「ブラウザ上の繰返し作業はBizteX cobitにお任せ」
ディップ社のクラウドRPA活用方法大公開!
RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)がバズワードとなってから久しい。
しかし、どのサービスを活用すればいいのか?
また実際にRPAを活用して業務効率化を進めている企業の現場では何が起きているのか?
そのような実態を知る人はそう多くはない。
そこで今回はクラウドRPA「BizteX cobit」をリリースしたBizteX代表取締役の嶋田光敏氏と、同サービスを導入しているディップの次世代事業準備室 室長である進藤圭氏に、RPA活用のリアルを伺った。
- TEXT BY REIKO MATSUMOTO
- PHOTO BY YUKI IKEDA
自社開発もパッケージ型も試した末にクラウドRPAを導入
ディップがBizteX cobitを導入した経緯を教えてください。
進藤当社は「バイトル」や「はたらこネット」をはじめとする求人情報サイトを複数運営しています。そのサイトに大量の情報を掲載するためにスタッフは日々、会社情報や求人情報などをコピペ(コピー&ペースト。以下同じ)する作業に追われていました。
そういった作業の自動化を実現すべく、古くはRPAの自社開発も行っていたのですがあまりうまくいかず、作業の自動化はずっと社内の課題として抱えていました。
進藤自社開発を断念した後にはオンプレミス型のRPAパッケージ導入を検討した時期もあったのですが、それも当社のニーズとは合わなかった。なぜなら、オンプレミス型の場合、導入するシステムに合わせて自社のシステムや業務を再設計する必要があるため、システムに詳しくないメンバーだけでは使いこなせないからです。
ディップでは現場で営業に関わるメンバーや派遣社員の方々だけでも簡単に使えるRPAを求めていたんです。その条件に当てはまるのはBizteX cobitのようなクラウドRPAツールでした。
しかし、嶋田さん(BizteX株式会社 代表取締役)に知り合った当時はまだBizteX cobitは開発途中だった。
それなら、まずはディップが運営する「AI.Accelerator」というプログラムに入ってもらってプロダクトを完成させようという話になり、3ヶ月のそのプラグラム中にメンタリングしながら、実際にエンドユーザーとして使ってみたのが導入の始まりです。
BizteX cobitはクラウド型だから導入の手間がかからないことに加えて、コストも他社のオンプレミス型のものとは比較にならないほど安かったので、気軽に本導入することができましたね。
※17年12月現在、ディップとBizteXに資本関係はない。
嶋田お客様に価格を伝えると「そんなに安いの?」と驚かれることは多々あります。これまで国内向けに存在していた既存のRPAシステムは大規模なエンタープライズ向けがほとんどですが、BizteX cobitは大企業以外の中堅・中小企業にもRPAの利便性を届けたくて開発したものです。
そのため月額費用も抑え、プロダクトとしてのポジショニングも他社とは変えているんです。
SaaSが普及した現代だからこそクラウドRPAが使いやすい
なぜBizteXではクラウドRPAを作ろうと考えたのでしょうか?
