花王グループカスタマーマーケティングのマーケターが、インフルエンサーマーケティングでも成果を生む──大企業を支えたスタートアップの”細か過ぎる提案”とは
Sponsored近年急速に立ち上がったインフルエンサーを起用した、TikTok等に代表されるSNSマーケティング。CM等のマスメディアではない新しい取り組みとして注目されており、実際にマーケティング施策の一貫として取り入れる企業も増えてきているが、その中で気になるのは、今までマスメディア中心のマーケティングを行うことが多かったであろう、大企業の存在だ。
大企業でもインフルエンサーを起用したSNSマーケティングを活用することが増え始めたものの、その成功事例はまだ多くはない。そこで今回、SNSマーケティングを取り入れている花王グループの事例に迫る。タッグを組んで施策に取り組んでいるのは、クリエイターエコノミーカンパニーのNateeだ。
成果を継続的に創出するためには、戦略や目標の的確な設計が不可欠だ。ステークホルダーが多くなる中で、この両者がどのように調整を進め、施策の実行と成果創出に繋げてきたのか。「良い意味で細かすぎて大変だった」と花王側が振り返るほどの緻密な連携を、詳しく聞いた。
形のない「マーケティング」は、どうしても成果を示しにくいもの。そんな壁をどのように乗り越えるべきなのか、考える一助としてもらえれば幸いだ。
- TEXT BY KAORI ONO
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
大企業・花王グループカスタマーマーケティングがZ世代向け拡販へ、スタートアップと組んだ理由は「細か過ぎた提案」?
花王といえば『アタック』や『リセッシュ』、『ビオレ』など数々のブランドを保有する、日本を代表する消費財メーカーだ。そんな大企業において、どのようなマーケティング課題があったのか、そしてどのような新たなデジタル施策を進めているのか。
今回の話の中心となるのは、花王グループにおける販売会社の花王カスタマーマーケティング(以下、KCMK)だ。ドラッグストア等小売業をチェーン単位で担当し、製品販売を促進するための施策を行っている。
同社はこの2022年から、インフルエンサーマーケティングへの挑戦を本格的に始めている。まずは担当マーケターのM・A氏に、その理由や背景から聞いていこう。
M・A私たちはドン・キホーテ様を担当し、本部担当は仕入れ担当者に対し、その店舗に合った商品のご提案や、長期成長戦略のご提案などを行っています。その中の象徴的な仕事として「ドン・キホーテ様限定品」の商品開発、販売戦略立案があります。
そのような各チェーン店様の特色に合わせたカスタマイズ商品を売り出す際には、販売促進として店頭で大きく陳列したり、ポイント還元をしたりするなどの手法がメインでした。一方で、SNSを使ったデジタルなマーケティング施策は、最近まであまり大々的に行えていませんでした。
M・A従来の取り組みだけでは、期待していたほどには世の中に広く知られていかず、大きな課題と捉えていたんです。
2年前まで、私はドン・キホーテ様の洗顔メイクカテゴリーの本部営業担当をしていました。お客様は若年層が多いのが特徴なので、SNSを活用して、カスタイマイズ品の単発掲載をしていましたが、話題になるのは社内だけで、世間で認知されているという手応えがありませんでした。
KCMKとしても若年層ユーザーを拡大、育成したいという思いがありましたので、若年層に広く認知してもらうためにはSNSが必要不可欠だと考え、2022年にSNSプロモーション担当という新しい役割ができました。
M・A氏のこの担当歴は、洗顔メイクカテゴリーの営業担当だった頃から、チーム全体のSNSプロモーション担当になった今までで6年となる。
その分、愛着・愛情も人一倍あるからこそ、この現状をなんとかしたいという気持ちが強かった。社内のマーケティング担当者に相談し、紹介してもらったのが、代理店のNateeだった。
Nateeは2018年に創業したスタートアップであり、クリエイターを起点としたマーケティングを全般的に支援する事業を行っている。特にTikTokを中心としたインフルエンサーマーケティングの活用に定評がある。経営陣をはじめ、メンバーも年齢的に若く、勢いを感じさせる注目企業だ。
その若い企業。若いメンバーたちとの出会いは、どのようなものだったのだろうか?
