「創業1日目から1,000億円規模の企業を目指して」──Payme COOを経験したX Mile野呂氏が明かす、年率500%成長を維持する事業・組織構築ノウハウ
Sponsored「起業家が育ちにくい」といわれる日本において、少数ながらも存在し、時代を開拓するシリアルアントレプレナー(連続起業家)たち。M&A業界の成熟度、資金調達環境、国民性など、色々な要素はあれど、やはり0→1を連続して成功させることは非常に難しい。
というのも0→1には再現性がほとんどないとされているからだ。これは、グロースフェーズ(1→10)の攻略法が徐々に知識として体系化されてきているのとは対照的。多くの起業家が「0→1はとにかく数」「運が大事」と主張するのも無理はない。
そんな中、Terra Motors(テラモーターズ)にて海外事業の立上げを経て、Paymeの創業期に取締役COOとして2年で評価額数十億円規模まで事業を牽引した起業家がいる。X Mile(クロスマイル)創業者、代表取締役CEOの野呂寛之氏である。X Mileにおいても、わずか3年で組織は急拡大し、売上成長率は前年比500%を実現している。また、同社の祖業であるノンデスク産業専門の求人ウェブメディア「X Work(クロスワーク)」は業界の人材不足を追い風にユーザー数を伸ばし続けている。
X Mileの正体を全3記事に渡って解き明かしていく連載記事。第1回となる今回は、創業者の野呂氏に、複数の0→1を立ち上げた経験から見出した事業創造ノウハウを聞く。伸びる領域の選定方法、勝ち筋の見極め方、効率的な事業運営を実現するオペレーショナル・エクセレンスの築き方など、事業立ち上げに関わる全ビジネスパーソンにとって必見の内容になるだろう。
- TEXT BY MAAYA OCHIAI
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
3,000社のビジネスモデルを調べ尽くし辿り着いた、
ネクストユニコーンが生まれる領域
野呂『CrunchBase』(世界最大級のベンチャーデータベース)の上から下まで海外事例も含めて3,000社くらいを全て調べ尽くしました。伸びている会社とそのビジネスモデルはどんなものかをくまなく検証したんです。その後、膨大な数のアイデア出しや事業計画の作成を行いました。X Mile創業からの半年間は、毎日地道にリサーチと検証を重ねました。そして、やっと辿りついた領域の一つが、「ノンデスク産業」という領域だったんです。
繰り返しになるが、X Mileは創業から3年で売上成長率は前年比500%と急成長している。そんな同社が挑むのは、レガシー産業の中でも特にDXが進んでいないとされている「ノンデスク産業」の領域*だ。野呂氏は徹底的にリサーチをした結果「次に日本からユニコーンが生まれる領域の一つがレガシーな巨大産業の変革である」との結論に辿り着いた。
野呂「ノンデスク産業」とは文字通り、製造業・物流・建築といった現場作業に従事する業態のことです。PCだけでなく、タブレットやスマートフォンといったデスクがなくても使えるデバイスに対応して、業務効率化や事業成長につながる価値を提供する必要があります。
日本ではこれまでも、オフィスワークの業務効率化などホリゾンタル SaaSの事業領域ではユニコーンレベルの企業が多く生まれていますが、それらの上場SaaS企業によるM&A、統合も進んできて、徐々に成熟してきている印象があります。
一方、私たちX Mileが挑むノンデスク産業の領域はまだまだ未開拓といえます。日本におけるノンデスクワーカーの数は、全就業人口の約60%を占めています。それにも関わらず、物流、建設、製造といったみなさんの生活を支えるインフラに、光が当てられてこなかったというのが現実です。私たちはノンデスク産業の課題を解決することで、産業に携わる方や、消費者の生活の質を高めたいと思っています。
日本から次のユニコーンが生まれるとしたら、このような巨大産業の変革を起こすバーティカル SaaS・プラットフォームが一つあると考えています。
そんな未開拓な市場で急成長を続けるX Mileは2019年創業の現在4期目。主に2つの事業を展開している。1つ目がバーティカル SaaS・プラットフォーム事業、2つ目はHRプラットフォーム事業だ。これまでにノンデスク産業に携わる5,000事業所のアカウントを獲得し、十数万人分のノンデスクワーカーのデータベースを保有しているという。一体どんな事業なのだろうか?
