web3.0は冬の時代に突入!?──Knot小林氏、Off Topic宮武氏、シニフィアン朝倉氏らが語るweb3.0の最新事情
起業家とベンチャーキャピタル(以下、VC)の間に生じる情報の非対称性を解消し、イノベーターの成長を促進する──。このミッションを基に誕生したのが、スマートラウンド運営のスタートアップ・コミュニティ『Smartround Academia』だ。
当コミュニティでは、主にIPOを遂げたスタートアップに着目。創業からの資本政策の歩みを、当事者であるスタートアップのCxOやVCらの経験談と共に紐解いてきた。そして今回、『Smartround Academia 2022 Fall』では、4つのセッションが開催された。
第1部は、Sozo Ventures中村氏とスマートラウンド砂川氏。第2部はLegalOn Technologies浦山氏、Ubieの久保氏、Yazawa Ventures矢澤氏。第3部は前回に引き続きKnot, Inc.小林氏、Off Topic宮武氏、シニフィアン朝倉氏が登壇。その後、第4部では毎開催ごとに白熱する、投資家との壁打ちイベントも開催された。
本記事では、2022年10月4日(火)に開催された本イベントの第3部を、イベントレポートという形で読者にお伝えする。
- TEXT BY WAKANA UOKA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
web3.0とは、技術的なバックエンドの革命か!?
第3部のテーマは、前回大好評だったWeb3.0の最新アップデートについて。登壇者は前回同様、Knot, Inc. Co-founder and CEOの小林 清剛氏、Off Topic代表取締役の宮武 徹郎氏。
モデレーターも前回に引き続き、シニフィアン共同代表の朝倉 祐介氏が務めた。まずは前回のおさらいも兼ね、改めて“web3.0とは何か”を振り返るところから始めよう。
朝倉今日を迎えるに当たり、あらためて「web3.0って何だっけ?」ということで、元Microsoftの中島 聡さんが書いた『中学生でも分かるWeb3』という本を読んできました。
その本には3カ所ほどweb3.0についての説明があり、まず書かれていたのは「web3.0とは、2008年から始まった暗号通貨マイニング、スマート・コントラクト、おくりびと、NFT、トークンゲートなどさまざまな現象活動の総称」。
2つ目は、もう少しシャープな定義で「ブロックチェーンを活用する非集権的なサービス」。3つ目も、2つ目に似たような話で、「特定のサービス事業者に依存せず、人手を借りずに自立的に運営されるサービス」とありました。
ちなみに、なぜ3.0ではなく3(スリー)と呼ぶのかについても触れられていました。簡単に申し上げると、それぞれ言葉の定義が異なるためです。
もともとWeb3.0という概念は、10年以上前から違う意味ですでに使われており、“Web 2.0のその先の未来”という、Web2.0と同じ世界線で使われていた言葉です。一方で、2010年代後半から話題になっているWeb3(スリー)は、「ブロックチェーン技術をベースにして新しい価値をつくり出しましょう」という流れ。つまり、“Web2.0とはまったくの別物”であり、Web2.0とは異なる世界線における概念なんだそうです。
ということで、いかがでしょう。あらためて皆さんからもweb3.0について簡単に教えていただけますか?
