子育てTechが、経済活力のDB基盤となるのは明らかだ──事業もプロダクトも、あくまで手段。MJ藤田流ビジョナリー経営に学ぶ
Sponsoredデータプラットフォームの活用が、必要不可欠だ!と、さまざまな場面で耳にするようになった。さて、これは喜ばしいことなのだろうか。おそらく、実現がほとんどされていないため、いまだに声高らかに言われる場面ばかりが目立っている。これが日本経済停滞の原因の一つであることも、間違いないだろう。だから、あらゆる領域において、政治家を中心に「データをもっと活用するのだ」と叫ぶ。
重要なのは、叫ぶことではない。目の前にある課題に取り組みつつ、将来のデータ活用に確実につなげるアクションをとることだ。そう力強く語る藤田将氏。保育DXプロダクト『Brain(ブレイン)』を開発・提供するMJの代表取締役社長だ。
子育てTechを謳う事業は増え続けている。それらを見て、若者たちの多くは「これで少子化への対応が進む」と捉えるのかもしれない。だが若者たちに藤田氏が期待するのは、もっと広くて深い視座だ。MJが目指すビジョンは、「日本の経済成長を加速させる大きな可能性を持つ幼少期の子どもたちの、より確かな成長」だ。そのためのデータプラットフォーム構築を企図している。
今回はそんな藤田氏の、“ビジョナリー経営”とでも呼べそうな思想や構想について、深く聞いて記録した。万人受けする記事ではないかもしれない。だが一方で、「人と違うことがしたい」と考えるあなたの心には、響くものがきっとある。日本経済の今後を左右する展開が、この記事から生まれることを願い──。
- TEXT BY SHO HIGUCHI
新しい日本の経済活動のカギを握るのは、現役世代でなく、幼少期の子どもたち
社会課題が山積していると言われるこの時代。まだ子育てに関わっていない若者でも、少子化や待機児童問題、児童虐待といった話ならきっとすぐにイメージできるだろう。
藤田創業当初は、保育園や幼稚園などのウェブサイトやシステムの開発を受注していました。社会課題を認識してはいたものの、自分たちがどうすべきなのかという解は、すぐには見つかりませんでした。
保育園や幼稚園のみなさん、そして保護者のみなさんとの関わりが深くなるにつれ、もっと身近な課題に出会ったんです。それは、みなさんいずれも「情報共有に対する悩み」が強くあるということ。
例えば、保護者からは保育園の中での様子が見えにくい。一方で、保育園側からは家庭での様子が見えにくい。お互いに、伝えたくないというわけでは決してないはずなのに、です。幼稚園も同様ですね。
私の経験を活かして、「システムを導入すれば確実に解決できる」と手応えを感じました。そうして生み出したのが『Brain』です。
「現場で課題を見つけた。それは自分の知見と技術で解決できるはずのものだ。だから、事業化を決めた」。シンプルだが力強い、MJの創業ストーリーである。
藤田これからの日本を考えると、当然ながら子どもたちはみな、経済の主役を担っていく存在です。「現役世代の働き方改革」ももちろん重要ですが、もっとインパクトの大きな取り組みがこの領域にはあると思います。
子どもたちが安心して育つことができる環境を整備することは、国の少子化対策だけでなく、経済政策としても非常に意義深いものなんです。
ですが、若者の興味関心は薄いまま。悔しいですね。だから、より良いプロダクトを開発し、より良い企業組織を作る。そうすることで、日本の将来に貢献していくんです。
