グリー(GREE)に買収されるのは幸せなのか?
起業家のイグジット戦略
起業家にとって一つのゴールであるイグジット。
どのようなビジネスが、どのような経緯をたどって売却に漕ぎ着けるのだろうか。
創業者はその後どうしているのだろうか。
その具体的なケースとして、GREEに買収された9社を紹介する。
- TEXT BY FastGrow Editorial
未来のイグジットに向けて
自ら立ち上げた会社を成長させ、売却し、莫大な利益を得る。
起業を目指すものならば、一度は見る夢ではないだろうか。
成功すれば、企業に留まり豊富な資金で事業を拡大することも、投資家として悠々自適な生活を送ることも、新たに事業を立ち上げ、シリアルアントレプレナーとしていきていくことも可能になる。
これまでにイグジットを成し遂げた事業を見ていくことで、何かヒントが得られるかもしれない。
ソーシャルゲーム業界をグローバルに牽引するGREEに買収された9社と、その背景をご覧あれ。
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※カテゴリごと買収時期の古い順に表示。情報は各企業のプレスリリース及び関連メディアから収集した。
リフォームEC事業
セカイエ
2008年4月に創業。オンラインでの定額リフォームサービス「リノコ」を展開する。
2015年1月、13億円で株式の100%を取得し、完全子会社化。
GREEは2013年にゲーム事業以外に100億円の予算を投じる計画を立てており、その一環としてリフォーム事業に投資を行っていた。買収時点で、GREE子会社が既に工務店150社をネットワークしており、それを上回る規模のセカイエのネットワークを取り込み、同事業を拡大することが買収理由のひとつだった。
買収後は前年比2倍強の大幅増収を果たし、2016年12月には「リノコ」が 日本ネット経済新聞賞・急成長賞を受賞する。
2017年5月、GREEの事業整理に伴い、不動産売却の一括査定サイト「イエイ」を運営する株式会社Qに売却。6月より新生セカイエとして新たなスタートを切った。
創業代表取締役社長の高間舘紘平氏は、買収後も同社代表取締役を務める。GREEからQに売却された現在も、同職。
広告事業
アトランティス(現 Glossom)
2007年3月に創業。無料の広告配信システム「アドランティス」を運営。
2011年1月に普通株式3,868株(議決権比率77.1%)を16億700万円で取得、後に完全子会社化された。創業から3年10ヶ月での買収。
買収の目的は、アドネットワーク事業を新たに開始することで、スマートフォン向けプラットフォームにおけるトラフィック活性化やマーケティング力向上による事業の強化及び広告事業の拡大。
2013年11月、GREEより広告事業を継承し、社名をGlossomに変更。2016年6月、国内最大級のスマホ向けサプライサイドプラットフォーム(SSP)「アドフリくん」を運営するADFULLYの株式を100%取得し子会社化。
創業者の木村新司氏は、売却後、GREEの広告事業の国内海外の事業を統括。投資家としてGunosy創業に関わり、2013年より同社共同最高経営責任者。マザーズ上場に導く。2014年8月に同職を退任。その後、シンガポールへ拠点を移し、ベンチャーへの投資に注力。2016年06月に「スマホでの支払い文化の創出」を掲げAnyPayを設立。代表取締役に就任。2015年12月、クラウドワークス社外取締役も務める。
ADFULLY
寺島情報企画のサービスとして事業を開始し2015年6月に独立。スマートフォン向けアプリの収益化事業を手掛ける。7000件以上のアプリ・ネットワークに対してSSP事業「アドフリくん」を展開。
2016年6月末に、GREE子会社のGlossomがADFULLYの株式の100%を取得。買収金額は非公表。GREEグループの持つ各種メディアへのADFULLYのサービス導入を行い、シナジーを創出することと新しい広告プロダクトの創出をめざす。創業からたった1年で買収まで漕ぎ着けた。
買収後はパネル広告、動画インタースティシャル広告、動画特化型のネイティブ広告など新機能を連続リリースしている。
代表取締役の小室喬志氏は、現在も引き続き代表取締役を務める。
3ミニッツ
2014年9月に創業。国内最大級のインフルエンサーネットワークを有し、オリジナル動画コンテンツの企画制作等を手がける。instagramの女性インフルエンサーをプロモーションに活用する「INSTAGRAMMER.JP」、動画コマースアプリ「GINI」、次世代ライフスタイル動画メディア「MINE」などを運営していた。独自ファッションブランドのEC展開も行う。
2017年2月に43億円で株式取得。GREEは動画広告を成長分野に位置づけており、スリーミニッツのインフルエンサーと連動した動画プロデュースのノウハウを評価した。買収前の2016年8月期には純損益は5億1000万円の赤字だった。M&A実行後に、一定の指標を達成した場合に追加で代金を支払うアーンアウト条項付での買収となった。創業後2年5ヶ月で買収された。
買収後は、動画制作・SNS配信・効果検証までをトータルプロデュースする広告パッケージ「AD MOVIE BY 3M」の提供を開始するなど、事業拡大を続ける。また、「MINE」は2017年6月時点でユーザー数累計280万人、月間1億回再生、月間リーチ数7500万人を突破し、国内最大級のファッション動画メディアとして成長している。
創業者の宮地洋州氏は、GREEによる買収以前に持ち株をVCに売却し、退任代表取締役社長を退任している。
ゲーム事業
OpenFeint, Inc.