M・Aむしろ、今こう聞かれて、「そういえば永岡さんは若いよな」と思いました(笑)。
提案をいただいたときにびっくりしたことを覚えています。すっごく細かいんです。もちろん良い意味で。
永岡良い意味で、ですか……?すみません細かすぎたかと心配になってきました(笑)。
M・Aもちろん良い意味です!「マーケティング施策一つとっても、ここまで丁寧に、こだわって進める必要があるのだな」と勉強になりました。
具体的には、プロジェクト開始時にいただいたオリエンシートが、非常に緻密な内容で……。商品やサービス、ターゲットを明確にし、施策で伝えたいメッセージや予算までしっかり言語化し、プロモーションの方針を改めて提示してくれました。打ち合わせの場でその説明をしてもらったところ、私たちの製品についてすごく細かく調べてくれていたことが伝わりましたし、その後のメールでのフォローも常に細やかで、頼もしいです。
実際に動画の制作に入ってからも、クリエイターが制作した案をNateeさんが間に立ってどんどんブラッシュアップしてくれて、クリエイター目線と代理店目線、そして私たち目線のすべてをしっかり取り入れた制作を進めてくださっています。
取り組みの充実度について次々と語るM・A氏。自社での成果はもちろん、ドン・キホーテの販売現場に貢献したいという強い気持ちもあって、このプロジェクトは発進した。
M・Aもちろん、半期で準備しているマーケティング関連予算の中からけっこうな額をかける提案だったので、意思決定まではそれなりに悩みました。
ですが、最終的にこの店舗で商品を買ってくださるお客様の気持ちを考えたとき、ターゲットである若年層の視点に立って提案をしてくださるNateeさんなら間違いないと思い、お願いすることに決めたんです。
永岡ありがとうございます。確かに、KATEの化粧品を目の前で、女性含め他の社員に使用してもらったり、私自身も試してみたりするなど、深く理解しようとしてきているので、こう言っていただけて良かったです。
M・A氏が「すっごく細かい」と言ったところで永岡氏含め、一同大笑いする和やかな雰囲気で進んだこの取材。本当に細やかな提案だったのだろう。
マーケティング知見のあるM・A氏に「勉強になった」と言わしめる程の丁寧な仕事ぶり。女性向け化粧品であっても自ら使用し、ユーザー目線に立つ行動にも表れている。大企業を相手にしても、創業年数や年齢の若さなど関係なく、実直に取り組むことで成果を創出しようとする姿勢がうかがえる。
動画から店頭へ。インフルエンサーの投稿から、購買行動をいかにして刺激するか?が腕の見せ所
KCMKにしても、ドン・キホーテにしても、大きな企業であるからこそ関わる人も多岐に渡る。その中でPRと店頭を跨ぐ施策を行おうとすれば、当然この多くの人たちとの調整も大きな仕事のひとつとなる。ここでの課題や困難だったことはなかったのだろうか?そんな疑問もわく。
そこでここから、具体的な施策内容について聞いていこう。なお、今回のマーケティング施策で押し出していたブランドは、花王グループ内のカネボウ化粧品が展開するグローバルメイクブランド、「KATE(ケイト)」だ。
永岡前提として、Z世代をターゲットにしてつくられた製品では、ターゲットやトレンドに合わせて高速でPDCAを回すといった戦い方をするブランドが増えてきています。
ですが、規模が大きくステークホルダーも多い大企業さんではそうした動きを取りやすいとは言えません。そこで今回のように、データを分析した上で訴求の仕方をしっかり考え、実際の購買行動まで考慮した柔軟な発信を考える必要性が高まっています。
「マーケティングの重要性」は、何十年も前から常に言われていることであり、さまざまな企業がさまざまな取り組みを行っている。インターネットの拡大によって理論や手法も多岐にわたり、自社に最適な選択を取り続ける難度は高まっていると言えるだろう。
さらに、永岡氏が指摘するように、企画や製造のフェーズにまで柔軟性が求められる時代だ。一つひとつの製品、あるいはブランドそれ自体の“賞味期限”が、否応なしに短くなっているとも言えそうだ。
そうした時代背景・社会背景を意識した提案・企画を、永岡氏は強く意識しているという。
