“アイデア”は、いかにして「事業プラン」に昇華されるのか?
ユナイテッドの事業家創造プログラム「U-PRODUCE」の核心に迫る
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「最強の事業プロデューサー」育成を目指し、ユナイテッドが事業家を志す若者に“修羅場”を提供する「U-PRODUCE」。2019年に実施された第2回プログラムでは、同グループ内の「役員クラスにいくらでも壁打ちできる」環境も提供された。
FastGrowは、募集スタート時から候補者の選抜過程まで、この事業創造プログラムの様子を紹介してきた。そして、2019年10月に開催されたイベント「シリアルアントレプレナーの思考を紐解く。事業家3名に学ぶ、『急成長する事業アイデア』の見つけ方」と共に実施されたピッチで、第2回U-PRODUCEは幕を下ろした。
本記事ではピッチをダイジェストで振り返ると共に、U-PRODUCE二期生・守友暁寛氏、関秀真氏、そしてU-PRODUCEの起案者・プロデューサーである関根佑介氏に実施した後日インタビューをお届けする。
果たして、ユナイテッドの肝いりプロジェクトは、新たな「事業家」を世に送り出すことができたのか?
- TEXT BY MASAKI KOIKE
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
2ヶ月間の“修羅場”で、若き事業家が向き合った「想い」とは?
ピッチイベントには、ユナイテッドの役員陣に加え、元メルペイ取締役であり、現在はカンカク代表取締役の松本龍祐氏、クオンCEO・水野和寛氏が集結。彼らの前で、約2ヶ月かけてビジネスアイデアを磨いてきた守友氏、関氏によるピッチが行われた。
守友氏は、自身が今まで打ち込んできた「研究」領域の課題に取り組んだ。「研究室と企業が、もっと協同し、社会変革を起こしていける世界にしたい」という想いのもと、事業アイデアを考案。「学問領域と一般社会の乖離」という、U-PRODUCE参加前から感じていた課題をもとに、磨き上げた事業プランをピッチした。
関氏もまた、U-PRODUCE参加前から取り組みたいと考えていた「旅行」領域においての事業プランをピッチ。根底にあったのは、関氏自身が大好きな「旅行」を、もっと多くの人にワクワクできるものにしたいという想いだ。旅行における「不」を解消し、“その人だけの旅行体験”をどのように創出できるか、事業プランに落とし込んだ。
審査員からのフィードバック、会場に集まった事業家志望の学生からの質疑応答を経て、ユナイテッド役員による審査が行われた–––守友氏の事業案は通過し、関氏の事業案は通過とならなかった。
守友氏の事業案が通過した要因は、「研究室における課題が明確」で、「成長事業になる見込みがある」という点が評価されたからだ。今後は、精緻な事業性評価を行い、数ヶ月間で事業化の可否がジャッジされる。
一方、関氏の事業案が通過しなかった理由は、既存サービスとの差別化不足だ。「競合と比較したときに、あえてそのサービスを使うメリットが薄い。どのように勝ち筋を描くのかが見えづらい」と評価された。
事業責任者の“葛藤”を経験できるのがU-PRODUCE
ピッチイベントの興奮冷めやらぬ2019年10月某日、守友氏と関氏、そして関根氏に、プログラムを振り返ってもらった。
守友氏は、研究領域への高い熱量に突き動かされ、課題解決に必要な知識や、事業づくりの経験を得る目的でプログラムに参加。
「そもそも事業計画書とは?」「どうやって課題を深掘りするのか?」といった基礎的な概念から、ビジネスモデル構築、ペルソナ設計、カスタマージャーニーマップやスライド作成やプレゼンテーションの方法、そしてKPIへの落とし込み、P/L策定の方法まで、事業プランをつくるために必要なあらゆるナレッジを徹底的に叩き込まれたという。実践とフィードバックを繰り返し、それらを身につけていくなかで、「熱量以上のものを求められている」と痛感した。
守友U-PRODUCEに参加する前は事業計画書の作り方はおろか、そもそも売上や利益の概念も理解しきれていない状態でのスタートだったので、不安しかありませんでした。座学は1週間に1時間ある程度で、あとはとにかくアウトプットを出して、フィードバックをもらい続ける。軽くインターネットでリサーチした結果をもとに市場規模を算出したり価格設定をしたりしていたら、「その価格設定って想定顧客にヒアリングしたの?」とフィードバックをもらいました。そうして研究領域でビジネスを行っている上場企業の役員へのヒアリング機会を持たせていただき、先行きが見えないなかで「本質は何?」「誰がそういってるの?」と問われ続けました。
