特別連載UEP:事業が連続的に生まれ成長できる仕組み

成功確率より、“想い”に向き合う──ユナイテッドがU-PRODUCEで若手事業家に伝えていること

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インタビュイー
山下 優司

関西学院大学経済学部卒業後、グッドウィル・グループ株式会社入社。法人営業を経験し、2005年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社入社。2006年、株式会社インタースパイアへ出向後、2007年同社へ転籍。2009年、株式会社スパイア執行役員に就任。2011年同社取締役就任。モバイル・スマ―トフォン広告を経て、トレーディングデスク事業に従事。 2012年ユナイテッド株式会社執行役員広告カンパニー副カンパニー長に就任。2014年執行役員メディアコンテンツカンパニー副カンパニー長就任、2015年執行役員ネイティブソーシャルゲームカンパニー長就任を経て、2016年に取締役兼執行役員ゲーム事業本部長に就任(現任)。

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若手人材に、事業プロデューサーとして成長するための「修羅場」を与える──ユナイテッドがこう豪語する新規事業創出プログラム「U-PRODUCE」の第2期が、2019年8月にスタートした。

以前インタビューした選抜者3名は現在、自身のアイデアを事業計画書に落とし込んでいる真っ最中だ。10月に予定されている事業発表会を通過すると、プログラムは「Phase.2」に移行。事業化に向けテストリリースがおこなわれる。

選抜者3名の成長を追いかけていく本連載。今回は、選抜者が事業アイデアをぶつけ、直接フィードバックを受ける「壁打ち」を担当した、取締役の山下優司氏に話を伺った。同氏はこれまで、広告代理業やメディア、アプリ、ゲーム事業をゼロから立ち上げた経歴を持つ。インターネットビジネスの黎明期から事業立ち上げを経験してきたプロフェッショナルだ。

第1期に引き続き、アイデアを受け止める「壁」を担った山下氏は、第2回目の手応えをどのように感じているのか。山下氏が考える「優秀な事業家」の定義をつまびらかにするとともに、事業を生み出すために「必要な素養」に迫っていく。

  • TEXT BY MONTARO HANZO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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役員への壁打ちの役割は「不要な失敗を避けること」

U-PRODUCEスタートから1ヶ月後、選抜者は温めていた事業アイデアや関心のあるテーマをもとにした事業計画をユナイテッド役員陣にぶつける、通称「壁打ち」を実施する。今回担当したのは、取締役の山下氏。そのフィードバックをもとに次なるアクションを定め、事業計画に磨きをかけるのだ。

ユナイテッド株式会社 取締役 山下優司氏

山下壁打ちの目的は、選抜者の思考の整理です。若手にありがちなのが、本人は整理した事業アイデアを披露しているつもりでも、そうはなっていないこと。たとえば、知った気になって業界の課題を決めつけてしまう、もしくは、複数の課題を無理やり繋げてひとつのストーリーにした結果、本質を見失ってしまうことがあります。事業家としての経験をもとに、事業を失敗させないために足りない部分に気づけるよう指摘するのが僕の役割ですね。

また選抜者にとっては、役員から直接フィードバックを受けるわけですから、いきなり「修羅場」に投げ込まれるようなもの。緊張感のあるプレゼンを重ねることで自分の言葉に責任を持ち、堂々と語れるようになっていくことも壁打ちの効果だと思います。

選抜者3人の事業アイデアについては、非常に筋がいいなと感じました。市場の大きさやトレンドとなっている事業領域を起点とするのではなく、一人ひとりが経験等のバックボーンに基づいた、解決したい課題から生み出した事業アイデアを出してくれたからです。前提として、事業の成功を最終的に決めるのは「当事者としての強い意志」にあると私は考えています。

一方、アイデアが安易で、マーケットやユーザーニーズを客観視できていない印象も受けましたね。本人が課題だと感じていても、客観的に見るとペインを感じているユーザーはごく少数だったりすることもあります。事業を考えるからにはマーケットインの発想を持ち、徹底的なリサーチはもちろんのこと、ときには現場に足を運んで調査すべきだとアドバイスしています。

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サービスのクローズを決断できるのは、「事業家」たる証

実は山下氏は、プログラム発案者である関根佑介氏から話を聞いた当初、「U-PRODUCEに反対しかけていた」という。インターネット黎明期から手探りで数多くのビジネスを立ち上げてきた山下氏には、「事業家を目指すなら、U-PRODUCEのような育成機会を与えられなくとも自ら事業案を考え、やらせてくれと手を挙げ続けなければならない」という強い想いがあったからだ。

しかし同時に、「新規事業創出そのものが事業の柱」との信条を持つユナイテッドにおいて、若手事業家が社内からもっと生まれていくべきだ、という危機感も抱いていた。そうして、山下氏も育成機会を企業側から提供する必要性も感じるようになった。

山下インターネットビジネスの市場が成熟した結果、たとえベンチャー企業だといっても、入社数年の若手がいきなり事業責任者として活躍できる機会が少なくなっていますよね。

そんな状況のなかで、優秀な人材が自発的に手を挙げてくるのをただ待っているだけでは、若手事業家はどんどん生まれにくくなります。ですから、積極的に企業側から事業家のステージに挑戦できる機会を与えて、「潜在的な事業家人材」を掘り起こすこと。

これこそが、新規事業創出の強化を狙うユナイテッドの中長期戦略を達成するためにも、必要だと考えるようになっていったんです。

第1期のU-PRODUCEでは、アドテク領域で営業を務めていた一社員を「事業家人材」に育成すべく、Phase.2に移行した佐藤優歩氏の壁打ちを担当。起案したオークションサービス『FLAPJACK』の立ち上げに伴走した。

