不動産業界は、「変わる可能性しかない。」──いざ、40兆巨大産業の変革へ。リクルート住まいカンパニーが明かす勝ち筋とは

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インタビュイー
池本 洋一
  • 株式会社リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長 

1972年滋賀県生まれ。1995年に上智大学新聞学科卒業後、株式会社リクルートに入社。住宅情報誌の編集、広告に携わる。住宅情報タウンズ編集長などを経て、2011年より「SUUMO」編集長を務める。リクルート住まい研究所 所長・SUUMOリサーチセンターセンター長を兼任。

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「不動産業界には、パラダイムシフトが起きている」──そう語るのは、全国の不動産売買・住宅購入・賃貸・リフォーム情報のポータルサイト『SUUMO』を運営する、リクルート住まいカンパニーSUUMO編集長 池本洋一氏だ。

不動産業界はまさに激動のタイミングを迎えていると同時に、様々なビジネスチャンスが生まれ始めている。

池本氏は業界に起こっている変化をポジティブに捉える。その背景には、入社以来リクルートにおいて営業、編集の双方の部署を経験しながら長きにわたって不動産業界に対峙してきた経験がある。不動産業界はこれからどうなるのか、リクルート住まいカンパニーは激変する市場で勝者となれるのか。

彼が見据えている不動産業界の未来、SUUMOの未来を紐解いていきたい。

  • TEXT BY AYA MIZUTAMA
  • PHOTO BY TOMOKO HANAI
  • EDIT BY INO MASAHIRO
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巨大なレガシー産業が、ついに動き出した

FastGrow読者であれば、「不動産業界」という単語から「レガシー産業の代表格」というイメージを持つ人も多いだろう。レガシーという言葉には、不変である、硬直化している、といったイメージもつきまとう。

だが、レガシーであることと、変化することは別の話だ。

例えば、近年の不動産業界を取り巻く大きな変化に、新築価格の高騰を背景とした中古住宅市場の拡大や、それに伴うリフォーム・リノベーション市場の拡大が挙げられる。ここ数年でリノベーション市場に新規参入する不動産会社は枚挙に暇がない。

市場環境の変化に対応しなければいけないのは、不動産ポータルサイトも同様だ。

池本人々が「知りたい情報」だけでなく、これからは「知るべき情報」も届ける必要があります。例えば、ハザードマップの掲載や、住宅性能の可視化。写真や間取りなど物件情報だけを提供するのではなく、家を選択する前に、知っておくべき情報も掲載できる媒体へと変わっていかなければいけません。

人生で一番高い買い物は、住宅だ。その住宅選びに失敗や後悔がないよう、知るべき情報を伝える。消費者と、不動産会社の間に生じる情報の非対称性を解消することに尽力してきた不動産ポータルサイトが次に取り組むべきステップだと、池本氏は語る。

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不動産業界を塗り替えていくテクノロジー

不動産業界の変化を加速させる主役は、テクノロジーだ。様々なテクノロジーによって人々の住まいに関わる体験をアップデートさせていく動きが活発になっている。

池本「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、不動産領域への投資を重点的に行っています。投資対象となっているのは、何かと話題の「WeWork」だけでなく不動産仲介スタートアップ「Compass」や住宅保険スタートアップ「Lemonade」など。投資額は数十億ドルにもなります。なぜこれほど大きな資金調達が行われているのか。

まず、市場規模が他と比較して異常に大きい。そのわりにはIT化が遅れている。ITによって、人員やコスト、工数削減など合理化できる余地がいまだに多く残っているんです。

実際に、米国では先進的な不動産テックサービスが続々と登場してきている。

池本米国ではテクノロジーによって、様々な効率化が起こっています。例えば家の内見がスマートキーを活用し同行者なしで可能だったりします。物件を探して、家の近くに到着したらWEB上の画面に鍵が現れ、暗証番号入れるとオートロックで解除。カメラの顔認証を通って、自由に家の見学が可能になります。

また、1年以内に売り出される確率の高い家が把握できるような新鋭サービスも出てきました。クレジットカードの決済情報から、最近オムツを買い始めたことがわかり、“赤ちゃんが生まれたので、そろそろ広い家を検討するだろう”と想定できるんです。他にも、高齢者向け施設に移ることや離婚することも、さまざまなデータと照らし合わせると予測可能になってきています。

