アーリーフェーズのスタートアップこそ組織開発者を採用すべき?──ハイ・シナジーコミュニティを提唱するSEPTAが語る、急成長企業こそ重視すべき組織づくりの要諦

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インタビュイー
山口 貴士

新卒で外資系コンサルティングファームに入社。事業再生部門において、中期経営計画策定支援、財務モデリング、事業戦略策定及び実行支援、事業及び財務デューデリジェンス、資金繰りモデル作成支援等のプロジェクトを経験。2019年11月に親友のPwC同期とともに、株式会社ExPAを共同創業、CEOに就任。2020年4月にCEOを交代、COOに従事。同年8月にExPAを辞任、新たに株式会社SEPTAを設立、CEOに就任。

東山 侑真

新卒でSNSマーケティング系のベンチャー企業に入社。事業開発部門において、主力サービスの新規機能開発/企画/機能改善/マーケティングなどを経験。2017年2月にヤフー株式会社へ転職し、飲食店領域において、新機能開発/検索改善/インフラ構築/プロジェクトマネジメントなどに従事。その後、ヤフー時代の同期とともに、フリージア株式会社を共同創業。2020年8月にフリージアを辞任。2020年10月に株式会社SEPTAにジョインし、2022年8月に取締役に就任。

八重尾 隼人

新卒でNTTグループのSI企業に入社。システム開発部門において、大規模システム開発を中心としたプロジェクトリードを多数経験。その後、人材紹介会社では、MVPを獲得すると共にチームリード、採用面接官等を経験。2019年3月に外資系コンサルティングファームに入社。人事コンサルティング部門で、人事戦略、業務・システム改革、PMO支援を多数経験。2023年4月に株式会社SEPTAに人事責任者としてジョイン。

青嶋 久美

新卒以降一貫してクライアント・ファーストの企業に勤務。全国ホテルチェーン受付、完全会員制の高級レストラン受付、リクルートグループの企画推進・営業アシスタント等を経験。結婚・出産を経て2022年7月に株式会社SEPTAにジョイン。現在は主にキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーとしての業務に従事。

神林 里奈

新卒で大手鉄道会社に入社。事務系(鉄道・開発)職員として、物産イベント企画、地域観光開発等を経験。また、社内リクルーターに選出され、採用面でも貢献。2022年9月に株式会社SEPTAにジョイン。現在は主にキャリアアドバイザーとしての業務に従事。

海野 航平

新卒で某大手小売会社に入社。店舗業務にてKPI管理と従業員のマネジメントに従事。2023年4月に株式会社SEPTAにジョイン。現在は主にキャリアアドバイザーとしての業務に従事。学生時代は競技ダンス部に所属し、学生全日本大会での優勝経験あり、現在もアマチュアで活躍中。

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アーリーフェーズのスタートアップと言えば、組織開発は伸びしろばかり。

本来であればミッション・ビジョン・バリューのもと、真っ直ぐに事業を伸ばしていくことが肝要だ。ところが、経営者が朝礼暮改で現場を混乱させたり、マネージャーが現場に出続けて若手の成長機会を奪ってしまったりというケースは少なくない。

もちろん、あらゆるリソースに欠けるスタートアップ組織であれば、そういう事態が起きることはあるだろう。だが、経営の意思決定に現場が振り回されていては、メンバーはいつまで経っても事業を自分ごととして捉えることができない。その結果、働くモチベーションを保つことが困難となり、組織への定着率にも悪影響を及ぼしてしまう。

そんな少人数かつ立ち上げ間もない組織が抱える難所に向き合い、理想的な組織開発を進めているスタートアップが存在する。それは、2020年8月に創業したフリーコンサルタント向けマッチングプラットフォーム『CoProJect』を提供するSEPTAだ。

同社は、“個のWILL”と“組織のWILL”が双方で共鳴し、相互の目標やミッションを達成していく、“ハイ・シナジーコミュニティ”という次世代型の組織を志向している。これまでFastGrowでは、SEPTA代表・山口氏の取材をはじめ、同社が目指すユニークな世界観を伝えてきた。しかし同社もまた、スタートアップが陥りがちな課題と向き合い、模索しながら組織づくりをおこなっているのも事実。

