エンジニアやPdMにとって、なぜ「小売のDX」が面白いのか?──リクルートの開発組織をリードした新任CTOが魅了された「OMOのデファクトスタンダード作り」への挑戦
Sponsored2005年の創業以来16期連続で増収を達成し、小売特化型のDXソリューションプロバイダーとして日に日に存在感を増している急成長ベンチャー、イングリウッド。商品開発からEC運営、顧客獲得、物流・CRM、IT人材育成に至るまで、小売のDXに必要な分野を包括的にサポートしている。社員1人あたりの売上は1億円を超え、過去3年間で売上は3倍以上になっている。2020年には社内の人材育成プログラムをサービス化して外部に販売し始めるなど、領域に囚われずに「商品を売る最強の集団であり続ける」というミッションを体現している、ユニークな会社だ。
そんなイングリウッドに2021年5月、新しい風が吹いた。リクルートにてエンジニア部門の部長を務めていた大森崇弘氏が、CTOとしてジョインしたのだ。
これまで置いていなかったCTOというポジションへの新たな人材登用には、テクノロジーをさらに強化し、「OMO(Online Merges with Offline)」という世界観の実現に向けてアクセルを踏んでいきたいという、同社の意気込みが現れている。
イングリウッドは小売業界のDXについて、どのような勝算を見出しているのか。同社のプロダクト開発部門は、これからどのように変わっていくのか。今回新たにCTOに就任した大森氏に、話を伺った。
- TEXT BY MARIKO FUJITA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
日本で「小売のDX」が進まない要因は何か?──デファクトスタンダードを作り出す挑戦
イングリウッドが主戦場にしているEC市場。急成長のフェーズは終わり、今や成熟期に差し掛かっているという見方もあるが、大森氏は「この領域の成長はまだまだはじまったばかりだ」と熱を込めて語り始めた。
大森まず「物を売る」という小売業界の成長性に関して言えば、人間の購買欲求が多様化し続ける限り、進化し続ける領域だと捉えています。その小売業界の中にECがあるわけですが、BtoCの物販系分野での日本のEC化率は未だわずか約7%。英国や中国のように20%や30%という水準には今すぐならないにしても、日本においてもEC全体の市場規模は今の(約)19兆円からまだまだ成長を続けることは明らかでしょう。
直近のトレンドとしては、やはりコロナ禍によるオンラインシフトでしょう。D2Cスタートアップの成長が一気に加速したり、個人経営の小売店もどんどんネットショップを開設していたり、一過性ではない消費行動やビジネスモデルの変容をもたらしていると思います。こうした社会の流れに対し、「オンラインとオフラインをどう組み合わせていけば継続的に成長し続けられるか」という課題に、さまざまな企業が試行錯誤を重ねながら取り組んでいるという印象です。
奇しくもコロナ禍を機に一気に加速した、販売におけるオンラインとオフラインの滑らかな接続──中国や欧米で発展した「OMO」や「O2O(Online to Offline)」と呼ばれるマーケティングの概念は、イングリウッドが目指す小売の理想形でもある。
しかし、国内でOMOモデルの確立に成功している企業は未だ少なく、だからこそ「自身のスモールビジネス向けのメディアやSaaSプロダクト開発の経験値とエンジニアリングの力で業界を変えていける可能性が大きい領域であると感じた」と大森氏。
大森国内でオフラインとオンラインそれぞれの良さを理解し、データも上手に活用して急成長を継続している、いわゆる「OMO成功事例」は少しずつ出てきてはいますよね。けれども、デファクトスタンダード(業界標準)は未だ生まれていないように思います。多くの企業が、オンラインとオフラインのいずれか片方に軸足を置いて考えていたり、特定機能だけに特化したオンライン化を追求しすぎていたり。やはり、オフラインとオンラインのメリット/デメリットを理解した上で、うまく統合しきれていない企業が多い。
しかし逆の見方をすれば、これは大きなチャンスなんです。業界の成功事例を研究し、共通項を見つけることで、僕たちのようなエンジニアやデータサイエンティストがプロダクト開発を通じてそのデファクトスタンダードを創っていける可能性があります。この点は、「エンジニアリングによって人々の生活を変えていきたい」と考えている開発者にとっては、非常に大きな魅力になると感じています。
しかしながら、「まだデファクトスタンダードが確立されていない」理由はシンプル。OMO実現のハードルが、日本では高いからである。解決の糸口はあるのであろうか。カギはどうやら、「事業全体の再設計」にあるようだ。