永岡KCMK様の今回のお取り組みの場合、「花王さんの製品を認知させて購買に繋げる」というだけではなく、「製品を認知してもらって、そこからどうやって『このお店で買ってもらうか』」というところが論点になってくる。複雑性は高いですよね。
ただ売れればいいわけでなく、このお店で買ってもらえるようにする。ここのHOWまで緻密に考える必要があるんです。でも逆に言えば、購買行動まで具体的に想像しやすいということでもありますから、考えるのは面白いですよね。私たちも当然、この点を徹底的に考えた提案をさせていただいています。
M・Aドン・キホーテ様は、ECの活用よりも店舗現場を重視されている、ユニークな企業様ですので、「店舗への送客」や「店頭での施策」というところが、取り組みの中では常に優先度高く考えるべきものなんです。永岡さんたちは、この点をしっかりと理解してくださっています。
全国に存在するドン・キホーテの店舗における花王製品の販売を統括しているのが、M・A氏だ。
新しい施策を始める際には、まず花王グループ内、そしてドン・キホーテの運営本部と相談を進めていく必要がある。そして実施が決定したら、今度は花王グループの地区担当から各地の店舗へ情報共有を行い、マーケティング資材を渡すなどして一つずつ実現させていくことになる。
店舗の現場において買ってもらうことを考えた上での店頭施策を実行するのであるから、地区担当一人ひとりが各地の店舗担当者と話す際にも、M・A氏や永岡氏と同じ気持ちを持って話をして、より良いかたちでの実行に移してもらう必要がある。そのため、「オンラインとオフラインを、いかにして接続するのか」という問いへの答えを、常に言語化しようと試みる。
M・A私のところで言語化できていなければ、たくさんのステークホルダーに動いてもらうことなどできません。そもそも成果への直結を説明するのが難しいとされている分野だからこそ、より強く意識しています。
永岡SNSマーケティングでは多くの場合、認知の拡大が目的になることが多く、「実際に店舗でどう売れるか」はスコープに入っていないこともあります。
ですがM・Aさんは「オンラインとオフラインをどう繋げるか?」というところを常に考えています。これは現代の企業が等しく抱える課題でもありますよね。
この点をしっかり意識した上でマーケティング施策に取り組んでいるというのは、KCMKさん、そしてドン・キホーテ様の素晴らしいところですよね。私のほうも、「考慮が足りずに期待外れな提案や納品にならないように」と、気を引き締めて向き合っています。
「目的設計・目標設計の甘さ」が、マーケティングの現場ではよく指摘される。しかし、常に最適な設計ができるマーケターは多くない。それを、M・A氏はしっかり捉え、ステークホルダーの多さやSNS投稿の特殊性、オフラインでの購買行動に至るまでのカスタマージャーニー、そして大企業ならではの制約といった多岐にわたる検討材料をしっかり分解して取り組みを進めている。
M・A氏と永岡氏はそれぞれの場面で、お互いが役割を持って力を発揮している。2人が共通認識を持って、妥協せず取り組み続けているからこそ、施策がしっかりまわっているのだ。
キーワードは「三位一体」、信念で実現した「クリエイターにもwinがある企画」
Nateeの考える企画は特徴的だ。起用するクリエイター、ひいてはその先の消費者の視点が盛り込まれている。具体的な施策を通して、その裏側を紐解いていこう。
永岡このドン・キホーテ様だからこそできる新たな取り組み案として「オンライン(SNS)とオフライン(店頭)の連動」を具体的に検討していきました。M・Aさんとのディスカッションを繰り返し、店頭のモニターで動画を流し、店内放送でもクリエイターさんの声が流れるという、クリエイターと消費者にとっての付加価値を増やす施策を起案しました。
こうすることで、オフラインでもクリエイターさんの露出が大きく増えるので、クリエイターにとっても新しい施策になるだろうと考えました。また、これが実現すれば、花王さんやドン・キホーテ様にとっても、売上への良い影響がおそらく生まれるはず。
