「社会を動かすプロダクトを生み出すには」──テックカンパニー・リクルートにおける、大組織でプロダクトを担う若手人材に必須の条件とは
Sponsored「リクルートはテックカンパニーなのか?」。この問いから始まった本連載もいよいよ大詰め。1記事目でテクノロジー事業への変遷を紐解き、2記事目では描けるキャリアの多様性について伺ってきた。残る読者の要望としては、現場感のイメージ醸成ではないだろうか。
今回は、複数の社員に話をきくことで現場のリアルをイメージしてもらいたい。なぜならリクルートのキャリアパスはひとそれぞれ。たった1人のモデルケースを見ても、「それってN=1の個別事例ですよね」と感じてしまうだろう。
よって今回は、新卒として2016年の同時期に入社した若手3名に、それぞれ異なるキャリアパスを経てきた観点から同社の現場を語ってもらった。共通する点は現在の所属が「プロダクト統括本部」に在籍していることで、業務に関しては三者三様の経験を積んできている。
「プロダクト責任者」キャリアのロールモデルとして現在「Air ビジネスツールズ」の新規プロダクト立ち上げをリードする浅利 慧氏。新卒採用 → マーケティングと「川下り的」キャリアのロールモデルとしては、SaaSプロダクト『Airペイ』など決済系プロダクトのマーケター川島 穂高氏。そして「PdM」キャリアのロールモデルとしては『SUUMO』のCVRを上げるプロダクトオーナー、保科 健太郎氏にお越しいただいた。
- TEXT BY RYOTARO WASHIO
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
「様々な障壁」を越えずして大事は成せない
いくら「ベンチャー気質がある」と言っても、リクルートは世の中的に見れば大企業と呼ばれる部類の会社だ。「正直に言って、“大企業”ならでは難しさもあるのでは?」。そんなストレートな質問に、まず口を開いたのは浅利氏。「もちろんあります」と応じ、こう続けた。
浅利「なんでこんなに時間がかかるんだ」と思うこともありますし、まったく面倒臭さを感じる瞬間はない」と言えば嘘になります。でも、最近はそういった面倒臭さにも理由があり、受け入れなければならないものだと思っていて。それだけ、リクルートが手掛けるビジネスが複雑なものになってきていると捉えています。
浅利リクルートは今、転換期にあります。これまで事業全体を牽引してきたメディアビジネスだけではなく、SaaSビジネスにより一層注力していくことを北村(リクルート代表取締役社長・北村吉弘氏)が語っています。そうして SaaS事業を推進する中で、メディアというアセットに助けられる側面もすごく多いです。
一方、紙から続く連続性の中で生まれる事業や会社としての重みもあります。過去から現在、現在から未来を繋いでいく我々がこのような「事情・葛藤」を楽しんでいくことでSaaSを盛り上げていきたい。それができる人材でいたいと考えています。
それに、リクルートに求められるのは、社会的インパクトや提供価値が大きい事業です。複雑で、難易度が高いSaaS事業を成功させ、社会的なインパクトをもたらすためには、一つひとつの意思決定にこだわり抜かなければなりません。事業を推進するために乗り越えるべきハードルは確かに多い。
でも、それを乗り越えてしか到達できない喜びがありますし、やはりそういった成果を出すためには、様々な観点やステークホルダーと向き合う必要があります。
確かに、社会を変革するような事業を生み出し、推進するためには短絡的な意思決定を重ねるわけにはいかないだろう。様々な要素が絡み合い成り立つ、複雑な事業であればなおさらだ。社会や生活者のニーズに対する深い洞察と、多角的かつ客観的な分析に基づく判断が求められる。
「誰にでも大きな裁量が与えられる」という“誤解”
リクルートの社風に対するパブリックイメージは「若手にも大きな裁量を持たせる」だろう。複雑で難易度が高い事業を“慎重に”推進することは、若手から裁量を奪うことに繋がるのではないか。そんな懸念に対する浅利氏の回答は、取り繕うことのない、実に誠実なものだった。
浅利「説明責任」を果たして初めて「大きな裁量」は与えられるのだと考えています。全員が無条件で大きな裁量を持てるわけではありません。だから、メンバーが「裁量が少ない」と不満を漏らしたら、「それはあなたが説明責任を果たせていないからだ」と伝えていて。