ところでMJが開発する『Brain』とは、幼稚園や保育園向けのプロダクト。いわゆるバーティカルSaaSと言えるビジネスモデルで、機能が細かく分かれており、各施設のニーズに合わせたカスタマイズができる。出退勤や登園・降園、連絡帳、名簿といった基本機能は完全にそろっており、現在は指導計画や給食、アンケートといった拡張を順次進めている。
競合サービスには『コドモン』や『ルクミー』があり、まさにレッドオーシャンとなっているマーケットでもある。もちろん差別化も図っているのだが、藤田氏が見据えているのはあくまで「より良い将来の実現」だ。そんなビジョナリーな経営思想に、ここから更に迫っていく。
幼少期のエビデンスが、経済復活のヒントを生むはず
子育て関連の事業領域は、デジタル化がなかなか進んでいかなかった。このことに、藤田氏は忸怩たる思いを抱える。
どういうことか?今、日本や世界の経済を支えている、働き盛りのビジネスパーソンたち。それを形作った要素は、20代の若い頃に寝食を忘れてまで働いた経験であると考える人が多いだろう。そこからもう少しさかのぼると高校や大学時代の教育や部活動の経験。さらにさかのぼれば、幼少期に何かがあったかもしれない。
幼少期と、働き盛りの時期。今、つなげて考える人はいない。人間の頭だけでは、その関連性に自信が持てないからだ。だからこそデータを的確につなげることが重要なのだ。特に、幼少期の体験は人格形成を培う上で非常に貴重なもの。その体験をデータ化する事こそ、新しい日本経済の活力に繋がると藤田氏は見ている。
藤田子育て領域にITプロダクトが浸透していくべき理由は、保護者への連絡を的確にできたり、職員の事務負担を軽減できたり、といった価値にとどまりません。将来の経済成長にまでつながる可能性があるんです。
つまり言い換えるなら、日本経済の活力の基盤となるデータベースなんです。プロダクトが使われていく中で蓄積されていくデータを、子育て環境の整備だけでなく、経済成長まで視野に入れた政策提言に活用していく構想を、私たちは描いています。
現在は、参照できるデータがまだまだ少ない。その理由は想像しやすいだろう、子育て現場のデジタル化がなかなか進んでいないためだ。「アプリは使っているが、情報連携はそれほど密になっていない」と感じる保育者や保護者は多い。
藤田多様なデータを基に、しっかりとしたエビデンスを抽出していくための基盤整備というフェーズが、今です。
「こういう活動をすることで、こうした結果が出た」という形の、ある程度一般化されたエビデンスですね。逆に、「ここを変えたら、こういう風にダメになった」というマイナスのエビデンスも必要です。とにかく足りない。
これらのデータを蓄積していって政策提言にまでつなげるためには、時間がかかります。少なくとも、今の幼少期の子どもたちが社会人として成果を出し始めるまでの20年間くらいのタイムスパンは必要ですね。
社会が急に変わることはありません。しっかりと地に足をつけて、目の前のユーザーさんたちに使ってもらえるプロダクトを用意する。その裏側では、データベースを確実に構築していく。忍耐力と集中力を持って、子育てを起点とした大きな社会課題の解決に取り組んでいるわけです。
子育てに関する社会課題だけでも、その解決はなかなか進まない。だが藤田氏が見ているのはすでに、もっと先の未来だ。時間がかかることなどわかりきっている。それでも、いや、だからこそ自分たちがやる。そんな熱い想いを秘めていることが、確かに伝わってくる。
幼児施設も減少傾向になる時代がすぐそこに。
Techが提供すべき価値は、何か?