嶋田SaaS型のソフトウェアが増えてきたことにより、クラウドRPAのほうが業務効率化に最適な世の中になってきていると感じていたからです。
現状RPAはオンプレミス型が多いのですが、パッケージをインストールする必要があり、 ScriptやVBの知識がある人に加えて、結構な時間、そして金銭的コストがかかります。
また、ちょっとした変更を加えたいときにも上記のような人と時間をかけて改修が必要となる場合も多く、小回りが効きません。
しかし現代の企業の現場では、業務プロセスおよび業務で使うサービス・管理画面などは日々変化し、多様化し続けています。そのスピーディな業務環境の変化に対応するためには、RPA自体も変化にすぐ対応できるクラウドベースかつ簡単な操作でロボット作成ができるUIである必要があったんです。
会計ソフトも一昔前まではインストールが必要なパッケージ型しかありませんでしたが、今ではクラウド会計ソフトも普及してきていますよね。それと同様、時代の変化に合わせ、クラウドRPAの方が対応しやすい課題が増えてきていると思ったのが開発のきっかけです。
進藤RPAというキーワードで一括りにされていますが、私は「自社開発」、「オンプレミス型」、「クラウド型」の3つで全く別のサービスだと認識しています。解決する課題も違えば、システムを使用する人も違う。
進藤クラウド型は業務が細分化されておらず、少量だけど色んな業務を扱うフェーズの企業に向いている。毎日色んな管理画面を見ているベンチャー企業、何でも屋のメンバーがいる中小企業はここに該当します。
進藤自社開発型は1つの大規模業務に特定して自動化したい時に最適な選択肢。大規模な工場を0から作るイメージですね。
オンプレミス型は自社開発型の小規模版。大規模工場の中のカスタム可能な生産ライン1本分、というイメージです。
3つ全てのタイプを試したことがあるディップだからこそ言えることですが、企業規模や自動化したい課題に応じてどのタイプのサービスが適切かは変わってきます。そのことを意識してRPAの導入を考えることが重要ですね。
プロが業務をヒアリングし数分で自動化ロボットを作成
実際にBizteX cobitを活用してロボットを作成するのはそんなに簡単なのですか?
嶋田管理画面の使い方さえ覚えればほんの数分でロボット1つを作成できます。新規のお客様との最初の打ち合わせの場合、その場で業務課題をヒアリングして、ロボットを複数個作ってしまうこともあるくらいです。
まさに「今すぐ使えるRPA」。RPAに興味があって、今すぐ小さく試してみたい、というお客様には喜ばれています。
嶋田 実際ディップさんの場合も、最初にBizteXメンバーが業務内容をヒアリングしてRPAで自動化できそうな業務プロセスを絞込み、現場メンバーの方々と一緒にロボットを作る作業を何度か行いました。
そのプロセスを通じて(ディップの)メンバーの方々もすぐにロボットの作り方を覚えられるので、今では全て自分たちでロボットを作成していただいています。
(2017年11月13日)現在トライアルを含め100件以上のアカウントをご利用いただいています。作成されたロボット数も1,000体以上、ロボットが実行した業務シナリオは2万2,000以上に及んでいます。
ウェブサイトを何度も行き来する定型業務はBizteX cobitにお任せ
各社で活用が広がるBizteX cobitですが、ディップでは具体的にどのような業務をまかせているのでしょうか?
進藤ウェブサイトに掲載されている情報をコピーしてまとめるような仕事は、BizteX cobitにどんどん任せています。求人広告の入稿には住所や地図情報の登録が必要なのですが、この「住所を地図に変換する」作業もその1つです。
加えて、総務部門の業務の1つである、社用携帯の使用パケット量監視。これも今はBizteX cobitの仕事です。これまでは総務担当の者が携帯キャリアの管理画面に入って1台ずつ数千人分のパケット代をチェックしていたのですが、利用者とパケット代を(携帯)キャリアの管理画面からコピーしてエクセルに貼り付ける、という一連の流れをBizteX cobitに覚えさせました。
進藤そうすればそのエクセル上のリストでフィルタをかけるだけで、パケット代が高すぎる携帯を即座に見つけることができます。
嶋田その他の活用方法としては、自社がプレスリリースを配信したときに株価が上がったかどうかの確認作業をBizteX cobitに覚えさせ、株価変化の傾向をチェックしている会社もあります。
あとは与信審査ですね。日経テレコンにログインして企業名で検索し財務情報を抜き出してくるといった作業や、Googleで会社名と代表者名を検索して過去のメディア掲載情報をまとめる、といった使い方もしていただいています。
進藤もう少しRPAが世の中に浸透してくると、フリーランスの方々も活用するようになりそうですよね。本来は自分でやっていた作業をRPAで自動化して自分の作業時間利益を増やそう!という人が増えていきそうです。転売やアフィリエイトを行っている人はうまく活用できそうな気がします。
導入で部署間連携を促進。社員満足度が上がる副次効果も
メンバーの作業が減る以外にもBizteX cobitのようなRPA導入のメリットはありますか?