健全に事業を運営するためには、全員が説明責任を果たさなければならないと思います。僕自身、「承認プロセスが多い」と感じることがないわけではない。でも、関係者全員にしっかりと説明して納得してもらった上で、プロセスを進めることは仕事の一部ですし、納得してもらえずやりたいことが前に進まないときは、自分の実力が足りていないだけの話で。
しっかりと実力を付け、責任を果たせば大きな裁量が与えられる。そこにはベテランも若手も関係ない。それがリクルートの文化なんです。
「一つひとつの仕事が世の中に大きなインパクトを与えるからこそ、一定の慎重さは不可欠だ」と応じたのは、川島氏だ。具体例を挙げて、こう説明する。
川島リクルートの場合、サービスによってはメールマガジンの送付人数は、数百万人にも及びます。もし、そこに不適切な表現があれば、1通のメールによって数百万人の方に不快な思いをさせてしまう可能性がある。配信に至るプロセスは単純ではなく、様々なステップを踏まなければならないのですが、その影響度を考えれば然るべきものだと思います。
ただし、この規模の会社にしてはスピード感はある方だと思いますし、みんなで「やるぞ」と決めたことを実行するスピードは、どんな会社にも負けないのではないかと思います。
「事業や部署によって、承認プロセスや事業推進のスピード感が異なることもリクルートならではの魅力」とするのは保科氏。リクルートには『SUUMO』のような規模の大きいサービスから、幾多もの「まだ形すらないサービス」が存在する。意思決定プロセスやスピードは、当然ながらまちまちだ。
保科浅利や川島が言ったように、規模の大きいサービスに関する意思決定に時間がかかるのは、ある意味では当然なんです。ですが、すでにローンチしているものからそうでないものも含めて、リクルートには数多くの小さなサービスも存在します。
それらのサービスは、ユーザーや社会からの期待や要請に沿った事業推進が担保された上で、驚くべきスピードで推進されています。その中心にいるのが若手である場合も多い。大規模のサービスの承認プロセスを進める中で学べることも少なくありませんし、自らの意志によって小さなサービスを前に進めることでしか得られない経験もある。そのどちらも体験できることが、リクルートの魅力の一つだと思います。
相応の責任を果たすことで新たな機会を掴み取る
保科氏が言うように、さまざまな領域にわたる、さまざまなフェーズのサービスが混在していることがリクルートの特徴だろう。この特徴は、そこで働く者のキャリアの多様性をもたらす。今回お招きした三人も、三者三様のキャリアを歩んできた。
浅利氏は「明確な目標を持って、キャリアを重ねてきた」という。その目標とは、社会で起こる大きな摩擦をなくしたい、そのために衣食住など人の生活に関わるプロダクトをつくること。この目標を達成するために、ファーストキャリアとしてリクルートを選んだ浅利氏が、まず配属されたのはプロダクトづくりの礎、開発の現場だった。不動産領域のサービスである『SUUMO』の開発組織で、ディレクション業務の経験を積んだ。
入社から1年半後には、飲食領域に異動し、クライアント、すなわち飲食店側が用いる機能の企画業務に従事。そして、3年後、新たなSaaS事業の立ち上げとプロダクト責任者に任用された。つまり、webサービスの“川”を遡上するようなキャリアを歩んできたのだ。「明確な意志を持って、このキャリアを選択してきた」と語る。
浅利良いプロダクトを作るためには、開発の現場を知らなければならないと思って、入社時には現場からキャリアをスタートさせたいと希望しました。そして、ありがたいことに実際に開発の現場に配属され仕事をする中で、もっとクライアント、つまりは企業のことを知らなければならないと感じました。
大学時代までは、いちカスタマーとしてメディアを利用していましたが、当然その裏にはクライアントが存在する。企業のことを理解しなければ良いプロダクトはつくれないと思いましたし、リクルートはクライアント接点に強みを持つ会社。この環境を活かさない手は無いと思い、クライアントが利用する機能を企画する仕事がしたいと自ら手を挙げたところ、チャンスが回ってきたんです。
現在のプロダクト責任者のポジションも希望したものですし、明確な意志を持ち、その意志を示すことで理想の環境を掴んできました。
しかし、手さえ挙げれば誰でも希望のポジションが与えられるわけでない。そこにも機会と責任が存在する。浅利氏は結果という責任を果たし続けることで、希望するキャリアを歩む権利を得てきたのだ。
浅利リクルートはしっかりと役割を果たせば、相応の期待と機会が与えられる。1年目から、上司からの要求に対しては、すぐに質の高いアウトプットを示すことで応じるようにしていました。
