「今、ここに、集う、歴戦の猛者」──“圧倒的勝者”がいないマーケット。
一体誰が先行者利益を掴むのか!シニアマーケットに集う起業家/事業家特集
近年、レガシー産業のDXに対して、これまで以上に熱視線が注がれている。それもそのはず、デスクワーク系のホリゾンタルSaaSを筆頭に、日本でも既にユニコーン起業が生まれ、徐々に業界は成熟期を迎えつつあるからだ。
日本の起業家や事業家は、“次にブレイクする領域”を虎視眈々と見定めている。中でも大きな可能性を秘めているとされているのが、「シニアマーケット」である。
事実、シニアマーケットには代表するサービスや商品が未だに存在していないと言える。「シニアマーケットといえば?」と問われても、すぐに思いつくサービスや企業名が出てこないのがその証拠であろう。
そんなシニアマーケットに、今、他業界で経験を重ねたプロフェッショナル達がこぞって押し寄せている。
今回は、その中でも“一歩先を行く”と感じる起業家/事業家をFastGrowの独断でピックアップ。圧倒的な勝者がいないマーケット。誰も解を知らないマーケット。先行者利益を掴むのは一体誰か。
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
LIFULL senior
“僅か数年で10倍以上の規模の競合サービスに打ち勝つ ”──代表取締役 泉 雅人氏(いずみ まさと)
最初に紹介するのが、LIFULL seniorの代表取締役 泉 雅人氏だ。同氏がシニアマーケットに乗り込んだ理由、それは意外にも上述したマーケットポテンシャルに惹かれたためではない。
「“人参”のために働くつらさ、“人”のために働く喜び」に気づいたからだという。
泉氏の経歴とともに、シニアマーケットとの出会いを紹介しよう。
新卒で営業職として中古車業界に飛び込み、泥臭い営業活動によりセールスパーソンとしての力を養った泉氏。その後リクルートに転職し、事業家としての心得、組織力の偉大さを学び、キャリアとしても脂の乗った3社目として、とあるITベンチャーの立ち上げフェーズに飛び込んだ。
そこで約三年間、「お金を稼ぎたい」という野心のもと、事業を一からつくり上げていく、Webサービスを収益化させていく、など様々な経験を重ねながらも、そんな毎日に「どこか違和感を感じ始めた」というのだ。
“馬の鼻先に人参をぶら下げる”と言いますが、“人参”のために働くのはとてもつらいということに気づいたんです。それから、純粋に人の役に立つことをしたいと思うようになりました。
「人の役に立つことをしたい」そんな想いを胸に新たな企業を探す中で、偶然出会ったのがLIFULLだった。LIFULLグループの代表である井上氏の想いに感動して、すぐさま入社を決めた泉氏であるが、当時は「介護にはほとんど興味がなかった」という。
LIFULLがWeb領域の新規事業をどんどん展開していた折に、偶然携わることになったのが、まだ社内でもできたばかり、後にLIFULL seniorの主力事業でもある『LIFULL 介護』の元となるサービスだったのだ。
そんな『LIFULL 介護』は、介護施設や老人ホームをはじめとした、高齢者向けの施設・住宅情報を日本全国38,000件以上掲載する、業界でも最大級の利用者数を誇るサービスだ。
しかし、サービス立ち上げ当初には既に世の中には類似の他社サービスが存在しており、『LIFULL 介護』が100〜200件程度の掲載数である一方、競合サービスは2,000件を超える掲載数を誇っていた。その規模の差は10倍以上であった。
サービスとしては完全に後追い。そこからどのようにして、現在のように業界最大級の規模にまで掲載数を拡大したのだろうか?ここで前職ではWebサービスのグロースに携わっていた泉氏の手腕が遺憾無く発揮される。
泉氏は、これまで一人の営業により一件ずつ掲載数を増やす手法を抜本的に改革。まずは、“顧客数”ではなく“情報量”を増やしていくことにシフトした。泉氏曰く「ポータルサイトの価値とは、“たくさんの情報があること”」だという。つまり、“情報量の多さ”が、ユーザーの満足度を高め、結果的にポータルサイトの利用頻度を高め、Googleのアルゴリズムからも良い評価を受けやすくなるのだ。
そこで泉氏は、介護業界で介護の情報を多く蓄積している企業と連携し、送客支援の見返りとして、情報を提供してもらう、まさにWin-Winなスキームの構築に成功。これを起点にポータルサイトの利用者数は増加し、メディアとしての影響力を高めていった。結果営業に頼らずとも、介護施設の方から「ウチも掲載したい」と沢山の申し出を獲得することができたのだ。
10倍以上の規模を誇る競合サービスが存在するマーケットにおいて、後発ながら僅か数年で業界最大級の事業を創り上げたLIFULL senior。その躍進の立役者である泉氏を筆頭に、同社には他業界で経験を重ねたプロフェッショナル人材達が続々とジョインを決めているという。
一体なぜだろうか?
