「その仕事、日本の未来に繋がってる?」──オープンイノベーションの先導者・eiiconの事業部長らに訊く、市場を創るゼロイチ事業の伸ばし方
Sponsored「自分の手で新たな市場を創る挑戦がしたい」──。
そんな想いを抱える若手ビジネスパーソンに今、伝えたいことがある。「オープンイノベーション」という未開拓市場が、その挑戦の場として面白い状態になっている、と。
オープンイノベーションとは、社外のプレイヤーと共に、新規事業を主としたイノベーション創出を目指すもの。その概念は世の中に広く浸透しているかのように見える。だが、実際はどうだろう。多くの企業がその重要性に気づいていながらも、「How」がわからず、なかなか思うように進んでいないのが実態ではないだろうか。
そうした実態に対し、「“仕組み”を創ることで、オープンイノベーションは確実に生まれていく」という想いを掲げ、牽引しているのが、eiiconというスタートアップだ。(2023年最新版の週刊東洋経済「すごいベンチャー100」にも選出され、未来のユニコーン候補として注目されている)
前回の取材では、代表の中村氏らに市場としてのオープンイノベーションのポテンシャルを聞いた。今回は、同社の事業リーダーたちが取り組む現場の事例をもとに、市場を創るダイナミズムや、困難の中に見出す醍醐味についてうかがっていきたい。
- TEXT BY YUKO YAMADA
- PHOTO BY TOMOKO HANAI
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
地方創生のための進出ではない。
オープンイノベーション浸透のための地方進出だ
伊藤「地方創生」という言葉には、違和感を感じることが多いですね。
eiiconのエンタープライズ事業本部に属する「東海支援事業部」にて、事業部長として地方企業のオープンイノベーション実現をリードする伊藤氏はそう口にする。
伊藤「地方創生がしたい」と言ってeiiconの選考に応募いただく方がよくいますが、面接時に「なぜ、地方創生に携わりたいのですか?具体的に何をしたいのですか?」と聞くと、言葉に詰まってしまう方も多い。なぜかというと、地方創生というワードが先行し、携わること自体が目的になっているからではないか、と感じています。
地方創生と聞くと、「都心にはない魅力を基に産業の創出やコンテンツ発信を行い、人口減少や地域活力低下に対応する」といったイメージを抱く人が多いだろう(参照)。
eiiconにとっては、それはあくまで「この日本でオープンイノベーションを広げ、経済成長を新たに生み出していく」という大きな目的のためのいち手段でしかない。だからこそ、常に“その先”を具体的に考えてほしいというのが伊藤氏の想いだ。
伊藤地方創生に対して問題意識を持ち、自身の仕事として取り組んでいこうとすることは素晴らしいことです。
しかし、eiiconは決して地方創生を「目的」としているのではなく、あくまでオープンイノベーションを日本に浸透させる上での「手段」として、地方創生「も」行っているという立ち位置を取っています。なので、「eiicon=地方創生を支援する企業」というわけではないということはしっかりとお伝えしておきたいですね。
オープンイノベーションの浸透を日本全国に向けて推進しているeiiconは、何も地方に特化して事業を展開しているわけでもなければ、大企業に特化して支援を行っているわけでもない。日本全国の大手〜中小企業に対して、オープンイノベーションを起点にした新規事業の創出支援を行っているという理解が正しい。
そしてその取り組みは創業時から一貫して行われているが、この度2023年4月、戦略的フォーカスとして、東海エリア(愛知、岐阜、三重、静岡)に特化した事業部が、同社のエンタープライズ事業本部の中に発足した。「日本全国にオープンイノベーションを根付かせるためには、東海エリアが起点となるだろう」──。その意思決定の理由とは何なのだろうか。
伊藤それは、「マーケットの魅力」に答えがあります。東海エリアは、他のエリアと比べても新規事業やイノベーション創出に対して意識が強く、このエリアでオープンイノベーションの実績を多く生み出すことができれば、他エリアにもその勢いが波及していくと感じているからです。
具体的に東海エリアでは、「100年に一度の大変革期」とも言われる自動車産業が集積し、他にも航空宇宙産業などさまざまなものづくり産業が集まっています。