M・A「店頭との連動」の具体的な提案は、非常にありがたかったですね。私たちと同じ気持ちで動いてくださって、また、クリエイターさんにとっても良い内容にまとめてもらえて、助かりました。
実際に、ファンの方が「店頭動画を見たよ」「店内放送を聞いたよ」とクリエイターにDMして、それをクリエイター本人が拡散する、という波及効果もありました。
この、「クリエイターにとっても良いかたち」を突き詰め、実現していくという点。実は、Nateeのミッションに起因するところが大きい。
Nateeは、「人類をタレントに!」をミッションとして掲げており、その主な対象がインフルエンサーを始めとしたクリエイターである。したがって、クリエイター一人ひとりの存在をとても大事にしている。
永岡私たちはいわゆる代理店ビジネスをしていますから、企業とクリエイターの間に立っているわけです。その中で、企業の要望をクリエイターにただ伝えるだけの、橋渡し役状態になってしまうと、自分たちの介在価値は非常に小さなものとなってしまいますよね。
そうではなく、しっかりと企業とクリエイターの間に入って、良いクリエイティブをつくるためのプランニング、キャスティング、ディレクションをするのが、私たちNateeの強みなんです。
M・Aこの強みを、一緒に施策を進める中ですごく実感しています。
特に化粧品はいわゆる「薬事法」により、表現できることに制限があります。たとえば「100%効果が出ます」などという表記をすることができません。その結果、キャッチコピーが弱くなってしまうことも多いんですが、今回はNateeさんとクリエイターさんが先回りしてしっかり考えてくれました。「妥協してしまった」と感じることは一切なく、強い表現で上手に進めてくれたので、本当に嬉しいですね。
このようにこだわり続けるための進め方を、Nateeではしっかり仕組み化しているのだという。
M・Aそもそもの、字コンテ(動画のストーリー展開を文字で指示するもの)のつくり方から他企業とは違うと感じました。
多くの場合、代理店さんから提案してもらった字コンテについて、私たちがOKを出したら、それをベースにクリエイターさんに依頼しています。なので、上がってくるクリエイティブは、ほぼ最初の字コンテの依頼通りになるんです。
でも、Nateeさんはこの進め方が違います。
永岡クリエイター一人ひとりの世界観や特色を最大限に活かしながらつくることが大事になってくると考えているので、企業の依頼内容そのままではなく、クリエイターさんの意見もしっかりお聞きし、より強いクリエイティブをつくるようにしています。その中で、当初の想定からどんどん形が変わっていくんです。M・Aさんとのやりとりも増やし、最適なかたちを探っていきます。
M・Aこのような、三位一体で一緒に取り組んでいる感覚は初めてでしたね。
この「三位一体」で取り組んだ施策。実際の現場についても教えてもらおう。まさに、起用相談の際に肝となった「オンライン(SNS)とオフライン(店頭)の連動」が効果を発揮している。
M・ATikTokへの投稿日の前から、店頭で対象商品の売り場づくりを始めてもらったり、投稿後にはモニターを設置して動画を流してもらったり。そうすることで、SNSを見て来店したお客さんは、「おっ」と思いますよね。逆に、店頭でTikTokに気づいたお客さんも、その後ふとした時に動画を見てくれるようになるかもしれない。そんな連動を狙ったのです。
結果として、店頭での販売数は大きく伸びました。
また、TikTokの動画のコメントに「この商品、店頭で動画を見て買いました!」とコメントがついていたりもしていて、SNS→店頭だけでなく、店頭→SNSという連動も実現出来ています。
永岡この連動を狙って行った施策だったので、この成果はすごく嬉しいですね。
より精度を上げていきたいと、気持ちが引き締まりました。
M・Aこの連動施策を高く評価して、当初の7インチモニターでなく、より大きなモニターを入れて、1年間販売場所を固定して売っていくと決めた店舗もあります。
店頭での購買行動といかに連動出来るか、という点が1番重要と思っていたので、店舗での新たな動きに繋がったことは非常にうれしいですね。