その理由とはズバリ、“定石が通じない”シニアマーケットのユニークさ、難解さにある。
シニアマーケットは、世の中の当たり前、これまでのマーケティングの常識などが通用しづらい、ユニークな業界。だからこそ面白いんです。
こう語るのは、現在『LIFULL 介護』の事業責任者である原田 邦昭氏だ。これまで、リクルート『東海じゃらん』の編集長など、複数のWebメディア、フリーペーパーのグロースや立ち上げを行ってきた経歴を持つ、メディアマーケティングのプロフェッショナルだ。
しかし、そんな原田氏を持ってしても、シニアマーケットの攻略は困難を極めるという。
なぜ、世の中の当たり前やこれまでマーケティングの常識が通用しないのだろうか?なぜ多くの優秀なビジネスパーソンがここぞとばかりにシニアマーケットに飛び込んでいるのか。
その“ワケ”をさらに追求したくなったそこの貴方は、既にこのマーケットの魅力に取り憑かれているかもしれない。
プロにとってもシニアマーケットの攻略が難しい理由とは?
Rehab for JAPAN
Hot Pepper Beautyの超グロース牽引者が、“究極のUX”を実現する挑戦へ──取締役副社長COO 池上 晋介氏(いけがみ しんすけ)
上述の泉氏・原田氏らと同様にリクルートで大きな成果を残し、「介護リハビリテック」へのその挑戦の場を移したのが、池上晋介氏だ。
まだ介護事業出身者がメンバーのほとんどだった創業期のRehab for JAPANに出会い、創業代表の大久保亮氏と意気投合。デイサービス施設向けに展開してきたSaaSプロダクト『リハプラン(現Rehab Cloud)』を中心とした事業を力強く推進している。
Rehab for JAPANが資金調達
— Sugu@Findy CFO(海外事業立ち上げ専任中) (@sugnchi) February 1, 2023
日経にも掲載されてます!
COOは元リクルートのHPBレジェンド池上さん!「イケてる老後をデザイン」することに挑戦してます!
応援https://t.co/IT9davzhfu
身体機能変化をAIで予測 リハブフォージャパン:日本経済新聞https://t.co/3adIUalMDG
そんな池上氏はリクルート在籍時、Hot Pepper Beauty事業で統括プロデューサーを務め、売上規模を200億円から700億円にまで拡大するフェーズを牽引した人物である。これが、「toCアプリをグロースさせた」というだけにとどまらないことは、FastGrowの読者ならわかるだろう。いわゆるリボンモデルのもう片方、美容室の顧客を獲得した裏側のプロダクト『サロンボード』が、その成長のキモである。事業者側のUXを突き詰め、事業成長させるというDXを成し遂げたわけだ。
同社にシード投資したライフタイムベンチャーズの代表パートナー・木村亮介氏(Rehab for JAPAN社外取締役も兼務)は、池上氏について次のように語る。
池上さんは、僕から紹介するのはおこがましいくらいの“すごい人”です。日本で本当に業界のDX化を実現したプロダクトの中で、ホットペッパービューティーとサロンボードは間違いなく圧倒的にナンバーワンだと僕は思っています。そんな方が本当によくジョインしてくださったなと思います。
でも、それだけではありません。池上さんって全然偉ぶらないんですよ。もうちょっと主張した方がいいんじゃないですかって思うくらい、謙虚な方で。リクルートや美容業界での学びは生かすのですが、Rehabのメンバーに対してもお客さんに対しても、本当にその人が求めていることを深く考えられますし、押し付けることもない。すごく気遣いをされる方だなと思います。
リクルートを代表する、いや、日本を代表するとも言えるほどのDXプロダクトを生み出した人物が、次なる挑戦の場として選んだのが介護リハビリテック事業を進めるRehab for JAPAN。その理由について、過去のインタビューで熱く語られた内容をここに再掲しよう。
社会インフラやITの導入が不十分すぎる状況で、高齢者の生活には選択肢が少ない。エンドユーザーが全然潤っていないんです。「これは自分がやるべきテーマなんじゃないか」と思い至ったんです。
