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CtoBtoC!?が流通を最大化させる──ジラフが“ものの売り買い”を変える
ジラフは、さまざまな製品の買い取り相場をチェックできる「ヒカカク!」やiPhoneの修理代地域別最安値を調べられる「最安修理ドットコム」、スマートフォンのフリーマーケットサイト「スマホのマーケット」といったサイトを運営しており、“価格比較”に注目したサービスを次々繰り出している。
代表取締役社長の麻生輝明は、「ものを買うだけの人を売る人へと転換させていければ、世の中はもっとよくなるんじゃないか」と語る。
- TEXT BY MISA HARADA
- PHOTO BY YUKI IKEDA
- EDIT BY GEN HAYASHI
“正しい考えを持った人たちの輪”にいることが成長の鍵
麻生Excelのことなんて全然知らなかったから、数百メガバイトもするファイル作っていたんですよね。関数とかもよくわかっていなくて、数十万行、数十万列あったりして。
麻生は学生時代、事業を始めたばかりのことを笑って振り返る。大学4年生で自分のサービスを始めてみようとなったとき、まずは壮大なビジョンよりも、現実的に可能なことから手を付けていこうと考えた。アイデアの種として麻生の頭に浮かんだのが、iPadを売ろうとするも、相場などがよくわからず困った経験だった。
「物を売るとき相場を比較できるサービスがあったら便利なんじゃないか」。そのアイデアから、2014年10月に合同会社ヒカカク創業に至った(2015年4月に株式会社ジラフに組織変更)。
とはいえ、創業時は、まだビジネスの知見もない大学生。当時の苦労を思い出し、麻生は、「正気じゃなかった」と苦笑する。開発者がいなかったため、自らExcelと格闘し、そして完成したのが先述の「数百メガバイトもするファイル」。当たり前だが、処理しきれずにパソコンがよくフリーズしたそうだ。しかし、大学の友人同士で四苦八苦しながら行っていた事業は資金調達に成功する。スケールしていった秘訣は何だったのだろうか?
麻生どこかの大学生が自力で正解を出し続けるなんて、ありえないと思うんです。だから、エンジェル投資家をはじめとするメンターには救われました。正解がわかる人たちの中にいれば、もともと全然すごくない奴でも、どんどん学習していけます。逆に言えば、どんなに学習意欲があっても、学習できる材料が周りになければ、成長することはできない。“正しい考えを持った人たちの輪の中にいられるかどうか”というのは、知見のない大学生すらも変えてしまうくらい、成長に欠かせない鍵なんだと思います。
ところで、麻生のキャリアは、起業に向かって実に美しく積み上げられている。中学生のころ、10代向けのコミュニティサイトを運営していた彼は、起業に憧れるようになり、「大学では経営学を学ぼう。そのために一橋大学商学部を目指そう」と早々に決意する。
一橋大在学時はGREEでのインターンを経て、大手ベンチャーキャピタルに内定するも辞退。2014年10月に合同会社ヒカカクの創業に至る。これほど周到かつ綺麗に起業に至る例も珍しい。
しかし、麻生は、「実際に起業となると、『今じゃない』とか『金がない』とか、いろんな理由をつけて辞めたくなりましたよ」と少々意外なことを明かした。麻生は安全な選択肢をとりたがる自身の性格を自覚していたからこそ、「大きなリスクを一度とろう。自分の人生を生きてみよう」と決断し、大手企業の内定を辞退した。
麻生今となっては、綺麗に計画を立てて、その通り進んでいったように見えますが、実感としては、かなり悩みながらも最後は勢いで飛び乗ったというものでした。考え込むタイプだからこそ、普段から『自分で自分を説得する材料を揃えなければ』とメタ的な視点をもって行動していますね。
世の中に幸せを提供するなら、自分が変化するしかない
ジラフのビジョンは、「新たなスタンダードを生み出し、世界の発展に貢献する」。麻生は、「ものを買うだけの人を売る人へと転換させていければ、世の中はもっとよくなるんじゃないか」と考えている。