しかしこの先、電気自動車(EV)の普及や、カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素の取り組みなどが必要となってくるため、産業構造の変革を余儀なくされている状態なんです。
オープンイノベーションを最短最速で日本に浸透させるためには、首都圏で事業を展開する企業へのアプローチだけでは不十分。地方を拠点とするものづくり産業の企業に対しても、同時にアプローチしていくことが重要だと、eiiconは捉えているのだ。
また、ここ数年、東海エリアではスタートアップやオープンイノベーションの機運も高まっている。例えば、愛知県では、産官学の連携でスタートアップエコシステムを構築し、世界をリードする企業の創出を目指した日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」が2024年10月にオープンする。
もちろんeiiconはこうした取り組みにも参画しており、「STATION Ai」のオープンに先駆けて2020年1月に開設された、「PRE‐STATION Ai」の運用事業を愛知県から請け負い、支援している。2021年度から地域の自治体や金融機関、商工会議所、支援機関などさまざまなステークホルダーを巻き込みながら、スタートアップ育成の土壌づくりもおこなっているのだ。
このように、地域の自治体や金融機関、支援機関といったステークホルダーを巻き込んだ活動や、地域の企業から新規事業やオープンイノベーションの事例を増やすことは、今後、大阪や福岡、仙台といったその他の主要拠点に進出するための足がかりともなる。現在、東海支援事業部は、その先駆けとしての重要な役目を担っているというわけだ。
産業ならではの「慣習」や「こだわり」に対するリスペクトなくして、共創はできない
しかし、何の問題もなくスムーズにオープンイノベーションや新規事業の創出支援ができているかというと、そう容易くはない。
伊藤氏は実際に支援に取り組む中で、日本のものづくり企業にありがちな「クローズドな事業運営」や「職人気質ならではのこだわり」に関する実態を生々しく語ってくれた。
伊藤1つ目は、良くも悪くも限られたステークホルダーとのみ、密に連携して事業を発展させてきたという点です。
東海エリアには、自社の技術によって強固な事業基盤を築いてきた企業が少なくありません。つまり、研究開発から商品開発まで、自社内ないし同エリアに属する関係の深い企業との連携のみで事業を推進し、他地域や他業界との連携を取らずに発展してきたケースが少なくないです。
そのため、東海エリアに属する多くの企業は、関係性の薄い他社と共創して新規事業を生み出すオープンイノベーションに対して懐疑的になりやすく、自分たちの技術やノウハウなどをオープンにすることに抵抗を感じてしまう傾向にあるんです。
とはいえ、その流れも徐々に変化の兆しを見せている。ここ数年を見ると、東海地域の大手企業が既存の事業領域の垣根を越えてオープンイノベーションを推進し始めている。この流れは同エリア内に属する企業にも良い刺激をもたらしていくはずだろう。
伊藤2つ目は、ものづくりへの確かな自信と実績があるが故の、ビジネス的視点での伸び代です。
東海エリアの、ものづくりを主とした企業の特徴として、新規事業開発における顧客企業の担当者には、もともと研究開発をされてきた方など、技術畑の方たちが多くいらっしゃいます。
皆さん勉強熱心であり、新規事業の創出において、「マーケットインで考えることが大事だ」と頭では理解されているのですが、いざ開発を始めると、技術者としてのこだわりから、プロダクトアウトになってしまう傾向がある。その結果、生み出すサービスが市場のニーズからかけ離れてしまうことが少なくありません。
そうしたリスクを回避すべく、例えば、開発した商品のクオリティにこだわるよりも、いち早く市場に出すことで得られる反響や気づきが重要なこともありますよね。その際は、我々から「まずは市場からのフィードバックを得て、そこから改善をしていくべきでは?」と促すこともあります。
このように、私たちは顧客企業の技術シーズ*を活用しながら、どのように新規事業として成立させていくべきかを顧客と共にディスカッションし、事業の方向性を決める手助けも担っているんです。
共創先との「出会いの場」や、事業化までの「ノウハウ」だけでなく、「ハンズオン支援」がなければオープンイノベーションは成立しない