いま振り返ると、事業づくりの理想的なプロセスに沿うようにフィードバックしてくれていたのだと思います。僕も事業計画を作ること自体がはじめてでしたから、いきなり売上シミュレーションをしてしまったり、イメージで価格設定したりしていたんですよね。でも、それではやはりうまくいきませんでした。課題を明確化したら、ビジネスモデルを設計。続いて、カスタマージャーニーマップやペルソナを作成します。その後にはじめて、これまで得られた確からしい仮説をもとにKPIやPLを設計していく。そのようなプロセスに則り、もらったフィードバックを全力で打ち返し続けていると、だんだんと事業案が形になっていきました。
「実践的な事業づくりのノウハウを学びたい」とU-PRODUCEに参加したが、惜しくも通過できなかった関氏は、「求められている熱量が想像以上に高かった」と話す。
関僕がもらっていたフィードバックと守友さんのものとは、全く違いますね(笑)。参加前は、旅行ビジネスを事業ドメインに決めていましたが、リサーチの過程で懸念点が出てきたり、課題が深堀りしきれなかったりすると、他のジャンルに逃げようとして考えがブレてしまいました。そんななかで関根さんは、「本当にやりたいことは何なのか?」と自身で事業アイデアを決めることに伴走してくれました。
両氏の葛藤も、関根氏からすれば「想定通り」だったという。領域選定、解決すべき課題の策定、解決方法の追求…ことあるごとに壁にぶつかり、悩み、迷走しながら事業プランをつくり上げていくなかで、「本当に自分がやりたいことは?」と問い続けて軸を作り上げる。
「ユナイテッドの役員クラスでさえ、事業をつくるときは同じ壁にぶち当たる」と関根氏は語る。ただし、必ず2ヶ月間でアウトプットは出さなければいけない。U-PRODUCEではこの制約が適度なプレッシャーを生み出していると話す。
関根仮に友達同士で事業を作ろうとすると、期限も、外部からのプレッシャーもなく、いつでもやめられる状況で柔らかく進んでしまう。けれどもU-PRODUCEでは、2ヶ月で事業プランという形にしなければいけません。失敗してもリスクはないけれど、逃げられない。ちょうど良い塩梅に「事業家として最後までしっかりと戦い抜く経験」が積める環境を提供できていると思います。
U-PRODUCEならではの魅力は「人それぞれ異なる毎日のフィードバック」
U-PRODUCEならではの魅力を尋ねると、関氏はメンターからの密度の濃いフィードバックが受けられる点を挙げた。もちろんU-PRODUCEに参加せずとも、SNSなどで投資家にコンタクトを取り、アドバイスをもらうことは可能だ。しかし、自身の志向性を理解したうえで、毎日フィードバックをもらえる環境は他では実現しえないという。
守友氏も、環境の良さに同意する。上場企業のオフィススペースを使えることはもちろん、大学生では簡単に捻出できないリサーチ費用など、必要とあらばユナイテッドがサポートしてくれる。そのため、課題の深掘りや事業プランの検討に集中できる。事業構想を練り上げる際も、ユナイテッドの役員陣との壁打ちに加え、その領域の第一人者にインタビューする機会も、役員陣の人的ネットワークを通じて実現できる。
積極的に環境を活かそうとする両氏のアクティブさを、関根氏も「こちらが用意していたものはフルで使ってくれた。かなり積極的でしたね」と振り返る。
そして何より、一流の経営者たちの前で事業プランをピッチできる機会は貴重だったはずだ。審査員からの容赦ないフィードバックも得難い経験となった。
関根「僕だったら使いません」とストレートに言ってくるピッチ観覧者もいましたよね(笑)。人前でボコボコにされる機会はなかなかありませんし、人に説明することで、はじめて気が付くことも多いものです。
プレゼンテーションの面では、関くんには「解決したい課題がシンプルだからこそ、楽しさやワクワク感を表現しよう」、守友くんには「ニッチな市場だから、マーケットについて丁寧に説明した上で、サービスの内容もしっかり伝えよう」とアドバイスしていました。関係者にわかりやすく事業を説明するためのそうした考え方は、事業づくりだけをしていては身につきません。
ピッチの機会も得られたことのメリットは、守友氏と関氏も感じているようだ。
守友共同研究の世界は、まったく触れたことがない人も少なくないと思います。だけど、プレゼンを通して、途中で歓声を上げてくれたり、一緒にやりたいと思ってくれた人から意見をもらえたりしたんです。自分のやりたいことに共感してくれる人に出会えたのは、シンプルに嬉しかったですね。
関大勢の前でアウトプットすることで、「ここは詰めが甘いな」と気づけましたし、質問時間がたっぷりあったので、色んな方の生の声が聞けました。その質問に答えることで、事業プランをさらに深堀りすることもできました。よくあるピッチイベントだったら「発表して終わり」だと思うので、なかなか得られない経験ですよね。
「アイデア」は“課題の質”を高めれば「事業プラン」に変わる
では、二人はプログラムを通じどう変わったのか。守友氏はアイデアの磨き込みについて、自身の成長を感じている。