今回は、SEPTAの経営陣から現場メンバー総勢6人に時間をもらい、スタートアップの組織が直面するリアルな課題と、そこからどう乗り越えようとしているのか話をうかがった。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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ミッションが現場メンバーに浸透していない。
スタートアップ経営者が陥りやすい罠

「SEPTAは毎年、着実に事業の売上げを伸ばしている一方で、組織としての進化や変化には伸び代がある。まずなにより、経営層の想いが現場に伝わっていない。このままでは、いずれ組織は良くない方へ向かっていくだろうなと、そんな危機感を持っていました」

そう語るのは、元外資系コンサルティングファーム出身で、組織開発を実践してきた経歴を持つ八重尾氏だ。

彼は、2023年4月にSEPTAの人事責任者として入社。そこから1週間も経たず上述の課題に気づき、代表・山口氏に直談判を申し出たのだという。

八重尾入社後、最初におこなった施策がeNPS調査でした。これは職場の愛着度、満足度を数値化したもので、いわば働きがい調査のようなものです。その結果、経営層が掲げているミッションが現場メンバーに浸透していないまま事業が走り出していたことが判明しました。

八重尾他にも、私が見る限り、経営トップの言動が一致していないと感じる場面が少なくありませんでした。社会情勢やユーザーニーズに対応するために経営方針を変えることは必要です。しかし、当社では経営層が一時の感情から「こうすべきだろう」と意思決定をくだしてしまうことがこれまでは多くて。その都度、現場はどのように業務を進めていけばいいか分からず混乱が生じていました。

そうした状況が組織に悪影響を及ぼしているのではないか──。気付けば3時間にわたって八重尾氏は真剣に経営トップに意見を述べていたという。

最初に断っておくと、SEPTAの経営層とメンバーは決して仲が悪いということではない。むしろ、取材前から笑い声が飛び交い、入社歴の浅いメンバーが、経営メンバーに気さくに話しかけにいく様子を取材陣は目にしている。

話を戻そう。冒頭の八重尾氏の言葉に、耳が痛くなる思いをした読者も多いのではないだろうか。取締役の東山氏は、これまでのマネジメントの課題を次のように振り返る。

東山我々は、“ハイ・シナジーコミュニティ”という新たな概念の組織を追い求めるがゆえに、メンバーに対して「ぜひSEPTAを通じて自己実現を目指してください」と謳ってきました。

ところが、現場では「そもそもどうやって自己実現をしたらいいの?」「その想いをどうやって事業に活かせばいいの?」と、SEPTAのミッションが事業やメンバーとかみ合っていなかったんです。もっと段階を踏んでミッションを浸透させていくべきでした。

東山さらに業務に関しても、本来はチームにとっての最適解があるはずが、私や山口の過去の経験や価値観をベースとして、経営層が最適だと思うフローを適用していたんです。今、振り返るとメンバー一人ひとりの想いや悩みに合わせたアクションができていなかったと思います。

自分たちが目指す組織に早く近づきたい。そうした焦りから、メンバーが腹落ちする前に組織としての戦略や打ち手を誘導してしまう。もちろん、決して悪気があったわけではなく。

山口経営層は本来、マネジメントを担う立場であるにもかかわらず、「早く結果を出さなければ」「事業を育てなければ」という焦りから、自ら現場に出てあらゆる契約を取りにいってしまうこともありました。それでは若手たちは育ちませんよね。

意図せぬトップダウンや、経営層が数字目当てに現場に出続けてしまうこと。特にリソースが足りていないアーリーフェーズのスタートアップではよくある光景なのかもしれない。だが、若手がどんどん経験を積み、スキルや知識を習得していけば、生産性が向上し、より業務の幅が広がる。そうすれば、組織全体の成長も期待できるのは確かだ。

とはいえ、今回のように組織経営の課題や問題点をはっきりと突きつけられた場合、その言葉に聞く耳を持てる経営者はどれだけいるだろうか。

八重尾一般的に、組織のメンバーから「あなたの経営はここが良くない」と指摘されたら、「お前に何が分かるんだ」と素直に受け入れられない経営者は多いと思うんです。特に、自分でゼロから事業を立ち上げ拡大させてきた人は、思い入れも強いはずですから。

ところが、山口は違いました。入社の浅い私の意見を正面から受けとめ、「ありがとう」と最後まで話を聞いてくれました。そしてもちろん、受けとめるだけでなく、明日からの事業経営にも活かしていくと。

