挑戦する新規事業を、「実現の難しさ」で選べ──事業を創出し続けるFintechイネーブラー・インフキュリオンが注力する「若手への機会提供」と、新プロダクトの開発ストーリー
Sponsored金融が金融機関だけのものではなくなる時代を迎えている。金融機能を「Embedded(組み込み)」することにより、 “非金融”企業が提供するWebサービスに新しい価値が生まれるのだ。
これを実現するのは、コア技術をもった「Fintechイネーブラー」という存在だ。「セールスイネーブルメント」といった表現で使われるこの「イネーブル(Enable)」という言葉。念の為、意味合いを補足しておこう。英英辞書では「to make someone able to do something, or to make something possible」と記されている。つまり「あらゆる事業者が、Fintechを取り入れて事業を進化させられるよう働きかける」のだ。
そのイネーブラーとして金融決済に特化したEmbedded Fintechサービスを展開するインフキュリオンは、2023年10月に新サービス『Winvoice(ウィンボイス)』をリリースした。同サービスは企業間決済をカードで行える機能を、他企業が開発するSaaSなどにEmbeddedできるようにするものだ。
ここまで読んで、すでに「難しい」「複雑だ」という印象を持つかもしれない。しかし、この新規事業開発をリードしているのが20代の若手だと知ったらどう思うだろうか。
法規制が厳しく、かつビジネスモデル上アクターが多いFintech領域で新しい事業を創出するには、法律・コンプライアンス面での調整が必要という意味でも高いスキルが求められる。
複雑かつ難問だらけのこの領域で奮戦する若き事業家は、「この事業の成功が、新規事業を生み続けるインフキュリオンをさらに進化させる」と信じている。『Winvoice』プロダクトオーナーの百合川真人氏と、ビジネスデザイン室長の森田航平氏が、どのような覚悟でこの新規事業に挑んでいるのかを、ぜひ見届けてほしい。
- TEXT BY YASUHIRO HATABE
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
BtoBのFintechはまだまだ黎明期
百合川氏がプロダクトオーナーを務める『Winvoice』は、どのような背景で生まれ、インフキュリオンの中でどのような位置付けにあるプロダクトなのだろうか。
百合川インフキュリオンは、Embedded Fintechの「イネーブラー」としていくつかのサービスを展開しています。
前段で伝えたように、まずはイネーブラーとしてのインフキュリオンを、「あらゆる事業者が、Fintechを取り入れて事業を進化させられるよう働きかける存在」だと認識してほしい。
そんな同社の事業はコンサルティング形態のものもあれば、今回取り上げる『Winvoice』のようにプロダクト形態のものもある。これらはいずれも、「ユーザー企業がFintech化を実現するための手段」として、取り入れられている。
そして、このタイミングで同社が本腰を入れるのは、「BtoB決済領域」におけるFintech化の推進である。
百合川これまで、消費者の決済(BtoC)領域では『Wallet Station(ウォレットステーション)』、企業間決済(BtoB)の領域では『Xard(エクサード)』というプロダクトを提供してきましたが、まだこの日本社会にFintechを十分に根付かせられたとは思っていません。
『Winvoice』は、『Wallet Station』『Xard』に次ぐ第3の柱となるプロダクトという位置付けです。Fintechを広げるために欠かせない、新たなピースなんです。
森田経済産業省が行った調査では、2023年のBtoC領域のキャッシュレス決済比率は39.3%(参考)となっており、かなり普及は進みました。
一方で、BtoB領域の決済はまだそこまでキャッシュレス化が進んでいません。請求書受領・発行サービスのような決済周辺のSaaSは出てきていますが、決済・支払の部分は取り残されています。1,500兆円と言われる、企業の「決済・支払」行為をDX化することこそ、社会的意義が強くあると考えています。
