日本人には“蛮勇さ”が足りない!
テラドローン徳重が体感した、世界で勝つ起業家の思考回路とは

登壇者
徳重 徹

1970年生まれ山口県出身、九州大学工学部卒。住友海上火災保険株式会社(当時)にて商品企画・経営企画に従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。2010年にEV事業を展開するテラモーターズを起業、アジアを中心に年間3万台のEVを販売する事業に育て上げる。その後、2016年にはドローン事業を展開するテラドローンを設立し、2022年にEV充電インフラ「テラチャージ」を立ち上げ、世界で勝てる事業の創出へ挑んでいる。著書に『「メイド・バイ・ジャパン」逆襲の戦略』(PHP研究所)。

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本社を東京におき、全国7支社と海外4か所に拠点を構え、国内外にてドローン事業を行う、日本発グローバルベンチャー、テラドローン。

今回は世界中のドローン関連企業と折衝し続けている同社CEOの徳重氏にご登壇いただき、日本の起業家と世界の起業家の思考ギャップ、どうすれば日本人は世界を席巻するグローバルベンチャーをつくれるマインドセットがもてるのか、というテーマにて講演いただいた。

  • TEXT BY FastGrow Editorial
  • PHOTO BY YUTA KOMA
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「日本人ビジネスマンはやる気ありますか?」

徳重テラモーターズを8年前に設立して、今バングラデシュ、ベトナム、インドで3万台ほどEVを製造販売しています。その後、日本発グローバルユニコーンを目指すため新たに新事業をスタート。ドローン事業を手がけるテラドローンを2年前に設立しました。

ちょうど今、インド、ヨーロッパ、アメリカ、中国を同時多発的にやろうとしています。ベンチャーの中でもめちゃくちゃな会社だと思っています。

一方、私は元々皆さんと似たような経歴でして、九州大学の工学部をでて、住友海上(現・三井住友海上火災保険。以下同じ)という大企業に入りました。

そして29歳で会社を辞め、MBAを取るためにアメリカへ渡りました。そのままシリコンバレーに残り、ベンチャーを6年経験して後、事業再生をやり遂げて、いまの会社を設立したという流れです。

最近、「ソニーが復活した」という記事をよく見ると思います。日本だけの視点で見ると確かに復活したんですけど、世界基準で見ると、お話にならない状況です。

徳重僕は今48歳なんですが、2000年頃ソニーとサムスンを比較するなんて失礼な話だったんですね。それがこのレベルで復活したなんてと言われても、歴史を知ってる僕から見るとおかしなことなんです。

時価総額で比較すると、今のソニーとサムソンにはいまだ大きな差があります。(サムソンのほうが遥かに大きい)。

あと我々はEV事業もやっているので、リチウム電池も扱っています。その関係で、4年前に飲み会でサムスンの営業部長に「なんで今の日本ビジネスマンはダメなんでしょうか?」と聞いたら、「そもそも彼らはやる気あるんですか?」って言われたんです。もう本当にショックで。それくらい日本は世界から舐められているのです。

このままで日本は本当に世界で勝てるまでに復活するのか?私は疑問に思っています。今日は皆さんに世界で戦ってきて私が感じたリアル、現実を少しでも伝えたいと思っています。

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20年前、大企業の社長も元気があった日本

徳重そもそもなぜ僕が世界で勝つことにこだわるのか、なぜ世界で勝つ必要があるのかについて説明します。日本の将来や財政を徹底的に調べたことがあるのですが、かなりまずいのです。

よく言われているように、もうお金がないんですよ。だからちゃんと稼がないと本当に大変なことになるし、そのためには日本だけでなく海外からも外貨を稼がないといけない。今は先代の資産を食いつぶしている状況です。

イベントスライドより

徳重これは1989年当時の世界の時価総額ランキングです。僕が高校生くらいのときだったのですが、日本企業が大半を占めていました。今は中国が勢いあるけど、当時はその勢いが日本にもありました。

しかし、20年間もデフレが続いたので、あらゆるところで日本のシェアが落ちてしまっている。Huawei(ファーウェイ)なんて10〜15年前は誰も知らなかったような会社ですけど、今では日本の大手電機メーカーに圧倒的な差をつけていますよ。そういうような会社がもう世界中を席巻している状況なわけなのです。

当時は、大企業でさえバイタリティのある日本だった。大企業の経営者がバンバンメディアに出て、言いたいことを言っていたような世界でした。それが僕が大学生だった頃で、今でも名前を覚えてるくらいの経営者がたくさんいました。でも今は無くなってしまいました。それが日本経済がダメになってしまった理由です。