麻生ものを使って、必要なくなったら売って、売ったお金で新しいものをまた買うという消費行動が一番賢い。でもまだ世間一般に普及しているとは言い難い。起業家として僕らが“ものの売り買い”と、それを取り巻く価値観を変えられないかと思うんです。
そこで麻生が目を付けたのが、“CtoBtoC”の仕組みだ。「メルカリ」を筆頭にCtoCのサービスはいくつもあるが、自動車や不動産といった一部の商品カテゴリにおいては情報の非対称性が存在するため、ユーザーが個人間のやり取りに不安を覚えやすい。
そういった分野においては、むしろ業者が仲介し、追加でサービスを提供した方が流通が最大化するのではないか。その仮説のもと、ジラフが運営する「スマホのマーケット」では、フリーマーケットサイトでありながら、動作保証や品質チェック、SIM診断といったオプションサービスを付けている。
CtoBtoCに着目し、現在は“ものの売り買い”をテーマにしているジラフだが、とくに特定の事業へのこだわりはないらしい。
麻生ダーウィンの進化論を思い出してもらえばわかると思うんですが、変化しないものは生き残れません。これだけ変化が激しい世の中では、変わるべきものは変わっていかないと勝てない。勝てなければ、誰かを幸せにすることもできない。世の中に幸せを提供していきたいんだったら、自分が変化していくしかないという三段論法です。
変化を重視する麻生だが、“新しい価値観を世に送り出す”という意識は忘れないようにしている。その時々のタイミングで事業内容は柔軟に変えていくとしても、自分が面白いと思えることを大切にする姿勢はぶらさないつもりだ。
メンバーには起業経験者多数
ジラフでは、仕事を“我が事”として捉えられる人材が多いという理由で、起業経験者を活発に採用している。CFO・管理統括部長を務める中井基樹も、起業経験のあるメンバーの1人。中井は、新卒でJPモルガン証券に入社した後、家具・インテリアのオンラインカタログ送客サイトを創業。サイトをクローズした後は、DeNAメディア部に転職し、2017年夏にジラフのCFOに就任した。一体なぜジラフは、起業経験者の採用に積極的なのか?
社内に普及している「我が事の精神」は、中井も強く感じている。かつて会社勤めをしていたときには、どうしても“自分の管轄”という意識が抜けなかった。しかし、ジラフでは「我が事の精神」で会社の経営を共に考える。自分のチームじゃないメンバーにも目を配り、顔色が悪そうだったら、自然と心配になって声をかける。中井は、「自分で会社をやっていたときと非常に近いマインドで仕事ができる」と語った。
また、中井は、「いい意味で遠慮と気遣いがない」と社内カルチャーを表現した。上司の顔色をうかがうことなく、自分がいいと思ったものをフェアに言い合う。誰が言ったかよりも何を言ったかが重要だ。
中井世の中になかったもの、新たなスタンダードは、自分が感じた疑問や意見を率直に主張できる組織から生まれるんじゃないでしょうか。上司が違うと言おうが、社長が違うと言おうが、『自分はこうだと考える』と主張できる。新しいものを生むためのカルチャーがジラフには醸成されていると思います。
ジラフが求める人材は、ずばり「自信がある人」だ。自信の裏付けはなんだって構わない。向上心があり、挑戦に対して価値を感じられる人にジョインしてほしいと考えている。実力さえあれば、若手だろうが未経験だろうが同社はフラットに評価する。今の会社の人間関係やポジションの問題で、本来の自分の力を発揮しきれていない人には、ぴったりの環境かもしれない。
「ただし……」と中井は付け加える。
中井うちは良くも悪くもフラットな組織。言い訳は一切効かない環境です。上司がどうとかカルチャーがどうとか周りの環境を言い訳にできないぶん、いい意味でも悪い意味でも、その人の等身大の力が試されます。厳しい印象を受けるかもしれませんが、自分自身の本当の力を見る勇気があるなら来てください。それを映し出す環境がジラフにはあります。
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31記事 | 最終更新 2018.03.27おすすめの関連記事
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