクは新卒に限らず第0新卒(非大卒の採用)も採用を始めているし、優秀な若手の力を信じて活かすことがカルチャーとして定着しているんですね。
ビジネスモデルを工夫し、働き方も進化させる
小泉そうですね。若手の力を信じるということに加えて、労働集約型にならないストック型のビジネスを作ること、そして「ありがとう」とユーザーから感謝されるサービスを作ること。この3つは企業としてとても大事にしてます。
BtoBの広告ビジネスをやっていた頃は24時くらいまでみんながむしゃらに働いていましたけど、今は定時を過ぎるとほとんどメンバーがいません。ソーシャルアプリ事業もコンテンツ事業も、ユーザーに愛されるサービスさえ作れれば、毎日寝ずに働かずとも「仕組み」で利益が積み上がるビジネスです。
高野一般的に、ベンチャーはハードワークというイメージがあるし、実際その通りである会社も多い。だけどモバファクはいわば“現代風”な職場。働き方改革にもフィットしているとこがあります。
小泉社長の宮嶌も3人目の子供が産まれたばかりのときには2ヶ月間の育休を取得しました。
トップがしっかり家族を大切にして、そういう制度を活用するからメンバーにも「育休カルチャー」が浸透しています。
高野ありきたりですが、休暇を取って家族とゆっくり過ごしたり、別の活動に打ち込んだりすることで新しいアイデアや閃きは生まれやすくなり、アプリやゲームの企画・開発にとってはプラスの効果が生まれると思います。
小泉その通りだと思います。ただ、残業が少ないことは必ずしも良い側面だけではなくて、社員にとって厳しい側面もあります。限られた時間で成果を出さなければならないので、量より質を意識しないといけません。
だから常に「頭を使って」生産性をあげたり、自分の能力を向上させていかないといけないんです。そういう点では、残業が基本的に許されていない環境はある意味、厳しい環境だと思っています。
年齢は関係なし。優秀な若手の力でモバファクが目指す未来
高野モバファクもベンチャーなので、実行力が必要なことはもちろんですが、若くて優秀な方で、企画やプランニングなどの仕組みを作る部分で勝負したい、というやる気がある人にとってすごくいい環境に思います。
小泉おっしゃるとおり。たとえば2016年の2月にほぼ新卒の状態で契約社員として入社した当時25歳の中山という者がいるんですが、契約社員で入社してから5か月後にチーフに抜擢されて、今はシニアディレクターというディレクター職における実質トップの役職についています。
契約社員だから本来、与えられた仕事をやれば良いはずなのに、中山は勝手に過去3ヶ月分の売上データを見て半年先の売上予測を立てたんです。
マネジャーも「誰が言ったかより何を言ったか」の精神で、本質を突いた予測だからと任せてみたところしっかり結果が出た。正社員になってからも成果を出してくれたので、今ではシニアディレクターになったという経緯です。
高野中山さんがそういう風に立ち回れた背景には、モバファクのカルチャーも関係ある気がします。全部自分でやりたくなってしまうマネジャーもたまにいますが、そういう人はいないってことですもんね。
小泉そういう人は基本的にはいませんね。若手でも主体的に動いて成果を上げればどんどん任せてもらえる環境です。
高野行動力があって、若くから活躍したい学生さんにとっては魅力的ですね。
小泉そうですね。 「こんな企画をやったら、もっと世界が楽しくなる」といったアイデアを持って主体的に行動、発言ができる若い方に入社してもらいたいですね。
高野(2017年)6月には東証一部にも上場して成長し続けているモバファクですが、今後も位置ゲームに注力されていくんですか?
小泉位置ゲームに注力する方針は変わりませんが、ユーザーにとってどんどん新しい体験を提供していきたいですね。
位置ゲームの特徴として、ユーザーに移動する動機を提供することができるので、 ユーザーを全国各地に導いて、その土地土地の新しい体験に触れていただくことができます。
小泉実際に、駅メモ!では人気アニメや映画とタイアップしたり、地方の鉄道会社や自治体とコラボしたりして、ユーザーに新しい体験と楽しみを提供しています。
今後もこのように新しい活動を行って、「楽しい」をユーザーに提供していきたいですね。
【19卒就活生向け】Goodfind限定 モバイルファクトリー特別選考ルート
こちらの記事は2017年12月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
松本 玲子
写真
池田 有輝
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