野呂HRプラットフォーム事業は、一言でいうと、ノンデスクワーカーの求人検索に特化した「メディアサイト」です。具体的には、ノンデスクワーカーに特化したメディアの運営と、リクルートエージェントとして転職支援を行っています。そして、そこで蓄積したデータベースを活用して他のノンデスク産業の領域に横展開しています。
SaaS事業では産業に特化した経営支援ができる「バーティカルSaaS」です。ノンデスク産業は、あらゆる産業の中でも特にデジタル化が遅れている産業の一つと言えます。というのも、紙やエクセルで帳票管理が行われていたり、今なお受発注はFAXを使っていたりする事業所も多いというのが現状です。多くの企業がIT人材不足に陥っています。
そこで私たちは現場の負担を軽減できるようなプロダクトを開発しています。紙で行われていたやりとりをデジタル化することで少しでも深刻な人材不足を解消したいと考えています。
ノンデスクワーカーは日本就業人口の60%を占めているが、深刻な人手不足に陥っている。特に物流業界においてはその傾向が顕著で、倒産率は2022年上半期では前年同期と比べて1.5倍に急増している。そしてその要因の大半がドライバー不足だ。2028年度には約28万人のドライバー不足が見込まれている。人口の低下に伴い「働き手の数」は減少しているにも関わらず、ECの発展が「ドライバー需要」を圧迫しているのだ。一刻も早い「DXのメス」が求められている。
しかし、この領域におけるプレイヤーの数は多くない。レガシー産業特有の障壁である、根強い紙文化、デジタルシフトへの抵抗感を乗り越えることの難しさを物語っている。
そんな難解な領域にて、創業からわずか3年で急成長を遂げるX Mile。一体どのようにして、0→1フェーズを乗り越えたのだろうか。次章からはいよいよ野呂氏の事業創造手法を明らかにしていこう。
連続起業家が明かす新規事業立ち上げの秘訣
ノンデスク産業に焦点を当てたX Mileだが、創業時からこの産業に焦点を当てていた訳ではなかった。3,000社にも及ぶ企業を、野呂氏とインターン生のみで分析したり、ユーザーインタビューを実施した。「これだ」と思える領域に辿り着くまで、半年の時間を要した。
また、決して「伸びそうな領域」だけを探していたわけではない。何より重視していた観点が「Founder Market Fit」である。聞き慣れない方も多いかもしれない。この言葉は、創業者に合った「最適なマーケット」を見つけるためのフレームワークとして重宝されている。「スキル(得意なこと)」、「ライク(好きなこと)」、「マーケット(社会に求められていること)」この3つの円が重なる部分こそ、創業者が取り組むべきテーマという理論だ。
野呂1つ目の「スキル」については、これまで携わってきた建設DX、製造業、SaaSなどのスタートアップ経験が活きるBtoB SaaS・プラットフォーム事業が得意だと考えました。
2つ目の「ライク」については、マイナス部分をプラスに変えるような社会課題の解決に繋がることがしたいと思ったのです。
3つ目の「マーケット」については、BtoBの産業区分を上から下まで全て見ていく中で、特にポテンシャルの大きいレガシー領域のDXに焦点を絞っていきました。
このようにして私なりの3つ円が交わったのが「医療・介護領域」や、「ノンデスク産業」の領域でした。
最終的にノンデスク産業、その中でも入り口として物流業界を選んだのはなぜだったのだろうか。
野呂「医療・介護領域」には、既にリーディングカンパニーが多くいたので、「私がやらなくても誰かの手でDXは進められる」と思ったんです。
一方、「Founder Market Fit」を見つけた当時、レガシー産業に取り組むスタートアップの数は比較的少ないと感じました。海外と日本を比較すると特にそう感じました。それまでにも私自身が製造業・建設業・物流などのお客さんとの接点が合ったこともあり、課題を感じていたので「まずは挑戦してみよう」と決めました。
レガシー産業の中でも特にDXの余地が大きい「ノンデスク産業」の領域に狙いを定めた野呂氏。そこからどのような切り口でマーケットを切り拓いていったのだろうか。「建設DX」、「製造業」、「ノンデスク産業向けのSaaSスタートアップ立上げ」の経験から、レガシー領域におけるDXの切り口は大きく3つあるという。
