連載Smartround Academia イベントレポート

【初心者向け】今更聞けないWeb3.0基礎編──Knot小林氏、Off Topic宮武氏、シニフィアン朝倉氏らが語るWeb2.0との違い

登壇者
小林 清剛
  • Knot, Inc Co-founder and CEO 

2009年にスマートフォン広告事業の株式会社ノボットを創業。同社を国内2位の規模まで成長させた後、2011年にKDDIグループに売却。2013年から米国サンフランシスコに移住。2021年10月にKnot, Inc.を設立して、現在はWeb3領域に取り組んでいる。また、TokyoFoundersFundを共同創業し、米国を中心に30社前後に投資をしている。

宮武 徹郎
  • Off Topic株式会社 代表取締役 

バブソン大学卒。事業会社の投資部門で主に北米スタートアップ投資に従事。Off Topic株式会社を2021年に立ち上げ、コンテンツ制作などを担当。

朝倉 祐介
  • シニフィアン株式会社 共同代表 

兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社を経て、大学在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、シニフィアンを創業。同社ではグロースキャピタル「THE FUND」の運営など、IPO後の継続成長を目指すスタートアップに対するリスクマネー・経営知見の提供に従事。主な著書に『論語と算盤と私』『ファイナンス思考』。 株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。

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起業家と投資家の間に生じる情報の非対称性を解消し、イノベーターの成長を促進すべく誕生したのがスマートラウンド運営の『Smartround Academia』。

当コミュニティでは、CxOや資本政策に深く関わるVCらと共に、IPOを遂げたスタートアップにフォーカスを当て、創業からの資本政策の軌跡を各々の経験交えて披露してきた。

2022年初となった『Smartround Academia』は、過去最大規模となる豪華な4セッションで開催。第一部はインキュベイトファンド村田氏とALL STAR SAAS FUND前田ヒロ氏。第二部ではKnot, Inc.小林氏、Off Topic宮武氏、シニフィアン朝倉氏。そして第三部ではナレッジワーク麻野氏といった豪華メンツによるセクションの他、第四部では総勢27名の投資家が集結する交流セッションも開催された。

本記事では、2022年1月18日(木)に開催された本イベントの第二部をお伝えする。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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「今更聞けない」。
初心者向け、Web3.0徹底解説!

続く第2部は「2022年最新海外トレンド-web3.0」。登壇者はKnot, Inc. Co-founder and CEOの小林 清剛氏、Off Topic代表取締役の宮武 徹郎氏。モデレーターはシニフィアン共同代表の朝倉 祐介氏が務めた。そもそも、今回のテーマである“web3.0”とは何なのか。当領域の初心者向けに解説していくスタンスで、改めて整理してみよう。

宮武氏web3.0の根本にあるのは「データの所有権を持つこと」です。リアルな世界では“所有する”概念は目新しくはありませんが、Webの世界では新しいコンセプトになるんです。

Off Topic株式会社 代表取締役 宮武 徹郎氏

宮武氏例えば、Twitterのユーザー名はTwitter社からレンタルしているデータですが、web3.0の世界ではそれらをすべて所有できる。データのオーナーシップを持つということですね。

小林氏web3.0をブロックチェーンのことだけだと思う人が多いですが、それは誤り。web3.0とは、ブロックチェーンの上に載っている小さなプロダクトやトレンドなど、“概念の集合体”なんです。具体的にはクリプト(デジタル資産)やDAO(Decentralized Autonomous Organization=分散型自律組織)、トークン(仮想通貨)やNFT(非代替性トークン)などで、それらが掛け合わさって起こっているのがweb3.0の大きな変化です。なかでも、トークンによってユーザー顧客にオーナーシップが移行したのが1番大きな変化です。

Knot, Inc. Co-founder and CEO 小林 清剛氏

宮武氏ブロックチェーンの技術が発展し、よりスケールしやすくなった​​ことに加え、普及しやすいものが出てきたことが今の急激な発展の背景にあると思います。

アメリカには昔からコレクタブル(収集に値するもの)という概念があり、そこからNFTが始まった。アート文脈やゲームでのアバターなど、わかりやすいユースケースが出てきたのが普及スピードに繋がっているのではないかと。

これに対し、朝倉氏は「デジタルコンテンツはデータをいくらでも複製できるのが現実世界とは違う最大の特徴と言われてきた。この点、NFTについてデジタルデータの固有性や所有権と言われても、意味が分からない人も多いと思うが」と指摘する。

シニフィアン株式会社 共同代表 朝倉 祐介氏

宮武氏これまでのリアルなアートにおいても、写真撮影や複製の作成で同じようなものがつくりだせ、裏でオーナーシップが紐づけられているのが特徴的なポイントだ。

NFTにおいてもそれは同じで、従来の単なる右クリックのコピペデータにはオーナーシップがありませんが、NFTではそこにオーナーシップを紐づけられるようになるわけです。例えば、Aさんがある商材のオーナーシップを持った状態で、Bさんがその商材に課金した場合、Aさんは報酬を受け取ることができます。

