マーケティングの本分は、事業利益の最大化──「Design × Marketing」の事業開発集団・セブンデックス中村氏が挑む、“歪な国内マーケ事情”の変革
Sponsoredマーケティングとは、販促のような「個別最適」の施策ではない。
マーケティングとは、バリューチェーンの「全体最適」、すなわち事業成長に資する一連の取り組みのことである。
FastGrow読者であれば、耳にタコができるほど聞き慣れた言説だろう。
しかし、未だ多くの日本企業が誤ったマーケティング思考を持ち、結果、事業に伸び悩んでいる。それはなぜか?マーケティング領域で急成長している企業・セブンデックス代表の中村氏への取材を通じて、「企業側」「支援側」両面の課題が見えてきた。
今回紹介するセブンデックスは、この歪な構造に気づき、日本企業に「販促だけではない、顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化するマーケティング」を根付かせるべく奮闘している。日本において、「個人」単位で見ればこうしたマーケティング思考や取り組みを啓蒙するマーケターは複数名存在するものの、「組織」単位で取り組んでいる企業はセブンデックスをおいて他にそう多くない。
「なぜ、日本のマーケティングの仕組みは変わらないのか?」「どうすれば、日本企業は変わるのか?」
本記事では、セブンデックスと共にこの問いを考えていく。マーケティングを強化し、事業を成長させたいと考えている経営者。または、マーケティング支援会社、コンサルティングファーム、広告代理店に所属しつつも、今ひとつ顧客の事業成長にコミットできていないと感じる読者にこそ、刮目してもらいたいテーマである。
- TEXT BY HANAKO IKEDA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
日本企業のマーケティングが変わらない理由
(1)経営層がマーケティングの本質価値に気づいていない
そもそも、セブンデックスが日本企業に、本来の意味でのマーケティング、すなわち「販促だけではない、顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化するマーケティング」を根付かせようとしているのはなぜか?
中村シンプルに、日本経済の発展に繋がると信じているからです。少なくない日本企業がいまだ抱きがちな「マーケティングとは、販促である」といった認識が変化し、「マーケティングとは、顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化する」ことだと理解・実践できるようになれば、日本経済の再興へ少なからず寄与できるのではないかと考えているんです。
中村私自身もそうですが、多くの日本人はスマホはApple、暇な時間はInstagramとYouTubeとNetflixを眺めて、Amazonで買い物をする…といった状態になっているかと思います。これは、日本人の可処分所得の多くが海外の商品やサービスに流出しているとも言えてしまう。もちろん、そのすべてが悪ではありませんが、この状況を少しでも変えられたら…という気持ちがある。そこへ向けた一助として、マーケティングの側面から取り組んでいるんです。
確かに、我々が日常で用いるデバイスやアプリケーションはその殆どがグローバルな外資系企業のサービスになっている。ではなぜ、外資系企業と日本企業の間にここまで差がついたのだろうか。中村氏は「あくまで自分の見えている景色ではあるが」と前置きしつつ、「市場環境の変化と、企業のものづくり・売り方の変化が合致して変わり続けてこなかったからではないか」と指摘する。
確かに、多くの日本企業は高度経済成長期に「つくれば売れる」時代を経験し、事業を拡大してきた歴史がある。だが、今やモノやサービスは飽和し、ニーズも多様化。「つくる」ことはもとより、「売る」ことの難易度は格段に上がっている。
なかでも、BtoBにおいては、デジタル化が進んでいなかった1990年代後半までは、商品情報を知る機会は「営業の現場」が中心だった。したがって、営業活動を通じて認知してもらえれば売れる、といった構造が、日本のビジネスシーンのスタンダードになってきたのではないだろうか。