そこに着目したのが『Winvoice』というプロダクトになります。この領域で先行してリリースしているカード発行プラットフォーム『Xard』との組み合わせで、BtoBの取引を「面で」変えていく基盤をつくることは、社会的に意義があると考えているんです。
『Winvoice』には、社内視点でもう1つ注目すべき点があるという。
百合川今までの『Wallet Station』や『Xard』は、丸山(代表取締役社長・丸山弘毅氏)が多くの意思決定を担い、誕生したプロダクト。それに対して『Winvoice』は、インフキュリオンのメンバーが考え、ボトムアップで生まれた初めてのプロダクトということになります。
その意味で社内でも注目されており、経営陣が寄せる期待も大きいことがうかがえる。
BtoBtoBプロダクト『Winvoice』のユニークさ
インフキュリオンという会社の特徴を理解するために、同社が自認する「イネーブラー」がどのような立場で、『Winvoice』とはどのようなサービスなのかを見ていこう。
『Winvoice』のサービスサイトにアクセスすると、「自社サービスに請求書のカード決済を組み込む請求書支払いプラットフォーム」だとうたっている。しかしこれだけでは、「誰に」「どのような価値」をもたらすサービスなのかが分かりにくいかもしれない。
まず理解すべきことは、『Winvoice』は「BtoBtoB」であるということだ。
それぞれのBは、左から「インフキュリオン(Winvoice)」「導入するSaaS企業」「そのSaaSを使うユーザー企業」にあたる。
したがって『Winvoice』は、導入したSaaS企業、そのユーザー企業(エンドユーザー)、それぞれに対して価値を提供することになる。
百合川この3月から、フリーウェイジャパン様に『Winvoice』を提供(詳細はこちらのプレスリリースを参照)しています。
フリーウェイジャパン様は、個人事業主や小規模事業者に対してSaaSで会計システムを提供している会社です。プロダクトのラインアップに、『フリーウェイ請求書カード払い Powered by Winvoice』を加える形で導入していただきました。
百合川同社プロダクトを利用するユーザー企業はこれまで、プロダクト上で「支払い」をしようとしても、そのクラウドサービス上から一度離脱して銀行のオンラインバンキングなどに行く必要がありました。
そこに『Winvoice』を導入して請求書カード払いの機能をプロダクト上に組み込むことで、ユーザーはクラウドサービス上から離脱することなく、そのままスムーズに支払いを終えられるようになります。
ユーザーにとっては一連の業務が1つのシステム上で完了できて便利ですし、フリーウェイジャパンにとっては利便性が上がって解約率を下げる効果にもつながります。しかも、ユーザーが決済するたびに手数料が発生するので、新たな収益源にもなります。
このように、「SaaS企業に『Winvoice』を導入してもらい、そのSaaSのユーザー企業に利用してもらうほど、SaaS企業にもメリットが生じる」という大枠を理解してほしい。このモデルを実現することが「イネーブラー」の役割である。
大手邦銀、コンサルタントを経て、自ら新規事業をつくる立場へ
20代後半という若さで、社内でも重要な位置付けの新規事業のプロダクトオーナーになった百合川氏。どのようにして今のポジションにたどり着いたのか、そのプロフィールに焦点を当ててみたい。
百合川氏はもともと新規事業に興味はあったのだろうか。新卒でメガバンクに就職し、その後コンサルタントというルートは少し遠回りにも見える。
百合川昔から世の中に対して新しいものを生み出すことに興味があり、社会にインパクトを与えるような事業創出に関わりたいと思っていました。
新卒ではメガバンクに入り、1年半ほど法人営業をしました。そこでの仕事もやりがいはありましたが、新規事業に携わりたい思いがずっとあり、インフキュリオン コンサルティングへ転職しました。
インフキュリオングループを選んだのは、コンサルティングのかたちでクライアント企業における新規事業立ち上げができると同時に、事業会社として自社の新規事業の立ち上げも担えると聞いたからです。