イベントスライドより

徳重これは最近よく見るユニコーン企業を可視化したもので、評価額が約1,000億円(10億ドル)以上の未上場企業のことです。日本には2社しかありません。日本でもシリコンバレーみたいなのを作りましょう、ってよく言われているんですけど、まったく成功していない。でも中国では、深センが赤いシリコンバレーと言われています。

私の肌感覚では、より無茶ができるという意味では、シリコンバレーよりも中国のほうが凄いかもしれない。

一方、日本では次なる革新的な大きなビジネスが育たないような空気感があるように僕は思っています。それを僕は若い皆さんにはわかってもらいたいし、国自体を変えるような行動をとっていただきたいのです。

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30%OKならやってしまえ!

徳重それでは、実際に海外で活躍するためには何が必要なのか?というところを、僕が戦ってきた結果や若い人を育ててきた結果から、お伝えしたいと思います。

よく言われるのが、やっぱり英語力ですか?とか異文化理解ですか?というもの。それはもちろん最低限必要だけど重要な要素ではないです。それよりも、リスクテイキング、圧倒的スピード感、メンタルタフネスとかの方が遥かに重要です。あとは、海外の人々をも巻き込むインスパイア能力、タフな交渉力が非常に重要です。

もう一つ重要な要素を言うと、不確実性に対する耐久性です。未確定な状況下で意思決定をし、様々なトラブルが起こる中で自分自身のスピリットをキープしながら最終的に結果を出すということ。これが僕の考える海外で通用する人材、新規事業を創れる人材ですが、いまの日本の慣習だと不確実性がほぼゼロにならないとやらないし、やれない。とにかくきっちりやらないといけないし、全然アクションが取れない。

イメージで言うと、檻の中にいたライオンがいきなり荒野のサバンナに放たれたら、野生の耐性がないからすぐ死んじゃうわけですよ。だから若いときに「サバンナにいく」経験するかっていうのが大事かと思っています。

もう少しロジカルに言うと、60%OKならゴー、ということ。ちなみに僕の経験則上、日本人の60%は、アメリカ人にとっては70%、アジア人にとっては80%ぐらいの成功感覚なんです。そのくらいズレているのです。

徳重大事なのは、とにかくやってみること。超優秀な戦略コンサルタントが「これだ!」といっても外れることが多いのが新規事業です。だから結局いくら考えてもわからないんで、とにかく自ら足を突っ込んでみて、現場で状況を把握して、いかに軌道修正するか。そこのタイムラグの時間とコストを最小にして、結果に近づけるのが重要です。つまり、軌道修正能力の方がはるかに重要ということです。

経団連の会長や東芝の社長を歴任された土光さん(土光敏夫)というすごい方がいるのですが、ぜひ本(経営の行動指針―土光語録)を読んでもらいたい。大学時代からの愛読書です。

経団連の会長、つまり日本大企業の総理が書いている本なのですが、改めて読み直すとすごく役に立つことが書いてあります。まるでベンチャー企業の社長のコメントのような。

約50年も前の本なのに、例えば、変化の激しい時代だからとにかく行動してみることが大事とか書いてあります。時代、歴史は変わっても本質は変わっていない。

さきほどは60%でOKと言いましたが、もっとアグレッシブな人もいました。30%でGOだと。鴻海精密工業の社長(郭台銘:かく たいめい)です。あのシャープを買収した企業の創業社長です。彼が30歳くらいのときには、30%くらいOKならやってたと。それで今では10兆円企業となっています。

アジアで現地の方からよく言われるキーワードがあります。日本人はNATO(No Action, Talk Only)、OKY(お前が来てやってみろ)です。調査は一生懸命するが、結局、行動しないということと、日本の決裁権者が現地を知らなさすぎて意思決定ができない。

徳重テラドローンがそうならないのは、始めるときに僕が3ヶ月くらい現地に行って、顧客、競合、規制、パートナー、政府交渉とか徹底的にやって、ある程度いけるとなってから若い社員を連れていくから。

一方で日本人はどこにいっても非常に人気があります。基本的に信頼できるし、個人個人は能力が高いと思われています。ただ、さきほどのリスクを取らない、アクションできない、色々考えすぎっていうのはダメなのです。