本部主導の施策が、しっかりと店舗にも周知され、効果が実感されている。まさにお手本のようなマーケティングと言えるのではないだろうか。
インフルエンサーマーケも、他のマーケも、変わらない。必要なことは「選択と集中」
様々な課題を乗り越えて成果を創出し始めた、今回のSNSマーケティング施策。
M・A氏や永岡氏は、この施策の前から様々なマーケティング施策に取り組んでおり、その軌跡のなかで、共通する「SNSマーケティングにおいてのTips」が生まれている。
それが、この2点だ。
- 商品を絞り、長期的に取り組むこと
- オンラインとオフラインの連動を意識し、強化すること
まずは、「商品を絞ること」について。
M・A以前は、一度に5~6商品のSNSマーケティングを一気に進めていたのですが、あまり高い効果を感じることができせんでした。
SNSマーケティングといえば、バズらせることが目的と捉えがちですが、それは一朝一夕ではかなり難しいことですし、対象商品が多いほどリソースが分散してしまう。実際に進める中で、そういった課題を実感していました。
であれば、注力する商品を絞って長期でやってみたらどうかと思い、実行したのです。
商品への認知を広げ、関心を持ってもらうために、すごく重要なマーケティング施策がSNSマーケティングだという認識でいます。成果を最大化するためには、一点集中して、ある程度の期間を確保して、実行を続けるということが重要だと思ったのです。
永岡以前に複数の商品で行って成果を感じられなかった時点で、SNSマーケティングへの挑戦が終わっていてもおかしくないと思います。それでもそこで見切ることなく、課題を的確に捉え、成果が出る方法を模索して新たな施策の実行にたどり着いたのはすごいことだと思います。
長期的な施策になると、効果もすぐに出るわけではない場合が多いので心が折れがちですが、M・Aさんはしっかりとスタンスを取り、向き合われていますよね。
次に、「オンラインとオフラインの連動意識、強化」について。永岡氏は「まさにインフルエンサーマーケティングの勝ちパターンがここにある」と強調する。
永岡SNSマーケティングやインフルエンサーマーケティングにおける勝ちパターンは、今回のKCMKさんとの施策のように、「選択と集中、一点投下、店頭との連動」だと感じています。
実際に購入するという点では、SNSで動画を見ただけでは少し弱いところを、店頭施策とセットにすることで消費者の背中を押していったわけです。
他の小売店や商品ブランドでも、このパターンが当てはまることは多くあると思います。
M・A今回の施策を通して、ドン・キホーテ様との結びつきがより強化されたのも非常にうれしいことでした。
店舗で商品を購入していただく上で武器になっている実感は強いです。今後も、ほかのブランドも含め検討し、継続すべきだと考えています。
「商品を絞って」「長期的に取り組み」「SNSと店舗の連動」を実現することが、SNSマーケティングにおいて重要なこと。実践を通してこの学びを深めていった両氏。
しかし、まだまだ新しい施策であるSNSマーケティング。興味はあってもなかなか踏み出せない企業も多数存在するはずだ。
永岡若年層向けのSNSというイメージから、敬遠したり、マーケティングチャネルとして軽く見たりしている企業さんがまだまだ少なくありません。
しかし、最近はこの事例のように、ショート動画から物やサービスが売れるというケースが積み重なってきているので、その情報を聞いてまずはトライアルでやってみるという企業が増えているのも事実です。
もちろんうまくいかない場合もあります。たとえば、トライアルでの予算が少なすぎたり期間が短かったりと、本腰を入れて実施できなかった場合ですね。バズの醸成や、店舗との連動こそが重要なので、片手間で成果を得られるほど簡単なものではないとも言えます。
と言っても、割合としては明らかに成功体験の方が多くなっています。しっかり取り組めば、成果を得られるんです。マーケティングがマスからSNS重視になってきているという、潮目の変化がある中、ぜひ一歩踏み出してほしいですね。
M・A社内理解を得ることが、まず第一のハードルになると思います。