前章では東海支援事業部について詳しく解説したが、同社がどのような組織体制でオープンイノベーションの実現に挑もうとしているのか、まだ全貌はつかめていない。よって、ここであらためて整理したい。
まず、eiiconがオープンイノベーションに注力する理由は、前回の記事でも語られた通り、日本企業の再興を目指し、「オープンイノベーションを世の中の当たり前にする」「すべての企業に『新規事業創出基盤』を埋め込んでいく」というビジョンを実現するためである。
そのためには、プラットフォーム(プロダクト)という切り口と、コンサルティング伴走という2つの切り口が重要だと捉えているのだ。そしてその2つを体現するのが、「プラットフォーム事業」と「エンタープライズ事業」になる。
プラットフォーム事業は、日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム『AUBA(アウバ)』を運営している。これが単なるマッチングビジネスではないことは前回の取材で明かされており、詳しくは以下をご覧いただきたい。
端的に言うと、eiiconのプラットフォームには、新規事業創出に必要な全プロセスが可視化され、各プロセスにおいてとるべきアクションプランが細かく明記されている。顧客はそのプロセスに沿ってアクションを取っていけば、自ずと新規事業を生み出せるようになっているのだ。具体的に言えば、オープンイノベーションを行う共創相手を見出し、事業化までの進捗管理や推進を行い、必要に応じてeiiconからサポートをしてもらうといったものだ。
一方で、エンタープライズ事業は、大企業や自治体、官公庁向けにオープンイノベーションを活用した新規事業創出の「伴走支援」をおこなっている。eiiconの専門コンサルタントは、アドバイザーとしてではなく、新規事業創出に向けて実際に顧客と共に手を動かしながらハンズオンで支援をしていく。
先に述べた通り、伊藤氏が推進する東海支援事業部はこのエンタープライズ事業に属しており、この東海エリアを含めた「公共セクター事業本部」と、「IncubationSales事業本部」がエンタープライズ事業本部の二本柱となっているのだ。
では、一体どのようにして今の事業形態にたどり着いたのだろうか。また、どのようにここまで事業を拡大させてきたのだろうか。「IncubationSales事業部」の事業部長である香川氏は、次のように語り始めた。
香川もともとeiiconは、同社代表の中村がパーソルグループに在籍していた2016年に、「企業同士が共創するきっかけとなる“オンラインの場"をつくりたい」という想いで立ち上げられました。
そのため、2018年頃までのeiiconは、プラットフォームビジネスとしての色が強かったと認識しています。もちろん、プラットフォーム運営によっても多くのオープンイノベーション事例が生まれてきましたし、今もなお生まれていることは事実です。
香川ところが、実際の事業化までを実現できている企業はと言うと、もともと新規事業創出へのアンテナが高く、他社に先行して実践している企業に限られている傾向がありました。つまり、そもそも新規事業創出に慣れていないと、オープンイノベーションの実現はハードルが高いということに、プラットフォーム運営を始めてすぐ気づいたんです。
「オープンイノベーションを日本の企業に浸透させていくためには、ハンズオンで支援をしていく専門部隊が必要だ」と捉え、このハンズオンに特化した組織を2019年に立ち上げる。ところが、その翌年2020年にコロナ禍となり、多くの企業では新規事業にかける予算がストップ。eiiconの事業にもダイレクトに影響があった。
しかし不幸中の幸いか、コロナ禍によって、行政が主体となる各地域のイノベーション創出活動は増加の兆しを見せる。そこでeiiconも、まずは行政と連携してオープンイノベーションの実績・知見を磨き上げる方向性へと舵を切った。
香川企業予算がストップする中、一筋の光が見えたのが、地方自治体のプロジェクトをはじめとしたeiiconの公共セクター事業です。コロナ禍による国の補正予算に伴って、イノベーションに活用される公的な資金が急拡大していったんです。
この公共セクター事業を含むeiiconのエンタープライズ事業本部は、2020年まで、今のように「公共セクター事業」や「IncubationSales事業」などと区分けされておらず、すべて1つの事業部として構成されていました。しかし、上記のコロナ禍による影響もあり、2020年後半、公共セクター事業本部が独立して開設されるに至りました。
