連載インターネットの可能性を拡張し続ける10名の“GREEマフィア”
人気アプリから医療IT技術まで。
インターネットの可能性を拡張し続ける10名の“GREEマフィア”(前編)
アメリカのスタートアップシーンでは、Elon Musk(イーロン・マスク)、Peter Thiel(ピーター・ティール)、Reid Hoffman(リード・ホフマン)など、PayPal出身の大物起業家が、“Paypalマフィア”と呼ばれ注目されている。FastGrowでも過去に日本の大企業を題材に、リクルートやサイバーエージェント出身の起業家を紹介してきた。
だが、まだまだ起業家人材を輩出する企業として注目すべき会社がある。第3弾として紹介するのはモバイルゲームで頭角を表し、いまもなお「探検ドリランド」などのスマートフォンゲームで市場を牽引している企業──グリー株式会社だ。
“インターネットが世の中に与える変化は、まだ始まったばかりです。いくつもの可能性が、未だ可能性のまま残されています。グリーはこれらの可能性を実現すべく、使命感と情熱を行動に移します。”(グリー「コーポレートメッセージ」より)
グリーの出身者には、アプリマーケティングから医療IT技術まで、幅広い領域で活躍する起業家がいた。本記事では、グリー出身の起業家10名を取り上げ、前後編に分けて紹介したい。
- TEXT BY MONTARO HANZO
馬場功淳(株式会社コロプラ代表取締役社長 兼 CEO 兼 COO)
1978年生まれ。九州工業大学情報工学部知能情報工学科に進学。同大学院博士課程に進学するも、ベンチャー企業のアルバイトでNTTドコモ携帯専用のソフトウェア「iアプリ」の開発に没頭し、そのまま大学院を中退する。
その後、KLab株式会社やグリーに勤める一方で、個人として位置ゲーム「コロニーな生活」を開発、提供。同ゲームが人気となったことから独立し、2008年にコロプラを設立した。
自ら開発に携わる「エンジニア社長」としても知られており、2010年には「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン」でチャレンジング・スピリット部門ファイナリストに選出された。2012年に東証マザーズ、2014年に東証一部に上場している。
株式会社コロプラ
「白猫プロジェクト」「魔法使いと黒猫のウィズ」「プロ野球PRIDE」をはじめとしたスマートフォン向けのアプリを運営。最近ではVRデバイスを対象としたアプリの開発、携帯電話の位置情報を利用した“位置ゲー”の特化型プラットフォーム「コロプラプラットフォーム」の研究開発にも取り組んでいる。
渋谷修太(フラー株式会社代表取締役CEO)
1988年生まれ。長岡工業高等専門学校を卒業後、筑波大学理工学群社会工学類に編入学し、経営工学を専攻する。ライフネット生命株式会社代表取締役・岩瀬大輔氏の『ハーバードMBA留学記』と出会ったことをきっかけに、高専生のころから起業を決断していた。
在学中からグリーのインターンシップに参加し、事業企画のプレゼン大会で優勝。同社社長の田中良和氏から声を掛けられ入社した経緯を持つ。主にソーシャルゲームのマーケティング事業に従事した。1年半で退社し、2011年、フラー株式会社を設立。
2012年に、スマートフォン節電アプリ「ぼく、スマホ」をリリース。現在、累計100万ダウンロードを突破している。2014年には現在の主要事業であるアプリ分析ツール「App Ape(アップエイプ)」をリリース。同サービスは、SEGAやSoftbank、Spotifyをはじめ5,000社以上で利用されている。
フラー株式会社
スマホアプリの実利用データを提供するAppApeは、国内外で5,000社以上の導入実績を持つ。また、自社でもアプリやウェブサービスを開発しており、長岡花火大会の公式アプリ「長岡花火」や佐渡汽船株式会社のオウンドメディア「佐渡汽船」を提供している。
竹谷祐哉(株式会社Gunosy代表取締役)
1989年生まれ。早稲田大学創造理工学部経営システム工学科卒業後、2011年、グリーに入社。M&A事業、海外事業の立ち上げなどを経験した。グリーをファーストキャリアとして選んだ理由には、同社の「勢い」と「年齢関係なく活躍できる環境」を挙げている。
入社から1年が経った2012年、株式会社Gunosyの創業初期メンバーとして参画する。2013年8月に取締役最高執行責任者、2016年8月に代表取締役最高執行責任者を経て、2018年8月より代表取締役最高経営責任者に就任した。
サービス初期は、創業者の福島良典氏らエンジニア集団が開発を進め、竹谷氏がメンバーをまとめていくスタイルで事業を拡大していった。
株式会社Gunosy
情報キュレーションサービス「グノシー」の他に、KDDIと共同開発したニュースアプリ「ニュースパス」や女性のためのトレンド情報アプリ「LUCRA」など、メディア事業、広告事業を中心に展開している。
簗島亮次(株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長
1984年生まれ。投資家の祖父、統計解析の研究者の母を持ち、「定量化された情報で判断するのが当たり前な家庭環境」で育ってきた簗島氏は、幼い頃からデータに対する興味を持っていたという。
2010年に慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科を首席で卒業。同年に行われた世界最大級の統計アルゴリズムコンテスト「RSCTC 2010 Discovery Challenge」にて世界3位を獲得するなどの実績を収める。
卒業後、グリーにてプラットフォーム開発に関連する複数の部門でマネジャーを兼務。2年半で10回ほどMVPを獲得し、ソーシャルゲームプラットフォーム「GREE」の成長を支えてきた。2012年に株式会社フリークアウトに転職。経営企画としてDSPに関する数値改善業務を担当した。
2013年にフリークアウトと株式会社Preferred Infrastructureのジョイントベンチャーとして株式会社インティメート・マージャーを創設。日本最大級を誇る約4.7億のオーディエンスデータを用いて、企業のDMP(データマネジメントプラットフォーム)構築やデータ活用マーケティングを支援している。
株式会社インティメート・マージャー
「IM-DMP」は、ユーザー行動の可視化、分析を通じ、施策の立案と実施を行うDMP。定量的な分析結果に基づく多様な施策の立案・実施をサポートする。同サービスは、パブリックDMP市場で2014年度から4年連続シェア1位を獲得している。
島原佑基(エルピクセル株式会社代表取締役)
1987年生まれ。東京大学大学院修士(生命科学)。研究テーマは人工光合成。大学時代にはマサチューセッツ工科大学で行われる合成生物学の研究結果を競う大会「iGEM」に出場し、銅賞を獲得している。
グリーに入社し、事業戦略本部、人事戦略部門を経て、KLabに転職。2年間の勤務期間で、東南アジア圏などでの海外事業開発を手掛けた。KLabに在籍中、東京大学で研究室のメンバーだった3名でエルピクセル株式会社を設立、代表取締役に就任した。
Forbesのインタビューで島原氏は「19世紀は化学、20世紀は物理、21世紀はライフサイエンスの時代。情報技術の高度化によって、膨大な情報を持つ生物を理解できる土壌が整ってきた」と語っている。人口当たりのCT、MRI台数が世界最多の日本において、医療画像診断の先駆となるべく挑戦を続けている。
エルピクセル株式会社
エルピクセル株式会社は、人工知能を活用した医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」を開発。ITが浸透しつつある医療の現場において、AIによって効率化、正確性の向上した医療を目指している。
こちらの記事は2019年05月20日に公開しており、
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連載インターネットの可能性を拡張し続ける10名の“GREEマフィア”
姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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