「サステナビリティは、まだ始まったばかり」──プロ投資家が経済史から読み解く、生き残る企業の条件
世界で伸び続ける「ESG投資」。2020年の世界のESG投資額は35.3兆ドル(約3900兆円)で18年比では15%伸びている。Bloombergによると、2025年までには世界運用資産の3分の1に相当する53兆ドルに達する可能性がある。
最近では投資家らが口を揃えて「サステナビリティを無視する会社は今後生き残れない」とまで言う。もはやサステナビリティとは、ビジネス参入への最低基準なのだろうか?
その課題を解き明かすべく、2021年7月に開催したFastGrow Conference for Sustainabilityにて、「サステナビリティがビジネスにとって重要な理由~海外を拠点とする日本株ファンドマネジャーの視点から~」と題したセッションを企画。登壇したのは20年以上株式市場と向き合い、現在は海外を拠点に活動する日本株ファンドマネージャー、投資会社R Financial InvestmentのCEOを務める守屋秀裕氏だ。モデレーターはスローガン代表取締役の伊藤豊が務めた。
本記事はイベントの模様を文字起こし形式でお届けしていく。
- TEXT BY HARUKA FUJIKAWA
キーワードは「メガトレンド」「ルールのアップデート」
「始まったばかり」
守屋本日は私から「サステナビリティがビジネスにとって重要な理由」というテーマでお話しさせていただければと思います。私は金融業界に20年ほどいる人間で、そのうち15年ほどは上場企業に対する投資をしています。
では私の会社、R Financial Investment(以下、RFI)についてお話しさせてください。私の会社はミッションとして「信頼の輪を広げる投資で、未来創造の営みに貢献する」を掲げています。
株式投資というのは起業家の方々の思いやビジョンに共感し、そこにお金と共にエネルギーを託すことだと捉えています。それを実践できるようミッションとして掲げているのが私たちの会社です。
RFIの特徴は長期の時間軸で、企業を統合的に見るところです。加えて投資を通じて企業側が実現する意義を重視しています。外部のお金を運用するのではなく社内の資金を運用することで、経営者と同じような長期の視点で投資をしています。
いわゆる「ESG投資家」ではないのですが、長期で複雑的に世の中を捉えようとしており、結果的に世の中に言われる「ESG投資」や「責任投資」的なものに近い考え方に至っていますね。
ここからは自己紹介です。私自身が投資家としてどのような変化をしてきたのかという図がありますので、ご覧ください。
守屋横軸で社会性と収益性、縦軸で長期と短期を示しています。私はRFIを始めるまではかなり収益性に偏っていました。中期から短期までの時間軸で投資を考えており、長期的な視点を持てていなかったのです。
ただ幸運なことに、RFIで長期投資を一から作るという経験をさせてもらい、取り込む要素や視野が広がりました。サステナビリティというものは自分にとっても、経済や社会においても大変重要だということに気がつきました。
今になって振り返ってみると、私が短期・中期の投資ばかりをしていた時の自分は「なんと視野の狭い人間だったのか」と思います。最近になってようやく、サステナビリティの重要性と社会的インパクトを理解できるようになったのかもしれません。
こちらが私が思うサステナビリティにおけるキーメッセージです。メッセージは三つありますので、順に説明させてください。
守屋一つ目にサステナビリティは、強く、大きく、長く、変化するものだということ。一言でいうとメガトレンドと呼ぶことができます。インパクトが大きくて広範囲で、長い時間をかけて変化するものがサステナビリティと言えます。
二つ目、サステナビリティとは、ビジネスにおけるルールがアップデートされるということです。例えばスポーツではルールが変わると、それまで活躍していた人でも活躍できなくなる可能性がありますね。逆もしかりです。それと同じようなことが今起こっているということです。
三つ目、「とは言いつつもまだ始まったばかり」なんじゃないかなというのが自分の考えです。そもそもサステナビリティとは長期で続くものなので、始まりや終わりはそんなに明確には存在しませんが、世の中の大きなトレンドからいうとまだまだ始まったばかり。これから大きく進んでいくフェーズだと思います。