さて、ビジョンの大きさは伝わっただろうが、あくまで目先の事業を成り立たせるのは、やはり「子育て領域における課題解決」だ。
中でも大きな課題が、やはり「保育園落ちた日本死ね!!」と題された匿名ブログで巻き起こった待機児童問題だ。全国各地の自治体や企業が、保育園や幼稚園の設置を急ピッチで進めてきた。
そんな現場の最前線に立つ藤田氏に、この課題について聞いてみた。すると驚くことに、語られたのは「一部で、潰れてしまう子育て施設が増えている」という現状だ。
藤田実は既に、一部の地域では施設数が減少傾向にあります。生き残り競争が勃発しているんですね。もちろん地域によって濃淡はあります。都市域で顕著ですね。
競争の中で生き残っていけるのは、やはりサービス品質が高い施設です。「待機児童が存在するから、質が多少悪くても成り立つ」などということは、もうまもなくなくなるでしょう。
どのように質を高めていけばいいのか、既に各施設では質を高めるため、たゆまぬ努力を重ねています。業務の簡素化と情報共有、情報の発信、データの蓄積。そして検証。このサイクルの一端を効率化できるのがITシステムです。保育の質にこだわり続ける体制作りがとても大切と考えています。
業務のフローを抜本的に改善し、効率化することで、子どもの安全や保育の質を向上させる業務に時間を割く事ができるようになります。そうすれば、より良い保育環境を作ることにつながりますから、ITシステムのニーズが高まっているんです。
藤田氏は「シェア上位のプロダクトの間で、大きな差異はもはやない」とすら語る。
藤田施設側、職員側、保護側それぞれの業務負荷軽減や、安全管理、データ蓄積のための機能を充実させています。特に現場の業務負荷軽減については、まだまだ課題が山積している状況で、機能をどんどん増やしていく必要がありますね。
とはいっても、これらはどこのプロダクトも一様に目指し、実現している内容です。例えば業界トップシェアと言われているコドモンの小池さん(代表取締役 小池義則氏)も、掲げているミッションは「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でよりよいものに」ですから、プロダクト開発の中で見据えているものは私たちとそこまで変わらないのではないでしょうか。
そうであるからには、競合だからといっていがみ合うのではなく、学び合う部分を増やし、子育て現場にとって最も良い価値提供を広げていくべきですよね。業界全体で、デジタル化やその先のDXを実現し、質をじわじわと底上げしていくことを目指したいです。
政策にも影響を。「それが当たり前」
子育て領域全体の底上げにじっくりと取り組み続けるのと同時に、スピード重視で取り組むべき課題もあると藤田氏は語る。子どもたちの安全管理面だ。
2021年7月、ある保育園の送迎バスに一人の子どもが置き去りにされ、熱中症で死亡するという事故があった。ほかにも、保育施設や幼稚園において、子どもの命にかかわる事故が時折起こってしまっている。
藤田安全管理は、どれだけやってもやりすぎることはないでしょう。悲惨な事故だけは、起こらなくなる仕組みをすぐにでも作っていく必要がある。
私たちは、子どもたち一人ひとりの状態を把握できるIoTデバイスの開発にとりかかろうと考えています。『Brain』と連携させることで、保育者や保護者が常に、子どもの命の危機に気づけるようにすることが可能になるでしょう。
一人でも多くの子どもたちに安全を届けることも、私たちシステム関連事業者の責務です。これまで“属人的な確認”に頼るしかなかった現場を、ITの力で変えていくんです。
加えて、先にも触れていたが「政策提言」の動きも熱心に進める。子育て領域は、企業だけでは解決できない課題も多い。国や地方自治体といった行政をいかにして巻き込んで動かしていくか、そんな胆力も問われる。
単に「成果を出す」=「利益を出す」ことではない。特に、MJの場合、社会課題解決を目的としているわけだからなおさらだ。
藤田ゆくゆくは、国の政策決定にも影響を与えられるような事業にしていきたいと、常々考えています。目指している世界を考えれば、当たり前というくらいですが。
申し上げた通り、そもそも子育てに関するデータはまだ全然不足しています。「こうすれば、こうなる」というエビデンスが全く足りない。そこでITを積極活用し、さまざまな統計資料の元データを作っていくことができれば、より本質的な政策にもつながっていくのではないか、と思います。
行政のみなさんも保育園や幼稚園、認定こども園と連携していますが、私たちもまた違った形で連携しています。ITのプロとしての目線と、しっかりとしたデータ蓄積。これらを活用することで、より良い子育て環境の整備と、そこから発展させた経済成長への貢献を、確実に実現させていきます。
アイデアに自信を持ち、自律的に推進する「仲間」を求める