経営層がこのように組織のメンバーの声に耳を傾ける姿勢であるならば、これからどんな課題が生じてもSEPTAなら乗り越えていけるはずだと、ポジティブな未来がはっきりと見えた瞬間でしたね。

なぜ、山口氏は素直に八重尾氏の言葉を受け入れることができたのか。それは何より、SEPTAの“ハイ・シナジーコミュニティの創造”というミッションに由来しているからに他ならないだろう。

それは、「個人と組織のWILLが共鳴した自由度の高いコミュニティ」を目指すことを意味する。SEPTAでは、個人と組織の双方のWILLの実現に向けて、必要とあらば組織の形を変えていくことさえ厭わない。まさに、同社のミッションドリブンな姿勢を体現するかのようなエピソードだ。

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アーリーフェーズのスタートアップでは異例とも言える、「組織開発者」のアサイン

ハイ・シナジーコミュニティの実現というミッションに向け、組織開発の観点から期待を寄せられる八重尾氏。先のようなエピソードは、SEPTAに限らず経営者なら是非とも進言してもらいたいと思う内容だろう。

特に創業浅いスタートアップであれば、組織の状態よりも事業の数字状況に目が行きがちなもの。そこに対し、しっかりと事業と組織を両輪で回していけるような気づきや視点をもたらしてくれる存在は貴重だ。

そんな八重尾氏だが、直近では経営層と現場の間で生じていたコミュニケーションの障壁にも細心の注意を払っている。特に現場のメンバーが今、何を感じているのか、何に悩んでいるのか。また、仕事で頑張り過ぎてはいないかなど。現場の声に積極的に耳を傾けるようにしているというのだ。

八重尾理想としては、現場の想いをすべて知りたいんですよ。人の心は、1日単位、1時間単位でも変わっていきますから。何かあれば早急に手を打たなければなりません。そして、必要に応じて経営層まで素早くエスカレーションをすること。一人ひとりが悩みや不安を抱えこまず、気持ちよく仕事と向き合える環境づくりを心がけています。

アーリーフェーズのスタートアップであるSEPTA。2023年4月現在、13人という組織規模にもかかわらず、ここまで組織改善に向けて取り組めるメンバーを採用していることから、組織づくりに対する本気度が見てとれる。

なぜ、SEPTAではそこまで組織開発に力を入れているのだろうか。そう取材陣が問いかけると極めてシンプルな答えが返ってきた。

山口我々は、“ハイ・シナジー”を社会に実装することを掲げている会社だからです。であるならば、当然それを自分たちの組織内でも実践できなければなりません。

一般的に我々のような企業フェーズでは、即戦力となる人材採用に向けて経験豊富な人事担当者をアサインすることはあっても、組織開発者を採用することはほとんどないでしょう。なぜなら、限られた経営資源の中で、創業者は自分が事業に詳しいという思いもあり、組織のマネジメントも先頭に立って手がけていることが多いからです。

一方、我々SEPTAはフリーコンサルタントのマッチング市場で一定の認知が得られたものの、これから、よりミッションドリブンで事業を推進していくためには、今以上に組織のパフォーマンスを上げていかなければなりません。そのためには組織づくりにおける専門家の力が必要です。そういった背景から、今のフェーズでは異例とも言える、組織開発者の採用に踏み切ったんです。

取材の時点で、八重尾氏は入社してからまだ1ヶ月も経っていなかった。だが、入社して1週間で組織の課題を見出し、新たな施策に向けて次の一手を考えている。組織開発者を迎えたSEPTAは、ミッション実現に向け、組織基盤をより強固にしようと打ってでたのだ。

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売上260%成長、名だたるコンサルタントから信頼を集めるSEPTAの『CoProject』

ここで改めて、SEPTAが提唱する“ハイ・シナジーコミュニティ”について説明しよう。これまでの取材でも明かされてきたが、“ハイ・シナジー”自体は学術的に存在する言葉である。

では、この“シナジー”とは何を意味するのか。それは、「個人や組織の利己主義が他人や社会の利益につながり、また、他者を助けようとする利他主義が個人や組織に利益をもたらす状況」を指している。そして、そのシナジーの度合いが高いことを、“ハイ・シナジー”と呼ぶのだ。

