創業3期目のM&Aで描く「コンサル×エンジニア」の構想が、2つの大きな非連続成長を生む──Wonder Camel和田・吉村の挑戦

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インタビュイー
和田 淳史

上智大学経済学部経済学科卒。アビームコンサルティングにて業務改革、システム導入など国内外それぞれで幅広いプロジェクトを経験。ボストンコンサルティンググループではナショナルクライアントを相手に全社的な戦略策定に携わる。その傍ら、ベンチャー企業支援の経験も積んだ。2021年、株式会社Wonder Camel創業。

吉村 研人

上智大学理工学部情報理工学科卒。JSOLにて社内起業家として複数の新規事業の立ち上げを経験。FUJITSU LS研にてブロックチェーンに関する論文を執筆し優秀賞を受賞。その後2021年に株式会社Wonder Camelを共同創業。

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創業3年目にしてコンサルティング関連の複数サービスで年間売上10億円に迫る勢いで順調な成長を続けているWonder Camel。フリーコンサルタントの⼈材マッチングサービス『quickflow』は、一見“極めてニッチ”なターゲティングに思えるが、ローンチからわずか1年で登録者数200人(目標通り)を達成した。

既存事業が順調に成長しているなか、新たな動きを見せた。2023年7月、システムエンジニアの⼈材マッチング事業を展開するRotoworksの全株式を取得し、完全⼦会社化したのである。創業フェーズとも言えるこの時期に、自己資金による初のM&Aという大きな決断に踏み切った。その決断の裏で見据えるのは、コンサルティングだけでなくエンジニアリングにまで拡充する緻密な事業戦略だ。

代表取締役社長である和田淳史氏と、今回のM&AからPMIまでを担った吉村研人氏を迎え、Wonder Camelが描く未来を聞きつつ、同社の今後を占う吉村氏の挑戦の軌跡を辿る。

  • TEXT BY YUKI YADORIGI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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既存事業を拡張するために選択した創業初のM&A

和田私たちは「人々の情熱と共に歩む」というミッションを掲げ、誰もが挑戦できる社会の実現を目指して会社を立ち上げました。『quickflow(クイックフロー)』のサービスを通じてフリーランスのコンサルタントを企業に紹介し、システム導入案件の要件定義や設計などの上流フェーズの課題解決に貢献してきました。今回のM&Aによってエンジニアの技術力を社内に擁することで、開発まで支援領域を広げるだけでなく、エンジニア人材のマッチングサービスなども展開していきたいと考えています。

そう語るのは、Wonder Camelの代表取締役社長である和田氏だ。2021年創業のWonder Camelは、コンサル人材マッチングサービス『quickflow』を主軸に、ヘルスケアベンチャーの支援事業や経営コンサルティング事業、Webメディア運営など幅広い事業ポートフォリオを持つ。その背景にあるのは、メンバーの熱意をもとに柔軟かつ自由な事業展開を続けていきたいという和田氏の想いだ。

2023年7月、Wonder Camelはシステムエンジニアの⼈材マッチング事業を展開するRotoworksの全株式を取得し、完全⼦会社化した。SESを主事業とするRotoworksはエンジニア人材の獲得に強みを持っており、Wonder Camelの既存事業とのシナジー効果が高いと判断。創業3期目、自己資金による初のM&A。ベンチャー企業としては大きな決断だ。

吉村私は今回の経営判断を受けてRotoworksの業務の内部に入り、業務プロセスの見直しや顧客単価を高めるための仕組みづくりなどを進めました。M&A、社長就任、PMI、……そのすべてが初めてで、チャレンジングな経験でしたね。

そう語る吉村氏は、Wonder Camelの取締役であり、和田氏と並ぶ共同創業者でもある。前職では社内起業家として複数の新規事業の立ち上げを経験しており、エンジニアとして高い技術力を持つ人物だ。今回のM&Aを実現するための実行面で強力な手腕を発揮し、Rotoworksの代表取締役に就いた。吉村氏は、この先にあるWonder Camelの大きな成長に自信をのぞかせる。

吉村RotoworksとWonder Camelが手を取り合うことで、新たな2つの大きな価値を生み出せます。一つは、エンジニアが活躍する“新たな場”の創出。そしてもう一つは“大企業のDX実現というニーズ”を具体的に満たすこと。

特に、エンジニア向けのマッチングプラットフォーム創出という新たな事業を中心にして組織も拡大していきます。そこには、企業としての大きな成長が見えています。

和田このように、2つの観点で価値を生み出し、新たな非連続成長を生み出すことができると考えています。それをまとめて推進するという重責を、吉村には担ってもらうんです。