宮武そうですね。web3.0はweb2.0に対するカウンターカルチャーであり、一般的な定義でいうとブロックチェーン上で何かサービスをつくる新しいインターネットの考え方だと言えると思います。
元々インターネットは非集権型、分散型のシステムをつくるという概念から始まっていて、そこから集権型になりweb2.0がきました。
その後、もう1度民主化してみようという話になり、そこでGAFAのようなサービスが立ち上がり、web3.0が出てきているのかなと思います。
小林僕は、ブロックチェーンに関わるさまざまな変化やトレンドの集合体を指して、web3.0と言っているのかなと捉えています。
1番好きな定義はイーサリアムに書かれている4つのものです。その4つの定義とは、「分散化」、「パーミッションレス(誰でも参加できる)」、「ネイティブペイメンズ(独自の決済手段がある)」、「トラストレス(オープンになっていて誰かが管理する必要がない)」ですね。
宮武web3.0は何かしらのバックエンドの革命で、小林さんが今おっしゃった定義もバックエンドの話ではありますよね。そこがおそらく1つの重要なポイントかなと思います。
単にブロックチェーンを使っているから良いという話ではなく、結局は技術の話なので、その技術を使って何ができるのかが重要になってきますよね。
正直ここまでの話、web3.0について最近調べ始めた人にはまったく理解できない内容かもしれない。そうした視聴者に向け、「自分も完璧には分からないので大丈夫ですよ(笑)」とフォローする朝倉氏。
次の章では、前回のイベントから8カ月という期間の中での変化、アップデートについて触れていく。
web3.0は“冬の時代”に入ったが、まだまだ熱は冷めない
まず押さえておくべき点として、宮武氏は「web3.0は冬の時代に入った」と答えた。
宮武何においても、盛り上がっている“夏の時期”と、そうでない“冬の時期”といったものがあると思います。それで言うと、ここ最近のweb3.0は少し盛り上がりのムードが下がってきていると感じています。
ただ、2018年〜2019年にも同じく冬の時代が訪れていたのですが、その時と比べると、まだまだ圧倒的に盛り上がっている。web3.0領域でのスタートアップもどんどんつくられていますし、そこに対してVCも出資していますので。
小林宮武さんに同意ですね。冬と言いつつも、VCの“ドライパウダー”、つまりVCがまだ投資に回していない待機資金は過去最高になっています。また、今日もアメリカの大手仮想通貨投資企業・パンテラが約1.5ビリオンのファンドをつくろうとしているという話が出ているように、前向きなニュースもたくさんあります。
よく言われる話ですが、この冬の時代にきちんとプロダクトを仕込むことによって、次のチャンスに一気に伸ばすことができると思います。なので、今から3年後、5年後に世界中の多くの人がウォレット*を持つことが当たり前になった時に、どういうプロダクトが使われているのかを考えて準備しておくと、面白いんじゃないかなと思っています。
冬の時代とは言いつつも、web3.0に関するイベントは国内外を問わず活発に開催されている。しかも、そこには従来のweb2.0のスタートアップ界隈には属していなかった層の面々が大挙しているとのこと。その現状を見ると、確かに今盛り上がりを見せているweb3.0は、web2.0とは異なる世界線での概念であるということが納得できる。
デジタルアート分野から変化を見せ始めたNFT
次に取り上げられたのは、NFTの現在。こちらについてもなかなか詳しく理解できている人は少ないかもしれない。
朝倉日本でNFTをよく耳にするようになったのは2021年で、これはweb3.0より前のことだったと思います。『NewsPicks』で去年の今頃web3.0を検索しても出てこなかったところ、NFTはヒットしたのを覚えているんですよね。
どちらかというと、日本ではNFTが先に浸透したんじゃないかと思うのですが、最近のNFTの利用動向はいかがでしょうか。前回から時間が経ち、今後の未来図も具体化してきたのではないかと思うのですが。
宮武前回話した時はデジタルアートが多かったため、「NFTはアート方面から進化をしていくのでは」という仮説を立てましたよね。やはり最近はそこから徐々に変化が見られています。
当初はデジタルアートを投資対象として見るケースが多く、今は“冬の時代”という事もあり投資としての盛り上がりは落ち着いてきていますが、それ以外のユースケースが出てきているんです。
例えば、僕個人としても大好きな『10KTF』というNFTプロジェクトが注目を集めています。これは世にある有名なNFTプロジェクトと連携し、デジタルファッションのプロダクトをつくっているサービスで、Eコマース関連の会社が運営しています。
具体的には、Tシャツやスニーカーなどをつくる際、自分が持っているウォレットをつなげてNFTでデザインされるようになっているもので、各NFTコレクションと連携したコマースブランドなんです。
また、注目すべき点はそれだけではなく、『10KTF』は自身のブランドストーリーづくりが非常に上手な会社なんです。コミュニティと一緒にブランドをつくり、いろいろなコミュニティと連携して自然と認知を増やしていく仕組みがある。新しいDtoC、リテール企業のあり方かなと思っています。
小林僕は宮武さんのOff Topicの大ファンで、web3.0コマースの一種である“マルチプレイヤーコマース”について語っていた回が非常に面白いと思ったんです。あれはまさにNFT×web3.0×コマースを軸にした回だったのかなと思ったんですが、どうでしょう?