より端的に表現すると、「自分がやりたいこと、追求したいことを達成することが、組織のためになる。一方、組織が成し遂げたいことを達成できれば、自然と自分のやりがいにも通じる」といった考え方である。そして、その営みの親和性が高い状態の組織を“ハイ・シナジーコミュニティ”と山口氏は名付けた。

つまり、組織のミッションと個人のWILLがアラインした状態のため、個人は自分ごととしてモチベーション高く仕事に取り組むことができる。その結果、効率も上がり、組織と個のWILLが両方実現される。前回の記事でも語られているが、こうした概念を取り入れる組織が増えていけば、日本全体の生産性が向上し、社会にも良い影響が与えられるというわけだ。

あらためて、山口氏によれば、“ハイ・シナジーコミュニティ”の実現には三つの軸が欠かせないという。

  1. お互いにとってプラスになること
  2. 社会性が含まれていること
  3. 流動性が高いこと

ただ、そうした概念は抽象度が高く、なかなか理解が難しいかもしれない。読者としては、「壮大なミッションを掲げていることは分かった。では実際、SEPTAの事業は成長しているのか?ちゃんと成果を挙げているのか?」といったところが本音ではないだろうか。

SEPTAでは現在2つの事業を柱としている。

1つは、フリーランスマッチング事業。フリーランスのコンサルタントと、プロフェッショナル人財を求める企業のマッチングプラットフォーム『CoProJect』の運営だ。

そしてもう1つは、コンサルティング事業。プロフェッショナル人財であるフリーのコンサルタントと共にBtoBコンサルティングソリューションを提供する『The TEAM』だ。(詳しくはコチラ)どちらの事業においても、“ハイ・シナジーコミュニティ”を世に普及させることを目指している。

山口フリーランスマッチング事業の『CoProJect』では、2022年4月から翌年の4月まで1年間で売上が260%伸びています。プロフェッショナル人材であるコンサルタントの登録者数は、ローンチ当初より人材獲得に注力してきたおかげで、今なお拡大傾向です。

対し、コンサルティング事業は2023年に立ち上げたばかりの新規事業。まずは年内に複数のクライアントからRFPの依頼をいただくべく推進中です。

実際、『CoProJect』の新規登録者数は最大手と同水準。ちなみに登録しているユーザー(以下、コンサルタント)は、外資系コンサルタントや起業家、有名企業の取締役などバラエティに富んでいるのが特徴だ。

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ユーザー理解に向け、
メンバーで共に学び合うカルチャー

登録者数が年々増加し、売上は拡大傾向。その実績からも見てとれるように、SEPTAはコンサルタントからの評価が高い。それはなぜだろう。

東山一般的に、法人と個人とのマッチングプラットフォームを展開している企業は、手数料が発生する法人側を重視する傾向にあります。しかし、SEPTAではあえてコンサルタント側に立って、スピード感のあるコミュニケーションに力を入れているからだと思っています。

SEPTAでは、「その意思決定は、コンサルタントにとって本当に価値あるものだろうか?」と、常にコンサルタント側に思いを寄せるカルチャーが浸透しており、それが意思決定の前提基準になっているという。そのスタンスが社内に根付くきっかけには、次のような理由があった。

山口創業浅く、SEPTAのメンバーがまだ2〜3人だった頃、ある競合が圧倒的な資金を広告宣伝に投下して、我々のサービスユーザーであるコンサルタントを軒並み奪われてしまった時期がありました。このままマネーゲームになれば必然的に負けてしまう。そこで、その競合とは同じ土俵に上がらず勝負できる戦略が必要でした。

そこで手がけた施策は次の2つ。1つは、SEO対策とSNSを活用したダイレクトメッセージでユーザーを集めること。もう1つは、カスタマーサポートの強化です。具体的には、すでに『CoProject』のデータベースに登録されている人材に対し、実績やスキルに合った案件をこまめに紹介していきながら顧客満足度を高め、繋がりを強化してきました。

その結果、3ヵ月後にはSEOで1位を取得し、地道なカスタマーサポートの甲斐もあって事業を持ち直すことができたのだ。

山口アーリーフェーズのスタートアップは多額のマーケティングコストをかけられず、「お金を使う」以外の方法でサービスを拡大していく必要があります。

これはスタートアップの教科書に書いてあるような当たり前の話かもしれませんが、横(競合)を見るのではなく、目の前にいるユーザーととことん向き合うこと。そして、彼ら彼女らが求めていることを知りニーズを満たすためにコミットすること。それが我々にとっての正解だったんです。

