“ゼロイチのプロ”がCTOに。
26歳の異彩たちが掲げるアラン・プロダクツの新構想に迫る
ユナイテッドの子会社であるアラン・プロダクツ(以下・アラン)は、河西智哉氏が代表を務めるGlasspod社を買収し、河西氏はアランのCTOに就任。新規事業の開発部署として「スタジオアラン」を新設し、社内から連続的に新規事業が生まれる仕組みを作ろうとしている。具体的に、どういった構想を描いているのだろうか。買収の経緯とアランが実現させたい世界観について、アラン代表の花房弘也氏とCTOの河西氏に話を聞いた。
- TEXT BY TOMOMI TAMURA
- PHOTO BY DAISUKE OKAMURA
出会いはTwitter。DMでのコンタクトが始まり
2018年10月に、アラン・プロダクツはGlasspodを買収し、河西さんはアランのCTOに就任されました。お二人の出会いはいつだったのでしょうか?
花房昨年の10月頃、河西が「スーパーエンジニア」として紹介されている記事がTwitterのタイムラインで流れてきたんです。調べると、スタートアップのシード期の事業立ち上げをいくつもやっていることを知って、「一緒に新規事業を作りませんか」とダイレクトメッセージを送ったのが始まりです。
もともとアランで、連続して新規事業が生まれ続ける仕組みを作りたかったので、「彼となら実現できるかもしれない」と思いました。
河西Glasspodではゼロイチの開発パートナーとして事業立ち上げに関わっていたので、花房に連絡をもらってからすぐに会い、1週間後にはプロジェクトが始まりましたね。
花房一緒に仕事を始めると、「事業創り」に対する考え方や感性が一致していて、すごくやりやすかったんです。いわゆるリーンスタートアップ的思考をもちスピード感を担保しながら、本質を見極めてサービスを創っていく、いい意味でエンジニアっぽくないなって。
河西開発条件を決めるとき、最初のリリースでは必要ない機能はどんどん削ぎ落としていくことが多いですね。エンジニアとしての技術的なテクニックというよりは、PM(Product Manger の略。事業創りの責任者)の視点です。僕も、花房とは興味のある事業領域が似ていたり、仕事もやりやすいなと思っていました。
新規事業立ち上げに必要な資金力がある。提案を受け入れアラングループ入り。
事業創りの完成やスタイルの一致がきっかけで、M&Aの話を持ちかけたのでしょうか。
花房そうですね。河西の会社に発注してサービスを納品してもらうだけではなく、もっとガッツリ一緒にやりたいと思うようになりました。
彼にはいろんな企業から声がかかっているのは知っていたし、普通に入社することは無いなとも思っていたので、もうこれは待った無しだと思い、「会社を買わせて欲しい」と相談したんです。
すると、話がとんとん拍子で進み、M&Aに至りました。結果、アランは念願だったCTOを買収という形で獲得することとなりました。
河西ちょうどその頃、会社をどうスケールさせようかなと考えていたんです。新規事業をいくつも立ち上げたいから、ファンドと組んで複数事業に関わろうかなと。そのタイミングで話をもらったのですが、アランはユナイテッドの子会社で資金力があり、花房は新規事業を連続して生み出そうとしています。
しかも、事業創りに関しては明確な基準をもって裁量権を与えるスタイルにも共感し、「なるほど、そういう道もあるな」と思ってM&Aの提案を受け入れました。そもそもまとまった資金力がないスタートアップだと、事業をたくさん立ち上げたいという夢はあっても、1つ事業を立ち上げることに精一杯で終わりになることがほとんどですから。
今はアランの子会社としてジョインし、「スタジオアラン」という新規事業を立ち上げる部署をつくってフルコミットしています。
花房河西がジョインしてくれたことで、想い描いていた構想が着実に進んできました。彼はプロダクトのことが本当に好きで、それを開発するする力がある上に、ビジネスプロデューサーとしての側面も持っているんですね。だから、事業を立ち上げるにあたって開発以外にも必要なこと、たとえば人材採用なども含めてやってくれています。
河西一緒に働きたいなと思うエンジニアは積極的に声をかけていますね。9月にジョインしたばかりですが、すでにメルカリ等の有望ベンチャーからエンジニアの採用が決まるなど、順調に巻き込めてきていますね。
新規事業が再現性を持って生まれ続ける組織へ
花房さんの「想い描いていた構想」とはどういった内容でしょうか。
花房有望な新規事業を、再現性を持って生み出す組織の構築です。実は1年前に、新規事業をいくつか立ち上げようとしたのですが、正直なかなかうまくいかないことが多かった。アランのビジョンは「多彩な事業が絶えまなく生まれ、一人ひとりのイキイキが実現される場所」です。