簡単に言うと優秀な日本人にバイタリティとか蛮勇さというのをアドオンすれば、僕は世界最強のビジネスパーソンになると思っています。あの大前研一さんも「アジアで事業やるなら蛮勇を持て」とおっしゃっていました。

50年前は、ソニーもキヤノンもホンダもリコーも、皆そんな感じでやっていました。皆が戦友みたいな感じでやっていたのに、今はそれがない。マニラで聞いた大手銀行さんのお話ですが、月に10〜15回はゴルフで多忙だと。土日以外ですよ。いやもう本当に終わってますよね。それは極端な例ですけど、そういうことなのです。

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大切なのはテクニックではなくマインドセット

徳重海外では相手をインスパイアするタフな交渉力が大事です。これまでに、テラグループではバングラデシュの現地企業と有利な条件でJV(ジョイント・ベンチャー)を作ったり、UKでは65歳くらいのドローン機体メーカー創業社長に「お前がこの会社を継いでくれないか」と言われたこともあります。

徳重でも大事なのはテクニックじゃないんです。それよりも人間性とかパッションとかマインドセットの方が大事だと思っています。流行りの本によく、マッキンゼー流とかハーバード流とかあるじゃないですか。そういうものよりも、ビジョンとか、信念です。どこの国でも、世界変わっても、公の使命感は通じるものがあります。

ただ公の使命感を持てと言っても急には無理だと思っていて、やっぱり転機がいります。僕の場合はシリコンバレーでベンチャーをしていた時期です。当時、日本ではベンチャー=山師、みたいな悪いイメージがありましたが、ただ単に個人としてベンチャーが好きということでやっていました。

あるとき、日本から経産省や自治体の偉い人がきて、「どうやったら産業を創れるのか?」と聞かれ、そうか、自分がやっていることは、産業を創ることなんだと個人の興味から公のビジョンにたどりつく転機でした。

実際、シリコンバレーでは優秀な人がドンドン、Googleに入っていって、会社が成長して、税収産んで、国を牽引していました。そして、Googleからスピンアウトした人材が多くのベンチャーを作り、エコシステムがまわっていました。

いきなり信念を持てとか無理だと思いますけど、自分の方向軸を持って、現場で戦いながら、ずっと考えていたら何かイベントが起こった時に、ふとそう思えてくる時がくることもあるということです。

過去の偉大な経営者を見てもみなさんそうで、経営の神様と言われる松下幸之助の「水道哲学」も最初から持っていたわけではなくて、経験の中で生まれたもの。京セラ、JAL再生の稲盛さんだって、最初はインテリヤクザなんて言われていた。最初から立派である必要はなくて現場で闘いながら経験を通じてそうなっていくのです。

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0から市場を作ってルールを定義せよ

徳重とにかく日本人はきっちりしすぎているので、発想が硬いし、当たり前のことしか言いません。しかし海外のイノベーションを起こしてくる人は無茶なことばかり言ってきます。今はうまくいくかどうかわからないけど、技術革新とか将来変わっていく規制とかも見越して、今とりあえずやっていくという思考性を持っています。

イベントスライドより

徳重これを見てもらえばわかると思うのですが、「空飛ぶ車」ですよ?3年前にはじめて中国のベンチャー企業が世界の有名な展示会で発表して、冗談でしょうという感じでしたが、今ではボーイングとかエアバスとかトップ会社も、本気でやっています。

僕らテラドローンはドローン市場では今日本でトップになっていて、これからアメリカ、欧州、中国、インドの海外拠点も一気に立ち上げようとしています。はっきり言って無茶苦茶です。

だけど世界で本気で勝とうと思ったら、これくらいの無謀をしないと勝てないです。いろんな日本のトップベンチャーが今まで海外に挑戦してうまくいかなかった原因は、そのスピード感と本気度なのです。インターネット黎明期の時には、タイムマシーン経営というのがありました。アメリカで流行ったことが1年おくれて日本に、さらにまた1年後に中国というふうに。

でも、いまは、うまくいったビジネスモデルは一気に世界に情報が流れます。優秀な起業家、資金は世界中にあります。日本で足場固めてからその後、海外ということでは、時既に遅しです。

徳重思考性の話に戻ります。今はYouTubeは当たり前の世界ですけど、当時、サービスのスタート時は日本では「あんな著作権が問題になるものがビジネスになるのか?」と言われていました。そういうところが日本的なメンタリティーの弱点で、価値あるものを大多数に提供できれば、小さい課題はあとから何とかするという発想を持ちたいですね。