ユーザーのニーズを満たすためには、言うまでもなく、ユーザー理解は欠かせない。それはどの業界も同じだ。SEPTAでは、ユーザー理解に向けて普段から何を心がけているのだろうか。現在、キャリアアドバイザーとして活躍する元大手小売会社出身の海野氏と、元大手鉄道会社出身の神林氏。同じくキャリアアドバイザー兼リクルーティングアドバイザーであり、リクルートグループの企画推進や接客業の経験を持つ青嶋氏に話を聞いた。

青嶋私はこれまでどの業務においても常にユーザーファーストを心がけてきました。相手がどんな志向を持ち、何を求めているのか。ユーザーの本心を引き出すために、一人ひとりと丁寧に向き合うことを大切にしてきたんです。それはSEPTAの事業においても変わりません。

青嶋コンサルタントの方から「こういう場所で、こういう働き方をしたい」という要望があれば可能な限り応えていく。さらに、こちらからも積極的に提案をおこなっていく。そうした姿勢が認められて「青嶋さんに担当してもらえて良かった」「SEPTAさんは対応が早く、他のどこよりも一番サービスの質に満足しています」と褒めてもらえることが多いんです。それが励みにも繋がっていますね。

海野私は2023年4月に入社したばかりですが、自分ができることは積極的に手を挙げています。その1つとして社内のマニュアル整備に着手しています。もちろん業界や業務は理解していますが、コンサルタントと話をする中で、万が一、分からない単語が出てきた場合、すぐにメモしてその都度、調べることを徹底しています。

こうした積み重ねによって一段と業界の理解が深まり、企業とコンサルタントをマッチングする上でも役立っています。将来的には職種や業界ごとに押さえるべきポイントをまとめて、社内で共有していきたいと思っています。

神林SEPTAは、まだまだ教育体制を整備中ですが、チームのメンバーと共に業界や業務の知見をキャッチアップしながら、常にアップデートしています。それにより、今、業界で何が起こっているのか、どんな人材やスキルが求められるのかリアルタイムでキャッチアップできているため、コンサルタントの方からの要望にスピード感を持って対応できるのだと思います。

もちろんコンサルタントの方と目線を合わせるために知識を身に付けることは大事です。しかし、最も大事なことは、青嶋さんがお話をしてくれたように信頼関係を築くことです。常にコンサルタントに寄り添うマインドを念頭に置きながら、日々業務に取り組んでいます。

SEPTAに集まる若きメンバーたちのバックグラウンドは千差万別だ。しかし、メンバー同士が情報を共有し、学び合いながら、スキルアップをしていく。そうした共同学習のカルチャーがSEPTAにはあるからこそ、たとえ未経験者であっても飛び込み、早期に活躍することができるのだろう。

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主体的に意思決定ができれば、
リーダーは存在しなくてもいい

“ハイ・シナジーコミュニティを創造する”というミッションを軸に次世代型の組織づくりを世に提案するSEPTA。今回、その現状を紐解いていくと、同社は著しく業績を伸ばしている一方で、組織づくりの面では冒頭の1章で述べた「スタートアップで陥りがちな課題」に直面していることが分かった。

そこで自分たちの失敗を受け入れ、まずは自社内でも“ハイ・シナジーコミュニティ”を本格的に体現していくことから始めた。とはいえ、組織づくりは一朝一夕でできるものではない。現に八重尾氏は「組織開発には相応の時間と労力が不可欠だ」と述べる。文字通り、地道な取り組みが必要なのだ。

そうした中にも、最近のSEPTAでは「リーダーのあり方」に変化の兆しが見え始めてきたと東山氏は語る。一体どういうことなのだろうか。

東山例えば、これまでのSEPTAの朝会では、結果的にリーダーからの“業務報告”がメインになっていたんです。議事は円滑に進むものの、聞いているメンバー側はどうしても受け身になりやすい。

そこである時、「そもそも朝会のスタイルについてどう思うか」「何か改善の余地はないか」と参加者全員に発言を促してみたところ、今までよりも活発に意見が出てきました。1つの課題に対してもいろんな角度から意見を出し合い、探求し合うことが大事だとあらためて気づかされましたね。