経済は、人類の欲求における
「促進」と「抑制」の繰り返し
守屋一つ目にあげた「メガトレンド」について少し補足します。まずはこれまでの歴史の流れを振り返りましょう。経済とは人々の欲求をよりよく満たすための仕組みで、経済発展の原動力は、より豊かな生活を求める個人の欲求です。
もともと人間は弱い存在で、自然環境に影響されて生きてきました。共同生活では決まったルールの中で、誰しもが少しずつ我慢しながら生きる。大昔の人間は自由を大きく制限された状態だったと思います。
当然「より良い生活がしたいよね」と思ったのではないでしょうか。欲求追求がテクノロジーの進化や新たな制度を作り、循環しながら経済発展が進んでいきました。一方でみんなが自由に行動をし始めると、様々な社会課題の発生に結びつきます。
それぞれの人が自分たちのより良い生活を求める結果、支配体制が揺らぎ、国家内・国家間で対立が起こりました。「他人から何かを奪おう」「取られたものを取り返そう」などと対立になり、既存の体制の持続を脅かしてきたのです。
課題が発生し、社会の緊張が起こって、何らかの適応をすることでまた新たな課題を生む。歴史上ではこのようなサイクルが繰り返されています。自由な欲求追求を促進するのか、抑制するのか。この二つの間を揺れながら、人類は歩んできたのではないでしょうか。
例えばアメリカでは、建国から1890年代まで「自由放任主義」と呼ばれる欲求追求大賛成という体制がありました。その後大企業の経済の支配が問題になり、独占することを悪として、抑制が始まりました。格差が広がったことにより、抑制する運動は80年代くらいまで続きます。
守屋その後経済の停滞が起こり、財政の赤字がどうしようもなくなります。そうすると2010年頃までに「みんなが欲求追求するエネルギーを開放して、行動したほうがいいよね」と、反対側に振れ、インターネットを活用した大きな革新に繋がりました。
その後はリーマンショックが起こり、またもや「自由な欲求・追求はよくないよね」と。気候変動や経済的不平等に対処する施策「グリーンニューディール」が実施され、アメリカのIT企業の通称「ビッグ・テック」の規制強化が始まりました。
このように歴史は「促進」と「抑制」が振り子のように繰り返されています。サステナビリティにおいても、例えば気温変動や格差という社会課題に対して一国に留まらないグローバルな現象としてとらえ、欲求追及を「抑制」すべきだという文脈で捉えるとサステナビリティが一時的なもので終わるという話ではありません。
ビジネスの大きな変化。
企業はお金を儲けるだけでは通用しない
守屋次にルールのアップデートについてお話しします。こちらは経済の縮図をものすごく単純化して図にしたものです。
守屋経済というのは、主に企業と個人という二つの主体が担っており、それらが商品市場・労働市場・資本市場の三つの市場と取引をする仕組みになっています。企業は労働市場と資本市場から資源を集める、商品サービスを作って商品市場で個人に商品を提供するというサイクルが回っています。
三つの市場の中で資本市場はとても特殊で、資本市場のあり方は企業の経営者に対してとてつもなく大きな影響を及ぼします。なぜなら資本市場ないし株主は、企業の経営者を解任できる権利を持っているのです。経営者は資本市場に好かれないと生きられないゆえに、資本市場は経営者の意思決定に関わってきます。
これまでは資本市場は「お金を儲けていればそれでいい」というあり方でした。今のESGやSDGsが言うのは「それではダメだよ」ということです。現状の資本市場では、巨大な資本が一部の大手投資家に偏在しています。そのため大手の投資家は社会的な責任があり、例えば「リターンをあげている経営者=OK」ではありません。金融投資家のあるべき姿を規定したガイダンス「スチュワードシップ・コード」がありますが、それにより投資家に責任が課されています。
経営者に大きな影響を与える株主が変わってきているので、経営者も変わらなくてはならない。SDGsで、インベストメントチェーンの変化を通じて企業が変わる。企業が変わると労働市場における関係性も変わり、商品市場における関係性も変わり、経済全体のあり方が変わっていくよねと。