だから、PMが責任と裁量を持ってアランの中でいろんな事業機会を見出して、素晴らしい事業を次々と生み出すような、そんな組織構造を創りたいとずっと思っていたんです。
具体的には、まず「スタジオアラン」というゼロイチの事業開発に最適化された事業部でスピーディな事業検証を行っていきます。それが立ち上がったら、その事業は10X(テンエックス)というフェーズに昇格。事業を独立させてリードエンジニアやPMが裁量を持ち、まさに1→10といわれるような、事業の10倍成長を目指します。
ここからさらにスケールさせる上では∞(マキシマム)と呼ばれるフェーズに昇格させ、その事業を子会社することで、各事業のPMは社長に、リードエンジニアはCTOに、デザイナーはCDOに、、といった形で経営独立させていく仕組みです。
花房そもそも、ある程度成長した事業によってカルチャーや最適な組織構造は違うので、すべてがアランの中にある必要はありません。10X以降は子会社化することで、アランがハブになって、新規事業が再現性を持って生まれるような全体像を描きました。
加えて、スタジオアラン、10X、子会社、既存事業はそれぞれ人材を固定させるのではなく、流動させたいと考えています。ゼロイチをやりたいならスタジオアランへ、これからの事業のグロースに携わりたいなら10Xへ、スケールした規模感で勝負したいなら子会社に出向しチャレンジしていく。
河西いろんなフェーズの事業が1つの組織の中にたくさんあると、エンジニアやデザイナーも楽しいですよね。1つの事業しかない会社だとそれにしか携われないけど、たくさんの事業があるとプロダクトの作り方も立ち上げ方も違うから、同僚と話しているだけでも勉強にもなるはず。どのフェーズでも、どの事業でも、柔軟に兼務や異動、出向ができるなんて、すごく楽しい会社になるんじゃないかなと思っています。
具体的な事業領域は決まっていますか?
花房世の中が大局観でどう変わっていくんだろうという視点を前提に、さまざまな事業機会を考えます。例えば日本の中小企業において慢性的な人手不足が続いた時に、いったい何が起こるんだろう?と想像して事業を構想したりとか。
それでいて、しっかりと収益を生み出せる事業に短期的にはフォーカスしていますね。あまりに未来すぎる事業は今はやりません。そういう意味では、人と人が出会いたいという普遍的なニーズを解決する「デーティング領域」や、もっといい体を手に入れたいというニーズを満たす「健食領域」、「OTA領域」「HR領域」などは注目しています。
時代にあった戦略やコンセプトで積極的にチャレンジしていきたいと思っています。
河西すでにそれぞれの領域でPMを立て、今はリリースに向けて走り出しているところです。
外部のプロフェッショナルと連携し、組織力を高める
スタジオアランでいくつもの事業を立ち上げるにあたり、PMの育成も必要になりますね。
花房そうですね。PMが育たない組織からは良い事業は生まれないと思うので、その成長の仕組み作りのためにPM会と呼ばれる機会を設けることにしました。アランのあらゆる事業を担当する全PMが一堂に集まった場に、日本を代表するサービスを創り上げてきた一流のプロデューサーや経営者の方をゲストに呼び、ガンガン事業フィードバックをしてもらいます。
アランはまだ若い組織なので、自分たちだけの経験だけでは限界があります。経験豊富な事業家の方々のサポートを受けながら、全員で成長していきたいですね。
河西アランは資金力があるし、いろんなノウハウも人材も揃っているから、実現できると思っています。まだジョインして1ヶ月ですが、これまで支援してきたスタートアップよりも、事業の立ち上がりは早いなと感じています。
花房しっかりと結果を出して、ユナイテッドの資金も大胆に活かしていきたいですね。
河西花房自身がユナイテッドの役員を兼任しているから、ユナイテッドとの連携や交渉事含め、資金の面は頼りにしています(笑)。これからPMやエンジニアの採用を強化して、創れる事業の数や携われる領域の幅を広げて行く予定です。
アラン・プロダクツは、莫大な資金と人材リソースを使っていろんな事業を生み出そうとしています。これからすごく面白くなると僕もワクワクしているので、「将来起業したい」「起業に関わりたいけどどんな領域が好きかわからない」といった学生や若手社会人の方がいたら、職種や得意分野を問わず、ぜひ一度お話しましょう。
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こちらの記事は2018年10月19日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
田村 朋美
写真
岡村 大輔
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