連載20代マネージャーのロールモデル
20代マネージャーのロールモデル<前編>━FastGrow注目の5事例に学ぶ
「事業は人なり」──。
“経営の神様”とも称される松下幸之助の言葉である。事業を創るのも、組織を大きくするのも、すべては“人”の手によって成されることだ。そしてその“人”とは、なにも経営者や起業家のみを指すのではなく、その組織に属する“人”たちも含んでいる。
これまでの特集に続き、今回もその組織に属する“人”に焦点を当て、次代を担うイノベーターたちをピックアップ。若きベンチャー / スタートアップパーソンの諸君らに成長のエッセンスをお届けする。
「自分だって、ここに掲載されている面々に勝るとも劣らない結果を出している」「本来であれば、自分がここに顔を連ねていないとおかしい」
など、羨望ではなく対抗心すら抱くかもしれない、もちろん、それで結構。本記事を通じて、若きマネージャーたちが、どのような環境でどのような結果を残し、またどのようなスキルやマインドセットを持っているのか。次世代のマネージャーに向けて、その思考、行動指針をお伝えしたい。
それではいこう。
- TEXT BY TAKASHI OKUBO
Chatwork
ビジネス本部 ビジネスデベロップメントユニットDXソリューション推進部マネージャー──福本 大一
最初に紹介するのは、国産ビジネスチャットを提供するChatworkにおいて、DXソリューション推進部のマネージャーを務める福本 大一氏だ。同氏は大学在学中に旅行系Webメディアを運営する会社を起業するも、コロナ禍の影響もあって伸び悩み、事業売却をした経験を持つ。その経験から、企業運営におけるミッション・ビジョンの重要性を理解し、これらを明確に掲げているChatworkにジョインすることとなる。同氏がなぜChatworkにジョインすることを決めたのか、その詳細は下記の記事をご覧いただきたい。
福本氏はChatworkに入社してからは、新しいサービスの企画立案とリリースに注力した。同氏がジョインした頃は、まだ事業開発の組織自体が立ち上がったタイミング。まだまだChatwork内に事業開発のナレッジも蓄積されておらず、とにかく手数を増やしてトライ&エラーで勝ち筋を見出す戦略をとっていた。さまざまなサービスを考案し、試行錯誤しながらつくったものの一つが『Chatworkアシスタント』という「BPaaS(Business Process as a Service)」事業の新規サービスだ。これは、ツールを入り口とし、企業の業務プロセスそのものに関与して中小企業のDXをサポートする。
BPaaSについての記事はこちら
先にご紹介した記事内で「自分が今生きている社会にインパクトを与えられると実感できる事業に、絶対に携わり続けたい」と話す福本氏。そしてChatworkで携わっている事業が一番面白いとし、経営や事業の経験を蓄積していく場としては最高だと言い切る。そんな同氏の経験からは学べることが多いはずだ。
FastLabel
事業開発部マネージャー──塚本 賢一郎
アノテーションに注目し、企業のAI開発を支援することで急成長を遂げているFastLabel。そんな同社の事業開発部でマネージャーを務めるのが塚本 賢一郎氏だ。
同氏は新卒でワークスアプリケーションズに入社し、ERP・人事業務システムの法人営業に従事。非連続的に成長し、次々に新しいポストや仕事が生まれるような会社で経験を積みたいという想いから、事業のユニークさに惹かれて2022年9月にFastLabelへ入社。そして、入社後間もない2023年1月、事業開発部のマネージャーに就任した。現在は、事業開発に係るパートナーアライアンス推進や協業スキーム構築から新規事業の事業部化、サービス企画、営業サイド全般管掌など、0→1から1→10まで幅広い領域を担う。
そんな同氏はマネージャーになる以前から、FastLabelにおいて“事業の肝”ともいえるデータセット事業で大型案件を多数受注に導いたり、大手企業のアライアンスパートナーとして、GTM(Go-To-Market)戦略に基づく非線形な販路拡大や共同ソリューショニング及び事業推進を行ったりといっためざましい活躍を見せていた。
その所以こそ、塚本氏自身が「目先の売上だけではなく数年後を見据えLTVを最大化させる」といった経営視点を持って業務を遂行していた点にある。