2008年8月に創業。カリフォルニアに拠点。米国市場に強力な基盤を持ち、iOSとAndroid向けのゲームに、ランキングや友人との対戦機能、チャットなどのコミュニティ機能を追加できるソーシャルゲームプラットフォーム「OpenFeint, Inc.」を運営。買収時点で全世界7500万ユーザーを誇っていた。
2011年4月に1億400万ドル(約85億7000万円)で買収。買収の理由は、GREEの成長目標であった1億ユーザーと海外市場への進出の達成のため。この買収により、GREEは1億ユーザーを超える世界最大級のモバイル端末向けソーシャルプラットフォームを構築した。創業から売却まで2年8ヶ月。
GREEが海外における主力をプラットフォーム事業からゲーム開発事業へと見直したため、2015年5月に事業整理により清算。同サービスの利用者には「GREE Platform」への移行を促した。最終的に買収額を上回る90億2000万円ののれん等減損を計上。
共同創業者のPeter Relanは、他の設立企業Spaceportを2013年にFacebookに売却。その後複数のテック企業でボードメンバーとして活躍している。
Jason Citronは2012年に設立したDiscordでCEOを務める。現在までに約8000万ドルを調達。
Funzio, Inc.
2009年6月に創業。Facebook及びモバイル向けのミッドコア・モバイルゲームを開発。Crime City、Modern War、およびKingdom Ageなどのタイトルを有する。The Wall Street Journalで「最も革新的なスタートアップTop50」のひとつと評されるなど高い注目を集めていた。
2012年5月に株式の100%を2.1億ドルで取得。買収の理由は、欧米市場への進出及びプラットフォーム・プロバイダーかつゲームデベロッパーの獲得によるゲーム開発能力の向上。創業から2年11ヶ月でのイグジット。
2015年には業績が低迷、GREEは142億円の特別減損を計上した。
創業者はKenneth Chiu、Rick Thompson、Andy Keidel、Anil Dharni、Ram Gudavalliの5名。
Rick Thompsonは自ら創業した2社を含む複数社で代表やボードメンバーを務める。他4名はGREE他4名はGREE勤務。
Anil DharniはGREE InternationalのCOOを務め、2015年にSense Talent Labsを設立し、CEOに就任。
Paprika Lab
2007年9月に創業された、韓国国内有数のゲームデベロッパー。ソーシャルゲームの企画・開発・運営。月間アクティブユーザー150万人以上を記録したFacebookのソーシャルゲーム「HeroCity」などを開発。
2012年6月に創業から4年8ヶ月で買収された。買収額は非公表。買収により開発力を強化し、日本で培ってきたGREEのモバイルソーシャルゲームのノウハウと経験を融合させ、より魅力的なモバイル・ソーシャル・ゲームを世界各国に提供することが可能となった。
創業者のJohn S. Kimは、GREEにてディレクターを務めた後、2013年2月にチャットボット用SDKを開発・運営するSendBirdをカリフォルニアにて設立。現在までに12万ドルを調達している。
ポケラボ
2007年11月に創業。モバイルソーシャルゲームデベロッパー。AppStoreやGooglePlayでランキング入りするゲームを複数開発していた。
2012年10月末に138億8600万円で買収された。GREEは買収によりスマートフォンにおけるモバイルソーシャルゲームの開発力をさらに強化するとした。設立から4年11ヶ月で買収。
買収当時5億円を超えていた売り上げは、2年で60億と大幅に伸びてはいたものの、主要ゲームの売り上げ落ち込みにより急激に失速。2015年第4四半期には130億7900万円の減損を計上した。
現在は「SINoALICE」でAppStoreトップセールスランキング1位の獲得やAKB関連ゲームの製作を行なうなど、事業を継続している。
創業者は後藤貴史氏、佐々木俊介氏、鈴木匠太氏、和田圭祐氏。2011年12月に創業者たちは代表取締役及び取締役を退任。
後藤貴史氏は2016年、体験型アトラクションの企画・開発を行うプレースホルダを創業、代表取締役就任。
PerBlue, Inc.
2008年6月に米国ウィスコンシン州に設立。「DragonSoul」を中心にモバイル向けに複数の有力ゲームタイトルを開発・運営。
2016年10月、PerBlueを存続会社として、GREEの連結子会社GREE International Entertainmentが設立する新会社と合併を行うことで、PerBlueを完全子会社とした。
株式取得の前に、PerBlueの「DragonSoul」を除く全事業に関わる一切の権利関係等および全ての従業員等は別会社に譲渡・移転されたため、実質的にGREEは「DragonSoul」を買収したこととなる。
取得対価は約2800万ドル。700万ドルの債務清算と合計で3500万ドルで買収した。
買収の目的は「DragonSoul」のさらなるの拡大と開発力の強化によって海外展開を再加速させることである。
創業者のJustin Beckは買収された後も、同社CEOを務めている。
こちらの記事は2017年07月14日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
FastGrow編集部
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