藤田氏からは、「事業成長」に向けた意気込みがあまり聞かれない。それよりも、子育て現場への確かな支援や、政策提言といったミッションクリティカルな話題がかなり多い。俯瞰的な視座で物事を見ているのだと言えるだろうか。
とはいえ、存在する課題を的確に捉えているのは確かであり、事業成長を続けていると、やや控えめに胸を張る。明確にPMFした折には、エクイティファイナンスを実施しての急速成長を目指すことも視野に入れているし、上場だって当然のように目指している。
子育て領域のスタートアップでは、まだ「明らかなトップランナー」と呼べるほどの存在が出てきていないわけで、MJは非常にやりがいのある環境で働ける企業であると言えそうだ。
藤田あくまで子育て現場の課題を起点として、最適なスピード感で、顧客一人ひとりにしっかりと満足してもらえるだけの価値提供をするのが目先の目標です。
急速な拡大だけが正解ではないでしょう。その都度、確かにそこにある課題を解決しながら、着実に山を登っていくイメージですかね。そもそもITって、そこまでお金がかかる産業でもないじゃないですか。
ただ、天才級のITエンジニアを採用するためなら、資金調達をしてみても面白そうですね(笑)。
「天才級がほしい」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれない。しかし今、MJは事業責任を任せられるような人材を探し、少数精鋭組織を構築しようとしているフェーズだ。
将来の急速成長の基盤をより確実に作っていくため、自律的に事業やプロダクトを推進できるメンバーを集めたいと力を込める。
藤田進め方は自由でいいんです。「会社を使い倒したい」くらいの心構えがあるといいですね。「〇〇をしたい」というアイデアを持っていて、私と「仲間」とでも呼べるような感覚になれる若者と働きたいです。
そういった姿勢さえあれば、ぶっちゃけ学歴とかスキルも関係ありません。スキルがなくてもやりたいことがあったり、自律的に動けるのであれば、後でキャッチアップしていけるので。まずはマインドと、アイデアが大事ですよね。
私はよく、仕事とは関わりのないテーマで社員のみんなと議論をしています。特に宇宙の話が好きで、そこから派生して数学の話を延々としていることもあります。
ニュースについてもよく話しますね。世の中でどういったことが起こっていて、その結果、どこにお金が流れていきそうなのか、議論しています。例えば最近ですと、岸田政権の政策の方向性についてよく話していますね。保育士の賃上げが2022年に期間限定で施行されることになりました。ただ、預かっている子どもの数が増えないことには、行政からの補助金が増えないので、実質的には賃上げを実施できない施設も存在してくる形なんです。
そうなると、保育士を減らす施設が出てくるかもしれない。それを見越して、人材サービスが何か動きを見せるかもしれない。その時、うちの会社では何ができるか。そんなイメージが湧いていくといいですよね。プロダクトだけを考えるのではなく、マーケットを考えることが大切です。
学歴やスキルなどではなく、自律性やアイデア、マインドを重視するのが藤田氏だ。社会課題解決のためのアイデアで力試しをしてみたければ、非常に面白い環境だろう。
藤田創業期から一緒にシステム開発をしてくれているエンジニアの一人は、現在海外に在住しており、今でも海外からリモートワークで開発をしてくれています。働く環境は自由なので、今後は世界中からエンジニアが参画してくるようなことも想定しています。なので、日本以外の国や、地方から弊社に参画したい方ももちろんウェルカムです。
これからは海外で開発する人材が必要ですよね。オフショア開発などだけではなく、海外エンジニアとのより密接な連携も考えていきたい。
働き方は自由、生き方も自由。そんなところに縛りをつける必要は一切ないと思っています。「成果」に向かって一直線に、一緒に進んでいきたい。考えているのはそれだけですね。
最後に改めて、藤田氏が冒頭で語った“悔しさ”について振り返りたい。子育て領域の仕事は、日本経済を抜本的に変えていくポテンシャルがあるのに、若者たちはほとんど興味を持たない。確かにそうだ、と感じる読者のほうが、きっと多いだろう。
MJが大きく羽ばたいていくようになった頃には、若者たちも気づくだろう。「子育ての仕事の尊さ」に。それが、藤田氏のビジョナリー経営なのだ。この未来に先駆けて、あなたの新たな挑戦を検討すべきタイミングが、今かもしれない。
MJについて詳細を知りたい方はこちらから
こちらの記事は2022年06月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
樋口 正
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