実際に、インフキュリオン コンサルティングでコンサルタントとして、クライアントの「決済領域」における新規事業立ち上げ案件に複数携わってきました。
そこでスキルや経験を着実に積んでいる時、インフキュリオングループ内で「新規事業」を立ち上げる機会を得ることができ、挑戦しました。
新規事業創出の当事者となる準備を整えた上で、百合川氏はインフキュリオングループ内で事業側に移った。
百合川コンサルタントとして2年ほど経験を積んだ頃に、グループ全体の事業戦略を考えるグループ(現ビジネスデザイン室)が組織され、そこに参画しました。その時に、BtoB決済領域での新規事業を提案し、2022年9月に会社としての正式なGoサインが出て、『Winvoice』の主担当として事業開発を進めることになりました。
コンサルタントとして外部の立場からゼロイチに関わるのと、自社のゼロイチを当事者として推し進めることは、責任も覚悟もまったく違うものになるだろう。
百合川『Winvoice』のプロダクトオーナーとして実際にP/Lの責任を負うとなると、必要な覚悟も、時に感じる胃の痛さもコンサルタント時代とは全然違うと実感しています。
もちろんコンサルタントの時も、クライアント以上に当事者意識を持つ覚悟でやってはいました。でも、最終的な意思決定はクライアントのものでした。
今は、日々の自分の行動や意思決定が、プロダクトの前進に本当に繋がっているのかという「正しい選択肢を選ぶ」意識と、またそれ以上に「選んだ選択肢を正しくする」という強い覚悟を持って仕事に取り組んでいます。
そう話す百合川氏は、世の中に新しい価値を生み出す手応えを感じ始めたように見える。
「プロダクトをより良くするための負荷」を、敢えて若手オーナーに任せきる
コンサルティングとして新規事業に携わることと、自社の新規事業に携わることの違いについて、森田氏はこのように補足している。
森田自社の事業の場合は当然、社内だけの意思決定であることが多いので、コンサルティングする際のように常にリッチな資料を揃える必要がないという違いはあります。状況によっては、網羅性よりも即時性が求められるシーンがあったり、資料化しなくても共通認識を持っていたりすることも多く、自社事業の方が柔軟な対応をしやすいですから。
ただ、それが行きすぎると、逆に目が届かずに見落とす部分が出てきて、後々痛い目を見る恐れもあるんですね。
その点で百合川は、どこで丁寧に認識合意を図り、どういう場面でスピードを重視するかを見極めるバランス感覚に優れていると思います。
百合川氏がコンサルタント時代に新規事業立ち上げを複数経験した実績があるにせよ、最初からそこまで「任せる」ものだろうか。ここまで話を聞いて湧いてきた疑問を森田氏に直接ぶつけてみた。
森田プロダクトの方向に関わる重要な意思決定やプライシングなどについて、必ず議論はしますが、最後は百合川に任せる場面がほとんどです。それは、意識的にそうしています。
その理由は、彼が一番長い時間プロダクトにフルコミットしているから。彼の「想い」をしっかりとプロダクトに反映させた方が良いものができると考えているんです。
最近では、一緒に『Winvoice』を進める中で、百合川の覚悟が固まっていく様子がはっきり分かります。お客さんに提案する際のプレゼンにも迫力を感じるようになりました。
「胃が痛くなる」という話がありましたが、そのような「プロダクトを良くするための負荷」以外は、なるべく自分も負担していきたいと思っています。
目新しいビジネスを成立させるため、徹底した「議論」を重ねる
ここからは、『Winvoice』の事業開発の話を聞いていこう。百合川氏に、リリース前の立ち上げ期とリリース後の数カ月に分けて語ってもらった。
百合川『Winvoice』は社内、社外ともにステークホルダーが多く、その人たちを巻き込んでいく動きが必要でした。立ち上げ期に苦労した点の1つです。
社内においては決済処理を担うグループ会社のリンク・プロセシングや、社外においては導入先企業のほか、金融決済領域に特有のステークホルダーであるアクワイアラ(加盟店契約会社)やVisa、Mastercardなどといったカードブランドが登場します。各所と調整しながら、スピーディーに開発を進めなければならなかったことが難しい点でした。