宮武そうですね。これまで、オンライン上でのマルチプレイヤー化は意外と難しかったところがあると思っています。
例えば、フィジカルな商品を2社が共同開発する際は、両社が対面で会って話し合いながら進めることになりますが、オンライン上で販売する場合は意外とそのやりとりが面倒なんですね。要は、どうやってお互いがお互いのユーザーやファンであることを認識するかという論点があるんです。
分かりやすいのはニュースレター。自分があるニュースレターを持っていて、他のニュースレターとコラボレーションしたい時、メーリングリストを交換し合わないといけないという複雑な問題が生じるんです。
しかし、そこでウォレットが持つサインオン*機能を活用すると、「この人がこのNFTを持っている」ということがすぐに分かります。それはつまり、コラボレーションする者同士で共通言語ができるということ。これは1つ重要なポイントです。
もう1つ重要な点は、web3.0コマースの中ですと、個々人が持っているNFTを認識できるという点ですね。これまでは、ほとんどのリテールブランドのロイヤリティプログラム*において、過去の自社ブランドの商品の購買状況は分かっていても、他社ブランドの購買状況までは分かりません。
しかし、web3.0コマースの世界だとそれが分かる。つまり、“人のバイブス”が分かり、よりユーザー毎に最適化したコマース体験がつくれるようになるんです。そうすると従来よりもより気軽に、簡単に複数ブランドがコラボレーションしやすくなっていきますよね。こうした展開が今後は起きてくると考えています。
小林そのトレンドは非常に面白いですよね。web3.0コマースにNFTを活用していく概念もありますが、やはり摩擦を増やしていくという話があると思っていて。
例えばミュージシャンのグッズ販売において。これまではミュージシャンがグッズを売る際、現地のライブ会場でなければ売れなかったグッズと、ライブ会場でなくても売れるグッズがあり、その比率は8:2だとされています。
ここにweb3.0やNFTを活用すると、これからは“コンサート会場に行かなくても、その人のNFTコレクションを見れば、本当にそのミュージシャンのファンなのかどうかが分かる”といった話が出てくるのが面白いなと思っています。
宮武そうですよね。僕もミュージシャンには不思議なビジネスモデルが備わっているなと思っています。というのも、例えそのミュージシャンの大ファンで毎日のように曲を聴いていたとしても、ほとんどのファンは曲を聴いているだけではグッズの購入をしようとまでは思わないんですよね。
やはりコンサート会場に行ってミュージシャンや他のファンたちと共に同じ空間や時間を共有することによって、グッズの購入に至るところがある。ですので、そうした体験が今後のweb3.0コマースによって再現されていくんじゃないかなと思っています。
なので、購買体験においてあえて摩擦・フリクションをつくりにいくことが重要になる。わかりやすく言うと、AmazonのようなEコマース体験はこの真逆。摩擦・フリクションをいかに無くすかということにフォーカスしていますよね。
小林それで言うと、今日ちょうど見た面白いニュースがあります。『Audius(オーディアス)』という、月間アクティブユーザーが500万人〜750万人とweb3.0ではかなり大きな音楽プロダクトがあるんですが、そこに自身のウォレットをつないだことがある人は、ユーザー全体の10%未満しかいないそうなんです。
これはつまり、多くの人に使われているweb3.0のプロダクトでも、そこにウォレットをつないで活用する人はほんの一部。大半はウォレットなんか知らない人たちが、そのミュージシャンのファンということでweb3.0のプロダクトを広めていっているという構図なんです。他のweb3.0プロダクトにおいても、今後そういった形でトラクションが広がっていくんじゃないかなと聞いていて思いましたね。