でも正直に言うと、吉村はほんの一年前まではビジネスを推進するタイプではなかったんですよ(笑)。エンジニア出身のプライドがあるというか、営業にはアレルギーがあるというか。だからこれだけ大きな推進力になってくれているのが嬉しい驚きです。

吉村自分にとってはこの1年が、本当に実りの多い時期となりました。意識が変わったきっかけは、やはり『quickflow』が成功したことだと思います。そこからWonder Camelの組織が拡大していくにつれて、事業成長に対して自分がどのように価値を発揮していくか考えるようになったんです。

今回のM&AはWonder Camelにとって、そして吉村氏にとって大きな転換期となったようだ。さて、このM&Aがどのような未来につながっていくのか、和田氏と吉村氏に詳しく聞いていこう。

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たった2日間で下した経営判断、その決め手になったものは

まずはRotoworksとの出合いにさかのぼり、今回の一連の流れを二人に振り返ってもらった。創業3期目というタイミングで、なぜM&Aという大きな決断が下されたのだろうか。

和田Rotoworksの創業者である小林さんとはもともと知り合いで、私が起業するときに相談に乗ってもらう仲でした。『quickflow』の事業を推進するなかで吉村と小林さんの間にも接点が生まれ、そこでも信頼関係を築いていたんです。

小林さんがそろそろ事業を育てる以外の選択肢も検討したいと言っていたタイミングで買収の話を提案してみたところ、意外にも現実的に検討してもらえてそのまま実行する流れになりました。

吉村Wonder Camelは、戦略領域に近いITコンサルの紹介を通じて大企業の課題解決に取り組んできました。そうしたDX関連のプロジェクトを推進する中で信頼を獲得すると、具体的なシステム開発の実務についても相談が来るようになります。しかし、私たちの社内にはお客様向けの開発を担うエンジニアはいません。

開発力を持つRotoworksの力を借りることで、私たちが提供できるサービスを拡充でき、お客様への提供価値を大きく拡大できると考えました。

一方Rotoworksにとっても、この連携には小さくない価値があります。これまで同社が展開してきた下請けのビジネスモデルのなかでは、「高単価になりやすい上流の案件」をなかなか獲得できませんでした。ですがWonder Camelの取引先との案件を増やすことで、高単価案件を受注できる可能性が一気に高まります。このM&Aは、両社にとって事業の幅を良いかたちで広げられるものだったのです。

上流から下流まで一気通貫で対応できる、まさにwin-winなM&A。これだけ聞くと非常に戦略的に見えるが、実はこのM&Aの合意が形成されるまでの期間はわずか『2日間』だったという。そこには、小林氏に対する信頼というブーストも効いていたようだ。

吉村小林さんには本当にお世話になっていました。おなじエンジニア出身ということもあって、フリーランスのマッチング事業をやっていくうえでの課題感を共有しながらなんでも相談し合える相手でもあったのです。M&Aの背景には、事業的な観点のメリットだけでなく、「小林さんと仕事がしたい」という純粋な気持ちもありました。

和田意思決定のプロセスを柔軟にしているからこそ、迅速にM&Aを決断・実行できたと思っています。

また、このようなスモールかつスピーディなM&Aを展開することで企業規模を拡大していく流れは、Wonder Camelとして今後取り組んでいきたいところでもあるんです。そういった意味でも、今回のM&Aは良い挑戦をこれから生み出していく契機にもなっていきそうですね。

創業3期目での自己資金によるM&A。たった2日間での決断。強気で一見無謀に見える選択だが、そこには戦略面、想いの双方に裏打ちされた確信があったのだ。だが実は、両者のシナジーはさらに深く、さらに広く展開されていく。そんな戦略をここからじっくり深掘りしていく。

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事業拡大の起点であり、エンジニアの市場価値を高める一歩でもある

ということで、このM&Aがもたらす双方のシナジー効果について、もう少し詳しく聞いていこう。まず聞いたのは、Wonder Camelの視点に立って見る戦略的なメリットについて。それは「近接事業領域における、非連続的な事業規模拡大」といった文脈にある。先述した「二つの価値」のうち、ここでまずは後者にあたる「大企業のDX」について見ていこう。