大森(日本で)OMOがうまく浸透しない要因には、オンラインとオフラインの販売手法がそれぞれ個別に確立してしまっており、その前提のままボトムアップでDXを進めようとしてしまっている点にあると僕は考えています。オンライン化の話で言えばカートやCRMツール、接客アプリ、ChatBotの導入など、川下の部分における施策に集中しており、商品企画や事業設計の見直しといった「上流」の部分からはアプローチできていないという印象があります。
しかし、これから「本物のOMO」を実現し、新しい顧客価値を創っていくためには、購買におけるオンラインとオフラインのポイントを整理してそれぞれを位置付けし直し、「新しいビジネスモデルを生み出していく」くらいの覚悟が必要になります。だからこそイングリウッドでは、「川上」から「川下」まで小売の一連の流れを把握し、ECと店頭販売のそれぞれを、クライアントだけでは見えづらい角度から統合的に捉え直すことで、新しい価値を創造していく支援をしています。
今のイングリウッドはまだ、プロフェッショナルを育成し、属人的に対応している部分が多いのが実情です。僕も最初ビックリしたのですが、創業以来、イングリウッドには営業担当者がいないんですよ(笑)。にもかかわらず、おかげさまで「イングリウッドに相談したい」というお声は今でも数多くいただいており、正直、対応しきれていません。ですから、AI/ML等のテクノロジーを活用して、この状況を改善するのがCTOである僕の役割の一つです。幅広いクライアントの声に応えられるよう、エンジニアリングの力を活用し、業務上のかゆいところに手が届きつつもより標準化されたソリューションの開発をしていきたいと考えています。
「商品を売る最強の集団であり続ける」秘訣は、新たな事業を創造し続ける組織カルチャー
新卒で入社してから7年間在籍していたリクルートでは、マネジャーとして複数プロダクトの品質管理を任され、数百名ものエンジニア組織を束ねていたという大森氏。多様な領域の開発に携わることができ、ヒト・モノ・カネ・情報という全てのアセットが豊富で新たなチャレンジにも取り組みやすい前職の環境には満足しており、「転職することは全く考えていなかった」という。
そんな大森氏がイングリウッドと出会い転職を決意するに至った背景には、何があったのだろうか。
大森リクルートは想像以上に魅力的な職場だったのですが、「会社の看板や過去の実績を抜きにして、今の自分の実力でどこまでのことができるのだろうか」「どういう分野・組織なら、自信のキャリア指針である“エンジニアリング・WEBプロダクトの力で社会・人の行動を変える”ことをさらに早く・大きく・面白く実現出来るだろうか」ということに対する興味は、常に頭の中にありました。
そんな折、大学時代の友人の紹介で偶然代表の黒川と出会ったんです。15年以上の経験に裏打ちされたイングリウッドの成長ストーリーや、業界の未来に対する彼なりの見解について話を聞くうちに、「この精度で仮説を持っている経営者はなかなかいないぞ」と驚愕しました。一気に興味を惹かれていきましたね。
そして自分としても、「これまで自分が関わってこなかったEC領域」で「エンジニアリング・WEBプロダクトの力で社会・人の行動を変える」挑戦ができると考えはじめたらワクワクがとまらなくなって、迷いはなかったですね。
加えて、他の経営陣とも話してみて感じたことですが、年次や職種を問わず、全員が「事業オーナー」であろうとする、全員を「事業オーナー」として育てていこうとする社風も自分に合うな、と。社内研修でビジネスモデル・商流の種類や財務諸表の見方、プログラミング、Web広告運用におけるポイントなどを、ここまで丁寧に教える会社を僕は知りません。人材が会社の重要な資産であるという言葉を体現している仕組みだなと思うと同時に、リクルートと少し似た、若手事業家をどんどん輩出できる組織カルチャーなんだろうな、と感じました。
あとは良い意味で「勝負どころを決めていない」というか、これまでの成功パターンに固執せず、EC領域以外の新規事業にも積極的に取り組んでいくカルチャーに魅力を感じました。本当に純粋に、ミッションである「商品を売る最強の集団であり続けること」を広い意味で捉えて、追求している企業なんです。
普通は一度成功してしまうと、なかなかそこから離れられないものですからね。意識的に変化し続けアンラーニングできる組織というのは、素直に「すごいな」と感じましたね。
目指す開発組織は、「事業利益への貢献」を徹底意識できるチーム
イングリウッドは代表の黒川氏がスニーカーのECサイトを立ち上げたところから始まったが、そこでの成功に安住することなく、次々と新しい事業やプロダクト開発、研究開発に取り組むことで成長を続けてきた。
大森氏ももちろん、この歴史を継承した展望を持っている。「まずはとにかくデータやテクノロジーを活かした施策の数を打ち、成功したものに注力投資していきながら新しい事業を作っていく」、同時に「その事業創造を技術力でリードしていく開発組織を、いち早く構築していく」というものである。