こうして、ようやくコロナ禍の前に描いていたハンズオン支援が形になり始めていく一方で、企業規模やエリアによって、オープンイノベーションへの考え方やリソースは全く異なると感じ、2021年、大企業向けに特化したハンズオン支援を行うIncubationSales事業も立ち上げていったんです。
オープンイノベーションが当たり前でなければ、まずは新規事業から当たり前にしていく
では、香川氏の言うエンタープライズ向けのハンズオン支援とは具体的にどのような支援なのだろうか。香川氏は、オープンイノベーションに対する世間の反応から教えてくれた。
香川昨今は国をあげてのスタートアップ支援に伴い、大企業とスタートアップとのオープンイノベーションが大きな話題となっています。
しかし、誰もがオープンイノベーションの重要性に気づきながらも、実際にオープンイノベーションに取り組んでいる企業はまだまだ多くありません。世間では、オープンイノベーションという言葉がバズワード化しているように感じるかもしれませんが、実際は皆さんが思っているほど日本企業にイノベーションが浸透しているわけではないのです。
そこで私たちは、オープンイノベーションの実現に向けて、その1つ前のステップである「新規事業創出の前準備」から支援をしていきます。
なぜなら、「オープンイノベーションとは、あくまでイノベーション創出・新規事業創造における一つの方法論に過ぎないからだ」と香川氏は話を続ける。
香川くり返しますが、オープンイノベーションは、新規事業を創出するためのいち手段です。ですから、必ずしも最初から「オープンイノベーションで」新規事業を創出していく必要性はないと考えています。どの手段を用いるとしても、まず重要なことは「その手段を用いる目的」と「なぜその手段を用いるのか」ということが合理的に判断され、組織として意思統一されていることです。
そこでまずは、イノベーションのマーケットの中でも、イノベーション創出に関心はあるが、まだ実行はできていない「潜在層」にあたる人たちの啓蒙から始めていきます。この潜在層とは、例えば「会社から新規事業のミッションを与えられたけど、何をしたらいいのか分からない」「社内に新規事業創出のノウハウがないから困っている」といった方たちです。
顧客企業内に新規事業創出に関するルールがない中で、どのようにイノベーションを生み出すのか。多くの企業では、その1歩目が踏み出せずにいます。例えば、どの領域で新規事業を考えるか、どんなルールをつくるか、どのように社内で承認を得ていくか。企業が新規事業の創出に本腰を入れてもらうためには、こうした企業の課題や悩みを一つひとつ解決していくところから始めなくてはなりません。
他にも、香川氏は新規事業創出に向けたセミナーの開催にも力を入れている。オープンイノベーションに向けて、まずは各企業一歩目を踏み出すためのインプットが重要だと捉えているからだ。
では、エンタープライズ事業本部では、具体的にどのような新規事業創出支援をおこなっているのか?と取材陣が訊ねると、香川氏は大手食品メーカーの事例をあげてくれた。
香川某大手食品メーカー様の社内新規事業創出プログラムにおいては、我々eiiconが企画からプログラムの設計、運営すべてを支援しています。実際、社内で募集したアイデアから、4件が選考を通過し、新規事業化へと繫がりました。
その裏で我々は、募集のテーマはどうするか、審査基準はどうするか、スケジュールはどうするかといった内容から、新規事業に利益を求めているのか、社内教育の一環なのかといった目的設計に至るまで支援させていただきました。
これは社内から新規事業が生まれ、事業化に至った事例だが、とはいえ、新規事業の創出はそう簡単にいくものではない。香川氏は新規事業創出の難しさについても語ってくれた。
香川意外かもしれませんが、各企業によってルールや体制、考え方が異なるため、普通では考えられないような理由で新規事業のプロジェクトが滞ってしまうこともあります。
実は先日も、昨年11月からご支援してきた企業様がおりまして。「アイデアは固まって市場ニーズも見えたため、事業プランを具体化しましょう」という段階で、急きょその新規事業アイデアに対して社内の承認がおりない可能性があるといった話が浮上しました。