和田『quickflow』はSAP案件とフリーコンサルタントのマッチングというニッチな領域でうまくハマったプロダクトです。高単価案件の充実と即払いという独自性を強みとしてグロースできた一方、ニッチゆえに市場が小さいという課題もあります。日本国内のフリーランス人口は約2万人。今の高成長ペースを維持・向上していくためには、『quickflow』を軸とした関連領域への事業拡張が不可欠です。

そこで考えたのが、対応領域を縦軸、強みとするソリューションを横軸と捉えて双方に価値提供の幅を拡張していく構想です。まず戦略構築を強みとする現在のコンサルティング領域から、実際に開発を行うエンジニアリングの領域まで一気通貫での支援できる体制を整える。そしてSAPに絞っていた強みを、SalesforceやOracleといったソリューションへと展開していくことで、企業のDX全般の課題を解決できる形へと切り替えていこうと考えています。

その一歩を踏み出すべく、エンジニアを擁するRotoworksとM&Aを通じて連携する選択を取りました。ここから縦横双方に事業を拡大していきます。

Wonder Camelの事業拡大の構想は明確かつ戦略的である。一方のRotoworksの視点に立った場合、エンジニアの市場価値を高めるという意味で今回のM&Aには意味があると吉村氏が続ける。

吉村エンジニアの市場価値について考えたとき、エンジニアリングスキルをどんどん伸ばしていくことももちろん重要ですが、より上流の工程にも関われるような経験を重ねていったほうが個々のエンジニアの市場価値は高くなると思います。つまり、特定の技術領域にとどまらず、企業の根本的な課題にどんな解決手段があるのか提案できるようなエンジニアを目指すという方向性ですね。

コンサル視点も持ち合わせたエンジニアは、市場で評価されやすいと思います。私たちはコンサルティングに対して強みを持つ会社ですから、そういったエンジニアを育てていく部分でも価値を発揮できると考えています。

和田Wonder Camelは創業当初からトレーニングプログラムづくりに注力してきました。私はボストンコンサルティンググループ時代に外部向けの研修を担当していたので、ベーススキルを体系化することには知見があります。そういったノウハウをエンジニアの皆さんにも学んでいただくことで、より企業に近しい立場で活躍するキャリアの選択肢を増やせると考えています。

吉村私たちが企業のDX支援を事業軸としていることの最大の強みは、二次請け、三次請けではなく、直接お客様とやりとりできるポジションで案件を獲得できることです。コンサルティング・ファーム出身者が立ち上げた事業であることを活かし、質の高い人材を提供することで、これまで多くのお客様から高い評価をいただいてきました。ここに優秀なエンジニアをアサインすることができれば、さらに販路を広げていくことができるでしょう。

今回のM&Aは、エンジニアの市場価値を高める場の提供という側面でも可能性を秘めた選択だということがわかった。そしてこの点に関しては、自身がエンジニアとしての顔も持つ吉村氏の想いが色濃く反映されている。

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高単価案件×即払いの強みを活かしてエンジニアのマッチングに挑む

Wonder CamelとRotoworks双方にとって、非常にわかりやすくwin-winな選択だった今回のM&A。そこから生み出される売上成長について、Wonder Camelは来期、今期の2~3倍という高い目標を掲げている。それほどの成長を期待できるのは、なぜなのだろうか。

吉村今後私たちはエンジニアの採用を強化し、支援に携る人的リソースを増やすことに注力する予定です。また、所属するエンジニア一人ひとりの実力と市場価値を高めることによって受注案件の単価も上げていきます。この二軸から生まれる相乗効果を考えれば、年間売上を2~3倍にまで伸ばすという目標も十分現実的だと思います。

Wonder Camelが受注する案件の多くは、大手戦コンや大手SIerが手掛けるような長期かつ大規模な基幹システム系の案件です。今後そこにエンジニアをアサインするだけでも、案件1件あたりの単価はRotoworks単体だった頃の約1.5倍にはなると見込んでいます。

受注できる案件の規模感やエンジニアへのニーズがすでに明確に見えていることは、事業成長の確信につながっている。売上にインパクトをもたらす要因はそれだけにとどまらない。コンサルタントと案件をマッチングするプラットフォームを育んできた知見を活かし、今後はフリーランスのエンジニアをターゲットとした同様のプラットフォームを新たにリリースする予定だという。これが先述の2つの価値のうち前者、「エンジニアが活躍する“新たな場”」という事業構想だ。

しかしエンジニアと開発案件を結ぶプラットフォームとだけ聞くと、すでにプレイヤーが多い印象がある。“SAP案件×フリーコンサル”という尖ったターゲティングによって成功した『quickflow』と比べ、レッドオーシャンでの厳しい戦いが予想されるが、そこになんらかの勝ち筋は見えているのだろうか。