ここで、朝倉氏は前回を振り返る。2022年1月時点で話していたのは、NFTはまだアートが中心だが、そこからコミュニティ的な副次的要素が出てくるだろうということ。ただ、そのコミュニティ要素がどういったものであるかはよく分からないままだった。
『10KTF』を例に宮武氏が話した内容から、NFT同士の連携ができ、よりコミュニティ色を帯びてきたというのがここ8カ月ほどの変化ではないかというのが、朝倉氏の弁だ。
朝倉こうしていろいろと話していますが、最近になってweb3.0やNFTに関心を持ち始めた人にしてみたら、聞いていても意味が分からないと思うんですよ。コミュニティの話も意味が分からないと思うのがおそらく自然です。でも、私はこの、わけが分からないことがポイントだと思うんですね。
要はある種の、自分たちのアイデンティティをコミュニティで表現しているわけで、その表現は人との差異でしかできないものなんですよ。新参者にとってわけが分からないものでなければ、コミュニティとしてのエッジが立っていないことだと思うんですよね。
宮武そうですね。例えば、自室であえて人に見えるように飾ってあるポスターや、かたや誰にも見えないように引き出しに入れているもの、寝室にしまってあるもの。それらって、その人によって持ちうる意味が違うと思うんですが、今のウォレット上だと全部同じレイヤーにあるように見えてしまうので、その差をどうやってつくるかも、今後のウォレットが解決しなければならない課題だと思いますね。
ここまでの話で、web3.0×クリエイターの話題をカバーした。アイデンティティの話も出たところで、次に朝倉氏が投げかけたのはweb3.0ならではのアイデンティティのあり方についてだ。
web3.0のアイデンティティは分散から統一へ
朝倉氏の問いかけに対し、宮武氏は「web2.0までのオンラインのアイデンティティは“分散”されていた」と説明。例えば、仕事関連はFacebook、プライベートはInstagram、カジュアルなコミュニケーションはTwitterという具合にだ。そして、「web3.0のアイデンティティは、場合によってウォレットの中に統一されるのではないか」と述べる。
宮武課題は匿名性が高いWebシーンの中で、信頼をどう得るかですね。そこで、いわゆる消せない、移行できない『Soulboundトークン(以下、SBT)』*というトークンの概念が生まれてきています。
朝倉なるほど。アイデンティティという意味でいうと、まさにKnotが取り組んでいる文脈なのではないかと思いますが、小林さん、いかがでしょう。
小林そうですね。アイデンティティの分野で言うと宮武さんが言われたSBTが非常にホットですね。また、その対比として『Verify Credentials(以下、VCs)』*(ヴェリファイアブル クレデンシャルズ)というものがあります。このVCsは昔からあった、個人の身元を証明するデジタル証明書みたいなものです。
ブロックチェーンを活用することで、デジタル上の情報のオーナーシップ、コントロール権を所有者個人がきちんと持てるようにするというのがVCsの考え方なんですね。情報を出すかどうかを自分でコントロールできるのがメリットです。
小林そしてSBTはNFTの1種ではあるのですが、1回持ってしまうと動かせないものです。想定されうる問題として、例えばあるユーザー宛に、どこからか勝手に変なSBTが送られてしまうと、そのユーザーのブロックチェーン上にそのSBTが永遠に残ってしまうリスクがあるということですね。
要は、一度何らかのアクションの履歴が自身のブロックチェーン上に残ると、その後もずっと消せない上に、誰にでも見られてしまうという状況を招いてしまうんです。そこで先ほどのVCsがあることによって、情報の出し引きができるようになる。この辺りの話が最近のホットトピックかなと思います。
朝倉VCsで表に出す情報を取捨選択して、自分のアイデンティティを発信する。これをある種の“建前”と考えた時に、SBTの履歴を見られると「こっちが本音だよね」となってしまう。ある意味で非常に怖いデジタルタトゥーですね…(笑)。