かけた予算分がすぐに売上に反映されるわけではない点は悩ましいですよね。目先の費用対効果で考えると、「その予算を使って店頭で商品をたくさん買った方が売上に繋がるのでは?」と思ってしまう時も実はありました(笑)。
しかし、今までにないことを行い、今までにない効果を創出しようとするわけですから、過去のやり方とは、金額の相場観や考え方も違いますし、それなりに時間もかかります。ここをまずは主担当である私がしっかりと理解した上で、行動を起こし、周囲を巻き込んでいく。この地道な実践が何よりも大切になりますね。
ここから先も集中して取り組み、成果を出し続けていきたい。社内からも、ドン・キホーテ様からもさらに認めてもらえるような成果がまだまだ多く必要です。
今は、会社の新しい試みとして、SNSプロモーション担当としての使命がありますので、このSNSマーケティングの重要性を自分がしっかりと体現していく必要があると思うんです。
「自分と組織の将来に向け、常に変革し続ける」という二人の共通点
大企業であるKCMKで、新しい取り組みであるSNSマーケティングを取り入れて成功事例をつくったM・A氏と永岡氏。
そんな2人の今後についてももう少し最後にお聞きしよう。それは時代に即して変革をし続ける、とても前向きなものだった。
M・ASNSプロモーション担当という新しい役割になってから、外部の方と関わる機会がすごく増えました。それによって弊社の足りていないところを感じることもあって、日々、他社様のお取り組みから勉強させていただいています。
今回は、KCMKのデジタル化の一歩目として、Nateeさんとの取り組みがあった形です。今後もさまざまな局面で、こういったデジタルな仕組みを取り入れていく必要性がありますから、これを起点に広がるようにしたいですね。
SNSマーケティングという手法だけを見ても、もっと多くのブランド・多くの小売店において広く活用できると思います。そうして事業への貢献をより強く意識して、広げていくことで花王グループ間の連携もより一層強くしていけるはずです。
そうなると、デジタルマーケティング担当の人材育成も必要になってきますので、得た知見は全部会社に還元したいと思っています。
永岡いま、私たちのようなスタートアップがKCMKさんのような大企業の方と、こうして一緒にインタビューを受けさせていただくとか、一緒に仕事が出来るのは、SNSマーケティングのような今後より必要になるであろう事業をやり続けているからこそです。そのおかげで私個人としても、通常よりも早く経験を詰めていると思っています。
ただ、今は新しい施策でもすぐに飽和したり陳腐化したりしてしまう時代です。常に新しい取り組みを行っていく必要があります。
M・Aさんとも、既にTikTokを使った新しい施策の話もしていて、そうやって未来をつくる仕事が出来ていることが、今とても楽しいんです。
マーケティングとは、売れる仕組みをつくることが本質であると思っています。商品力だけではなく、マーケティングで売っていく。良い商品を広く世の中に届けるという、とても本質的なことに向き合っていて、その為により効果的な方法を提案し続けていく。そこに大企業であるKCMKさんも納得してくださって、一緒に施策を進めることができる。
ずっとこの関係を続けるために、日々レベルアップしていきたいと思っています。
現在も施策が進行中のKCMKとNateeだが、責任者であるM・A氏と永岡氏は、ここまで来るのに、双方多大な時間と労力をかけて準備を重ね、背負っているものの大きさから、かなりのプレッシャーを感じていたであろうと、語られた数々のエピソードから感じられた。
一方で、それらを語る表情は非常に活き活きとしたもので、充実感にあふれていた。
強い想いを持ち続けながらも今後も進化していこうという、前向きな気持ち。そんな2人が手がけていく未来の施策も、とても楽しみだ。
こちらの記事は2023年05月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
大納 かほり
写真
藤田 慎一郎
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