“クリエイター”にとどまらない、目指すは“人”の生き方のアップデートだ──Nateeの事業が、他のマーケ企業と一線を画す強さを持つ理由を、 事業・想い・人の面からCHRO堀上が語る

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インタビュイー
堀上 健斗
  • 株式会社Natee 執行役員CHRO 

京大農学部から農学研究科へ進み修士課程を修了。新卒で株式会社ビズリーチへ入社し人事部へ配属、2年目にエンジニア・デザイナー採用組織の立ち上げと責任者を担い、新人賞を受賞した。ビジョナル株式会社へと社名が変わる頃にプロダクトマネージャーへ転身し、『ビズリーチ』や『HRMOS』のプロダクト開発に携わる。その後退社しTeach For Japan経由で中学校教員を経験した後、株式会社Nateeにジョインし、執行役員CHROを務める。

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2022年12月、クリエイターエコノミーカンパニーのNateeは約4.2億円の資金調達を発表。この資金調達を機に、ベネッセホールディングスと共同でクリエイター向けスクールを開講、バーチャル事業に投資、そして人材採用に注力することを強調し、ミッションである「人類をタレントに!」の実現に向けて事業をさらに成長させていくことを強調した。

クリエイターエコノミーを事業にする企業は複数あれど、Nateeほど、「クリエイターの人生」に向き合っている企業は少ない。いやそれどころか、「日本における働き方の未来」を変えようとすらしている。つまりクリエイターにとどまらず、日本人の働き方、あるいは日本人の生き方をアップデートしようとしてると言うと、大げさだろうか。。

先日も、創業4周年とともに発表したのは、クリエイターへの還元額が5億円を突破したニュースだった。そのビジネスモデルは、少しでも多くの「個性/表現のみで生活できる人」を生み出そうと工夫が凝らされている。

この記事ではビズリーチのプロダクトマネージャー(PdM)から、学校教員を経てNateeのCHROとなった異色の経歴を持つ堀上氏に、その事業の特異性についてじっくり聞いた。

Nateeは、誰もが個性を活かして活躍する世界をつくろうとしている。“個”の活躍は、これからの時代のキーワードだ。社会づくりと組織づくりの構想は、次世代を生きるヒントになるに違いない。

  • TEXT BY RYOKA MATSUDA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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“個の時代”のキャリアを本気で考えているからこそ、Nateeには異色な人材が集まる

CEOとCHROはビズリーチ(現ビジョナル)出身、COOとCFOはリクルート出身。Nateeの経営陣には、人生に大きなインパクトを与えうる強い事業を展開するメガベンチャー出身者が集まっている。クリエイターエコノミーを事業領域とする企業において、こういった人材が集まるのには、どういった理由があるのだろうか。

ビズリーチで採用担当とPdMを経験後、英語教員になるという変わったキャリアを歩み、NateeのCHROに就任した堀上氏もその一人だ。堀上氏は、Nateeに参画した理由として、他のマーケティング関連企業との違いを語る。

堀上Nateeは、世の中で暮らす一人ひとりの人生について本気で考えている会社だからこそ、入社しました。僕のキャリアを見ていただくとわかる通り、学校から人材サービスと「人の人生」のことしか考えていないんです。クリエイターに体現されるような「個が開放された生き方」の実現を、私自身が目指しているからこそ、Nateeにしました。

よく勘違いされるのですが、Nateeはクリエイターマーケティングの会社ではありません。クリエイターを「個で生きる先駆者」と捉え、リスペクトしている会社です。今は時代の流れ的にPR事業が最も彼らを立てることができるから事業として展開しているわけなんです。

Nateeのミッションは「人類をタレントに!」。すべての人がありのまま自分らしく生きる世界をつくることを目指している。その思いはミッションに込められるだけにとどまらない。実際に、より多くの人が「個性を発信するクリエイター」となって豊かな人生を送る、そんな日本社会にしていくための施策に多数取り組んでいる。

堀上クリエイターはリスクを取りながら個で生きることを選んだ「ファーストペンギン」なんですよね。だから当然、リスペクトすべき存在です。会社としても還元額を重要指標にしていて、ちゃんとお金を払ってクリエイターを職業として成り立たせるための仕組みをつくっていこうとしているんです。

加えて、今回の資金調達に合わせて発表したスクール事業をはじめとして、代理店業だけではなく、事業会社としてクリエイターをサポートする仕組みをつくろうとしているんです。

新たな時代の働き方や人生をつくろうとする会社だからこそ、名だたるメガベンチャーから「社会を変えたい」という強い想いを持った人材が集まる。Nateeの事業は、堀上氏の思いとも通じている。

堀上僕個人としては、Nateeの事業を通して、まずは収入の2〜3割を、自分の「個性」を活用したもので稼ぐことが当たり前になってほしいと思っているんです。「個性で稼ぐ」という価値観がもっと普通になってほしい。

前提として、僕は仕事を通して自己実現する人を増やしていきたいと思っているんですよね。自分の内なる欲求を社会にマッチした形で発揮して活躍する人が溢れる社会をつくっていきたい。