中村インターネットが普及した今は、スマホで何でもすぐに調べられる時代です。つまり、「知ってもらう」こと以外にも、売るために取り組まなければいけないことは多々ある。相対的に「知ってもらう」ことの価値は小さくなってきているとも言えるのではないでしょうか?その代わりに、「顧客のニーズを捉え、求められる商品を開発し、顧客に選ばれるブランドとして確立していく」ことの方が重要視されるようになっているんです。
だからこそ、セブンデックスはその営みに注力しているんです。顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化すること。これこそがマーケティングであると捉えています。
日本企業のマーケティングが変わらない理由
(2)個別最適のソリューションしか提供できない、マーケティング支援会社のジレンマ
では、こうした事業利益を最大化させるマーケティングをどのように日本企業に浸透させていくのか?その道筋を描く上で、もう一つ問題が顕在化してくる。それは、「企業側」ではなく、セブンデックスのような「支援側」の立ち位置において生じている問題だ。
マーケティング会社、デザイン会社、コンサルティングファーム、広告代理店…事業会社を支援している側には、それぞれ「得意とするソリューション」がある。そのソリューションへの最適化が進むと、顧客のバリューチェーン全体への意識やコミットが弱まり、局所的な「個別最適」に止まってしまうのだ。
中村「マーケティング支援に取り組む」と言えど、例えば広告代理店であれば「広告を使って支援をする」ことが提案の主軸となります。つまり、「テレビCMを打つ」「大手新聞紙に広告を掲載する」などといった手段になりがちです。
また、Webコンサルであれば、顧客のWeb上での事業展開に対する業務改善やツール導入に帰着することが多いでしょう。もちろん、こうした手段が顧客の事業課題全体に最適なことも多々あると思いますが、局所的な解決策となってしまうこともある。
ですが、こうした現象は避けられない部分もあります。支援会社側としても、「広告枠を売る」ことや、「業務上のボトルネックを解消して、経営課題を解決する」ことが企業活動の軸足で、顧客のバリューチェーンを全体最適することは事業上のミッションではありませんから。
もちろん、企業側でそれを理解し「部分最適を全体最適する人物」がいればそういったソリューションも存分に活かせるだろう。だが、企業側の現状は前述の通り。ゆえに、こうした構造を理解した上で「マーケティングの力で日本企業にイノベーションを起こす」と掲げるセブンデックスの立ち位置が生きてくるのだ。
中村繰り返しますが、セブンデックスが定義するマーケティングとは、「顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化する」ことです。既存のマーケティング支援会社(マーケティング会社、コンサルティングファーム、広告代理店など)との対比で言うと、セブンデックスの提案には固有の色がありません。
なぜなら、特定のソリューションやツールを売っているのではなく、上述した「セブンデックスが定義するマーケティング」という「思想」や「仕組み」を提供しているからです。だからこそ、顧客の状況に応じてゼロベースで事業をつくり、顧客のバリューチェーンを全体最適するソリューション提供が可能になるんです。
もちろん、セブンデックスよりも先に、「個人」として「マーケティングとはただの販促ではなく、顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化する」ことと捉えて活動している優秀なマーケターは世の中に多くいらっしゃると思います。
例えば、書籍や講演でも数多くそのような話を発信されている“刀”の森岡 毅さんや、“Strategy Partners”の西口 一希さんなど。しかし、セブンデックスのように「組織」として挑んでいるのは、比較的、少ないのかもしれません。
セブンデックスの今を形づくるきっかけとなった、「CAC 対 LTV」論争
マーケティングを通じてイノベーションを起こし、日本企業の変革に挑む中村氏だが、実は最初からマーケティングを軸に活動していた訳ではない。新卒ではマイナビに入社し、求人広告の営業からキャリアをスタート。24歳で最年少マネージャーを務めた後、友人と起業し、メディアやSNSの立ち上げを経験。その後2018年に再び起業したのがセブンデックスだ。