今まで短期のお金儲けで良かったことが、それではいけなくなってしまった。これはそもそもビジネスにとっては大きなアップデートではないでしょうか。
投資するのは「強さ」と「良さ」の好循環を持つ企業
守屋改めて「なぜサステナビリティがビジネスにとって必要なのか」について話します。一つには、事業機会の観点があります。「社会課題の解決」が企業における役割だとすると、社会課題=事業機会ということになりますよね。今までも経済が変化する時には新しいプレイヤーが台頭してきました。だとするとサステナビリティもまだまだ始まったばかりのものなので、これから事業として大きくなるための「チャンス」なのです。
企業は、資本市場と労働市場から資源を集めて生産活動を行うという話をしました。投資の意思決定を行う運用者と、労働市場に参加する個人が「サステナビリティは社会や個人にとって大事だよね」と考えるようになると、サステナビリティを無視している会社は資源確保ができなくなっていきます。
資源を確保しながらアウトプットをするのが企業だとすると、そもそも資源確保ができなくなったら、うまくいかないという話ですよね。
しかしチャンスにはリスクも伴います。例えば環境や働く人、ステークホルダーの一部にでも害を与える会社であれば、資本市場ないし労働市場からのプレッシャーが強まると思います。つまり企業の存続に対するリスクを伴うのです。
最後のスライドでは、企業と投資家について現状の理解と今後への期待を書きました。RFIは「強くて良い会社」をスローガンにし、投資しています。これから強さと良さの好循環が回っている会社が増えればいいなと思っています。
守屋ビジネスとして強くて、お金も儲けて、社会に貢献できている会社もあります。とても素晴らしいことですが、大抵はそこで留まっているのです。強くて良いことができるからこそ、さらに強くなる必要があります。逆にそういった考えのある会社は、今後サステナビリティに対してより良いインパクトが出せるのではないかなと思います。
投資家自体は進化しようとしています。これまでずっと「リターンを出せばいい」という認識を持っていたので、どうしても短期で利益を出したいという枠組みから抜け出しきれてていません。現在も「ESG投資をするとリターンが上がるよ」という説明をしています。
そうかもしれないけど、そうではないかもしれませんね。もしかしたら投資の短期的な経済的リターンを考えるとマイナスかもしれないです。しかし私は「短期の経済的にはマイナスだけど、社会的に見たらこっちのほうがいい、それが長期の経済リターンにもつながるよね」という考え方になる必要があると思っています。
あとは、投資家も企業も現状は「やらなくてはいけない」と思っている人が多いのかもしれません。突然ルールが変わって「やらないとまずいよ」と言われてしまうので、「やらなきゃ」とプレッシャーになってしまう。
しかしよく考えると、サステナビリティは自分自身の人生や後の世代の人にとって良いことのはずです。みんなの捉え方が変わり、視野が広がった時には「やらなくてはいけない」ことから「やりたいこと」に変化していてもおかしくはないと思っています。みんなの「やりたいこと」に変化した時には大変インパクトの大きいものになると予想しています。
少し長くなってしまいましたが、私が話したかったことは以上です。
2030年までのゴールは、
一つのマイルストーンに過ぎない
伊藤守屋さんありがとうございました。ここからは、私が質問をしながら進めていければと思います。
まさに「サステナビリティ」というキーワードは、時間軸を伸ばしていくということだなと思いました。長期で見るには当然「未来」だけではなく、「歴史」を俯瞰的に捉えなければなりません。歴史的なトレンドを踏まえて考えていくことが重要なんだと、納得しました。改めてプレゼンありがとうございました。
短中期の投資家だった頃について「視野が狭かった」とおっしゃっていましたね。今後長期投資家が増えていけば、企業の考え方も変わっていくかもしれないと思う一方で、短期的な投資家の存在によって、企業が翻弄されている部分もあるのかなと思います。
投資家全体としては守屋さんと同じように長期的思考に変わってきているのでしょうか? 守屋さんがかつて在籍していらしたような会社のファンドマネージャーの方々も少しずつ変わってきていますか?
