カーボンニュートラル時代の電力のデジタルインフラを創る。プレシリーズAで総額4.5億円の資金調達──Tensor Energy株式会社
重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。
FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。
今回は、2024年3月に資金調達を発表したTensor Energyについて、その「横顔」をまとめる。
FastGrow編集部が注目するポイント
注目ポイント1
再生可能エネルギー業界に10年以上携わってきた経営陣や、再エネ・インフラ領域で事業開発やエンジニアの経験あるメンバーが揃う。自由と責任を重んじるプロフェッショナル集団
注目ポイント2
リモートワークによって9カ国にまたがる「多国籍チーム」を形成。多様なバックグラウンドによりイノベーション創出とグローバル展開を目指す
注目ポイント3
COP28にて「2030年までに世界の自然エネルギー設備容量を3倍にする」採択。国内外で成長する市場で事業展開
代表を始めとした、同社のメンバーについて
(1)創業者/共同代表 堀 ナナ 氏
プロフィール
2007年国際基督教大学卒業。2011年より戦略系のコンサルタントとして再生可能エネルギー業界へ。蓄電池の市場調査からスタートし、太陽光発電の新規市場参入プロジェクト、住宅向け太陽光発電+蓄電池プロダクト開発プロジェクト、産業用太陽光ファイナンスプロジェクトなど国内外のプロジェクトを手掛け、その知見をもとに再エネファイナンスプラットフォームとして2016年にスピンアウト。
Shift Energy Japan株式会社の立ち上げに参画。事業開発、プロセス改善、新規市場調査、経営企画、リクルーティングなど様々な役割を担う。
2021年11月、Tensor Energy株式会社を創業。持続可能な社会の構築に情熱を持ち、12年以上にわたり再生可能エネルギー業界でファイナンスと事業開発をリード。
プレシリーズAで4.5億調達して、太陽光発電と蓄電池の最適化サービスも新規リリースして、事業サイドも攻めのフェーズに入るTensor Energyの求人情報はこちらですhttps://t.co/piVxoloGjh
— 堀ナナ/ Tensor Energy (@nanahoriX) March 27, 2024
(2)創業者/共同代表 フィルター ヴィンセント 氏
プロフィール
ドイツの国立総合大学であるベルリン自由大学在学中に早稲田大学、東京大学へ留学。卒業後、再生可能エネルギーの分野で戦略コンサルタントとしてのキャリアをスタート。国内外の戦略ファームで電力など、社会インフラを担当。KPMGでは、グローバルで総額150億円規模のSaaSの創造から事業化をリード。脱炭素化への情熱を持つ技術者で優れたUXデザイナーでもある。キャリアを通してエネルギーのデジタル化を推進している。
調達に際してのコメント
Tensor Energyは、再生可能エネルギー発電所の開発、管理、運用を、もっと早くもっと賢く効率良く、スピードとスケーラビリティを追求するオーケストレーションプラットフォームを開発しています。
私たちはこれまで、太陽光発電と蓄電池を最適運用する技術開発と、最高の顧客体験を実現するプロダクトの開発に注力してきました。今後、さらに事業開発に力を入れて、お客様との共創パートナーシップを広げ、深めながら、一気通貫でのサービス提供に向けて複数のプロダクトモジュールの開発に取り組むため、今回の資金調達を行いました。
私たちは、再生可能エネルギーの大量導入による切迫した課題を抱える九州、福岡に拠点を置き、リモートワークを活用して世界中の仲間とグローバルチームを組んでいます。クラウドコンピューティングやAI技術の進化、蓄電池コストの低減といったタイミングが合致するここから、グローバル市場での新たな価値創出を目指しています。
私たちと共に、カーボンニュートラルな社会への大きな一歩を踏み出しませんか?持続可能なエネルギーを必要なときに必要なところへ届ける世界の実現に、一緒に取り組む情熱的な仲間を待っています!
(3)事業開発 西野 哲生 氏
FastGrowからの紹介フレーズ
ソフトウェアと再生可能エネルギー領域に精通した事業開発のプロフェッショナル
プロフィール
新卒でOracleに入社し、エンタープライズ向けの基幹システムの導入支援など、ソフトウェア業界で20年近くの経験を積んだ後、再生可能エネルギー業界に転身。約10年に渡って、ファイナンス、小売電力ビジネスの立ち上げ、需給管理などに従事。近年ではコーポレートPPAのコンサルティングなどを行う。
調達の概要
プレスリリース |
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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000096424.html |
調達額 |
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4.5億円 |
ラウンド |
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プレシリーズA |
主な使途 |
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サービス・プロダクトの機能強化 |
採用強化 |
従業員待遇の向上 |
投資家からの評価 |
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今回リード投資家となったのは、デライト・ベンチャーズ。制度やルールが流動的な再エネ産業で、Tensor Energyが思い描く世界の実現に向けて事業成長をしっかりと支えていく構えだ。 また、Tensor Energyが本社を置く福岡県を地盤とするFFGベンチャービジネスパートナーズも参画。九州エリアで再生可能エネルギー発電設備に対する出力抑制が急増し、発電事業者への影響が大きくなっていることに触れ、「事業成長と地域経済への価値創出に対して全力で支援していく」としている。 |
関連ポスト
再エネ発電事業プラットフォームのTensor Energyが資金調達を実施。当社もリード投資家として出資しました。また同時に、最適化された蓄電池の充放電スケジュールを自動的に作成するサービスの提供を開始。今後の事業成⻑を全力で応援していきますhttps://t.co/emzRFqy7DF
— デライト・ベンチャーズ | Delight Ventures 公式 (@Delight_VC) March 27, 2024
本日発表の通り、Tensor EnergyのプレシリーズAラウンドにて投資を実行いたしました。同社は蓄電池運用を最適化するソリューションと、発電所の財務、オペレーション管理のソリューションを提供予定。再エネの発電所増加に伴う専門人材不足を解決することを期待しています。 https://t.co/8HyqyaPibh
— DNX Ventures [Japan] (@dnx_jp) March 27, 2024
主なサービス・プロダクト
Tensor Cloud
発電事業者やアグリゲーターに対して、再エネ発電所の投資検討を支援するほか、発電所をクラウドに接続して長期的に管理し、電力市場での収益化を可能にするクラウドプラットフォーム。スケーラビリティとスピードを実現するアーキテクチャも特徴。
さらに今回、蓄電池充放電最適化サービスの提供も開始。
電力の安定供給をしながら再エネ電力を最大限活用するには蓄電池の活用が欠かせないが、電力市場の価格予測と発電量予測、蓄電池の充放電スケジュールの最適化計算など、高度な知識や経験、技術が必要となる。
Tensor Cloudの利用によって、高度な知識や経験、技術がなくても蓄電池を活用した事業を始められ、業務の大半を自動化することも可能となる。
FastGrow編集部の注目ポイント
Tensor Energyが拠点を置く九州は、国内の他の地域に比べて再生可能エネルギーの導入が進んでいる一方、電力の過剰供給やインフラ整備不足などの課題を抱える。
Tensor CloudはクラウドコンピューティングやAI、蓄電池のコスト低減といったトレンドの技術を駆使し、市場拡大にともなうユーザーのペインと社会課題を同時に解決することが期待できる。再エネ事業のビジネスモデルを変革し、持続可能な成長事業の構築に不可欠なソリューションとなるだろう。
採用関連情報
こちらの記事は2024年03月29日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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