中村色々な失敗や経験を重ねて、最終的にたどり着いたのがマーケティングだったという整理が正しいです。セブンデックスは、2018年の創業当時はUI / UXのデザイン会社として始めたのですが、最初の顧客として支援した企業の案件において、「CAC 対 LTV」という対立構造にぶち当たったことが、今の事業に至る転機になりました。
CAC:Customer Acquisition Cost,顧客獲得コスト
LTV:Life Time Value,顧客生涯価値
セブンデックスを創業して初の顧客に向きあう中、顧客組織の中には目標としてCACを追っている人と、LTVを追っている人がそれぞれ別に存在しており、両者は連携どころか対立する関係となっていたのだ。
中村全てに当てはまる話ではないですが、短期的にCACを改善するデザインの中には、LTVにポジティブな影響を及ぼさないものも存在します。
なぜなら、新規顧客の獲得効率に最適化されたデザインが、長期的な顧客との関係構築に最適化されているとは限らないからです。すると、顧客の中ではCACとLTV、どちらを優先させるべきかで組織内対立が起こってしまっていたんです。
しかし、本来はCACとLTVは両方を目標として同時に追って、総和を高めていくべきもの。そのためにUI / UXがあり、最終的に顧客の事業の営業利益を最大化するためのプロセス全体をマーケティングと呼ぶと考えています。なので、顧客にはまずその前提を説明し、理解してもらう必要があることに気づきました。それが今のセブンデックスの事業に至るきっかけになっているんです。
大組織に属したことがある人であれば共感できるかもしれないが、複数のチームに分かれて一つの事業に向かう場合、チームごとのKPIを達成することが最優先になってしまいがち。しかし、それこそ事業成長というゴールに対して個別最適にこだわる形となってしまい、セブンデックスが考える、事業成長に資するマーケティング活動とは程遠いものになってしまう。
個別最適ではなく、事業全体で「ユーザーに価値を提供する」というひとつのゴールを追うことができなければ、やはりどんなマーケティングも意味を成さないのである。
我々はコンサルではない。
顧客企業に伴走する「事業開発集団」だ
そんな創業時の原体験を基に、顧客の事業成長に資するマーケティング事業を打ち立てたセブンデックス。同社のミッションは、「デザインと戦略とデータを繋ぎ、日本のマーケティングの負を打破する」である。そしてビジョンには「心が熱くなる未来と時代のシンボルになる企業を創る」といったメッセージを掲げる同社だが、もう少し具体的にその事業内容を紐解いていこう。
中村我々の提供価値の本質は、「コンサル」ではなく「事業開発」にあると思っています。セブンデックスは「特定の施策や手段に引っ張られず、事業成長に資するマーケティングを追及する」という観点で、今までの世にはない全く新しいコンセプトを持った事業開発集団なんです。
中村顧客の「事業成長」という目的を、デザインやマーケティングを起点に実現する。そもそも顧客が行う事業のゴールは何なのか、そこに向けてどんな筋道で何を行うのかを定め、実行するのが我々の仕事です。決して戦略の絵だけを描いて渡すだけではありません。
特定のサービスやツールを持たずに、顧客の事業課題に向き合う。セブンデックスが「事業開発集団」を標榜する所以がここにある。しかし、読者の中にはまだ「事業開発集団と言っても、何をしているのか今ひとつピンとこない」と感じている者も多いだろう。ここでは、セブンデックスが提供する3つの価値を詳しく紐解いていきたい。
中村一つ目は「戦略策定」。まずは顧客のビジネスの方針をつくること。顧客のエンドユーザーが何を求めているのかを分析し、それに応える商品やサービスを設計します。
二つ目は「事業 / サービス開発」です。目的は、最適なユーザー体験を構築すること。プロダクトのデザインもここに入ります。「出来上がったものをどう売るか」ではなく、一つ目の戦略策定をふまえ、「どうやって売れるものをつくるか」もマーケティングですから、非常に重要なステップです。
三つ目は「運用」です。事業を伸ばしていく、いわゆる「グロース」と呼ばれる分野です。冒頭でお話しした、狭義な「販促としてのマーケティング」は、このステップの取り組みを指していますね。
セブンデックスが掲げるマーケティングの目的は、「顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化すること」。その目的を達成するためにやるべきことは何か?を敢えて平たく説明するならこれら3つに集約されるのだ。