守屋若い人たちは動き出してくれていると感じますね。投資という業界の中でも、新しく参入した方やこれまでのやり方に凝り固まっていない方は、より長期的な目線を持つべきだと感じ、変わろうとしています。
反対に、今までリターンを上げることに自分の存在意義を感じていた方は、変化しづらいかもしれません。やり方を変えてリターンが上がらなくなったら、彼らは自分の存在意義がなくなってしまうと捉えうる。
社会的な視点で金融業界はレバレッジが効くという観点から、他業界から運用業に参入する傾向もあります。彼らは既存の枠に囚われておらず、今後は彼らの視点が社会に支持されていくかもしれませんね。
伊藤金融投資家のプレイヤーが多様化していき、投資家のサステナビリティにも影響を与えるんじゃないか、ということですね。
もう一つ面白いのは「サステナビリティはまだ始まったばかり」ということですね。では、サステナビリティはどれほどのスパンのものと捉えるのがいいのでしょうか? 20~30年なのか、それとも100年なのか。
守屋経済は企業と個人が主体なので、当然一人ひとりの個人が変わっていかないとサステナブルな企業を作ることはできません。企業はユーザーが求めるものを提供し、ユーザーは企業が提供するものを選ぶという相互作用になっています。だとすると企業のあり方を変えるためには個人のあり方も変えなければいけないよねと。
個人のありようってなかなか変わらないじゃないですか。世代が変わる30年や50年のスパンで見て、社会のマジョリティが「学校でサステナビリティを学んだ」というくらいになってからようやく、変化が見て取れるのかなと思います。
よりマッチョな考え方で「ゴリゴリ変えていけば変わる」というシナリオもないことはないですし、そのシナリオで歴史が進めばもう少し早いのかもしれない。しかし経済のインフラ全てを変えていくには、最低でも20~30年のスパンが必要になると思います。
伊藤私も個人的に20~30年スパンかなと思っていました。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指していますよね。それを聞いて「SDGsって向こう10年のものでしょ」とか、「どうせ廃れるものでしょ」「2030年ってそこまで遠くないですよね」「どうせ言わなくなるじゃん」と批判的に見る人もいるのではないかなと思います。
サステナビリティはこれから言葉や見せ方、コンセプトを変えながら進んでいくものなのでしょうか?
守屋2030年をゴールにしていますが、これは本質的には、一つのマイルストーンに過ぎないと思っています。実際に2030年までに、経済が真にサステナブルなものになると予想する人はいないんじゃないでしょうか。ただ、2030年までに最低限のものに絞り、コミットしていく必要がある。そうすると人々のサステナブルに関する解像度が上がり、自然と次の目標を決めるようになります。
少なくない数の企業が、環境に配慮しているようで、見かけだけエコを謳う「グリーンウォッシュ」になる可能性もあります。しかしそれはナチュラルなことで、どうしても世の中で「サステナビリティが大事なんだよ」と言われると「私たちは適合してます」ととりあえず言いたくなりますよ。
他人からよく思われたいと誰しもが思いますよね。グリーンウォッシュはそれと同じです。僕もこの話をしながら、「ちょっとでも良いことを言われたいな」と思っています(笑)。
ただ、サステナビリティ系の投資のルールでは、グリーンウォッシュを許さない形になっているのではないでしょうか。「良いことを言うのは大事。しかしそれをちゃんと実行されているのか?実行するためにどういう数値目標を設定しているのか?どう実現しているのか?」と聞かなければ、意味はありません。
今はESG投資の「E」となる気候変動に関する企業が目立っていますが、今後は「S」の観点からもどんどん開示されていき、企業の透明度は上がっていくでしょう。そうなるとグリーンウォッシュをしても、すぐにバレて格好が悪いと言われてしまう。今は始まったばかりの過渡期だからこそ、許されているようにも見えますが。
伊藤上場する意志のない会社からすると「資本市場と向き合っていないので関係ないです」となるかもしれない。資本市場だけでなく、商品市場や労働市場から動きやプレッシャーは、今後高まっていく可能性があるのかな?と思ったのですが。
例えば商品市場だとエシカル消費みたいな話もあります。BtoBでも購買におけるサプライチェーンにおいて、脱炭素や人権侵害の観点でチェックが入りますよね。
スローガンも労働市場においては、新産業において人材紹介サービスなどを行うという事業をやっています。単に新しい産業の中でもより持続可能な社会につながる事業を行う会社を応援したいと思っています。
「サステナビリティの低い企業には人材紹介も積極的に支援もしない」と、ある程度プレッシャーをかけていくというのも、人材業界ができるサステナビリティにつながるアクションかもしれません。資本市場からも健全なプレッシャーをかけていくことで変化していくものでしょうか?