新しい産業をつくっていくときには、とりあえずやってから、問題はあとで潰すというようなな柔軟性も重要です。

AirbnbとかUberとかがまさにそう。これは僕が海外に住んでいたりしてるので間違いなく流行るなと思ったんですけど、日本人的なメンタリティでいうと、家めちゃくちゃにされたらどうするの?とか物盗られたらどうするの?とか、いろんなことを考えちゃうわけですね。

だけどユーザーのとってはメリットの方がはるかに大きいので、そういうマイナスも吸収しながら、最後になんとかするみたいな。そういう発想ってやっぱり普通の日本人では持つことができません。だからそれを変えなきゃいけなくて。0.1%とか0.01%程度の悪いことが起こっただけで全部ダメだったりとか、それで全く議論が進まなくなることがもったいないです。

ベトナム駐在の某大手商社の友人の話なのですが、新興国の大手商社の業務は現地の政府高官と懇意になり情報を取り仕事を受注することですね。その商社マンに昼間、政府高官から電話がかかってきて、「今日の夜空いてるか?」と誘われたそうなのです。それって関係性を作り込んでるという意味で凄いことなんですが、断りました。

なぜかというと、その人に会うという本社での会社の許可申請が間に合わないから。夜までに申請が間に合わないから、ビックビジネスに繋がるかもしれない誘いを断った理由です。

ただ僕が言いたいのは、日本人がダメだという話ではありません。今でも勝ちにこだわり素晴らしい意思決定、現場をリードできる凄腕の経営者もいます。富士フイルムの古森さん(古森重隆)です。デジタルカメラが出てきて交換式のフイルムがダメになるときに、当時のトップ企業コダックは変化に対応できずに倒産しました。

徳重一方、富士フイルムは事業領域を大きく変革して成長企業になっています。当時、主力で儲かっている事業を将来予測して、縮小の方向に舵をきり、新事業を切り開いていく、M&Aで新たな領域に攻め込むということは想像を絶する意思決定です。

古森さんの意思決定も強い信念に基づいたものです。小学生の時に敗戦を経験していて、負けると悲惨になるというのを実経験していたから、勝ちにこだわる経営を本気で推進していきました。僕が言いたいのは、このような大企業の経営者が当時は沢山いたということ。それが20年のデフレで今はいなくなってしまった。なので、シリコンバレーや深センのように、ベンチャーが世界的メガベンチャーになって牽引するしかないでしょ、ということなのです。

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ソフトバンクの成功要因から逆算した大戦略

徳重重要なマインドセットとしては、「大きく考えろ」、ということもお伝えしておきます。僕がテラモーターズを始めて1年後の資金調達時に、VCの顧問やっていた老舗の大手ベンチャー企業の創業者に反対されました。理由は、EVがニッチじゃないから。ベンチャーはニッチを狙わないとといけない、大手企業に潰されるという理由で反対されました。

一方、僕が3年前シリコンバレーに行ったときに、VCに会いにいくと、彼らが出資する最低条件が、「Change the World」できる可能性を持っているかどうか。つまりニッチな会社なんて投資の対象にすらならないということです。それくらい日本と世界では基準が違います。

よく若い人に、失敗したらどうするんですか?と言われるのですが、新規事業なんてはっきり言って99%うまくいきません。うまくいかない中でどうやってメンタルをキープして、ジグザグで軌道修正しながら成功に近づいていくかがポイント。途中のプロセスを人によっては失敗というかもしれませんが。松下幸之助も言っていました。

「私は失敗したことがないんです。なぜなら、成功するまで途中で諦めないからです」

若い人にはノウハウ本よりも、昔の経営の古典を読んでほしいです。

つまり、今の大企業のマネジメント手法とは真逆なんです。失敗こそ重要だということ。失敗や挫折経験からくるエネルギーは非常に大事です。ベンチャーをはじめる、新事業を創造することは困難の連続で、強烈なエネルギーが必要です。残念ながら、日本で普通に育ったエリートにはエネルギーが圧倒的に足りていません。失敗はエネルギーを貯めている蓄積期間だと思えばいい。私もそうでしたが、そうは言っても失敗したときのショックは辛い、でもその苦悩を若い時に経験し、原体験として、挫折をポジティブに捉えられるかは、今後チャレンジされるみなさんには必須だと思います。