野呂レガシー産業DXの切り口の1つ目は「SaaS」、2つ目は「マーケットプレイス」3つ目は「自社が新しいデジタルプラットフォーマーになる」、または「それらの組み合わせ」が多いと考えています。このうちどの方向性から、どのセグメントにアプローチし、どの時間軸でシェアを伸ばすかによって、企業の「色」が出てくるんです。
例えば、製造業のマーケットプレイスを切り口にSaaSを展開したり、建設業のSaaSを起点に受発注プラットフォームを伸ばすなどです。または、初めは企業目線で需要の高い採用支援やコンサルティングの分野から事業開発ベースで切り込みながら、徐々にDXの三つの切り口へと繋げていくやり方もあります。
創業当時のX Mileではプラットフォームの切り口から、BtoBのマッチングを行うUberのようなアプリ開発を行っていました。実は、そこで手応えを得られなかったので、採用支援を切り口にまずは事業所のアカウントを押さえていく方針に転換したんです。これが功を奏して5,000事業所の企業様との契約に繋がりました。その顧客との接点こそが、現在のSaaSやプラットフォームなど事業開発の起点になっています。
現在のX Mileの事業形態に辿り着くまでに参考とした企業は数知れず。日本でも他のレガシー業界のDX事例は事細かくチェックしたという。
ここまで野呂氏の話を聞く中で、既に気づいた方もいるかもしれない。野呂氏のあらゆる業界の事例を熟知していると言うことを。これだけの知識を身につけることができたのは、野呂氏の強い知的好奇心の現れだ。ここに至るまで近くに「壁打ち相手がいたのか」と聞くと、「事業の壁打ち相手はいましたが、現在は基本的には自分で完結している」というから驚きである。
そして、その知識はX Mileの新規事業の立ち上げにおいても存分に発揮されている。X Mileでは直近1年間で3つの新規事業立ち上げを行っている。その1つは既に数十名の組織規模、そして数億円の売り上げに達しているそうだ。新規事業のヒントが野呂氏の口から明かされた。
野呂新規事業が上手くいっている会社って、自社の経営ケイパビリティが強い領域から事業を進めていると思うんです。そこで鍵になるのが、「組織・オペレーションを横展開できること」。エムスリーやエス・エム・エス、AnyMind Groupなどが素晴らしい例だと思います。
また、当たり前のことかもしれませんが、ユーザーにとって「Nice to have」ではなく「Must have」つまり、なくてはならないサービスから攻められているか、キラーコンテンツを作ることができるかどうかが重要です。キラーコンテンツの例としては、法規制がかかるため今後絶対にやらなければならない業務の改善などです。着手する順番も重要だと思います。
加えて、日本のノンデスク産業ならではの課題として、事業者様側にIT人材がいることが稀なので、SaaSの価値をお伝えすることの難易度が高いという問題もあります。なので、実際にSaaSを使っていただき、効果を実感していただくためには、キラーコンテンツと同じくらい、泥臭いきっかけ作りも必要不可欠です。
新規事業の立ち上げに関しては「撤退基準」も聞かれることも多い項目です。これは明確で、「リリース時点のユーザーからの反応量やペインの強さで決まる」と思っています。例えば、上手くいった事業はリリースした瞬間から、問い合わせの電話やメールが鳴り止まなかったりします。
なので、新規事業においてはとにかくリリース数と、スピードにこだわるべきだと考えています。リリース時のお客さんの反応を見ながら、撤退するか投資するか、投資するならどの程度か、これら一連の意思決定をスピーディーに行うことができるかが勝負を分けるのではないでしょうか。
ノンデスク産業の中で需要の高い領域からマーケットインをして、全体シェアを高めた上で時間軸に応じてDXを推進していく。例えば、レガシー業界内でSaaSを導入する経営者が市場全体の10%だった場合でも、5年後、10年後には代替わりで確実にあるべき未来に対してデジタル化が進んでいく。短期目線だけではなく、中長期的に業界全体の労働生産性を上げていくことが野呂氏の描く事業展望とのことだ。
「Day1から1,000億円企業前提」で組織づくり。
急成長にも対応し得る組織とは?