ですが、これまでは会社に入ると、主導権は会社で、頼まれた仕事をする選択肢しかなかった。そこに収入の何割かを「個性で稼ぐ」という選択肢をつくることで、自己実現しながら働く人を増やしていきたいと思っているんです。

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「好きで稼ぐ」が、もっと当たり前になる日本へ──
若い頃から強く持つべき“自分軸”

Nateeの事業と共鳴し合う堀上氏の「自己実現」への思いが生まれた経緯は、学生時代まで遡る。京都大学院で生物学を学んでいた堀上氏は、生命や遺伝子に関わる実験を繰り返す中で、「命に決められた意味は無い。だからこそ、それぞれが自分らしく生きるべきなんだ」という事実に辿り着いたのだという。

しかし一方で、日本社会では、自分らしさ以上に他人軸が優先されるような生き方が強いられているように感じるというのだ。

堀上僕は生物学を学ぶことを通して「一人でも多くの人が自己実現できる社会になってほしい」ということを考えました。その上で、自己実現に必要なのは “自分の気持ちを自覚すること” と “自分の気持ちで決断すること” の2つだと思ったんです。

だけど、今の日本社会に生きていると、その人が生まれた頃から持っている欲求を忘れて、「まわりになんとなくある正解」を大事に生きようとしてしまうじゃないですか。自分本位で決断する経験を与えられることもほとんどない。

だからこそ、日本でももっと自分軸を大事に生きる人を増やさなければならない、そしてそのためには、若いうちから、自分の気持ちを大事にしている人の価値観に触れる機会の多い社会にしなければならないと思ったんです。

堀上氏が考える理想の社会を語る上で欠かせないキーワードが「人生2.0」だ。

クリエイターエコノミー協会のnoteにある図を参考に、Nateeにて作成

堀上これまでは生産者とは大手企業である、発信者とはマスメディアである、と役割が固定されてきました。しかし、これからは誰もが生産者・発信者・販売者になれる時代です。

そうすると、発信が多様化することで、自分にマッチした価値観に触れることが出来ます。つまり、正解が沢山ある、正解は自分の中にある、と思える社会になっていくと思うんですね。それは、自分の気持ちを大事にしている人が増えていくことにつながると思っています。

先程お話したような「個性で稼ぐ」ことをしている人たちがその活動を発信して、若い人がその価値観に触れる。そうやって、自分にも時代にもマッチした価値観と出会って “人生2.0” を楽しむ人が増える世の中にしていきたいと思っているんです。

「副業」の「副」という字に違和感を覚えると語る堀上氏。先ほど「収入の2~3割を、好きの活用で稼ごう」という考えを紹介したが、それが「副」=「二次的」なものであるという考え方をなくしていくことこそ、Nateeの目指す世界だ。

クリエイターになりたい人や、クリエイターに向いている人が、クリエイターとしての自分を誕生させる。「副業」などではなく、それが当たり前の手段としてあるような人生を送る。そんな世界を実現するためにNateeは、“人生2.0”という標語を掲げる。

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TikTokクリエイターは、「個性で稼ぐ」先駆者。
彼らの生き方から、すべての人達の生き方を変えたい

「個性で稼ぐ」ということを実践している人たちが、世の中の雰囲気を変え、人々の価値観を変え、より自分らしくあれる社会をつくっていく。Natee堀上氏が描くクリエイターが輝く社会の展望は壮大だ。

堀上例えば日本が100人の村だったとして、今「個性で稼ぐ」人は1人いるかどうかだと思うんです。1%未満なんです。それが今僕たちがサポートしているクリエイターの存在規模。そんな一人ひとりを立たせ、給与を支払い、大企業とつなげ、学校を作る。こうすることで、1人目から2人目、3人目と「個性で稼ぐこと」を考えて実現しやすい世の中になると考えています。

3人もいれば、それを見て5人、10人と、「まずは土日に個性で稼いでみようかな」と考え始めるはず。そのうち数人が実際に行動すれば、今度は10人が影響を受け、さらに20人が影響を受け……と、こういう形で世の中を変えていきたい。

ですが、とにかく今は1人目です。まだまだ1人目も立っていないと思っています。

例えば現状、クリエイターエコノミーはプロモーション予算の余った部分をSNSに回すという「発注企業側の視点」が中心になっています。それを僕たちがクリエイターファーストで整理して持続的な案件化を実現し、両者の期待値を揃えながら成果を創出する支援をしていく。そうして地道な活動を続けることで社会における必要性を広げ、「予算が余ったから回す」のではなく、「そもそもクリエイター向けのSNS予算がマーケティングの中で当然確保される状況にもっていく。

また、別の視点からの施策として、クリエイターを創出・育成するスクール事業も仕掛けていきます。ビジネスとして認めてもらう必要があるという世界で生きていけるようなクリエイターを育て、生み出していく仕組みづくりを、ベネッセさんと一緒に行うんです(この協業について代表の小島氏が語る記事はこちら)。

企業側・クリエイター側双方から支援と仕組みづくりを行い、100人の村に1人目2人目を生み出していく。これがNateeです。

一部のインフルエンサーだけが大きく儲けるような事業ではなく、誰もが自分の個性を活かす社会を目指す企業だからこそ、事業展開の考え方やクリエイターエコノミーの捉え方も独特だ。