参考記事:「ビジコンで社内事業家は増やせない」日本に若手事業プロデューサーを増やすべく誕生した、ユナイテッド役員総出の育成プログラムとは

残念ながら、『FLAPJACK』はテストローンチを終え、佐藤氏がクローズを決断。リリースには至らなかったが、山下氏はこの決断に対し「事業家としての意思決定ができた姿を見て、U-PRODUCEの価値を感じた」と肯定的に見る。

山下最初は企画書が整理されていなかったり、言っていることに自信がなかったりと、不安要素が大きかったんですよ。しかし、プログラムを経るなかでマインドセットの変化が見えるようになっていきました。

経験の浅い若手社員が、3ヶ月間という期間を慣れない新規事業開発だけに打ち込むことのプレッシャーに打ち勝ち、同期との競争を勝ち抜くなかで、自分なりに「修羅場」を乗り越えていったのだと思います。最終的には、事業家としてもっとも重要な「意思決定」ができるようになっていました。

「自分で決めなければならない」プレッシャーに晒され続けていたからこそ、事業家として責任を持って行動できるようになっていたんです。U-PRODUCEを通じた佐藤の成長を見ながら、アイデアをカタチにしながらもがく経験の大切さを痛感しましたね。

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優秀な事業家は、欠点を指摘されてもを解決案を考え抜く

そんな山下氏がU-PRODUCEを通して育成しようとする「優秀な事業家」とはどのような人物像なのか。その資質として、山下氏は事業を持続させる基盤となる「当事者意識」と、常にビジョンからブレずに行動できる「思考力」が必要だと語る。

山下若手人材の事業創出を支援するうえで、「成功確率」はあまり意味のない指標だと感じています。熱量がなく、テクニックだけ身につけたところで成功へは導けない。

自分が解決したい、新しいものを生み出したいという強い想いがあり、目標に向かって試行錯誤する上で出会う障壁を楽しめる感覚を持つ必要がありますからね。

個人が本当に成し遂げたいこととは何か。山下氏は「想い」の強さを問う意味でも、壁打ちでは選抜者の事業アイデアを「あえて否定してみる」そうだ。

山下事業アイデアの欠点を指摘されたとしても、本当に熱量があるなら、必ず解決案を考え抜いて提示してきます。少し青臭くて恥ずかしいくらいの「欲望」と向き合い、事業を立ち上げたいと強く感じる「衝動」を見つけるのが、事業家としての第一歩です。

事業に持続力を持たせられるか否かは、最初に抱いた強い「想い」をいかに持ち続けられるかにかかっています。例えば他社プロダクトを見ていても、初期からコンセプトがブレていないものほど、大きな成長を続けていますよね。

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市場規模やスケーラビリティは二の次だ。自分の「想い」をぶつけてほしい

FastGrowでも発信してきた通り、事業家育成プログラムであるU-PRODUCE、新規事業立案制度であるU-CHALLENGEをはじめ、新卒メンバーを中心とした若手人材に人もお金も投資を続けるユナイテッド。なぜそこまで、投資を惜しまないのか──。

それは、強い「想い」は若手のうちにしか持てないという信念があってこそだ。社員の一人ひとりにも、成功確率やスケーラビリティよりも、「想い」の強さを求めるカルチャーが根付いているという。

山下ユナイテッドの役員陣は、みな事業立ち上げ経験者。いわば全役員が事業家なんです。かつ、投資事業にも注力しているので、若手のアイデアやピュアな「想い」に触れることが好きなひとが多いんですよね。

僕もその一人で、若手の新鮮な価値観や視点は刺激的ですし、壁打ちの経験が、自分自身の成長にもつながっている。なにより、熱量の高い人と触れ合うことで、士気が上がる感覚があります(笑)。

山下氏は、ここまで語ってきたユナイテッド流の新規事業の考え方を「必然性」という言葉で表現した。独自の原体験に基づいた強い「想い」を持ち、その想いへの共感を集められれば、事業化に向けて動き出す土壌がユナイテッドにはあるということだ。

山下例えば、普段トレーニングをせず、運動に全く興味もない人間から「オンラインフィットネス事業をやりたい」と言われたところで、いくら戦略がしっかりしていても、熱量の乗った事業が立ち上がるとは思えない。

そういうものではなくて、当事者の強い原体験に基づいた覚悟が宿っており、「この人にしか任せられない」必然性を感じれば、どんなに粗い事業企画でも聞く耳を持つのが、ユナイテッドの事業創出カルチャーですね。

市場規模や先行事例もそこまで気にしません。たとえニッチな領域であっても、そのなかにいるユーザーにとって真に必要なサービスを生み出すことができれば、高いシェアが実現でき、ビジネスとして成立させることが可能だからです。

そもそも、インターネットの世界で成功するビジネスモデルが生まれたとしても、5年後にそのモデルが生き残っているかどうかはだれにもわかりません。ユナイテッドはかつて、テクノロジーの急速な進化により、市場の形勢を一気に変える「ゲームチェンジャー」の登場で、苦汁を嘗めたこともありました。

だからこそ、領域を限定せず、常に新規事業を作り続けることこそがユナイテッドの生存戦略であると、誰もが実感しているんです。

成功確率や市場規模は二の次。とにかく自分の強い「想い」と向き合え──。ユナイテッドが若手人材に投げかけるメッセージは、シンプルで明快だ。その分、同社でチャレンジする若手人材には、自分の「想い」といかに深く向き合うことができるのかが試されるのであろう。

いま、選抜者の3名は自分の「想い」と向き合い、10月8日に開催される事業発表会に向け、事業計画を策定中だ。ここからどのような事業が生まれ、実現に向けて動いていくのか。FastGrowではU-PRODUCEの動きを引き続き追いかけていく。

こちらの記事は2019年09月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。

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藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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