神林そうですよね。リーダーを決めると、リーダーではない人が生まれる。そうするとリーダー以外は「自分で考えて意見を言わなくてもいいかな」と思ってしまう人が構造上どうしても出てきますよね。本来、各メンバーが主体的に意思決定できるように、組織としてのあるべき姿の共有と、個々の役割が明確に自分ごと化できていれば、リーダーが存在しなくてもいいという場面は多々ありそうですよね。

一人ひとりが意見を出し合い、意思決定をしていくこと。そのためには自分ごととして課題をとらえていく必要がある。SEPTAにおいては、「リーダー」というものはどういった立ち位置であると考えているのだろうか。

東山“ハイ・シナジーコミュニティ”や自律型組織のような組織運営では、一人のリーダーが上に立ってメンバーを引っ張っていくのではなく、メンバーの主体性を引き出して、メンバー自らが率先して課題に取り組めるようにサポートする“サーバントリーダー”が合っているのかもしれません。メンバーの自主性を尊重しながら、組織のミッションやビジョンを達成していくためにメンバーを導いていく。それがSEPTAにおけるリーダーとしての役目だと思いますね。

一方、八重尾氏からは別の視点からの意見が寄せられた。

八重尾 確かに、我々が目指す“ハイ・シナジーコミュニティ”や自律型組織においてはその方法はベストだと思います。しかし、サーバントリーダーのあり方は、人によって合う人もいれば、合わない人もいるので気をつけなければなりません。

例えば、経験の浅いメンバーに対しては、自主性を求めるよりもリーダーが指示を与えた方が成長する場合があります。また、メンバーが声を発しない限りリーダーは手を差し伸べない、というスタイルでは、何か問題が起きたときにサポートが遅れてしまう場合もあるからです。

東山確かに、リーダーのあり方とは、相対する個人に合わせて考える必要がありますね。

異なるバックグラウンドや経験を持つメンバーが意見を出し合えば、リーダー論ひとつ取ってもいろんな意見が生まれてくる。そこで思いもよらない気付きが得られたり、アイデアが生まれてくることもあるだろう。それをどう広げていくか。対話を通し絶え間なく考え続けていくことが組織づくりには欠かせない観点だ。

SEPTAは今、“ハイ・シナジーコミュニティ”を社会に実装するというミッションに向けて、熱意を持って取り組んでいる。そんな同社はこれから先、どのような未来を目指そうとしているのだろうか。最後に山口氏からコメントをもらった。

山口事業面においては、プロフェッショナル人材のための自由なインフラ環境を構築し、フリーランスへのトータルサポートを目指しています。

例えばフリーランスにまつわる「負」として、それまでの組織で得られていた成長に比べ、フリーランスになると能力成長が得られにくいといったことがあるんです。ですので、我々のサービスのユーザーでもあるフリーランスのための教育コミュニティを、今後の新規事業として立ち上げる予定です。その際、SEPTAのメンバーにはぜひ主体的に手を挙げてもらい、上記の課題解決と自己実現が合致するようなアイディアを生み出してもらえたらと期待しています。

そして組織面では、引き続きハイ・シナジーコミュニティの実現に向け、心理的安全性が高く、働きがいのある環境づくりを戦略的に行なっていく予定です。そのためにも、MVVの浸透や、私たち経営陣を筆頭にマネジメント・リーダーシップ力の向上を目指していきたいです。

メンバーは皆、大前提「組織を良くしよう」という想いを抱いています。今、我々が同じ目的に向かって歩き出せたのも、羅針盤となるミッションがあるからです。この“ハイ・シナジーコミュニティ”を掲げるSEPTAだからこそ、多様な働き方が求められる現代において、組織・個人双方のWILLが満たされる豊かな社会を築くことができると信じています。

アーリーフェーズのスタートアップとはいえ、ただ事業だけをひたすら伸ばしていればいいというものではない。長期的な視点にたてば、両輪となる組織づくりにも目を向けなければならない。

とかく優秀な人材の採用に苦心しがちなフェーズで、SEPTAは自分たちが掲げるミッションに立ち返り、盤石な組織体制の構築に力を入れ出した。あらためて、事業の急成長・非連続成長を実現していくためには、その基盤となる組織づくりが肝要だということだろう。SEPTAが理想の組織に向けてどのように進化を遂げていくか。どんな姿を我々に見せてくれるか、これからが楽しみである。

こちらの記事は2023年05月23日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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