「人材事業から入ってSaaSに展開し、さらに領域を広げていく。」これだけを聞くと、FastGrowの読者であれば「なるほど。それだけならすぐに模倣可能なのでは?」と鋭いツッコミを入れたくなるかもしれない。そこで野呂氏に競合優位性について尋ねてみると、次のように他の企業の例を挙げながら答えてくれた。
野呂企業が価値創造のための事業活動の効果・効率を徹底的に磨き上げ、優位性を構築することを「オペレーショナル・エクセレンス」といいますが、この模倣は容易ではありません。例えばリクルートやキーエンス、ベイカレント・コンサルティング、SHIFTなど日本で時価総額を伸ばしている企業に共通するのが、「組織・オペレーションに強い」ということだと思います。事業やビジネスモデルは時代によってどんどん変わりますが、企業文化や組織・オペレーションは容易に置き換えられません。
私は創業時から、起業するなら日本経済にインパクトを与えられる大きな会社を創りたいと思っていました。ですから、Day1から1000億円企業を前提にして組織をつくろうと決めたのです。それを既に成し遂げている企業と同じように組織とオペレーションを構築しなければならないと考えていました。
私たちはまだ創業4期目ですが、いわゆる社内Wikiはかなり整ってきたと思います。ナレッジコンテンツ記事は現在300本以上に増えており、中途採用で大手企業から来た社員に「前職より整備されているような気がします」と言われたりもします。
また、スタートアップの創業期は即戦力人材を中途採用するのがセオリーですが、私たちX Mileでは創業期から新卒や第二新卒など未経験者も採用をしてきました。
結果的に、X Mileでは未経験者に対する教育や研修の仕組み化が根付き、社の未来を担う人材が社内から生まれていることが特徴かもしれません。
野呂氏はこれまでアーリーフェーズの会社でキャリアを築いてきた。アーリーフェーズの会社は事業の成長を優先させるため人材に関する組織整備は二の次になる傾向が高い。それにもかかわらず、創業期から組織・オペレーションの磨き込みを徹底してきた背景には同社COO渡邉氏の存在が大きいという。
野呂それは、COO渡邉さんの影響です。渡邉さんと私は性格も歩んできたキャリアも真逆です。私は粗くてもスピード重視です。ひたすらに0→1をやってきました。一方COOの渡邉さんは組織化、仕組み化、データ化を緻密に行ってきました。これは私には到底できない磨き込み方です。
私たちはこれまで、組織が急拡大する上で起こりうるリスクを先回りして対処しながら、事業を運営してきました。乗り込む市場の拡大が見込めて、事業拡大をする前提ならば、初めから拡大に耐えうる組織構築しようと考えたからです。今でも1ヶ月ごとに組織を見直していますが、まだまだ組織のオペレーションは磨き込めると思っています。
X Mileの仕組み化やデータ化へのこだわりを表す象徴的な出来事がある。それが「事業開始の2ヶ月目から顧客管理システム(CRM)を導入していたことだ。CRMシステムとは顧客と長期的で良好な関係を構築し継続するための手法である。それを2ヶ月目から導入するのは「早すぎる」と思われるかもしれない。しかし、これもデータや生産性を重要視することで事業拡大を実現するためと考えれば、実に合理的といえよう。
そして、そのこだわりは単にスケールを見据えているだけでない。ノンデスク産業というマーケットの勝ち筋から逆算した姿でもあるという。
野呂私たちが対象とする市場の大多数は中小企業です。つまり、SMB(中小企業)を開拓できるような組織オペレーションをいかに構築できるかが重要です。
日本のSaaS企業ではプロダクトが強くても、営業が弱い企業も見受けられます。CPL(リード獲得単価)を数万円ほどで営業を外注している企業も多くあります。
しかし、私たちのようなスタートアップは自社独自のハウスリストを資産として蓄積したり、インサイドセールスの改善サイクルも早いというのが特徴です。そのためプロダクトを自社で作るのが良いと考えています。
X Mileでは徹底した、仕組み化、組織化といったオペレーションの磨き込みで事業成長と組織拡大を効率的に実現していく。創業期から組織や業務基盤の構築に積極的に投資しているのはこういった理由からです。
X Mileでは創業期から一貫して「仕組み化する文化」が根付いている。これはプロダクト開発の文脈においても同様だ。初期からプロダクトマネジメントツールを入れ、PdM(プロダクトマネージャー)がいなくても開発要望が上がり、スクラムでプロダクトの改修・改善が進むよう仕組み化を推進している。