大森現在は他社へのECに関するソリューションの提供がイングリウッドのメイン事業になっていますが、今後の大きな目標は次の事業の柱を作っていくことです。まずは、「イングリウッドらしい新規事業を創出できるプロダクト開発組織とはどういうものか」を考える、コンセプトメイキングの部分に取り組んでいます。
現在のイングリウッドの開発組織は、業務委託の方を含めても10名ほど。個々人の能力や専門性は非常に高いものの、独立して動いていて情報連携が不十分なことで「車輪の再開発」が発生していたり、良くも悪くも課題に対してオーダーメイド的に対応し過ぎてしまっており再利用性が低い、といった課題感があります。
そこで今後は開発組織のビジョンを明確にし、それぞれのエンジニアが自分の得意領域を活かして活躍しやすいような環境を作っていきたいと考えています。具体的には「ベンチャーらしいいい意味での『アラ』は活かしつつも、より事業成長に貢献する視点の強い開発組織」を目指します。
前職でいたリクルートの開発組織は、まさに「事業利益への貢献」という観点を徹底的に問われる組織でした。また、僕自身がエンジニアとして自信を持っている領域でもあり、CTOとしてオファー頂く際にも、そのスキルと経験が評価されたのではないかと思います。
ビジネス視点を強化し、自由にチャレンジができる開発組織へ
こうして、エンジニア組織の方針策定と環境整備という部分から始まった、イングリウッド開発部門の大改革。半年〜1年後に、飛躍のための土台が整った後には、開発力を駆使して、どんなことを成し遂げるつもりなのだろうか。
大森これまで社内でテクノロジードリブンな研究開発は進んできたものの、事業としてまだ形になっていないものについては、これからプロダクトへ昇華させ、成果を出していくフェーズにあると捉えています。まさにこれこそ、エンジニアの力の見せ所ですよね。
現在社内にある技術とノウハウを組み合わせることで、どのような新しいプロダクトやビジネスを生み出せるのか。そういった部分の検討に取り組んでいきたいと考えています。例を挙げると、直近はAIを活用した小売の事業収支計画や商品企画の支援などの検討を進めています。
事実、「現在イングリウッドではエンジニアやデータサイエンティスト、プロダクトマネジャーの採用を強化している」。多くのスタートアップから引っ張りだこの同職種のベンチャーパーソンにとって、今からイングリウッドにジョインする魅力とは、一体なんだろうか──。
大森「多角経営だからこそ在籍する様々なスペシャリストとコラボレーションしてプロダクトを生み出し、育てていける」ということが、プロダクトに関わる方々にとって、一番大きな魅力だと感じます。また、会社全体として「失敗を前提に、まずは試してみる」というカルチャーが浸透していて「アジャイル開発」や「リーン・スタートアップ」のような思想がイングリウッドでは自然に実践されているんですよ。
これって、地味にすごくないですか?プロダクト開発の経験のある方なら、「言うは易く行うは難し」であることが、わかっていただけるかとおもいます(笑)。ですから、「新しいプロダクトを生み出していきたい」「自分で企画した何かを実現して社会にインパクトを与えたい」と思っている人にとっては、最高の環境なのではないでしょうか。
また、「どうやって将来の事業創造に向けてデータをうまく蓄積し、統合していくか?」という問いに答えは出せておらず、既存の事業で得られたデータを、新しい事業やプロダクト開発に活かしていける可能性がまだまだあります。そして、このデータを活用して事業を急成長させることこそが、イングリウッドがさらなる飛躍を遂げるカギになると考えています。
ですから、この半年〜1年くらいで、プロダクトマネジャーとエンジニアによる5〜6人のチームをどんどん増やし、プロダクト開発におけるトライアル&エラーの数を増やしていきたいです。これぞまさに、僕の得意領域が活かされるというか、これまで実践してきた組織づくりのあり方でもありますからね。
もちろん『ビズデジ』のように、広い意味でDX支援の範疇にはあっても小売の枠には留まらない新規事業の立ち上げ例もありますから、エンジニアやデザイナー、プロダクトマネジャーやプランナーといった職種の人だけでなく、「枠に囚われず新しいことにチャレンジしたい」という皆さんに、イングリウッドをもっと知っていただき、興味をもっていただけたら嬉しいです。
僕のように、全く転職を考えていない人でも、黒川をはじめとした経営陣や現場の多様なスペシャリストと少し話をしていただければ、「この会社、結構面白いかも?」と思っていただけるはずです。
こちらの記事は2021年05月17日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
藤田マリ子
写真
藤田 慎一郎
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