宮武ですので、どこまでパブリックにするのか、プライベートにすべきなのかという議論も盛んに行われています。
次の章では、次に朝倉氏が問いかけたクリエイターに関する現状について触れていく。
web3.0の世界ではファンとクリエイターの境目が曖昧になっていく
Web2.0の後半、TikTokなどではファンがIPコンテンツのリミックスやミーム化*によりIPが拡散されるようになった。そのような状況がある中で、「現在活発に議論されているのはweb3.0のIPづくりについてだ」と宮武氏は説明する。
宮武web3.0のIPコレクションには、よりトップダウン的なものもあれば、完全にボトムアップ型のものもあります。今、議論されているのはIPづくりをどこまで制作者主導のトップダウン型でやるのか、ユーザー主導のボトムアップ型でやるのか、はたまた中堅でやるのかということ。これはweb2.0でも同じ議論が行われていました。
例えがIPではなく、スポーツリーグを例に取ったボトムアップ事例なのですが、アメリカには『ファン・コントロール・フットボール』という新しいアメフトのリーグがあります。
これはファンがチームメンバーのプレイ内容やその実施タイミングを投票でリアルタイムに決めていくという面白い試みです。このように、ファンがオーナーシップを持ったコンテンツが出てくる時代に進化し始めているのかなと思っています。
ただ、個人的にまだ読めていない点としては、こうした取り組みによって、例えばスターウォーズのようなインパクトのある著名IPが生み出せるのかといったものですね。今まさにそうした検証が行われているところだとは思いますが、注目しているテーマではあります。
朝倉ミーム化で新しいものが生まれてくるのは、日本の十八番的なところがあるという気がします。ニコニコ動画もですし、その前の2ちゃんねる文化もですし。ボトムアップ型で、みんなで何かをしているうちに面白いものができてくる動きは、日本にはフィットしやすいのかもしれないですね。
この朝倉氏の意見に対し、「日本は著名IPになると保守的になり、守りたがる傾向にある。国民的なカルチャーとして、トップダウンとボトムアップ、両方の面を持っていますよね」と宮武氏は返す。
ただし、インターネット上では面白いものは勝手に広がる形にある。これからの時代に必要なのは、そうした面白いものを規制・コントロールすることではなく、許容し、“許す”ことだという。その一例として宮武氏が挙げたのは、先ほど話にも上ったスターウォーズだ。
宮武スターウォーズの映画監督であるジョージ・ルーカスは、ファンフィクションが大嫌いなんです。ただ、スターウォーズを広げるにはファンフィクションを受け入れなければいけないと思い、途中から音源、例えばライトセーバーの音などをファンに提供し始めたんですね。
すると、ファンがスターウォーズの文化を広げていった。これからの時代は、ファンが“ただのファン”ではなく、“ほぼ全員クリエイター”になる世界が生まれてくるのかなと思います。
小林ファンとクリエイターの境界線が曖昧になるといった話は面白いですよね。クリエイターがつくったものをファンが加工したり再構築したりしたものに対し、ライセンスを提供するかしないかということを定義した『Can’t be Evil(悪になれない)』というテンプレートがあります。
これはアンドリーセン・ホロウィッツという世界で最も有名なVCが保有しているんですが、それぐらいweb3.0をきっかけに世界中でファンとクリエイターの境界線が曖昧になってきているんですね。
クリエイター系のビジネスやプロダクトであれば、二次創作の部分をどう活用するのかはきちんと考えたほうがいいかなと思います。
日本では同人誌など、ファンによる二次創作文化が活発だ。しかし、現状はファン活動によるマネタイズは難しい。今後、ライセンスを活用することで二次創作作家もマネタイズでき、かつそれがメインのIPにとっても良いことになる未来がくるのかもしれない。