また、急成長するスタートアップでも、「上場を目指してやるなら、最初から働きやすさには注力すべき」と、業務環境や福利厚生にも力を入れている。創業期から社員の満足度を高めることにも抜かりがない。
どんな側面においても、早めにコアとなる組織と業務の基盤をつくることができれば、事業規模が10倍になっても生産性を下げずに成長することができる。こうした「大きくなる前提」の組織設計が、同社の競合優位性を築いているのだ。
日本経済を再興するには。
野呂氏がスタートアップにこだわる理由
さて、ここまでで野呂氏の新規事業立ち上げにおけるノウハウが明らかになった。ここからは同氏が「なぜ起業をして大きな社会課題の解決に挑むことにしたのか」その経緯について紐解いていく。
野呂氏がスタートアップに関わるようになったきっかけは、創業2年目の建設DXスタートアップだ。全社員3名のフェーズに入り、営業や新規事業の立ち上げなどを担当し、組織が30名の規模になるまで経験を積んだ。
その後、「海外にチャレンジしている日本のベンチャー企業で働きたい」と興味があった海外事業に挑戦した。そこで出会ったのが海外事業を拡大していたテラモーターズだった。面接の1週間後にはベトナムに飛び立っていたという。
野呂もともと海外に興味があったので、面接で「1週間後にベトナムに行けますか?」という質問に「はい」と二つ返事でOKしました。駐在したベトナムでは、地方含めて全土を飛び回りゼロから販売網を構築、工場を立ち上げ2桁億円規模まで受注を拡大させることができました。その後カンボジアの拠点長として「EV3輪」という環境に配慮した電動三輪車事業の立ち上げを行うなど、さまざまな経験をさせていただきましたね。
テラモーターズでの経験は今でも生きています。新規事業立ち上げフェーズで成功率を上げるためには正直、打席に立つ回数が重要だと思っています。私はスタートアップでチャレンジを重ね、起業後には打席に立ち続けてきたことで、事業の勘所を掴めた気がします。
帰国後、テラモーターズでの経験を生かし様々なスタートアップの支援を行った野呂氏。その中で出会った創業期のペイミーに2番目の社員として参画。取締役COOに就任した後は、SaaS導入企業200社突破。シリーズAにて4.5億円の資金調達、銀行・上場企業との事業提携など事業の拡大に大きく貢献。その後、X Mileの創業に至った。
常にハードな環境に身を起き、ストイックに研鑽を続ける野呂氏。一体彼を突き動かすエネルギーはどこから湧き出ているのだろうか。
野呂起業を志した動機は「日本経済をなんとかしたい」という想いでした。ICU(国際基督教大学)に在籍していた時、日本経済の厳しい現状を初めて知りました。
「日本を再興するためにどうしたら良いのか」と、当時考えた選択肢は、ベンチャーキャピタル、起業、政府系機関の3つでした。
ただ、政府系機関やキャピタリストとして世の中を動かせるような立場になるのには10年単位の時間がかかると感じました。「それなら起業する方がが早い」と思い、その準備としてスタートアップに参画し経験を積んできたのです。
野呂氏の話しぶりはスタートからインタビュー終盤まで変わらず、非常に淡々とした印象を受けた。物静かな面持ちの内側には青い炎を灯しながら、壮大なビジョンを見据えるその姿にはどこか計り知れないところがある。
事業開始までに3,000社ものリサーチを行うほどの徹底したリサーチ力。PMF後は未来のあるべき姿から逆算して、事業と組織の両輪で経営を推し進めていく計画力。そして、急成長を実現し続ける遂行力。それでも本人の口からは「私たちほどの小さな規模の会社では、日々やるべきことをやるだけです」という驚くべきほど謙虚な言葉が飛び出すのだ。
野呂夢やビジョンは大きく、毎日行う小さなことの積み重ねを大切にしています。常に新たな投資をし続けないとベンチャー企業は生き残れないですし、油断せずに、ただ淡々とやるべきことをやるのみだと思っています。
見ている世界のスケールの大きさ、視座の高さが見受けられたがここまでの実績に奢る様子は一切なかった。
令和を代表するメガベンチャーを創る。
X Mileが見据える未来
そんなX Mileでは、組織・オペレーション強化に加え、育成や研修・オンボーディングにも積極的に投資を行う。
定期的な経営合宿の開催や、管理職全員に対して毎週研修を実施していることを鑑みると、その投資具合に「大きくなる前提」の器づくりという明確な意思を感じざるを得ない。
先に挙げたセールスチームの組成からもわかる通り、生産性が高く再現性のある組織づくりを重視している同社。創業期のスタートアップだが、子どものいる社員も多く、女性比率と女性管理職比率はどちらも50%を超えている。さらに「健康経営優良法人2021」にも認定されているという。このように成長と働きやすさの両立ができているスタートアップが日本にどれくらい存在しているだろうか。