そうすることによって、次のステップに進みたくなったとき「信じて任せてもらえるようになる。結果によって信頼を獲得し、新たなチャンスに繋げる。そんな循環を生み出すことを意識していました。
そうして、新規事業のプロダクト責任者というチャンスを掴んだのだ。現在手掛けるのは、業務・経営支援サービス「Air ビジネスツールズ」におけるお店の会計/決済サービスである『Airレジ』/『Airペイ』。その中でもCRM(*1)機能を提供するためのプロダクト開発を担う。『Airレジ』/『Airペイ』を利用する小売店が、顧客の情報を効率良く収集、分析することをサポートし「お店とお客さんがより強く結びつくため」のプロダクトを開発している。
浅利社内でははじめての取り組みのため全て手探りで、イチから仮説検証を繰り返しています。このプロダクトを成功に導くには、もしかするとリクルートのリソースだけでは足りないかもしれない。であれば、他社とのアライアンスを模索しなければなりませんし、実現したい世界から逆算し、様々なアイデアを検討しながら開発を進めている段階です。
プロダクトを生み出し、グロースさせる力を付けたいとリクルートの門を叩いた浅利氏は強い意志を持ち結果を出し続けることで、現在の業務に携わっている。
会社にとっても新領域。白地が多いからこそのやりがいがある
「浅利ほど最初から明確な目標があったわけではない」と語るのは川島氏。最初に配属されたのは、人事部だった。約1年半、新卒採用業務に従事する中で抱いたのは「事業の課題設定から実行まで全体を通じて、大きなインパクトを生み出せる人材になりたい」という意志だった。
川島氏もまた、人事という与えられた役割に向き合う中で、自らの希望を叶えた。異動したのは、ゴルフ場の検索・予約サービスである『じゃらんゴルフ』のマーケティング部門。担当はCRMだった。
CRMは「既存顧客管理」と訳される。つまり、すでにサービスを利用している顧客との関係性を強めるためのマーケティング手法であり、新規顧客の獲得などは基本的には担当外となる。約2年間、同サービスのCRMを担った川島氏は、かねてからの目標に近づくべく、「より広くマーケティングに携わりたい」という希望を上司に伝え、マーケティングチームのリーダーに就き、新規顧客獲得も担当することとなった。こちらもただ「希望を伝えていただけ」でなく、結果とともに信頼を積み重ねた結果だ。
マーケティングリーダーとしてマーケティング戦略のみならず、事業戦略などの立案にも携わったのち、宿泊施設予約サービス『じゃらん』のブランドマーケティングリーダーに就任。テレビCMなどデジタルマーケティング以外の施策も経験。2021年10月からは『Airペイ』など、複数のSaaSプロダクトのマーケティングを統括するマネジャーを務めている。
人事からマーケティング領域へ。そして、マーケティングの一分野を担当するプレイヤー、マーケティング全体の戦略立案を経験し、メンバーをマネジメントする立場に至ったのだ。 現在マネジメントしているのは、8名のメンバー。配下のチームはプロダクトごとに構成されており、4つのチームを統括している。
マネジャーに就任するまでは、メディアビジネスのマーケティングを担当していた川島氏。リクルートとしての注力領域であるSaaSビジネスを担当するようになった今、会社からの大きな期待を感じながら、新たなチャレンジに挑んでいる。
川島当たり前ですが、同じマーケティングと言っても、ビジネスモデルや市場環境、競合状況などで注力すべきポイントは異なります。たとえば、旅行はwebサービスを介して予約することが当たり前になりつつありますよね。だから、Webやアプリで宿泊先を探すという行動を前提として、どうやったらじゃらんを選んでもらえるかをマーケティングでは考える必要があります。
一方、現在手掛けているSaaS領域の場合、世の中にまだ浸透していないソリューションであることも多く、ターゲットである小売店や飲食店を運営する方々が「日々の困りごとを解決してくれるソリューションが存在すること」を認知しているとは限りません。つまり、検索すらしてもらえない場合が多いわけです。だから、まずはターゲットに対して、課題を解決しうるソリューションが存在することを認知してもらう必要があります。
他にも、旅行の予約サイトではリピートという概念があるため、初回利用だけでなくいかにリピートしてもらうかも重要です。
一方、SaaSの場合はいかにサービスを知ってもらい、導入し実際に使っていただくかが重要ですし、その先にお店の他の課題を別のプロダクトで解決するようなクロスセルも検討する必要があります。それらを実現するにはどのようなマーケティング活動を行うべきか、上長やメンバーと会話しながら仮設検証を繰り返しています。
