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Airbnbはもう古い──?
徹底分析で分かった、ミレニアル世代の「次の旅行観」

細谷 元
  • Livit ライター 

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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消費のさまざま場面において親世代とは大きく異なる選択を行うミレニアル世代。旅行の宿泊に関わる選択肢も例外ではない。

いま最大の消費者層として台頭しているミレニアル世代を取り込もうとホテル企業はこれまでにない新しい施策を次々と投入している。

「マイクロホテル」「ヨガマット」「ランニングプログラム」などが主なキーワードだ。

今回は、欧米を中心にホテル業界でどのような変化が起こっているのか最新動向をお伝えしたい。

  • TEXT BY GEN HOSOYA
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日本のカプセルホテルがインスピレーション? 台頭するマイクロホテル

「世界の交差点」とも呼ばれているニューヨークの繁華街タイムズスクエア。世界中から旅行者が訪れる人気の観光スポットだ。こうした観光スポット近くのホテルは値段が高いことがほとんど。同じエリアで安いホテルを見つけたとしても、サービスの質や清潔感が著しく落ちてしまう。つまり、観光スポットへのアクセスが良く、かつサービスや清潔感を維持するならそれなりの出費は覚悟しなければならないということ。

しかし、そんな二者択一の時代は終わりを告げようとしている。交通の利便性が良く、顧客ニーズに合ったサービス、清潔な部屋を、リーズナブルな価格で提供する「マイクロホテル」が台頭しているのだ。

このほどタイムズスクエアから徒歩10分ほどのところにオープンした「The POD HOTELS」。1泊75ドルからニューヨークの中心地に宿を取ることができる。もちろん他のホテル同様、WiFi、レストラン、バーなどのアメニティーを完備している。部屋の広さは2段ベッドルームが115平方フィート(約5.8畳)、クイーンベッドルームが125平方フィート(約6.3畳)とかなりコンパクトで、マイクロホテルと呼ばれる所以である。またホテル名であるPOD HOTELは、カプセルホテルという意味もあり、ミニマリストなコンセプトであることが分かる。

The POD HOTELSの2段ベッドルーム(The POD HOTELSウェブサイトより)

ニューヨークではPOD HOTELSのほかに、Moxy HotelやArlo などすでにいくつかのマイクロホテルがオープンしている。

Moxy Hotelは、世界最大のホテルチェーン、マリオット・インターナショナルが運営するブランド。ミレニアル世代を主なターゲットとし、2014年にイタリア・ミラノでのオープンを皮切りに欧州(16拠点)と米国(8拠点)を中心に拡大、東京と大阪にも進出している。

ミレニアル世代の旅行といえばAirbnbなどホテルにはない体験ができる民泊サービスに人気が集まっているが、マイクロホテルも同様に支持される選択肢になっているようだ。

Resonance Consultancy が米国のミレニアル世代(20〜36歳)を対象に行った調査では、ニーズの高い宿泊タイプについて、もっとも多かったのが53%で「フルサービス・ホテル」だったのだ。一方、アパートやコンドミニアムのレンタルは23%にとどまっている。宿泊先に求めるアメニティーがホテルの方が充実しているからというのが理由のようだ。宿泊先に求めるアメニティーで人気が高いのは、無料WiFiが68%でトップ、次いでプライベート空間57%、スイミングプール50%、繁華街へのアクセス45%、観光スポットへのアクセス45%などとなっている。

米国では短期民泊サービスへの規制が強まっていることもマイクロホテルにとって追い風となっているのかもしれない。

ニューヨークでは2016年10月、短期民泊サービスに対して米国内でもっとも厳格とされる法案が可決。30日以内の民泊施設レンタルではホストが常駐することなどが盛り込まれた。2017年にはニューヨークで当局による違法Airbnbホストへの取り締まりが行われ、各メディアが大々的に報じている。前出Resonance Consultancyの調査では、旅行先を決める上での最大の意思決定要因に「安全性」が挙がっており、ホテルを選ぶ動機が強いようだ。

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ホテルの部屋にヨガマットはスタンダードになる?

マイクロホテルという新しいコンセプトによって民泊レンタルサービスへの攻勢を強めているホテルだが、ミレニアル世代を取り込むためにほかにもさまざまな施策を打っている。

Even Hotels Times Square Southでは、各部屋にヨガマットやバランスボールを配置し、フィットネス用スペースを設けている。また、ホテル内のジムにはWoodway社のプレミアムランニングマシンをはじめさまざまなトレーニングマシンを完備している。運動で汗をかいても、2時間でスポーツウェアを洗濯・乾燥してくれるサービスもあるほどだ。さらに食事に関しても、オーガニックやグルテンフリーなど健康を意識したメニューを選ぶことができる。Even Hotelsが狙うのは健康志向が他の世代に比べ高いといわれているミレニアル世代なのだ。

健康イメージを前面に押し出したEven Hotelsウェブサイト(Even Hotelsウェブサイトより)

ウェスティン・ホテルは、スポーツブランドのニューバランスと提携し、2012年からランニングプログラムを提供している。宿泊客はランニングシューズ/ウェアをレンタルでき、さらにはラン・コンシェルジュにホテル周辺の観光スポットを周るランニングコースをカスタマイズしてもらうことができる。

ランナー向けにアピールするウェスティン・ホテルのウェブサイト(ウェスティン・ホテルウェブサイトより)

このほかにも、ルーフトップヨガやビーチヨガなどヨガのセッションを取り入れるホテルもある。

他の世代に比べミレニアル世代が宿泊先を選ぶ際に「健康増進」への意識が高いことは、いくつかの調査レポートで明らかになっている。

MMGY Globalが2016年に発表した調査では、フィットネス施設とエクササイズセッションの有無が宿泊先を選ぶ上で重要であると回答したミレニアル世代は45%とX世代の38%を上回ったのだ。

American Express Travelの調査でも、49%のミレニアル世代がホテルのフィットネス施設の有無が宿泊先選択に大きく影響すると回答している。

米ホテル・ロッジング協会によれば、フィットネス施設が完備されたホテルの割合は2004年に63%だったが2014年には84%に上昇、またEven Hotelsのように部屋の中にフィットネス用ツールを配置しているホテルの割合は7%から13%へと増加しているという。

こうしたホテル業界のトレンドから、ミレニアル世代が宿泊先に求めるのは、ゴージャスな外観や装飾ではなく、繁華街・観光スポットへの容易なアクセスやウェルネス関連プログラムなど、体験を広げ・深められるものということを再確認できる。ミレニアル世代の消費パワーはこれからも伸びていくと見込まれているため、ホテル側の新しい取り組みもますます増えてくるはずである。どのような取り組みが導入されていくのか、今後の動向が楽しみだ。

こちらの記事は2018年02月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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細谷 元

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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