冬の時代の今こそ、未来に向けてプロダクトを仕込むべき
最後に触れたテーマは、2人が注目しているweb3.0スタートアップだ。
宮武先ほど話した『10KTF』ですね。他はBtoB系、特に広告領域でユーザーのアトリビューション*に取り組むスタートアップとかですね。理論上、web3.0だとトラッキングがしやすいはずで、そこの課題解決をしようとしている企業には注目しています。
小林いくつかあります。1つは『Farcaster(ファーキャスター)』というモバイルアプリです。
これはweb3.0版のTwitterみたいなコミュニティプロダクトで、コミュニティ系プロダクトの中だとかなり盛り上がっているものだと思っています。影響力のあるユーザーたちが集まっていて、関心のある方はファウンダーに連絡を入れると、ユーザー招待してもらえると思います。
もうひとつは、22歳ぐらいの若いファウンダーが運営している『Phi』。これはメタバースやバーチャル上に土地を持ち、web3.0のアクティビティに応じて建物が建っていくといった箱庭的なプロダクトです。
ローンチしてまだ数週間ですが、もう2万人ぐらいが土地をつくっていまして、日本だけではなく世界でも使われています。若い日本人起業家が世界で数万人に使われているサービスを急激な勢いで広げているということで、注目のスタートアップとして挙げていいんじゃないかなと思いました。
残りの時間では、視聴者から寄せられた質問に2人が回答。あっという間の1時間だった。あらためて、2回目の開催となった今回を登壇者それぞれが振り返る。
宮武前回お話した2022年1月の時点は、web3.0が大いに盛り上がっていた時期だったため、特にNFT領域でもう少しユーティリティーを見たいという話をしていたと思います。その点でいうと、今回、“冬の時代”に入ったこともあり少しペースが落ちているなと感じています。
個人的には、今後まったく見てこなかったユースケースを見てみたいと思っています。web1.0や2.0では当初SaaSやSNSの概念がなかったように、「web3.0上で次の概念となるものは何だろう」ということをもっと考えなければならないタイミングなのかなと思いました。
小林web3.0、いわゆるブロックチェーンはインターネットモバイルに継ぐ非常に大きな変化だと思っています。モバイルでいうと、広告で稼いでいたカジュアルなゲームの流行から、一気にソーシャルゲームなど生活に密着したプロダクトが出てきました。
web3.0も生活に密着したプロダクトが出てくるステージに入ってきたんじゃないかなと思っています。世界中の多くの人がウォレットを持ち、クリプトを意識せずに当たり前に使っている世界になった時、どういうものが使われるのかをイメージして準備するには、今が最適なタイミングなんじゃないかなと思います。
朝倉ありがとうございます。私自身は、貯まったけど暴落してしまった『STEPN』のトークンをどうしようかといったところがこの半年の思い出です…(笑)。また次回があれば、引き続きお願いいたします。
前回に引き続き、今回も理解が追い付かない部分が多分にあっただろう。今はweb3.0においては“冬の時代”だと繰り返されたが、その中でも着実に、先に向けてプロダクトを仕込んでいる事例があることは分かったのではないだろうか。当領域において気になる方は、ぜひ今後の開催にも注目してほしい。
なお、『Smartround Academia』は今回のみの単発イベントではなく、今後も実施を予定している。参加希望の起業家は、ぜひ次回開催の情報もこまめにチェックしておこう。
こちらの記事は2022年12月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
卯岡 若菜
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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