働きやすさにも配慮している背景には、X Mileという企業を選んでくれた社員に対する野呂氏の強い想いがある。
野呂創業期は会社として不安定ですし、未来も見えづらいので、家族や友人に「ここで働いている」と胸を張って言えない人も多いと思います。
X Mileでも最近やっとメンバーから「家族に胸を張ってX Mileで働いていると言えるようになった」「年々、事業も環境もどちらも良くなっている」という声が上がったり「X Mileで働いていることにすごくいい印象を持ってもらえた」という声を聞くようになりました。会社を創業してこれほど嬉しいことはないですよね。
自分の周りの人に対して誇れる会社じゃないと働き続けるのは厳しい。事業の成長性を維持するには、同時に守りの部分も固めなければならない。組織としての働きやすさが「安心感」を生み、ひいては採用競争力自体を高めることができると思います。
そんな野呂氏に「今後のビジョンは?」と尋ねてみた。
野呂働き方改革やデジタル化が急務とされているノンデスク産業の課題解決を通して、令和を代表するメガベンチャーを創ることです。
そのために新規事業をこの1年で3つ以上立ち上げています。3年後や5年後に既存事業の成長ペースの天井が来たときに、今の新規事業が次の成長を支える領域になると考えるからです。新規事業を生み出し、売上成長率を担保することが私に課せられた使命だと思います。
イノベーティブなメンバーが続々参画。
なぜ今X Mileに人が集まるのか?
目指す世界の高さ、そして描いた目標を着実に実現するという実力を持つX Mile。20代や30代の若手メンバーだけでなく、経験豊富でマチュアなメンバーも続々と参画している。
野呂ここ最近では、メガベンチャーで事業部長を勤めた方、子会社の立ち上げに携わった方、上場企業に事業を売却した経験がある方のような経験豊富な人材がX Mileのミッションと事業構想に魅力を感じてジョインしてくれています。
もちろん新卒からも優秀な人材が生まれてきています。20代半ばで1億円規模のP/L責任を持っているメンバーもいます。
X Mileの経営ではスピーディに大きな役割を渡して権限委譲することを心掛けています。「新規事業の立ち上げ(0→1)」「既存事業の成長(1→10/10→100)」どちらも味わえる環境は魅力的だと思います。
1年で3つの新規事業を生み出すスピード感は、新規事業立ち上げの力を養いたいビジネスパーソンにはうってつけであろう。また既存事業の成長に伴い、既存事業のグロースフェーズに挑戦できる機会も豊富。そして経営チームは現在、野呂氏と渡邉氏の2人のみ。将来100人規模の組織をマネジメントできる経営人材の活躍・登用機会も残されているのだ。
野呂ネクストユニコーンが生まれる領域、そして実際に目指せる企業はそう多くない。その点ノンデスク領域は、日本の人口減少が招く「インフラの崩壊リスク」という巨大な社会課題に向き合うことができる。つまり、ユニコーンが生まれやすい領域の一つだと思っています。
「令和のリクルート」のようにメガベンチャー、社会課題を解決する事業家集団、No1プラットフォーマーをつくりたいという人。X MileではCxOなどシニア人材、事業部長・部門長・マネジャーなどのミドル人材もまだ少ないので、近い将来の上場企業の役員を目指せるキャリアを提供できる会社だと思います。
市場価値を高めるには伸びている産業に属することが必須条件と言える。組織の拡大とともにポストが空き、自ずとメンバーの裁量を押しあげるからだ。
X Mile在籍者はスタートアップ、商社・メーカー、大手SaaS企業、コンサルティング、金融、不動産、建設、通信、教育、アパレル・美容の販売職出身者など、とにかく人材の幅が広い。大企業に在籍しているもののあまりチャレンジできていないと感じる人、次のキャリアとしてスタートアップを考えている人、既にベンチャー・スタートアップに在籍しているがさらにスキルアップしたい人などはチャレンジを考えてみても良いかもしれない。
そして、次回の記事では野呂氏に加え、COOの渡邉氏も交えた対談を予定している。組織・オペレーションを管掌する渡邉氏がX Mileの組織戦略を徹底解説するとともに、創業期スタートアップのCEOとCOOのあり方についても迫っていく。
こちらの記事は2022年12月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
落合 真彩
写真
藤田 慎一郎
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