以前よりも意識するようになったのは、アイデアを磨いていく過程で、外部から得る情報の受け取り方だ。たとえば、U-PRODUCEを始めた直後は、研究室での勤務経験がある人からアドバイスを受けた際、他者から得た情報を正だと無思考に信じ込んでいた。それが今では、「あくまでもこの人の意見の一つ」と判断できるようになったという。
まずは得られた情報の「背景」について考え、どの程度の知識や試行錯誤に基づいてなされたものかを検討する。そして、参考にできる部分を主体的に取り入れ、自身のアイデアを磨いていくのだ。確固たる「軸」を持ってヒアリングすることで、自身にフィットする情報なのかどうかを、取捨選択できるようになる。
守友人やメディアが発信する情報の背景について考えることで、他の人の意見をむやみに信じてしまうことなく、自分のやりたいことを突き通せるようになりました。
関氏もこの守友氏の指摘に「課題を見つけたときに、『なぜ解決されていないのか』といったプロセスまで瞬時に思いを巡らせられるようになった」と同意していた。また、「アイデアを適切な課題へ落とし込み、解決方法をビジネスモデルへと昇華させるプロセスを理解できるようになった」とも語る。
関アイデアが課題に対して最適な解決手段となっているか、そもそも課題の質は十分に高まっているか。そして、そのアイデアはいかにして実装可能なのか。何度となくアイデアを出し、事業化の可否を検討する経験を繰り返したことで、思いつきの「アイデア」をビジネスモデルや事業プランとして磨き込めるようになりましたし、どのようなものが筋の良いアイデアなのかを判別できるようにもなりました。
U-PRODUCEはスタートに過ぎない──より多くの「事業家」を生み出すために
結果発表を受けて、守友氏は事業化のために、事業計画を磨きこんでいくと意気込む。現在はリリースに向け、ユナイテッド役員陣と一緒に事業性の評価を手がけており、「育成対象ではなくいち“事業家”として、より高い水準のアウトプットを求められるようになった」。
一方の関氏は「事業が通らなかったこと自体よりも、期間内にサービスを磨き込みきれなかったのが悔しかった」と述べる。今後は、「自身で事業アイデアを形にできるように、エンジニアリングスキルを身に付けていきたい」と話す。
最後に、来期のU-PRODUCE参加を検討している後輩たちへのメッセージをもらった。
守友この2ヶ月は、ぐっと伸びるのを実感する「成長期」でした。熱量があり、学生の範疇にとどまらずに解決したい課題が明確な人にとって、参加しない理由は絶対にありませんよ。将来起業したい、事業を作りたいとは思っていなくとも、解きたい課題を胸に秘めているのであれば、まずは応募してみることをお勧めします。
関どんなに基礎的な内容でも、関根さんに毎日相談に乗ってもらえて、事業を磨き込める、貴重すぎる2ヶ月でした。だからこそ、自分で事業をつくり上げたいと強く思っている人にはU-PRODUCEに参加してみてほしいと思います。参加前の僕は、「事業なんて簡単につくれる」という自信家の学生でしたが、現役の事業家の方々と接し、実際に事業をつくるプロセスを経験することで、「何もわかってなかったんだな」と学びました。
U-PRODUCEの教え子たちの言葉を受け、関根氏は改めて、さらなる若手人材へ期待を寄せた。
関根世の中に対して、価値を生み出せる人間に育てていきたい。今後、誰でもできる作業は自動化されていくなかで、「パーツ」人材の需要は減っていくはずです。そこで求められる人材の一つとしては「事業をつくり出し、物事に変化を与えられる人間」です。どうせなら、そのような人材になったほうが楽しいと僕は考えています。
だからU-PRODUCEでは、「事業はアイデアレベルでは上手く行かないこと」「最初から全員に理解される新規事業なんて存在しないこと」「自分の軸をしっかりと持ち熱量を高く維持すること」などを文字で理解するのではなく経験していくことで、いかなる時も思考を絶やさない「事業家」を増やしたいんです。
「ビジコンで事業家は増やせない」
第2回U-PRODUCEの募集がスタートする際のインタビューで、関根氏が強調した言葉だ。守友氏と関氏が、プログラム終了後も「今後」を見据えていたことからも分かるように、彼らにとってU-PRODUCEは、参加が目的の「ビジコン」ではなかったようだ。
来年以降も、U-PRODUCEを通じて多くの「事業家」が生み出されることを期待したい。
こちらの記事は2019年12月06日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
小池 真幸
編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。
写真
藤田 慎一郎
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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