加えて、インフキュリオンの経営陣とも議論が必要だったという。
百合川『Winvoice』は、BPSP(Business Payment Solution Provider)という比較的新しいモデルのサービスです。法律の面で議論がまだ必要だったんです。
今、企業の多くが「支払いにはクレジットカードを使用したい」と考えるようになってきている。その一方で、支払いを受ける際にクレジットカードを受け付けている企業はそれほど増えていない。『Winvoice』はまさにこの間をつなぐプロダクトであり、業界内にはBPSPというモデル名がある。
なおBPSPとはVisaにおいて使われる呼称であり、MastercardではBPAP(Business Payment Aggregator Program)、JCBではBPPS(BtoB Payment Service)など、各社で表現が微妙に異なる状態だ。このような状況からも、まだ市場への浸透は途上であることが伺える。
百合川検討開始当時、BPSPとして展開されているサービスはまだ多くなく、どのように取り扱うべきか整理が追いついていませんでした。なので、前提の整理やステークホルダー間の調整手法まで、事実上、事業者に委ねられていた状況だったんです。
会社の経営判断として、法的な扱いが未整理のままGoサインを出すわけにはいきません。そのため、弁護士と周到にロジックを組み立てて、経営陣や株主に対して「だから問題ない」と説明するプロセスは、時間もかかりとても大変でした。
森田BPSPの特徴として、不正に利用する人が出てきてもおかしくない“抜け道”になりうるポイントがあったんです。それを残したまま突き進むと、我々自身にとってもリスクがあることももちろん見逃せないわけですが、それ以上に業界全体の健全な発展を妨げてしまう恐れがあった。
Fintechの世界では一定の信頼を置いていただいているインフキュリオンの立場として、しっかりとしたサービスを展開すべきという考えがあったからこそ、そこの議論を徹底的に行いました。
百合川我々には実現したいユーザー体験がある一方で、弁護士にも「こうあるべき」と考える形がありました。ただ、それらがトレードオフの関係にある中でも、対立するわけではなく、『Winvoice』を立ち上げるという同じ方向を向いて議論ができました。
森田当社の経営陣も、「リスクがあったらやるべきではない」とは考えていませんし、トップダウンで一方的に結論を押し付けてくることはありません。両者の間に「上下」の関係はなく、あくまで役割の違いだけだと考えているんですね。
経営陣には経営という役割があり、現場には事業を推進する役割がある中で、経営層らしい高い視座をもって議論の相手になってくれる。そのおかげもあって、全員が納得できるものをスピーディーにつくれた感覚はありますね。
こうしたエピソードから、新しいものをつくっていく上で必要な土壌が、経営陣にも備わっていることがうかがえる。
PMFは「顧客の成長」をもって初めて達成する
そうやって、立ちはだかる問題を1つ1つ議論しながら解決し、2023年10月に『Winvoice』のローンチにこぎ着けた。それから半年以上が経過し、百合川氏は現在の課題をどこに設定しているのだろうか。
百合川いろいろな企業に提案をさせていただいて、すでに導入いただいた企業もあります。ただ、「PMF(プロダクトマーケットフィット)したか」と自問すると、正直「まだ」だと思っています。
なぜなら、『Winvoice』を導入した企業の事業が伸びてこそ、初めて価値を届けられたことになるからです。今はそこまでは至っていません。それは『Winvoice』だけでなく、BPSP自体がそういう段階にあるという認識です。
ここで、注力ポイントを見誤ってしまう恐れがあります。というのも、イネーブラーが導入先の企業・サービスに提供するのは「パーツ」なので、プロダクトの差別化が図りにくいんですね。すると、経済条件の勝負になってしまいがちです。でも、値下げを指向すればいいとは考えないようにしています。