こちらの企業では過去に新規事業を外部と合弁会社を設立する形でリリースした経験がおありだったのですが、そのプロジェクトは3社共同でおこなわれ、他社がプロジェクトをリードしていたそうです。しかし、今回は自社のみでの新規事業。詳しく聞くと前回は「他社の出資状況を見て、新規事業に対し信憑性がある」と判断でき、社内の投資が決まったそうです。
ところが、今回は自社だけのため社内では「新規事業に対する信憑性が得られない」とのことでした。なので現在は、自社だけの新規事業創出において、社内で承認を得るにはどうすればいいか。その答えを見つけ出すことが課題となっています。
このように、進行していたプロジェクトがまったく別の方向に展開したり、振り出しに戻ることも少なくない。非常に地道かつ忍耐のいる取り組みなんです。
新規事業の創出のリードタイムは、最短では3ヶ月のケースもあるが、長ければ3~4年かかるケースもざらにある。こうした中長期にわたる取り組みは、オープンイノベーションの浸透のために避けては通れない道なのだ。
前回、中村氏が述べていた通り、いまや技術革新が進み、新興国からもテックカンパニーが生まれ、グローバルの競争は激化している。自社だけのアイデアや知見、リソースだけでは、経済成長の原動力となるイノベーションが生み出せず、日本の国力はますます衰退していく。
しかし、このオープンイノベーションという手段が経営戦略の1つとして浸透すれば、日本は必ず再興できると、eiiconのメンバーたちは強く信じている。だからこそ、目先の利益だけにとらわれず、愚直に挑み続けることができるのだろう。
ビジョン実現に対して本気で思考し、挑んでいるか
愚直に市場の創造に挑む伊藤氏と香川氏だが、なぜ2人は世にある市場や業界の中で、オープンイノベーション、かつeiiconという舞台を選んだのだろうか。
まずは、デジタルマーケティング会社からeiiconにジョインした香川氏。彼が、新規事業やオープンイノベーションに対して強い想いを抱くようになったきっかけは、前職の事業戦略に危機感を覚えていたからだった。
香川前職にいた頃、デジタル活用の需要は急速に伸びており、デジタルマーケティング業界全体が潤っていたんです。しかし、このまま既存事業だけを続けていてはいずれ事業成長に伸び悩むのではないか、そのためには新規事業が必要ではないかと考えていました。
社内ではビジコン制度があり、私は3年連続応募したのですが、テーマや審査基準が定まっていなかったため、どうすれば審査に通過できるか分からず悶々としていました。
そこで自ら手を挙げてビジコンの運営側にまわり、制度の立て直しを試みたんです。ところが経営層は、「ビジコンはあくまで社員教育の一環」といった姿勢で、本気で新規事業を創出しようとは考えておらず…。当時、私はこの壁を乗り越えて経営陣の考えやコンテストの仕組みを変えることに失敗しました。多くの企業を支援してきた今になればその課題はあるあるで、私自身にそれを解決する力が足りなかったと客観的に思えるに至ったのですが。
その後、とある新規事業創造に関する外部セミナーに参加したことがきっかけで、オープンイノベーションと出会った香川氏。これからはオープンイノベーションという領域で、「新規事業の立ち上げ」と「新規事業を生み出す設計づくり」の両輪に携わりたいという思いが芽生え、それらを事業として展開するeiiconに興味を持ったのだ。
香川本来であれば、eiiconの面接は二次面接までの予定でした。ところが、私は異業種からの転職であり、オープンイノベーションはおろか新規事業の創出に関しても未経験。当時、二次面接を担当していた代表の中村から少し悩んだ様子でこう言われたんです。
「香川君の想いはよく分かった。活躍もしてくれると思う。だけど、もっと深く香川君を理解してから、eiiconで活躍できる人材かどうかを見極めたい。なのでもう一度選考の場を設けたい」と。
中村の想いとしては、eiiconの事業に対する私の本気度を確かめたいということでした。そこで中村から2つの課題が出されたんです。1つは、オープンイノベーションの概要をまとめてくること。そしてもう1つは、もしも某大手企業がオープンイノベーションをするとしたら、その「意義」と「何をすべきか」を自分なりに調べて仮説を提示してほしいと。
隣にいた伊藤氏から「そんな選考があったんだ?それは重い課題だね…」と思わず声が漏れる。しかし、当の香川氏は「私にとってはむしろよい機会だった」と振り返る。