人は、人生の終わりが近づいてきたとき、ささやかな日常を味わいたい、願わくばもう一度元気になりたい、といったように、再び根源的な欲求に戻っていくような気がします。身体能力だけでなく、社会的にも精神的にもその人がその人らしくいられる環境を作る。UXデザインの分野が強みである自分にとって、高齢者の生活をデザインすることは、いわば「究極のUXデザイン」に挑戦することのように思えて、情熱が宿ってきました(笑)。
“レジェンド”とも呼ばれる池上氏が、シリーズDラウンドの調達も経て、いったいどのような介護リハビリテック事業を生み出し、グロースさせていくのか。
リクルートだけでなく、エス・エム・エスやラクス、フォースタートアップスといった著名スタートアップからのジョインも増えているRehab for JAPAN。マチュアなメンバーたちのさらなる躍動が気になるばかりだ。
オースタンス
「大好きなダンスだけでは生活できない友人のために」から始まった──代表取締役社長 菊川 諒人氏(きくかわ りょうと)
次に紹介するのは、オースタンスの代表取締役社長 菊川 諒人氏だ。 オースタンスは日本最大級のシニア・中高年向けコミュニティサービス「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」を運営するほか、会員データベース、シニア特有の”UIUX”や”マーケティング”の知見を活用することで、 法人・自治体の既存事業のグロース、新規事業開発の戦略策定や実行支援を行う企業だ。
「趣味人倶楽部」は主に50〜70代の年齢層に利用されており、なんと月間PV約3000万、会員数約35万人(2022年7月時点)。旅行・カメラ・ゴルフ・カラオケ・社交ダンスなど、趣味をきっかけにオンライン・コミュニティに参加できるほか、オフ会などのリアルイベントで交流するチャンスもあるという。
現在、シニア層から熱烈な指示を受ける「趣味人倶楽部」を運営するオースタンスではあるが、元々、シニア向け事業に特化していたわけではない。
「私の好きが、世界を、動かす。」をビジョンに掲げ、多方面でのエンターテインメント事業を手がけてきたのだ。ここからは、菊川氏が辿ってきたキャリアからシニアマーケットとの出会いを紐解いていこう。
菊川氏が起業したのは2015年。きっかけは、シェアハウスのルームメイトに「活躍の場」を作れないかと考えたことだった。ルームメイトは、世界的なコンテストでも上位に入賞するほどの腕前。しかし、当時ダンスを仕事にするのが難しく、それだけでは生計が立てられず悩んでいたのだという。
そんなルームメイトをみて、その才能を生かせる場はないかと考えはじめたのが、「結婚式でのパフォーマンス」だった。丁度、当時はフラッシュモブが注目され始めた時期でもあり、菊川氏の友人の結婚式で依頼されたのがきっかけであったのだ。
そのパフォーマンスは大好評。ルームメイトにも報酬も渡すことができ、式が終わった後「こんなにもらえるの?」と驚くダンサーの顔をみた菊川氏は「もっとこの喜びを多くの人に届けられないか」と考え、結婚式でのパフォーマンス事業の立ち上げに至る。
アーティストを支援したい想いや菊川氏の熱量にひかれ、協力者も徐々に集まり、事業は徐々に拡大。当初は副業で取り組んでいた菊川氏だが、業界最大手のウェディング会社との提携も決まったタイミングで法人化。在籍していたリクルートを退職し、起業家としての道を歩む意思を固めたのだ。
創業から4年間は自己資本経営にこだわり、アーティストの雇用創出のために事業領域も拡大。イベントの企画やアーティスト支援、クリエイティブ制作など、ウエディング周辺へも手を広げていく。
ただ、菊川氏の会社の捉え方も徐々に変化していく。経営は安定しており、着実に伸びてはいたものの、その伸び率や緩やか。その状況に危機感を覚えはじめたのだ。
より挑戦できる環境を作る上で何ができるか。熟考の末辿り着いたのが、シニアマーケットだったのだ。しかし、そのシニア領域との出会いは、様々な事業をする中で偶然に出会ったものだった。
きっかけは、シニアダンサーを起用して制作した動画だ。アメリカの歌手ブルーノ・マーズの「24K Magic」に合わせ、60歳前後のダンサーがキレのある踊りを披露する。この動画が、ストリートダンス界を中心に世界的な注目を集めた。