本質はプロダクトの質で差別化を図ることだと思っています。エンドユーザーの課題が解決できるからこそどんどん使ってもらえて、使ってもらえるからこそ導入先の事業も伸びていく。そういった仕組みをつくれるかが重要だと考えているんです。
その意味で、今期は『Winvoice』の機能拡張や、当社の『Xard』など他のプロダクトと組み合わせて、「どれだけユーザーの課題を解決できるか」に注力します。
現状では『Winvoice』は「請求書支払いプラットフォーム」を謳っているが、これはあくまでスタート時点の形であり、それだけのサービスにとどまるつもりは最初からない。
百合川一部のメンバーとは、「支払いDXプラットフォームになっていくんだ」という話をしています。
請求書カード支払いは、「企業の支払い業務」の一部ではありますが、支払い業務で解決すべき課題や、より便利にできる余地はまだまだあります。最終的には企業の支払い業務全般をデジタルの力で便利にしていくこと。それが『Winvoice』のコンセプトだと考えています。
なおこの請求書カード支払い機能については、先行してリリースしていたサプライヤー向け機能に加え、この4月にはバイヤー向け機能をリリースし、両面が揃った形だ(詳細はこちらのプレスリリースを参照)。今後はそれ以外の支払手段についての機能も拡充していく予定だという。
再現性高く新規事業を生み出せる組織へ
森田百合川が、インフキュリオンにおける1つのロールモデルになっていくといいなと思っています。彼のような人材をいかに増やしていくかが、経営サイドの今後の課題・チャレンジです。
ただ、百合川氏の場合は、一度コンサルタントとして経験を積んだからこそ、そこでの経験を生かすことができたようにも思える。その辺りをどのように考えているのだろうか。
森田コンサルタントを経験すると、オールマイティーに対応できるスキルが身につくことは確かです。ただ、皆がそうなってほしい、同じ道をたどってほしいと思っているわけではありません。
今後は、1人に頼るのではなく、さまざまな専門性を持つプロフェッショナルを集めて、チームとして新規事業をつくれるようにしたいと考えています。
それは具体的にはどのような方法なのだろうか。
森田まだこれは私の個人的な考えですが、『Winvoice』でこれから機能を増やしていくことになるので、その1つを若手メンバーに任せることを考えています。
「1つの機能追加を担当して何が身につくのか」と思われるかもしれませんが、『Winvoice』では機能を追加するにも幅広いことを深く考える必要があります。
どういう機能があるべきか。要件をどうすべきか。機能に合わせてサービスの規約をどう変えるべきか。どうマーケティングしていくか。それによってP/Lがどう変わるのか。機能追加1つとっても、1つの事業を考えるのと同じくらい、考えるべきことは多岐にわたります。
機能単位で一通りのことを経験したら、もう少し範囲を広げて1つのサービスを立ち上げるなど、段階的に経験を積んでいくのがよいと思います。
インフキュリオンはもともと、「事業をつくれる人を多く育て、増やしていきたい」という想いを経営陣が強く持っている会社です。だから今後は、チャレンジできる場と機会をできるだけ多く用意して、再現性のある経験を積んでもらうことが、会社の競争力につながっていくと真剣に思っています。
その想いの具体的な表れとして、インフキュリオンでは新たに社内公募制度がスタートするという。
森田経営会議で決まった重要なポジションについての社内公募です。まさに『Winvoice』のような重要な事業ができたときに、それを牽引するメンバーを社内から募集することを想定しています。応募者には面接をして異動を決めますが、この制度では現部署の上長に「引き留め権」はありません。応募者の意志が優先されます。
他にも、社外に向けて募集しているポジションに対して、社内からチャレンジできる公募制度の新設も検討しています。
そうした制度をうまく使いながら、チャレンジできる機会や場を積極的に提供して、新しいものを生み出す人を増やしていけたらと考えています。
一緒に働きたいのは、Valuesを“すでに”体現している人
百合川氏をロールモデルにしたいということは、後に続く人を求めているということでもある。どのような人が、インフキュリオンでのゼロイチへの挑戦の舞台に立てるのだろうか。