香川私はデジタルマーケティング業界からの転職だったため、内心では「自分の力がオープンイノベーションの市場で本当に通用するのか」という不安が少なからずありました。
しかし、三次面接を担当してくれた取締役副社長の富田からは、「香川さんの仮説は間違っていないですよ」とフィードバックをもらい、無事にeiiconにジョインできるようになりました。その時はほっと胸をなでおろすと同時に、「自分の考えは通用するんだ」という自信に繫がりましたね。
一方で、伊藤氏は、前職のスタートアップでWebサービスをはじめ新規事業の立ち上げを経験しており、その強みを引っ提げて2021年にeiiconに参画した。
伊藤前職では新規事業に携わっていたので、新規事業が持つ楽しさも難しさも両方理解していました。そして、その経験を通じて「もっとこうすれば事業がうまくいったのでは」という反省も大いにあったんです。
そうした過去の経験をあらためて分析し、言語化できれば、新規事業のプロセスを体系化できるかもしれない。そのためには、事業会社として「実行側」で取り組むよりも、eiiconのような「支援側」に回り、様々な企業における新規事業創出の現場に立ち会う必要があると感じるようになりました。
中でもeiiconは、顧客に伴走して支援するスタイルを重視しており、掲げるビジョンに対する本気度も感じた。なので、この場所を選んだという具合です。
「市場」の創造、いや「日本の未来」の創造に携わらなくてどうする?
オープンイノベーションという新たな市場を創っていくには、彼らのようなバイタリティある人材が1人でも多く必要であり、eiiconにおいても、香川氏や伊藤氏の後に続く優秀な人材を現在進行形で求められている状態だ。
では、具体的にどんな経験やマインドを持った人材こそが、オープンイノベーション市場の開拓に適しているのだろうか。
伊藤前提として、まずは新規事業やオープンイノベーションに興味がある方です。とはいえ、必ずしも新規事業の経験やスキルの有無を求めているわけではありません。
例えば、無形商材の営業経験者で、形がなくイメージがしづらい商品を自分で考えて提案してきたという方はフィットしやすい環境だと思います。
また、東海エリアは製造業の多いエリアなので、東海支援事業部では製造業に精通している方や、新規事業創出に向けて研究開発に携わってきた方なども活躍できるでしょう。
マインド面においては、eiiconはまだまだ未成熟なスタートアップですので、自らがこの会社の事業や組織もつくっていくんだという気概を持った人こそがハマると思います。
これから確実に急成長していくオープンイノベーションの領域。ここにコミットすることは、間違いなく日本の未来を創っていくことに直結すると信じています。正直、「今この波に乗らないでどうするんだ」とも思います(笑)。もちろんそれは私自身が関わっているからこその想いでもありますが、もし今、自分の力の注ぎ先を探しあぐねている方がいれば、オープンイノベーション領域を、eiiconを覗いてみてください。きっと良い刺激が得られると思いますよ。
香川伊藤さん、熱いこと言いますね。でも本当にその通りだと思います。世の中には色んな事業があり、そのどれもが社会を良くするために日々、営まれています。一方で、日本は生産年齢人口が減少しており、20〜30代の労働力は特に希少です。なので、その世代に属するビジネスパーソンこそ、日本の未来を創る事業にコミットすべきだと思うんです。そしてその一つが、オープンイノベーションであると。
もしも、オープンイノベーションという市場に飛び込むことに躊躇している方は、自身のコアスキルに目を向けてみることをおすすめします。というのも、一般的に転職を考える際、これまでの経験やスキルに目を向けてどうやって次に活かせるか、という具合に考える方が多いと思うんです。私で言うならば、前職のデジタルマーケティングスキルが活かせるのか否かという感じですね。
入社前の仮説としては、私がオープンイノベーションの市場に未経験で飛び込んだ際、デジタルマーケティングの観点からユーザーのニーズや次にくるサービスのトレンドを論理的に予測できれば、新規事業を生み出せるのではないかと考え、主に活用できるスキルと捉えていました。しかし、実際は想定通りにはいかず、むしろ別のスキルや特性が役立つ結果となった。
なので、職種に関係なく、今までの経験の中で自分は何が強みなのか、どんな時に自分の能力を発揮してきたかといった視点に立って考えてみてもいいのではと思います。