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テックだけでは太刀打ちできない、日本の不動産業界

このような不動産テックの波は日本にも到来している。不動産テック協会が2019年8月に発表したカオスマップによると、掲載サービス・企業の数は「305」。日本においても不動産テックのプレイヤーが増えていることがわかる。もちろん、この波をさらに大きくするべく、リクルート住まいカンパニーも不動産テックに取り組んでいる。

池本例えば、実際に物件見学に行かなくても、行ったことと同レベルの体験ができるサービス。これは米国発の技術なのですが、これをSUUMOにも実装し、バーチャルなのに超リアルに部屋を歩いているかと思える3D間取りを提供していたりします。

先ほど、ソフトバンク・ビジョン・ファンドや米国の事例について述べたが「日本の不動産テックは米国と同じように進化するのか」という疑問を抱く読者は多いだろう。

確かに、今のところ日本の住宅購入・売却などの取引体験がテクノロジーによって抜本的に変わったとはいえない。

そこで池本氏に、日本の不動産業界にテクノロジーが米国と違いなかなか浸透しない理由について伺った。

池本米国と比較して日本の不動産テックの浸透が遅れている理由の1つに、雇用形態の違いがあります。米国では、個人のエージェントが個人の裁量で営業活動を行います。営業成績が向上するのであれば、積極的にIT導入を進めていく動機は高まりますよね。その一方で、日本の不動産業界を支えているのは独立したプレイヤーではなく、不動産会社の一員。

日本の不動産業界にテックを浸透させていく場合、まずは不動産会社単位で導入の意思決定をしてもらう必要があります。それに加え、導入後は実務担当者全員がシステムを円滑に運用できるようなフォローが欠かせません。

日本の不動産業界を変えていくのであれば、優れたテクノロジーだけでは太刀打ちできない。テクノロジー以外に、果たして何が必要となるのだろうか。

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「伴走」こそが、日本の不動産業界を変えていく

米国との違いを踏まえた上で、日本の不動産業界を変えていけるのはテクノロジーと営業のどちらにも強みを持つ企業だと池本氏は語る。

池本日本では、不動産会社にテクノロジーを導入し、各個人が使いこなし組織で成果を出すところまで伴走して初めて機能します。テクノロジー優位であるだけでなく、導入後の支援体制も組んで実行できるかが重要です。

リクルート住まいカンパニーは、営業担当が導入時のフォローはもちろん、導入後の上手な活用まで伴走します。時には電話フォロー部隊まで用意する体制を構築します。不動産業界においては稀有で、フォロー体制の強さが桁違いに違うと考えています。

優れたテクノロジーも使いこなせなければ意味がない。営業担当が伴走することで、テクノロジーに慣れていない企業であっても、離脱せずにテクノロジーを活用し、価値創出につなげられる。SaaSにおけるフィールドセールスやインサイドセールスの役割分担のように、リクルート住まいカンパニーでは営業の役割を分けて協業している。

伴走による企業理解、信頼獲得を土台に、リクルート住まいカンパニーの営業担当はさらなる価値創出につなげているという。

池本リクルートの武器は「圧倒的な営業力」です。『SUUMO』の売上が1,000億円に到達した理由は、広告効果が爆発的に伸びたことに加えて、お客様のお困りごとを解決してきたからなのです。

不動産会社やマンションディベロッパー、ハウスメーカー、建築会社など、様々なお客様の悩みに真摯に耳を傾け、そのコンサルティング分の対価を頂いてきたから、売上も伸びました。人の介在価値が、私たちの競争優位性でもあるんです。

例えば『SUUMO』に掲載されている物件に関する情報量だけを比較した際に、同規模の不動産サービスは他にも存在する。だが、クライアント企業に対する課題解決力で他社に劣ることはない、と池本氏は『SUUMO』への自信を覗かせる。

池本今後、『SUUMO』はクライアントの集客支援における貢献度合いをUPしていくことに加え、クライアントの業務支援・経営支援にも貢献できる存在を目指すフェーズです。それを成し遂げるには、SUUMOのメディア媒体への掲載で集客効果を高めるだけでなく、お客様のお困りごとを解決し、クライアントの業務支援・経営支援につながるような活動をしていかなくてはいけません。