YouTubeにアップした途端に再生回数が伸び、ブルーノ・マーズ本人にもシェアされた結果、世界で数億回も再生されている。好きなことに、真っ直ぐ取り組んで輝くシニアダンサーを見たとき、菊川氏は「何かをはじめたり、挑戦する上で、年齢は関係ない」と気づかされたのだという。
これを機に、オースタンスは55歳以上のエンターテインメント集団『シニアモンスターズ』を結成。CM出演など活動の場を広げていった。その中で、菊川氏はシニア世代のファンからある声を聞く。
「私も何かを発信してみたい」「もう一度、目標を見つけたい」「同世代のつながりを作りたい」という声だ。一見当たり前のようだが、そうした気持ちは誰もが持つもの。ただ、年齢が理由でないがしろにされている部分があるかもしれないと菊川氏は違和感を抱き始める。
そして、アイデアを整理する中、シニア向けサービスで真っ先にベンチマークをしたのが、DeNAが2007年から運営していた『趣味人倶楽部』だったのだ。
シニア世代が趣味でつながれるコンセプトはもちろん、Webサービスが浸透しやすい年齢層ではないにもかかわらず、33万人(※2019年3月時点)の会員数を有していたからだ。なぜ日本で最大級といえるまでサービスを伸ばせたのか、徹底的にリサーチを重ねたという。
その折、偶然にも菊川氏はスタートアップの経営者を取り上げるテレビ番組で、DeNAの南場智子氏と共演する機会に恵まれた。何かのチャンスになるかもしれない──そう感じ、菊川氏は収録後すぐさま想いを込めた長文メッセージを送付。南場氏からもすぐに返答があり、会食まで取り付けた。
南場氏に直接「私の好きが、世界を、動かす。」というビジョンの本気度を熱弁。結果、『趣味人倶楽部』を事業譲渡という形で譲り受けることが決まったのだ。2019年5月運営会社の表記がオースタンスに変更された。
「世界的にも評価を得ているダンサーの友人が、大好きなダンスだけでは生活できない。この状況を何とかできないか」から始まったオースタンスの事業はシニア向けの領域で確実に存在感を強める。市場の熱は間違いなく高まり、プレイヤーもまだ集まりきっていない領域だけに、今後の更なる伸びしろに期待したい。
aba
たった一人の、たった一つの課題意識から始まったプロジェクトが介護の常識を変える──代表取締役 宇井 吉美氏
最後にご紹介するのが、aba代表取締役の宇井 吉美氏。同社は、においで尿と便を検知する排泄センサーをベッドに敷くことにより、おむつ交換のタイミングを通知する排泄ケアシステム「Helppad(ヘルプパッド)」の開発。また、介護業界への事業参入を考える企業を支援するチーム「aba lab」の運営なども行う。
abaが目をつけた課題は、介護の中で最も重く深いとされる「排泄」だ。排泄は高齢者・障害者の尊厳や羞恥心に直結する上、介護者側の負担も大きい。また介護施設では1日15時間以上もおむつ交換業務を行っているとの見方もあり、またそのうちの20-30%は空振り、さらにおむつの外に尿や便が漏れれば洋服やシーツまで交換するため、通常のおむつ交換時間の10倍以上の時間を要するという。この排泄にまつわる課題を解決するために開発したのが、ヘルプパッドだ。ベッドに敷くだけで、においで排泄を検知し、介護者に知らせが届くことで、無駄な空振りや尿便漏れから解放されるのだ。
ペインの大きさに関わらず、これまでなかなかテクノロジーの焦点が当たることのなかった排泄問題に対して、鋭い切り口対でソリューションを提供する「Helppad(ヘルプパッド)」は介護施設からの支持を集め、既に約20施設に導入、また約100施設以上にレンタル・デモされているという(2022年4月27 時点)。
また、2023年2月7日には、新たな資金調達も発表。累計調達額は12億円にも登る。投資家には、Sony Innovation FundやSMBCベンチャーキャピタル、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUNDなどが名を連ね、その注目度の高さが伺える。