進藤社内の部署間連携が促進されます。情報システム部門が現場とコミュニケーションを取る機会が増える、ということです。
「クラウド型で現場メンバーがすぐに使えるツール」とはいえBizteX cobitでロボットを作る際に必要なプログラミング思考は、システム部門の方々と協力したほうがうまくいきます。そうなるとRPAがコミュニケーションハブの役割を果たしてくれるんです。
RPAやBizteX cobitをうまく活用して業務自動化を進めよう、という目的があるからシステム部門が現場の業務の話をヒアリングするようになり、その話を聞くと現場の課題が浮き彫りになる。必ずしもBizteX cobitを使わずとも、システム部門のメンバーがすぐに課題を解決してくれた、という声も現場から上がっています。
嶋田導入企業の中には「これまで定例業務を行っていた人がよりクリエイティブな業務に携わる時間が増えたことで仕事の満足度が高まった」と話してくれる方もいます。ロボットを使えば業務はより正確になりますし、一人ひとりが本来やりたい仕事に時間を使えるようになるというメリットもあります。
いい事づくめな印象のBizteX cobitですが、導入時に不安はありませんでしたか?
進藤もちろんありました。そもそも当時社内の100人のうち90人以上はRPAが何なのかわかっていませんでしたから。「自分の仕事がなくなって解雇されてしまうのではないか?」と思った人もいたでしょう。
でも実際にBizteX cobitを導入したことでこれまで自分が担っていた業務をロボットに「取られた」方々に話を聞くと、みんなこぞって「コピペがやりたかった訳じゃないから代替してもらえてうれしい」と言うんです。
進藤ディップは現在すごい勢いで伸びている企業なので、コピペのような定型業務も増加する一方ですが、BizteX cobitがあればメンバーはその時間を他の仕事に充てることができますし、みんながより一層やりがいのある仕事ができます。
嶋田急成長している企業は業務量の増加に採用が追いつかない局面が良くあります。そんなときBizteX cobitを活用してもらうことで、人件費も採用費も抑えながら、やりたい仕事にフォーカスできる環境を整えてもらえたら嬉しいですね。
将来はビッグデータを活用しロボットストアを開設。グローバル展開も急ぐ
競合も増えてきそうなRPA界隈ですが、今後BizteXとしてはどんな展望を考えていますか?
嶋田クラウドRPAを提供している企業は現状日本ではBizteXだけです。世界でもまだ2~3社ほどしか競合は存在しないので、私たちも早めにグローバルで勝負していこうと思っています。
嶋田BizteX cobitの今後の展開としては、画像認識の技術と組み合わせたOCRの自動化や、家庭内に音声アシスタントが普及した際には音声認識と連携して声で業務を自動化する、といった機能を強化していきたいと思っています。クラウドサービスならではの利点を活かし、様々なサービスとのAPI連携も進めていきたいですね。
進藤BizteX cobitはクラウドサービスだから「どんな企業でどんなロボットが活用されているのか」というデータが自社内にどんどん蓄積されるんです。そのデータを解析して、クライアント毎に向いていそうなロボットをスマホアプリのようなマーケットプレイスで販売する、といった展開を期待しています。
例えば「Wantedlyから応募が来たら自動で日程調整メールを送るロボット」であったり、「グーグルカレンダーから交通費情報を予測して経費申請するロボット」であったりというように、世の中でニーズが多そうなロボットを500円くらいで販売して欲しいですね。
そうすれば、「RPAには興味があるけどどんなロボットを作ればよいかわからない」といった導入時の課題も解決することができ、RPA自体を日本や世界にもっと普及させられると思います。
こちらの記事は2017年12月13日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
松本 玲子
写真
池田 有輝
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