これまでのリクルートを牽引してきたのは、言うまでもなくメディアビジネスだ。その成長を下支えしてきたのは、メディア運営に関する豊富なノウハウだろう。しかし、リクルートにおけるSaaSビジネスの歴史はまだ浅い。会社としての経験も知見も、メディアビジネスのそれに比べれば少ないのは当然だ。会社としての正攻法も、勝利の方程式も、まだそこにはない。
今現在SaaSビジネスに取り組む者たちによって、"正解"は見出されていく。白地は多く、過去の慣習や「当たり前」は存在しない。若手たちが自らの意志と判断によって、リクルートの新たなフロンティアを切り拓こうとしている。
「自分に足りないもの」を埋められる環境がある
保科氏は「自分に『足りない部分』を感じたとき、それを解消するために新たな環境に身を移してきたキャリア」と、自身のキャリアを振り返る。その足取りはこうだ。
小さい頃から「手を使って何かを作ることが大好きだった」と言う保科氏。大学でもプロダクトデザインを専攻し、ファーストキャリアも「自由にモノづくりができる力を付けられるかどうか」を軸に、メーカーのデザイナー職など複数の選択肢の中から、リクルートに入社することを選んだ。
まず任されたのは『リクナビ』のUXデザインだった。『リクナビ』の開発は、年1回のサイトリリースに向けて、ウォーターフォールで進んでいく。ここで大規模なサービスがいかに企画され、実装されるのか、プロダクト開発の基礎を学ぶことになる。
約2年『リクナビ』のデザイン業務に従事した後に異動したのは「全く正反対の環境」だった。新規事業提案制度である「Ring」から生まれた新規事業へのチャレンジを打診され、異動した。「UXチームが3人しかいない環境」で、プロダクト戦略の立案からデザインの考案・実装、PR動画の作成など、ありとあらゆる業務を担当することになる。
保科サービス開発における課題設定から実行まで、一連のプロセスを全て担当する中で力不足を強く感じました。特に、自分にはプロダクト戦略を描く力が全く足りていないと思ったんです。約2年ほど新規事業に携わらせてもらった後、『戦略を描くための力を付けたい』と上長に直訴し、移ってきたのが今のポジションです。
保科氏が現在籍を置くのは、不動産情報サイトである『SUUMO』の分譲マンションプロダクトデザイングループ。『SUUMO』は『リクナビ』同様、規模の大きなサービスではあるがその開発スタイルやスピード感が全く異なる環境なのだという。
「『リクナビ』は年一回のリリースかつ、またリリース後の修正がきかないプロダクトのため、かっちりとした大規模開発の経験を積むことが出来ました。対して『SUUMO』は一般的なwebサービス同様、2週間に1回程度はリリースがあり、常時複数案件の企画や振り返りが走っており、PDCAサイクルも早くこまわりがきく環境です」。イメージとしては、「最初に経験した『リクナビ』の大規模開発と、次に取り組んだ新規事業のまっさらな環境のちょうど中間に位置する場所」と表現する。
担当するのは、『SUUMO』がクライアントに提供する効果の可視化とその効果を大きくしていくための仕組みづくりだ。『SUUMO』の新築マンション領域の効果改善(グロースハック)に関する取り組みが本格化したのは、2019年ごろだったという。様々な仮説検証を繰り返し、クライアントにより大きな効果を返すための運用ポイントは明らかになってきたというが、現在はさらに大きな価値を提供するために「メディアのあり方」そのものを問う議論を進めている。
飲食や美容領域がメディアを用いた集客支援から、SaaSを活用したクライアントの業務支援に進出しているように、不動産領域も今後は業務支援に力を入れていくという。「業務支援に進出したとき、メディアはどうあるべきか」という問いに対する答えを出すことが、保科氏に与えられたミッションなのだ。
保科メディアと業務支援、その双方で売上をあげるためにはどんな連携体制を構築すべきなのかを模索しています。カスタマーに価値あるよりよい接客を受けていただくために、どういった情報を事前にご回答いただき連携するか。たとえば、クライアントがカスタマーに対してより質の高い接客を行えるように、事前の接客準備がスムーズに進むよう、メディアにて事前にカスタマー情報を取得して連携するといったことを検討しています。
『SUUMO』は確かに大きなサービスです。しかし、事業全体として業務支援に注力していくことを考えたとき、メディアも変わっていかなければならない。3~5年後を見据えながら業務支援側との連携体制を構築し、メディア側としても成長し続けるための戦略を練る必要があります。