和田エンジニア向けのプラットフォームでも、上流の高単価案件をご紹介できることが大きな優位性になると考えています。

そもそもフリーランスが高単価案件を獲得するのは決して容易ではありません。それだけでなく、既存のフリーランスマッチングサービスにおいて、フリーランスが報酬を受け取れるのは毎月の締め日から約40日後というのが一般的で、働き盛りのフリーランスにとってキャッシュフローが課題となっていました。そこで私たちはフリーコンサル向けの『quickflow』を作り、報酬の即払いという強みを打ち出しました。

このような「高単価案件」を受注でき「即払いで報酬を受け取れる」という強みは、対象をコンサルタントからエンジニアに変えても十分成立するでしょう。というのも、市場単価を比べれば、コンサルタントよりもエンジニアのほうが低い傾向があるからです。さらに、私たちはエンジニアからITコンサル寄りにキャリアを発展させることもサポートできます。

こうしたメリットをしっかり出せれば、後発で苛烈な市場に挑んでも、勝ち目はあると考えています。

吉村フリーランスのエンジニアが受注できるのは、二次請け、三次請けの小規模なプロジェクトがほとんどです。こうなると、発注側は元請けからの支払いが済まない限り、エンジニアへの支払いができません。構造的に即払いが難しいのです。

一方、Wonder Camelの場合は大規模かつ一次請けの案件を扱っており、支払いが滞ることのない信頼できる企業様からのご発注を多く抱える体制にできているので、そもそも構造として即払いがしやすい立ち位置になっています。それに、口で言うだけでなく、すでにフリーランスコンサルタント向けには非常に多くの即払いを実施してきた実績とノウハウ、そして事業で地道に生み出してきたキャッシュもあります。

エンジニアからのニーズについてはもう少し詳しく調査・検証する必要がありますが、即払いを魅力に感じてもらえるであろうことは確信していて、既存サービスとの差別化も図っていけると思います。

働き手の視点でのニーズも満たしていてこそ、人材マッチングプラットフォームには優秀な人材が集う。人材プールが質・量ともに潤沢であれば、企業への提供価値も高まる。すでにコンサルタント領域でこの好循環を生み出すことに成功しているWonder Camelは、これから挑むエンジニア領域の新たな戦いでも覇権を取れる可能性があるのだ。

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ビジネスの視点を持った瞬間、見える世界が変わった

さて、ここまではWonder CamelとRotoworksのシナジーを解説し、今回のM&Aの先に見える2つの非連続的な事業成長の絵図を読者の皆さんにお伝えした。しかしこのM&Aの裏側には、もうひとつお伝えしたい成長の物語がある。その物語の主人公は、PMIをリードした吉村氏だ。

冒頭で和田氏は「事業の推進力になってくれたのは、嬉しい驚き」と語っているが、吉村氏はどのような道のりを辿ってきたのだろうか。

吉村PMIの泥くさい側面を痛感しました。思いつくことはすべてタスクリストに落とし込んで、経営基盤整備の支援をしてくれる士業の方々とやりとりをして……PMIに関わるすべての業務が学びにつながり、会社全体が自分の守備範囲だと捉えるようになりました。

Rotoworks内の全業務のプロセスを見直し、再構築するのも私の役目でした。大枠のビジネス構造や業務の流れについては、両社で重複する部分も多くあります。そこを照らし合わせながら最適化することで、一層シナジーを生み出せる体制と仕組みをつくろうと心がけました。

それぞれ異なる仕事の流儀を持つ二社が、ビジネスモデルの最適化を図りながら融合していく。そのプロセスを滞りなく進めていくことは、決して容易ではない。今回その大役を担うことになった吉村氏だが、ほんの一年前までは経営やビジネスへの興味関心はあまり強くなく、プロダクト開発にばかり興味があったという。

吉村Wonder Camelにジョインする前の私はモノづくりが大好きで、自分の技術力に自信がある、いわゆる典型的な“エンジニア”でした。ちなみに和田は大学の先輩で、自身の身の回りで一番優秀だと思っていた人です。前職で社内起業家として新規事業を立ち上げたとき、真っ先に相談したのが和田でした。