また、同氏は社内外問わずステークホルダーとの関係性構築にも長け、関係者を適切に巻き込むことで大きな成果をもたらしてきたという。塚本氏に対する、メンバーからの信頼も当然厚い。
塚本氏の活躍について詳細はこちら
「AIインフラを創造し、日本を再び『世界レベル』へ」というパーパスを掲げるFastLabel。そんな同社では、メンバー全員が「お客様の成功が我々の成功である」というスタンスを共通して持っている。だからこそ、自分のポジションに関係なく「我先に」と落ちているボールを拾い、少しでも早く解決を目指すのだという。それはある種のキラキラした“スタートアップ”の印象から離れた地道な仕事なども含めてだ。
とはいえ同社も今はまだ成長過程の組織であり、カルチャー醸成の途中...。まだまだ事業の立ち上げや組織拡大のプロセスを経験できる余白が無限に広がっている。つまり、“魅力的なボール”が社内にたくさん転がっている状態だ。それらをすぐにでも自ら手に取りたいと思った読者は、ぜひFastLabelの門戸を叩いてみるのが良いだろう。
LIFULL senior
グループ長→企画業務に抜擢──仙石 雅和
介護領域のリーディングカンパニーであるLIFULL senior。同社は「利他主義」を社是に掲げるLIFULLグループの一社であり、介護施設探しをサポートする『LIFULL 介護』や、介護事業者の業務を大幅に軽減する『買い物コネクト』をはじめとした様々なサービスを提供する企業だ。
利他主義の志のもと“老後の不安をゼロにする”というビジョンを掲げ、介護を必要とする高齢者を中心に業界、医療機関、行政など、ステークホルダー全ての人にその恩恵をもたらしている。
そんな同社から、若きマネージャーとして紹介したいのが仙石雅和氏である。同氏は23歳でLIFULLに入社。関西市場で不動産会社への新規開拓営業を約2年経験した後、25歳でLIFULL seniorへ転籍。そこから営業職として約2年間で全国のエリアを担当し、3年目から現職のグループ長に就任した。
そんな同氏は『LIFULL 介護』の中小企業(SMB)をメインターゲットとした組織の立上げ期にリーダーとして旗を振った人物だ。既存のセールス組織からCSの役割を切り離し、それぞれ独立した組織を構築した。今では業務フローの簡略化とマネジメント効率を上げ、各プロセス上のKSF、つまり重要成功要因の改善に力を入れているという。
特筆すべきは、先にもあげた対SMBの事業において、セールスとCSそれぞれの部門のマネージャーを兼務しているという点であろう。
セールス部門では、課題であった商談化率の改善のために、IS領域でSDR体制を構築し、FS領域ではクロージング成功率を高めるため自部署内でキャンペーン企画等も行う。そしてCS領域では、生産性をより上げるべく、サポートに特化したチームを立ち上げつつ、サクセスの観点ではテックタッチによる支援の仕組みを強化することで、ホットリードの効率的な発掘とARPU向上を実現する。
セールスからCSまで、顧客の成功体験創出までの接点を一貫して任される大事なポジションだ。LIFULL seniorの代表の泉氏も、仙石氏のマネージャーとしての才覚を大きく評価している。
彼はまさにマネージャーの代表格。マネージャーに求められる視座は“個別最適”ではなく“全体最適”。個々のメンバーの強みを理解し鼓舞しながら活かし、チームとして成果が出せる。こういった考え方で働いているのが仙石だと考えています。
泉氏が言及するマネジメント力もさることながら、2年間で10回以上のトップセールス賞を受賞するなど、個人としても高いスキルも併せ持つ仙石氏はまさに“隙のないマネージャー”といえよう。
思い返せば以前の取材にて泉氏は、成長期のLIFULL seniorが直面した“組織の壁”の実体験から「ヒューマンリソースの重要性」について再三言及していた。そんな泉氏だからこそ、組織づくりや、若手メンバーの育成に掛ける想いは人一倍強いのだろう。
そんな泉氏から大きな期待を寄せられる仙石氏。最後に同氏が仕事に向き合う上で大事にしている4つの信条をご紹介して記事を終えたいと思う。
『期待を超えているか』『魂を燃やしてやっているか』『現状に満足していないか』『楽しんでやっているか』。どれか一つでも欠けていると感じた読者は、改めて自分の仕事の向き合い方を振り返ってみると良いだろう。
仙石氏以外の若手の活躍を取り上げた記事はこちら
カソーク(ユナイテッドのグループ会社)