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リクルート独自のアセットが業界変化を加速させる

変化の真っ只中にある不動産業界において、人の介在価値を最大化させるアプローチをとるリクルート住まいカンパニー。クライアント企業の課題を解決する上では、リクルートグループに蓄積されている「人」に関するナレッジが武器になる。

池本クライアント企業が抱える経営課題を解決するために、我々は様々な支援をします。もちろん、SUUMOを通じた集客課題の解決は大前提です。

そこに加え、クライアントの経営コンサルティングとして、いかに人を活かすか、採用コストを減らして合理化するか、人が辞めない魅力的な会社にしていくか、などの課題にも伴走させていただいています。テクノロジーの知見だけでなく、弊社の人事制度の知見を通して、期待に応えていこうとしています。

なぜ、クライアント企業の採用や組織づくりが業績向上のための課題となっているのだろうか。その背景には、不動産業界で求められている人材像が変化してきていることがある。営業が電話や訪問に勤しみ、時には他の営業の客を奪ってまで成果をあげようとするような仕事ぶりは過去のものになりつつあるという。

池本最近は、住宅・不動産領域に、ファッション業界やデザイン業界から人が流れ込んでいるんですよ。昨今のトレンドは新築ではなく、リノベーション。既存の不動産をどう利活用、変化させて、新たな価値を生むかを考え提案するビジネスが伸びています。

この潮流変化に可能性を感じ、 ファッション業界やデザインやITを勉強してきた人など、色とりどりの職歴を持った人材が業界に入ってきています。

彼らは「変えられる可能性しかない」と思って、不動産業界に転職しているんですよね。過渡期だからこそ、自分の介在価値を感じている。彼ら変革者とリクルートの営業は、ウマが合っていて。「一緒に業界を変えていきましょう」と、まるで同志のように切磋琢磨する、新しい関係性が生まれています。

リクルートグループは、人材育成含めた組織課題に関して大量のノウハウを保有している。採用難の時代だからこそ、リクルート流の人材の採用及び育成のノウハウに注目が集まっている。

池本事業の拡大において大切なのは「人」です。リクルートには、40年以上にわたって蓄積されてきた採用・育成のノウハウがある。

リクルートの営業は、自らの身をそこに置くことで、そのノウハウを吸収、風土を体験できる。我々は顧客の事業業績を伸ばすために、広告・接客の改善提案はもちろんのこと、時には顧客の採用戦略、組織活性にも言及してきます。

例えばその人事・採用戦略にまで提案したことで、先方の課題である入社後3年の退職率を5割から2割に減少させたり、新卒の採用人数倍増できたり、といった実績も出てきています。

リクルート住まいカンパニーは、ただ業界の変化に適応しようとしているわけではない。彼ら自身が、不動産業界に変化をもたらす旗手となろうとしている。

彼らは、不動産ポータルサイトを進化させ、テクノロジーを活用した新たな体験を創出する。そしてクライアント企業に伴走しながらテクノロジーを導入し、コンサルティングを通じて課題を解決していく。

こちらの記事は2019年12月17日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

水玉 綾

フリーランスの編集者・ライター。株式会社CRAZYにてオウンドメディア「CRAZY MAGAZINE」を立ち上げ、編集長に就任。コーポレートブランディングの変革を目的に、自社の働く環境を発信したのち、2018年7月からフリーランスへ転身。現在は、HR領域・働き方・組織論のテーマを中心に、Web・広告・小冊子の制作から、オウンドメディアの支援等。

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花井 智子

ライター/編集者。1991年生まれ。早稲田大学卒業後、ロンドンへ留学。フリーライターを経て、ウォンテッドリー株式会社へ入社。採用/採用広報、カスタマーサクセスに関わる。2019年より編集デザインファーム「inquire」へジョイン。編集を軸に企画から組織づくりまで幅広く関わる。個人ではコピーライティングやUXライティングなども担当。

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モリジュンヤ

1987年生まれ、岐阜県出身。大学卒業後、2011年よりフリーランスのライターとして活動。スタートアップやテクノロジー、R&D、新規事業開発などの取材執筆を行う傍ら、ベンチャーの情報発信に編集パートナーとして伴走。2015年に株式会社インクワイアを設立。スタートアップから大手企業まで数々の企業を編集の力で支援している。NPO法人soar副代表、IDENTITY共同創業者、FastGrow CCOなど。

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