森田Valuesに「共感する」だけでなく、「体現できる」ことが大事だと思っています。
森田「Infinite Curiosity.」は、横方向への幅広い興味という意味もありますが、縦方向に突き詰めて深堀りする興味という意味も込められています。
「Great Work, Great Team.」は、個人とチームがバランスよく健全に働くということ。人に頼りすぎてもダメだし、自分が前面に出過ぎてもダメ。
「Stay Trusty.」は、やるべきことにコミットし、信頼を積み重ねることです。お客さんだけでなく社内、社外パートナーなど、関わるすべての人と良好な人間関係を築くことを大切にしています。
スタートアップの採用にあたっては「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)への共感」がよく言及されるが、森田氏はValues(行動指針)に関しては「共感だけでは足りない」と指摘している。インフキュリオンに入ってから行動を変えればよいのではなく、入る前から、今いる場所ですでに「体現」できていることがきっと重要なのだろう。
インフキュリオンの3つのValuesの体現者でもある百合川氏。そのキャリアは、理想的なロールモデルだと思われるほど順風満帆に見える。こうした道のりを歩んで来られたのはなぜだと思うか、本人に聞いてみた。
百合川運7割、実力3割くらい。自分の描いていたキャリアを重ねて来られているのは、運によるところが大きいと思っています。
「実力3割」については、当たり前のことを手を抜かずに100%毎日きちんとやり抜いてきたからできたことだと思っています。世の中の大半の人は、多分100%頑張れない。だから、当たり前に毎日やるだけで差がついてくる。
百合川氏は、インフキュリオンが新規事業を次々に創出する組織になれるかどうかの鍵が、『Winvoice』の成功にかかっていると自負している。
百合川私は、インフキュリオンのMissionや実現したいVisionに対して、事業の数がまだまだ足りないと思っているんですね。新規事業の創出や、それを牽引できる人をつくる取り組みは、もっとスピードを上げてやっていかないといけない。
その中で私ができる一番のことは、『Winvoice』をきっちり成功させることだと思っています。それができれば、私だけでなく『Winvoice』に関わってきたメンバー全員が成功体験を持てるし、再現性のあるノウハウも得られるはずですから。
そしてそのメンバーが、次の新しい事業をつくっていく。そんな好循環を生み出すことが会社として望ましいと思いますし、私としても嬉しいです。
最後に百合川氏から、「インフキュリオンで自分も新規事業に携わりたい」と感じている読者に向けてメッセージを話してもらった。
百合川インフキュリオンは、事業を創造するBizDev人材にとって、面白い環境だと思います。
金融決済は法律の規制が厳しい領域です。専門家とともに法的な整理をしつつ、本当にユーザーに使ってもらえるUXを実現し、さらに事業として成立させることは、簡単なことではありません。
でも、そのような難しい課題を解決することを「楽しめる」人こそインフキュリオンは向いていて、BizDev人材として大きく成長できる環境を提供できると思っています。「超難問」にやりがいを感じる人には、ぜひ来ていただきたいですね。
同社は2024年4月、新たに19億円の資金調達を発表。この記事で扱ったBtoB決済領域での事業拡張はもちろん、BtoC領域でもさらなる事業加速が見込まれる。もちろん、人材採用も拡大させる方針だ。
スタートアップや金融機関だけでなく、さまざまな業種の大企業がFintechを取り入れ始めたこの時代において、先駆者としてのチャレンジを続けるインフキュリオンの展開を、ぜひ今一度、じっくりと見てみてほしい。
こちらの記事は2024年05月16日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
畑邊 康浩
写真
藤田 慎一郎
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