守屋それが理想だと思います。労働市場や資本市場においては個人の情報量やリテラシーが少ないことにより、企業側に利益をもたらすような取引をしている側面がありますので。
人間は弱い存在なので、利用できる非効率は利用したくなります。無知な人には高く売りつけたくなるのです。働き手として個人がより情報を得て、より良い行動ができるようなサポートを受け変化していくことが、経済がサステナブルになっていくために欠かせないことですね。
FastGrowさんが様々な先進的な企業の話を聞く機会を作っていますね。企業からすれば採用の場ですが、個人からすれば世の中の変化に対する感度を上げることのできる場になります。
「働く」ということは人生において大きな部分を占めるので、個人が「どこで働くことが幸せにつながるのか」ということまで思考を巡らせて、仕事を選ぶという状況になるといいなと思います。
今後投資家が注目するのはESGの「S」に値する企業
伊藤統合的に社会が変わっていくということでしょうか。本イベントのメインメッセージは「サステナビリティは事業機会だ」ということですが、守屋さんが注目している企業があれば教えていただきたいです。
守屋私が注目してみている会社はESGの中の「S」の会社です。例えば障害者の方の就労を支援するというサービスをメインにしている「LITALICO」という会社。その他にも世の中の数ある就労以降支援サービス会社の方々に対して、情報やサービスのプラットホームを提供し、障害のある方たちにできる「働く」という観点からさまざまなサービスを生み出しています。
一番に「何かすごいのか?」というと、会社が掲げるビジョンが「障害のない社会をつくる」ということです。ものすごい壮大なゴールですが、彼らはそのビジョンに向いて軸をブラさずに前進しています。
ビジョンに共感した優秀な方々が企業に参画していますし、商品市場でも例を見ないので、お客さんからも支持される会社になっていますね。資本市場で支持され、応援されることによってエネルギーを得る。会社はそれを使いより広く、より良いサービスを作る。そんなサイクルが回っている会社だと思っています。今後もLITALICOさんのような会社が増えればいいですね。
伊藤LITALICOさんは、昔からフォローされていた会社さんだったのですか?
守屋そうですね、IPOの段階から見ていました。
伊藤最初はどういう観点で注目されたんでしょうか? またファンドマネジャーとしてはどのように企業を探していくのかも気になります。「まさに今〇〇な会社を探している!」などあれば。
守屋探すにも様々な切り口がありますが、「世の中はこう変わっていくのではないか?」ということを想定し、それが「各業界にどのような影響を与えるのか?」ということを考えます。そうすると「この企業って有望だけど、まだ注目されていないよね」と見つけていけます。
私たちの会社は長期で見て大きく成長する会社を投資対象としており、これまでは若い会社がとても多い。もちろんIPOの段階で全社を確認し、ビジネスの将来性とビジネスモデルの強さ、持続性、掲げているミッションやビジョン、どこで何をするのか、なぜやるのかを見ています。
伊藤投資をしていく上で「この分野はこういう世の中になっていくだろうから、そこを変えていけるような会社ってどこなんだろう?」と探しにいくことはありますか?
守屋そういった探し方もしますよ。ただそのやり方は、例えばVCのような、これから事業を作っていくようなところに投資をする方が多いですね。
私たちは上場している会社を中心に投資するという制約があります。そのため、各領域の課題は何かを考え、その課題はどれほど重要性が高いのか検討する。課題が存在し、かつその課題が大きいものであれば、その課題を解決する会社は社会から大きなリターンを得られるという構造になりますね。
基本的なやり方としては「解決したい課題は何か」「解決できる粒度になっているか」「会社として戦略仮説と実行力があるのか」などを一社ずつ見ています。
伊藤ありがとうございます。では最後にお伝えしたいメッセージがあれば。
守屋私たちは資本市場を通じて世の中を良くしたいという思いが強くあります。活動内容も株式投資に偏らず、もう少し個人投資家さんを応援できるようになると、より資本市場がカラフルになるのではないかと。
投資家が多様化すれば、経営者の方にとっても今までとは違う対話ができるようになります。さらに資本市場も活性化するのではないかと思っています。
そのため私たちは個人投資家さん向けの学習支援サービスもやっていて。株式投資を学んでみたいという方がいたら、お役に立てるかもしれません。長期投資をやってみたいという方がいればご連絡いただければ、私たちがどんな役に立てるのか一緒に考えることができると思います。
伊藤上場株の投資をされ、海外の情報もインプットしている守屋さんですが、個人の投資家さんに守屋さんの経験や視野が共有されていくと、資本市場や投資家の方々にも多様性が生まれるのかなと思いました。
ありがとうございました。このイベントでRFIに興味を持ったみなさんが、守屋さんと接点をもつきっかけになったら嬉しいです。
こちらの記事は2021年11月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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1998年生まれ、広島県出身。早稲田大学文化構想学部在学中。HRのスタートアップで働きながら、inquireに所属している。興味分野は甘いものと雑誌と旅行。
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