和田が起業すると聞いたとき、この人と共に働くことが成長につながると確信して、共同創業者になることを決断しました。とはいえ創業から約1年は、事業内容すら定まっていませんでした。だから私は、エンジニアが技術力を発揮できる、いわゆる“カッコいい”サービスを作ろうとあれこれ試行錯誤していて……。そこに和田がフリーのコンサル向けのマッチングサービスをやろうと言い出したときは、思わず反発してしまいました。それはモノづくりじゃないって。営業には興味がなかったし、モノづくりから離れるのは嫌だったんです。

和田私が当面の資金繰りのために身銭を稼いでくる、その資金を元手に吉村が新規事業を作る、というのが当時の役割分担だったんですよ。でも、自身がフリーコンサルとして企業の課題に向き合ううちに、フリーコンサルとSAP案件のマッチングという構想が生まれました。そこに勝機を見出したからこそ、全リソースを注いで『quickflow』を事業化するべきだと考えました。

吉村『quickflow』にニーズがあることは、当時の自分でも理解できました。だから嫌々ではあったけれど、和田の判断に従ったんです。いざリリースしてみると、お客様から想像以上の反響があり、必要とされるものを世に届けられたんだという自覚が芽生えました。あのときはとても嬉しかったですね。

というのも、私は自分が手掛けたサービスが思うように売れないという失敗を前職で経験してきました。いま振り返れば、私にはビジネスの観点が圧倒的に足りていなかったんです。

『quickflow』の事業が軌道に乗り、Wonder Camelの組織が拡大していくなかで、仕事に対する意識が少しずつ変わっていきました。ビジネスとして何をすべきなのか、自分がどんな価値を発揮すべきなのかという視点を持てるようになっていったのです。そしていつの間にか、今までこだわっていたモノづくり以上の楽しさを、事業成長のプロセスに見出すようになりました。

和田吉村がすごいのは、変化の幅が大きいところなんですよ。この1年で彼のパフォーマンスは劇的に変わりました。吸収量と成長率が非常に高いんです。

吉村DX支援事業を一任するなかで、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなどさまざまな業務を経験しました。業務をただやるだけでなく、それを効率化するための仕組みづくりなどにまで視野を広げると、こんなに多くのことに挑戦できるんだ、と実感しました。

今回のPMIの話も含めてですが、当社には挑戦の機会が非常に多いです。目標を達成するための選択肢が豊かで、面白い環境だと思います。そして自分は、この魅力的な会社を作りあげている一員でもあるんです。そういう実感を持ちながら、今の仕事を最高に楽しんでいます。

吉村氏の成長や意識の変化は、今回のPMIの成功にも大きく寄与している。エンジニア然としてきた吉村氏が、自らビジネスの面白さを獲得していった原体験は、より幅広く活躍できるエンジニアを育てたい、という今後の構想にもつながっているのかもしれない。

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共に事業成長の喜びを分かち合い、仲間と挑戦し続けていきたい

そんな成長著しい吉村氏がこれから挑むのは、「組織力の強化」だ。新たな挑戦が続く状況を楽しんでいることが伝わるように、笑顔で話し続ける二人。和田氏も改めて、大きな期待をかけている。

吉村今後は事業成長を加速させるために組織力をもっと高めていきたい。私たちは来年に向けて採用活動に一層注力していくので、これから企業規模はまた一段階大きくなります。そこで組織力を最大化するためには、人材教育や業務マニュアルの準備を徹底し、これから新たに入社するメンバーが入社後すぐ高い価値を発揮できるオペレーションを組まなければなりません。このような事業グロースのための体制を整えるのは、私の役割だと認識しています。

和田Wonder Camelはこれから急成長のフェーズを迎えます。組織を束ねる存在として吉村がより一層成長することを期待していますし、ゆくゆくは吉村以上に優秀な人材を育てていってほしいとも思っています。

なお、こうした役割に適した人材を、外から採用する選択肢もあったとは思います。でも、私は創業当初から歩んできた吉村と、Wonder Camelが成長していく喜びを分かち合いたいと思っています。長く人生を共にしてきたからこそ、安心して背中を預けられる存在ですね。

吉村Wonder Camelを創業するとき、私は自分のキャリアを和田にベットすると宣言しました。その初心を忘れず、今後も事業成長に貢献していきたいです。

戦略的に見えるM&Aのエピソードを紐解いた裏には、Wonder Camelが大事にする仲間への想いや、共に事業を育んできた共同創業者の成長物語があった。吉村氏のようにチャレンジングな環境で非連続な成長を重ねていきたい人は、これから躍進の時を迎えるWonder Camelでの挑戦をぜひ検討してみてほしい。

こちらの記事は2023年10月18日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

宿木 雪樹

写真

藤田 慎一郎

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