堀上最終的には、デザインが好きなデザイナーであればパワポ資料をつくることで稼いでもいいし、ビジネスについて考えるのが好きならコンサルで稼いでも良い。ただし、まずはその最初の一歩として、TikTokで突き抜けるということを、Nateeは今やっているところです。

クリエイターエコノミーの良いところは、簡単に始められるということ。SNSで発信するクリエイターになるために必要なのは、スマホ一台だけです。必要な機材やコストも最小限です。

それこそ僕は、日本でも最貧困と言われる地の一つで教員をしていましたが、スマホはどの家庭にもありました。本当の意味で「誰もが」個性で稼げる可能性を秘めているのも良いところです。

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大きな企業は世の中に大きな変化を生み出す。
そのために「ロマンとそろばん」で組織をつくる

CHROである堀上氏は、事業だけではなく組織づくりについても野望を抱く。一度は教育現場へと職場を移しながら、企業の組織づくりに燃える理由は、ビズリーチでの原体験にある。

堀上Nateeは世の中を変えることを目指して事業に取り組んでいます。ただ、世の中を変えるにはやはり大きな企業にならなければならないと思っているんですよね。僕が新卒入社したビズリーチの代表取締役である南さんも「大きいことをするには大きい会社にならないといけない」とよく言っていました。

事業会社の新規事業は世の中を変える。それも、僕がビズリーチで経験してきたことです。従業員300人程度の無名な会社が、たった6年ほどで、大きな企業になり、ダイレクトリクルーティングサービスが採用サービスの主流となる世の中をつくった。

僕はそれを、今度はNateeで再現したいんです。

誰もがタレントになることを目指す企業の組織づくり。堀上氏はクリエイターと同じように、Nateeを通して、個人の人生が拓ける組織を目指す。

堀上Nateeは一人ひとりの個性と才能を開花させるGreat Companyになるということを至上命題にしています。だから、従業員一人ひとりがまず、個性と才能を開花させるために全力を尽くしましょう、という気持ちで組織づくりを進めています。

その上で大切なのが「ロマンとそろばん」。熱狂するような組織をつくりたいというのはロマンですが、そこにきちんと個人一人ひとりがメリットを感じる “そろばん” の視点を入れていきたいと思っています。

つまりは、一人ひとりに自分の市場価値を上げられるような仕事に取り組んでもらう、ということですね。実は組織力学と個人の力学は深く結びついていて、従業員数が増えると、成長機会が増えて、成長機会が増えるとビジネスレベルが上がって、そうすると市場価値が上がって——と、会社に貢献することは自分の成長につながっていくものなのですが、なかなかそれって見えにくいので。単純化して、まずは「自分の市場価値が上がることをしよう」と言っています。

そのための取り組みの一つとして、「全員人事」という仕組みも取り入れていました。採用活動という名目で、より幅広い業務に挑戦できますし、権限を渡すことで、それこそレジュメに書きやすいような仕事にも取り組んでみることが出来る。

会社はその人の人生を最適にするための場所だと思っているんですよね。クリエイターさんに対してそうであるように、社員にとっても、Nateeという会社を人生をより良くするための実験場のように使ってほしいと思っています。

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Nateeは “人間の生き方を変えたい人” とともに事業をつくる

新たな時代の生き方をつくっていこうとするNateeだが、今現在その目標に向けてどのようなことに取り組んでいるのだろうか。

堀上まずは、何かの代名詞になれるような大きなインパクトを市場に残さなければ、Great Companyにはなれないと考えています。例えば、「ダイレクトリクルーティングならビズリーチ」「インターネット広告といえばサイバーエージェント」というような。

なのでまずは、「TikTokならNatee」と言われるようになることが、この1年で必ず達成しなければならないことだと思っています。

ただ、サービスのライフサイクルを考えると、TikTokでのマーケティングPRだけでなく、他の事業にも投資をしておかないといけなくて。既にNateeは年間12億円以上の売上があるので、この資金をもとに、メタバース事業やスクール事業など、新規事業を立ち上げる準備を進めているところですね。

だからこそ、人材戦略に関しては、事業成長を楽しんでつくっていく人を育てたいですね。サイバーエージェントの「あした会議」のように、事業提案を社員みんなで考えながら、会社や事業が自分ごとになるような仕組みを取り入れて、進めていきたいと思います。

世の中に、クリエイターのように自分の個性を活かして輝く人を増やす。そのために「どんな人材が必要か?」と最後に聞いてみた。その回答はまさに “一味違う、Natee” らしさ溢れる回答だった。

堀上インフルエンサーマーケティングをやりたいという人よりは“人間の生き方を変えたい人”や“世の中の構造を変えたい人”に来てほしいと思いますね。

「クリエイター」という生き方を当たり前にしていくことで、生き方の構造を変える。クリエイターエコノミーの先にある社会の変革を見据える人材とともに、Nateeはあるがままの個性で生きるという“未来”をつくっていく。

こちらの記事は2022年12月13日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

松田 涼花

写真

藤田 慎一郎

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