香川氏は、前職のデジタルマーケティングスキルよりも、自身が持つ情報整理力や傾聴力、判断力といったコアスキルの方がむしろ今の業務に活かされていると述べる。
もちろん、事業を推進する上で、高い技術や専門的なスキルがあるにこしたことはない。しかし、市場を開拓しにいくフェーズであるeiiconでは、顧客のために泥臭く伴走できる胆力であったり、思うようにいかない場合でも「次はどうすべきか」と愚直にPDCAを回し続けられる人材こそ人が活躍できるのだろう──。
さて、今回はeiiconの事業部長たちに、オープンイノベーション市場を開拓する醍醐味や、その現場で起きているリアルを伺ってきた。
日本を再興する手段として、自社のリソースだけでなく、複数の企業と共創してイノベーション創出に取り組むオープンイノベーション。日本全国にオープンイノベーションを浸透させていくためには、企業が自分たちで新規事業を創出できるまで粘り強くハンズオンで支援することが必要だ。
eiiconのエンタープライズ事業本部では、東海エリアを起点とした地方と、首都圏を軸とした大企業の双方からオープンイノベーションの浸透を推進していきながら、全国の企業へその裾野を広げていこうとしている。
今回の取材を通じて感じてもらえたと思うが、オープンイノベーションの市場開拓は、決して生易しいものではない。新規事業創出までに長い年月を要することもあれば、顧客の意向でプロジェクトが振り出しに戻ることすらある。スムーズに、効率的に事業が進むことなど稀で、むしろ非効率に感じることの方が多いかもしれない。
しかし、その先にある未来を見据え、市場づくりに挑戦していきたいという気概のある者にとっては、eiiconは最高の挑戦の舞台になるはず。
まもなくオープンイノベーションの領域、そしてその領域をリードするeiiconは一気に加速し、急拡大していくことだろう。どうか読者諸君にあたっては、「その波に乗り遅れた」と後悔することのないよう、自身のエネルギーの注ぐ先を考えてもらえたらと思う。
こちらの記事は2023年09月29日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
山田 優子
写真
花井 智子
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
おすすめの関連記事
セールスチームは、如何にして新規のマネタイズポイントを発想したのか?──「衣服を売る」のではなく「経営課題の解決」を追求するシタテル新規ビジネスの実態
- 株式会社eiicon Enterprise事業本部 Consulting事業部 部長、公共セクター事業本部 東海支援事業部 部長
「国策」と「スタートアップ」は密な関係──ユナイテッド・PoliPoliが示す、ソーシャルビジネス成功に必須の“知られざるグロース術”
- ユナイテッド株式会社 代表取締役社長 兼 執行役員
経営者は「思想のカルト化」に注意せよ──企業規模を問わず参考にしたい、坂井風太とCloudbaseによる“組織崩壊の予防策”
- 株式会社Momentor 代表
「エンプラ事業のセールス、相当アツいです」──人材育成とポートフォリオ戦略に強いRAKSULが放つ、セールスキャリアの拡張
- ラクスル株式会社 執行役員 / ラクスル事業本部 Marketing&Business Supply統括部 統括部長
令和のスタートアップは、“Day1意識”と“半歩先”を同時追求せよ──組織・事業の成長を両立させるX Mile COO渡邉とファインディ CEO山田による経営論対談
- X Mile株式会社 Co-Founder COO
「オープンイノベーションに絶望したあなたへ」──協業に泣いた起業家が、起業家を救う?UNIDGEに学ぶ、大企業との共創の秘訣
- 株式会社ユニッジ Co-CEO 協業事業開発 / 社内新規事業専門家 連続社内起業家
採用戦略の真髄は“狭報”にあり──インキュベイトファンド×DNX Ventures×FastGrow スタートアップ支援者が見る採用強者の共通項
- インキュベイトファンド株式会社 コミュニティマネージャー
「もはやシニア“も”含めた戦略が必須の時代に」──シニアDXで大手との協業多数。オースタンス主催の国内最大級カンファレンス“AEC2024”とは
- 株式会社オースタンス 代表取締役社長