担うべきは、顧客のバリューチェーンの全体最適。それが、セブンデックスが述べる、事業開発集団という言葉の意味なのだろう。
戦略コンサルでは担えない、マーケティングの「上流」機会はセブンデックスでこそ掴める
あらためて、世の中に「マーケティング支援を行う会社」は数多く存在するが、セブンデックスのように、「顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化する」ことを掲げ、サービスを提供し、その思想を広く根付かせようと奮闘する会社はそう多くない。
事実、そんなセブンデックスの想いやスタンスに共感し、多様な人材たちが同社にジョインしている。例えば、スタートアップCxO(元・ZIZAIに事業譲渡した起業家、元・教育系スタートアップCDOなど)や事業責任者(元・SHE事業責任者)を経験した人材なども引きつけている。
中村我々は顧客の事業開発からグロースまで一気通貫で担うため、「セブンデックスはものすごく事業経験が豊富な集団なのでは?」と誤解されることもあります。ただ、実は先ほども述べた通り、「事業を成長させるために必要な当たり前をしっかりやりきる」ことが主な役目と捉えています。
意外に思われるかもしれませんが、顧客の中にはそもそも事業のコンセプトが定まっておらず、「新規事業をやること」や「目標の売上規模」だけが決まっているというケースも実は多い。その場合は、自社の強み、消費者のニーズ、競合優位性から考えて、何を事業の柱にしていくかという戦略を決めるところから始めます。
やること自体はとてもシンプルですが、重要なのは、それをその時々の顧客の事業の全体状況を踏まえて、最適解を模索しながらやり抜くこと。そこで必要なのは豊富な事業経験ではなく、全体を見る意識や当事者意識、やりきる胆力だったりします。
字面だけで見ると、「なんだそんなことか。他の会社でもそれくらいやっているだろう」と感じる読者もいるはず。そこで、下記の図を参照したい。「顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化する」ために、セブンデックスは僅か30名の組織でこれらのサービスを一気通貫で提供しているのだ。
中村我々はあくまで事業開発集団。事業を成長させ、その顧客にさらなる価値提供をするべく、マーケティングやデザインを用いた支援を行っています。
事業開発をリードするには、あらゆる分野を理解した上で、優先順位付けや判断、意思決定が必要になる。そのときには、100点満点の仕事をするより60点でも早く動かすことが大事だったりもする。その意識を持てるかが事業開発集団として価値発揮をできるかを分ける部分であり、我々のマインドの特徴でもあるんです。
事業を率いる立場の人間からすれば、深く頷きたくなるマインドのはずだろう。ただこのマインドは、中々普及していないという現状もある。
こうした顧客支援を、組織一丸となってリードしていく。これこそが、セブンデックスが「事業開発集団」と掲げる所以なのだ。また、この営みこそが、「本来の意味のマーケティング(顧客のニーズに応えた商品をつくり、その商品が売れる仕組みを整え、事業の利益を最大化すること)を浸透させ、日本経済に変革を起こす」という同社の目指す姿へとつながる最短距離なのだろう。
このように「イノベーションを志向しているか」という定義でみると、まさしくセブンデックスはスタートアップと言えるのだろう。中村氏と同じような想いを持っているマーケターは世に多く存在すると思うが、実際に組織をつくって行動に移せる人は多くない。
セブンデックスは5期目を迎え、今後は組織としての文化形成や人材育成にも注力していくという。間違いなくこれからも急成長を続けるだろうこの会社には、マーケティングに関わるあらゆるチャンスが眠っていそうだ。
「マーケティングとは何か?」──。
この問いを考えたことがある。ないし、この問いの答えに興味があるという者は、セブンデックスという組織にハマる人材となるかもしれない。
こちらの記事は2023年09月19日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
池田 華子
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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