もう一つ大事なことは、ベンチマークする人を持つこと。僕が勝手にベンチマークしているのが、イーロン・マスクとシャオミのレイ・ジュンという方で、同じ年齢なんですよね。日本では私は世界で挑戦をして凄いとなっていますが、イーロンに比べるとヒヨコみたいなもんです。EVや宇宙、次世代都市交通と無茶な挑戦を次々にしています。「本気で世界を変える」という視座の高さは本当に大事ですね。

徳重最後はやはり、時には大勝負に出ましょう、ということ。僕らはドローン運行管理システム(UTM)業界の世界でトップ企業であるUniflyという会社に5億円出資して、筆頭株主になっているんです。既存の投資家からは、視点はいいが「出資金が一桁多い」と。つまり5億円じゃなくて、5,000万円にしとけと。僕らからしたら筆頭株主じゃなきゃ意味がないのです。なんとか既存投資家を説得して5億円を出資しましたが。結果的にはやっぱりそれがうまくいって、今では、そのおかげで日本、アジアでテラはこの分野のリーディング企業になっています。

この意思決定にはある想い入れがあります。孫さんがなぜここまでソフトバンクを大きくできたかというと、インターネットの黎明期にヤフーに3億円出資したからです。成長産業の黎明期のプラットフォームに。僕はそれと同じように、ドローン産業の黎明期にプラットフォームとして重要な管制システムで世界的リーディングカンパニーになりそうなUniflyに突っ込んだというわけです。

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「テラマフィア」が新産業を生み出す世界へ

徳重最後に、テラドローンが何を目指すのかという話をします。今ドローンの世界で日本で唯一、世界で9番目に入っています。狙っているのは世界トップです。今中国にDJIという企業があって、2006年に20人だった社員が、今11,000人となっています、10年間で。時価総額もユニコーンどころじゃなく、2兆円です。ドローンがこれからパソコンのように普及すると思った時に、ハードに次に将来、何倍も伸びるのがサービス、ソリューションです。ここを僕たちは狙っています。

僕たちは既にEVの事業で何度も小さい失敗を繰り返し、最後には事業を創ってきました。そのプロセスで世界で戦うためのノウハウを蓄積してきました。とにかく、日本から「グローバル×テクノロジー」でイノベーションを起こしていきたい。シリコンバレー的にいうと、”Change the World”を起こそうとトライしています。

黎明期のドローン産業でチャンス膨大な中、「まずは3年で日本でトップになって、それからアメリカに行く」という発想ではもう遅いのです。日本人は誰か事例があれば、俺たちにもできるんだと思う人種なので、僕らが新産業でグローバルに飛躍できれば、もっと日本から世界を目指す起業家が増えると思っています。日本には最初に無茶でクレイジーな人がほぼいないので、それをやりきるのが自分の使命だと思っています。功山寺決起から時代を動かした郷里の高杉晋作のように、無茶な壁を突破したいと考えています。

スローガンアドバイザリー社(Goodfind Career運営企業)の志村社長に言われたのが、「テラはベンチャーなのに、大手商社みたいなスケール感がある」ということ。ベンチャー企業なのですが、本当に世界を変えます、1年目から海外いって事業立ち上げますみたいなスケール感が本当にあります。そういう風に無茶をして海外拠点を一気に立ち上げるから、CxO、事業経営者の機会が非常に多いんです。

人材育成面でいうと、自分自身も失敗・挫折を経験したからこそ、成長していると思っているので、若い人にはどんどん失敗のチャンスを与えています。本来のレベルより2倍、3倍高い仕事にどんどんアサインします。失敗を簡単に捉えられては困るのですが、でもとにかくチャレンジしろ、とにかくやってみろ、という風潮がテラにはあります。

いま、日本の大企業にいる若い人にはチャンスがないと思っています。テラグループがその場を与えて失敗してもらって、何度でも立ち上がって奮起しながら、日本を代表する経営者になってもらいたいと。

僕はよく「テラマフィア」と言っているのですが、テラグループで色々な経験をした人が事業の経験を積んで、ストックオプションでお金も得て、その後スピンアウトして自分たちの会社を起業する。資金もノウハウも持った人が事業すると全然違いますよね。それらの1社1社がまた、どんどん成長して、そこからスピンアウトして、「テラマフィア」全員で、日本に新しい産業を創っていく。

だから、そういう想いに共感してくれる若者がいたら、ぜひテラにジョインしてもらって、世界的な起業家へと成長してもらいたい。それが僕が目指していることだし、日本が復活するための一つの方策かなと思っています。

こちらの記事は2018年06月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

FastGrow編集部

写真

小間 優太

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