その他その商材にまつわるデータのトラッキングも可能となります。つまり、これまではあるデータを誰がコピーしたのかトラッキングするのは面倒で難しかったりしたのですが、NFTによってこれが容易にできるようになったということです。

Webの世界において、コピペとはその利便性を象徴するものであったが、来るWeb3.0においてはそこに所有権をもたらすというから驚きだ。と、ここでビギナー向けの解説が済んだところで、こうした目まぐるしく移り変わる世界でどう情報をキャッチアップしていくのかも伺ってみよう。

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スマホ登場以来のジャイアントキリング!?それがWeb3.0

宮武氏、小林氏の両名がweb3.0に興味を持ったのは、ここ1年、半年のことだという。「その短期間でも集中的に学べば第一人者になれるくらい、新しい世界ということですね」という朝倉氏の問いかけに、両名は「この道のフロントランナーになるには今からでもまったく遅くない」と同意した。では具体的に、どのように進化していく技術と付き合っていけばいいのだろうか。

小林氏web3.0は急激に進んでいるので、日々の情報の積み重ねが大事。日本語だと宮武さんのPodcast『Off Topic』を聞きましょう。あと僕がやっているのは徹郎さんのtwitterを1週間分まとめて見直すことですね。毎回30分くらいかかりますが、web3.0の情報が集まっているのでおすすめです。その他、渡辺 千賀さんのPodcast『Cryptic』や、『Bspeak!』のニュースレターなどもオススメ。あとは、できたら英語のニュースレターも購読しておきたいですね。翻訳だけでなく原文を辿る癖もつけたいところです。

宮武氏小林さんがやっているコミュニティ『和組』は、トピックで分けてくれているのがいいですよね。日本ではきちんと議論できる人が少ないので、集まりをつくってくれているのが重要なことだと思います。

web3.0はとにかく領域が広すぎるので、どの領域に興味を持っているかでフォローする人や追うべき情報が変わる。興味を持っている分野のエキスパートを見つけるのは難しいなと思います。

続いて、朝倉氏が挙げたのはDAOだ。事前に参加者からの興味関心の高さがうかがえたというDAOについて、宮武氏は次のように説明する。

宮武氏人によっていろいろな定義が出てきます。1番よく使われているアメリカでの定義だと、DAOとは共通の銀行口座と資本政策を持った組織や友達の集まりですね。もう少し詳しく言うと、組織に参加している全員が何らかのインセンティブを持った構成をなすもの。正直よくわかりませんよね?とても抽象的な話になるんです。

小林氏『和組』もDAOで仕事をしています。株式会社であれば株式をベースにガバナンスを利かせていきますが、DAOはトークンやNFTを投票権にして動かしていくネットネイティブな組織、会社、コミュニティなんです。DAOでゴルフ場を買う、レストランチェーンを買うといったユースケースがあり、個人的に気になっているのは『Off Topic』のDAOはいつできるのかなということなんですが。

宮武氏DAOはつくる前に構成やビジョンを持たないといけないので、難しいんですよね。NFTをメンバーシップカードみたいな形で販売して、購入者に限定コンテンツやイベント特別招待枠の提供をするメンバーシップ型のコミュニティなんかを考えていたんですけど、どうしようかなと考え続けているところです。

ここで、朝倉氏はDAOに関する議論がインセンティブ構造や投機的な側面に集中していることについて疑問を投げかける。企業の採用でも経済的な条件に惹かれて入社した人ほど組織や事業へのロイヤリティが低く、離職しやすい傾向にあるように、DAOの投機的側面ばかりが注目されると、一過性のトレンドに終止してしまい、永続的な仕組みとして定着しないのではないか。

宮武氏web1.0や2.0と同様に、いいプロダクトをつくらないといけないのが大前提です。その前提ありきで付加価値として、インセンティブのレイヤーが載っていると考えるべきですね。

今はまだNFTの数自体が少ない上に、立ち上がったばかりなので何もかもに価値がついてしまっています。しかし、すべてのデジタル資産がNFT化される時代がくると仮定すると、最終的にほとんどのものには価値がつかなくなると思います。例えば、何の反響も生まないツイートには価値がつかず、バズったツイートには価値がつくかもしれないといった具合です。結局、自由市場が解決するんじゃないかというのが1つの仮説ですね。

今回はビギナー向けの内容だったとはいえ、正直理解が追いついていない面も多分にあると思う。まだまだ事例も少ないが故にどうしても抽象的な話によってしまうが、このWeb3.0は彼らに「スマホ以来のジャイアントキリングが起こりうる領域」と言わせしめ、世界の投資家陣からも注目を集める最新のテーマの1つでもある。ぜひ、興味のある読者は今回挙げられた情報源を元にインプットを積み重ねていってほしい。

なお、『Smartround Academia』は今回のみの単発イベントではなく、今後も実施を予定している。参加希望の起業家は、ぜひ次回開催の情報もこまめにチェックしておこう。

こちらの記事は2022年03月02日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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