連載スタートアップ・ベンチャーへの転職にまつわる真実と誤解
転職エージェントが予測する、
ベンチャーに外銀・外コン出身者は少なくなる未来。
スタートアップ・ベンチャーへの転職にまつわる真実と誤解。
ベンチャー転職界の第一人者・高野秀敏とスローガン代表・伊藤豊が語る本音のトークをお届けする。
今回は、ベンチャーで活躍する人の出身企業はどういうところが多いのか?について語った。
- TEXT BY FastGrow Editorial
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
外コン・外銀出身は少なくなる?ベンチャーで活躍する人材とは?
日本を代表する転職エージェントの一人、キープレイヤーズの代表・高野秀敏氏とスタートアップ・ベンチャーの新卒採用領域でこの10年で実績を伸ばしてきたスローガンの代表・伊藤豊の二人が、昨今のスタートアップ・ベンチャーへの転職の現実について対談形式で語りあった。
伊藤ベンチャーの求人の実態とかどんな人が活躍するか?という話ができればと思います。
高野CEO、CTO、CFOが揃っていて経営チームがしっかりしていると大型の資金調達も楽になるイメージです。特に、CFOを採用したいニーズは強いですね。外資金融出身のCFOが欲しいなんて相談はよくあります。
あとは、コンサル出身の若手を採用したいというニーズです。20年前と比較してコンサル業界自体が相当に拡大して、かつ他の業界に比べて辞める人も多い業界だと思うので、コンサルティング会社出身者が、ベンチャー企業に転職するという流れは、これまで多かった気がします。
伊藤でも、今も外銀出身、外コン出身が採用したいという経営者は、人材市場を後追いしてしまっている可能性がありますよね?本当に狙うべきはそこなのか?って話はないですかね。
CFOに関して言えば、こちらの調査記事「ベンチャー上場時にCFOであるための、キャリアの王道は存在するのか?~94社を調査対象にしたCFOキャリア研究~」にもあるように、外資金融出身のCFOって意外と少なくて、9割は外銀出身じゃないですよね。
あと、コンサルティングファームの若手を採用したい気持ちはわからなくないのですが、今のベンチャーシーンを見渡すと、コンサルティングファーム出身でベンチャーに転職して活躍している20代・30代って意外と多くない気がします。
「過去コンサルティングファーム出身者を多く採用したが、あまりフィットせず殆ど辞めていった。今はあまり採用してない」と言う話を、成長した上場ベンチャー企業複数社で同じような話を聞いたことがあります。
高野たしかに、考えてみれば、大手コンサルティングファームのクライアントである大企業の仕事から見れば、ベンチャー企業の仕事はすべて新規事業みたいなもので、大手コンサル出身者があまり経験していない、不得意な領域ではありますよね。大手コンサルティングファームで経験する仕事がスタートアップの仕事とフィットしていない人が増えてそうです。
あと、創業者以外のコンサル出身者って誰だろう?転職してベンチャーに行った人で、コンサルティングファーム出身で活躍している人を挙げろ、と言われてもぱっと思いつかないかもしれません。特に最近は。
時代は変わってきているということですかね。たしかに考えてみれば、2000年当時から比べて、コンサルティング各社の社員数は4倍から10倍ぐらいに大きくなっているはずですよね。業界自体がこの20年近くで相当拡大し、成熟してきた。よって、いる人たちの種類も変わってきていると。
伊藤はい。20年前のコンサル業界ってベンチャーっぽかったんじゃないかなと。私は99年の就活組ですが、当時自宅に外資戦略コンサルファームからスプリングジョブの案内の手紙が来ていたのですが、すごく怪しいなと思って破り捨てたのを記憶しています笑。
高野90年代のコンサル経験者が、その後の2000年代前半のネットベンチャーの流れの中で、たくさん活躍されていたようには記憶しています。その人たちは、90年代のコンサルティング業界に飛び込む時点で、おおいにベンチャー的だったわけですね。
そもそも、コンサルティングファーム出身の創業者として有名な人たちも、コンサルティング業界自体が、まだマイナーだったベンチャーみたいな頃に入社している人が多いですよね。
伊藤マッキンゼー出身で起業して時価総額4桁億円まで大きくなった会社はディー・エヌ・エーとエムスリーの2社だけですが、創業者であるお二人とも80年代のマッキンゼーの新卒入社なので、おそらく東京で50人もいない頃のマッキンゼー入社組だったはずです。
アクセンチュア出身で活躍する創業者の多くも、90年代のアンダーセンコンサルティング時代(社員数が千人も行かない規模のとき)に入社している人たちですね。
高野最近20代でアクセンチュアを辞める人を以前よりも聞かなくなったなと思います。昔はもっとアクセンチュアから起業したりベンチャー行く人っていたと思うのですが、最近はあまり聞かなくなりました。
念のため補足しておくと、これは良いとか悪いとかの話ではなく、単純にタイプの違う人が増えたという話です。
伊藤はい、まさに。今のコンサル業界も優秀な人が多い業界なのは間違いないです。ただ優秀さの種類が変わって来ているように思います。
昔のよくわからない頃に飛び込んだ人たちは、やっぱり一定のリスクテイクできる不確実耐性があったということもありますよね、きっと。リスクテイクしてよくわからない小さい会社に入って、その後、会社が大きく成熟していく過程で、次の面白いチャンスに対してまたリスクテイクするために出て行く。
コンサル業界が黎明期から成熟する過程で、次の不確実フィールドを提供し続ける企業やスタートアップに転職する人も多かった、ということなのでしょうね。
高野会社のブランドというか価値が確立されていない頃にブランド・価値を確立した側の人たちですよね。
伊藤時代背景がこの20年-30年で大きく変わっていますので、どこどこ出身って話も、時代背景を考慮して語らないと、ミスリードになりますよね。
例えば、80年代は興銀、長銀をはじめ都市銀行(今のメガバンク)も含めた日本の金融機関が絶頂期で世界的に見てもすごい存在だった。
そんな当時に、外資金融に飛び込んでいる人たちはやっぱり、ベンチャースピリットというか起業家精神に近いものがあったのではないかと思います。
高野たしかに昔のゴールドマンサックス出身の人も、面白い人が多いですよね。いつの時代も、流行より先に動く人が、その後に活躍している印象です。まさに、後の有名企業が無名だった頃こそが、人材輩出フェーズであるということなんですよね。
伊藤そうおっしゃる高野さん自身も、インテリジェンスの上場前に入社していますよね?
高野私たちがすごい世代と言われることもありますが、何もすごくないですよ。よくわからない頃の会社に飛び込んだ、というだけです。
伊藤インテリジェンス出身の起業家・経営者の方々も、だいたい上場前とか上場すぐ後とかの入社組の人たちが多そうですね。アトラエの新居社長は高野さんの先輩ですよね。当時のインテリジェンス出身者を他にも何人も知っているのですが、皆さんすごいワイルドでたくましい。
ベンチャーで活躍する、求められる人材を考えるうえで、どこの企業のどのフェーズにいた人なのか?というのは重要な観点になりそうですね。
こちらの記事は2017年04月24日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
FastGrow編集部
写真
藤田 慎一郎
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