そんなabaは元々、創業者である宇井氏一人の、たった一つの課題意識から始まったabaプロジェクトだという。その詳細はぜひ同社が発信するインタビュー記事をご覧いただきたいが、ここでは宇井氏がシニアマーケットに興味を抱いたきっかけを抜粋してご紹介したい。
abaのビジョンは「支えあいが巡る社会」。そのビジョンの背景にあるのが宇井氏の幼少期の原体験である。
宇井氏の祖母はうつ病を患っていた。厚生労働省によるとうつ病の生涯有病率は6%であり、また年々その割合は増加傾向にあるという。決して“ひと事”ではない問題であろう。
そんな祖母に対して、うつ病に対する理解がまだ乏しかった幼少期の宇井氏はきつく当たってしまうことも少なくなかったという。それもそのはず、当時はまだインターネットが普及したばかり、また宇井氏が生まれ育ったのは電車が1時間に1本しか通らないような田舎。まだまだ地域で情報格差があった中、当時学生であった宇井氏が正しいうつ病の情報にアクセスできる機会は乏しかったのである。そこで、宇井氏は祖母のために、何もできる術がないことに対してもどかしさを覚えたのだという。
一見、そのような原体験から排泄ケアのロボットが生まれることは想像しにくい。なぜ「フリーペーパーやウェブサイトをつくって、分かりやすい介護の情報発信をする」というソリューションではなかったのだろうか。ここで、宇井氏のユニークかつ本質的な視点が活きる。
おばあちゃんの病気にしろ、なんにしろ、病気って千差万別で山のようにあるじゃないですか。で、こういったコロナのように新しい病気、ウイルスもでてくるから、必要なときに必要な情報を取りに行くと、ちょっと遅れちゃうと思っていて。
そうではなくて、ロボットは自分自身が感じて考えて動けるんですね。
だから人間と同じか、むしろ人間より先回りして、こういう病気の人にはこんなケアをあげたらいいよとレコメンドできる、提案できるような仕組みやサービスが欲しいのです。
だから私は、情報商材を作るというやり方ではなくて、テクノロジーの中でもロボティクスをやっているという感じですね。(抜粋)
あとはおばあちゃんがうつ病だったから、うつ病対策のロボットを作りたいなーと思っていて、それこそ、学生の時は精神病棟とかに見学に行ったりしていました。
そういうところにも行って思ったのが、うつ病になった人って、精神病でうつ病になっちゃったというより、生活をしていたら、何かの理由でうつ病になっちゃったっていう順番じゃないですか。それで病棟に入る。だから病棟に来た人たちをどうにかしようとしても、もう遅いなと思ったんですよ。
病楝に入ってからうつ病対策を打つよりは、もっと前の段階で、生活の中で携わるようになりたいと思いました。
千葉工業大学の未来ロボティクス学科在学中に「ロボットだからこそできることがあるのではないか」とabaを創業。
偶然にも、介護職の現場の人々に「おむつを開けずに中を見たい」と言われたことがきっかけで「Helppad(ヘルプパッド)」の開発が始まったのだ。
一般的に、介護現場といえば多くの人間が「お年寄りの入浴や排せつ、食事の介助などは大変そう」とネガティブなイメージを持ってしまっているのではないだろうか。しかし、宇井氏はそんな介護現場に対して「介護現場をどうしていきたいというよりは、介護現場がすでにステキで素晴らしいから、それをもっといろいろなところに広めたい」と語っている。
介護では避けて通れない排泄の課題解決に、執念ともいうべき情熱を傾け、介護職としての現場経験を元に最新テクノロジーを駆使して開発した「ヘルプパッド」を武器に、課題の根本的原因にアプローチし解決を試みるaba。宇井氏は「介護事業以外にも保育や貧困など、社会保障が関わるすべての領域にチャレンジしていきたい」と語っている。宇井氏の挑戦はまだまだ始まったばかり。FastGrowでも引き続きその動向に注目していきたい。
こちらの記事は2023年03月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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藤田 慎一郎
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