大小様々なプロダクトを通して、サービスというモノづくりに携わり続けてきたこれまでのキャリア。その時々に自らの「足りない部分」を知り、それを埋めるための経験を積むことで、「自らの手で」プロダクトの未来を生み出す役割を担うに至ったのだ。
「社会に大きなインパクトを生み出す」ためには
それぞれの考えと方法でキャリアを重ねる三人だが、「リクルートでプロダクト作りに取り組み続けている点」で共通している。社外に飛び出すという選択肢もあるだろう。なぜ、三人はリクルートでのチャレンジを続けるのか。浅利氏が理由として挙げたのは「社会に大きなインパクトを与えられること」だ。
浅利現在携わっている「Air ビジネスツールズ」のサービスの一つ『Airレジ』は、50万を超えるアカウント数で利用店舗数No.1のサービスです。参考までに、これは全国にあるコンビニの店舗数の数倍の数字です。日本全国に点在し、多くの人が毎日のように利用するコンビニを遥かに凌ぐ数の事業者に向き合えているという事実が、ここでチャレンジを続けるモチベーションの一つです。
浅利それに、決済という行為自体、多くの人の日常に溶け込んでいますよね。つまり、決済を便利にすることは、多くの人の日常を大きく変えることにも繋がる。そして何より、リクルートの豊富なリソースを使いながら、リクルートにとっての新しいチャレンジに挑めることが面白い。もちろん苦労も多いですが、社会に大きなインパクトを与える可能性がある仕事に、自由度高く取り組めることは大きな魅力です。
「僕も事業を通して、社会に大きなインパクトを与えられることがモチベーションになっています」と重ねたのは保科氏。現在取り組んでいる不動産領域の「伸び代」に触れながら、その意図をこう答える。
保科不動産業界には、さまざまな慣例があります。もちろん、不動産を販売する業者と不動産を求める生活者の双方の利益に繋がるものもありますが、中にはそうなっていない慣習もある。
先程、メディアのあり方の見直しを進める中で、業務支援領域との連携を強めて行くというお話をしましたが、多くのカスタマー接点を持つメディアとクライアントの業務支援の領域ががっちりと手を組むことによって、業界の改善すべき慣習を変えられる可能性が見えてきたんです。それも、カスタマーもクライアントも不利益を被らず、Win-Winな関係になるような形で慣習を変えられる画が見えてきた。
保科まだそういった慣習を変えられたわけではありませんし、具体的な話ができるわけではないのですが、そもそもそういった画を描けること自体が「リクルートならでは」だと思っていて。
業界を変えるためには影響力も必要ですし、より良い構造を生み出すためにはカスタマー、クライアント双方との膨大な接点が必要です。そういったベースが無ければ、業界のより良い未来を描いたところで、絵空事で終わってしまいますし、そもそも現実感が持てません。巨大な産業を変革するような大きな画を「現実にできるかもしれない」と感じ、動けること自体がリクルートで働くことの意味に繋がっていると思います。
2人の意見に同調しつつも川島氏は「あえて別の観点から」、リクルートで働き続ける理由を語ってくれた。「プロダクトグロースに必須の、マーケティングに関する豊富な知見を得られることが大きい」という。
川島僕は現在もこれからも、マーケターとしてプロダクトグロースに寄与していきたいと思っています。将来的には社外でマーケターとしての力を発揮することもあるかもしれませんが、現段階ではリクルートで学ぶことが力を付けるための最短距離だと感じています。
川島なぜならば、リクルートには膨大かつ多様なプロダクトのマーケティングに関する知見が蓄積されているからです。飲食や旅行、不動産から人材、そしてSaaS……。もちろん、これらはリクルートが展開する事業の一部でしかありません。
定期的に、リクルート内のマーケターが集まりナレッジを共有する会が開催されるんです。そこでは、様々な成功事例から失敗談が語られます。事業ドメインやビジネスモデルが違ったとしても「この考えは自分が担当する事業に転用できるな」と感じることが多い。こんなにも多様な領域で、さまざまなフェーズの事業に関する学びを気軽に得られる環境はなかなかないと思います。
こちらの記事は2021年11月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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