タレントサクセスチーム マネージャー──中川 侑紀
「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する。」というパーパスを掲げ、教育事業、人材マッチング事業、投資事業の3つをコア事業とするユナイテッド。
同社を語る上で外せないのは、その人材育成論と、その仕組みである。事実、未経験からでは育成が難しいとされている若手キャピタリストを多数輩出している。
また、新卒2〜3年目から自社のグループ企業のM&AやPMIを担い、事業責任者を務める若手人材の育成事例が存在する。もちろん、同社に優秀な学生が集まるのは事実なのだが、そんな単純な話でもない。いわゆる“普通の学生”、つまり学生時代に長期インターンなどのビジネス経験を持たない新卒社員でも2〜3年目には事業責任者を務め上げているケースが目立つ。
今回ご紹介する中川 侑紀氏も、大学生の頃にはほとんどビジネスに触れてこなかった。しかし同氏は新卒入社後すぐに、DXコンサル部門のコンサルタントとして「海外のD2Cブランドの日本進出支援プロジェクト」に抜擢される。toC向けのマーケティング領域全般を任されたばかりか、たった“4ヶ月”という期間でコンサルタントとして独り立ちを果たしたのだ。
新卒社員といえば、まずは下積み業務からスタートすることがほとんどだろう。しかし“ユナイテッドの新人”にはすぐさま、実践の機会が与えられる。
こうした環境に身を置いた中川氏は短期間で高いビジネス戦闘力を身につけ、入社2年目の秋から、ユナイテッドのグループ会社であるカソークにて事業譲受のプロジェクトにもアサインされた。PMIの過程を的確にマネジメントするという成果をここでも残し、現在は同社タレントサクセスチームのマネージャーを務めている。
興味深いのは中川氏が「最初はやりたいことが明確になかった」と語っているところだ。加えて、「入社5年くらいで徐々に身につけていこうと考えたものを、わずか2~3年で身につけることができた」とも。
「まったくのビジネスビギナーが、ものの数年で事業責任者と進化するプロセス」について更に理解を深めたい読者は、ぜひ下記の記事をご参照いただくと良いだろう。
Natee
代理店事業部 セールスマネージャー──中島 遼
続いて紹介するのはNatee史上、最短・最年少でマネージャーへと昇格した中島 遼氏だ。同氏は19歳で広告代理店のリバティーンズに入社し4年弱在籍。その後プレイドに入社しセールスとカスタマーサクセスを経験。Nateeが掲げるミッションへの共感と事業・組織のフェーズへの魅力を感じ、2023年1月に同社にジョインした。それからわずか3ヶ月後の同年4月、マネージャーに就任するに至ったのである。
NateeはTikTokマーケティングを主軸としたクリエイターエコノミーカンパニーだ。創業4周年を迎えた2022年11月に、ショートムービー・クリエイターへの還元総額が昨年比288%増の5.77億円に達したことを発表。翌月の12月に4.2億円の資金調達を実施し、界隈からの注目度も増し、ここから更なる成長が求められる重要なフェーズにあると言えよう。中島氏はそんな激動のフェーズに入社し、現職に至る。
同氏が最短・最年少でマネージャーに昇格できたポイントは、同氏曰く2つ。1つがやはり“実績”だ。入社早々にもかかわらず大手広告代理店からの受注を含め、3ヶ月で複数の重要な案件を立て続けに獲得。年度末というタイミングを最大限に活かし、予算消化を狙い撃ちした提案を的確に進めることで成果を積み上げたのである。
そしてもう1つは“マインド”だという。戦略的なセールス手腕の根幹には「社内からも社外からも愛される組織をつくりたい」「レベルが高い人と仕事ができる個でありたい」というブレない意思がある。
だからこそ、「これくらいでいいや」という妥協は自他共に絶対に許さない。人ではなくコトに向き合い、何をなすべきかを見極めて行動に移す。こうしたマインドと先にも挙げた実績こそ、同氏がマネージャーに抜擢された所以なのである。
余計な指摘かもしれないが、同氏は大学を経ることなくこのスタートアップ業界に飛び込み、圧倒的な行動量によって活躍の場を広げている。個の資質が最適に活用されている様子に、なんとも”Nateeらしさ”が反映されているようにFastGrowは感じる。
そんなNateeはインフルエンサーマーケティングを起点として、次の展開をさまざまに模索中。特に注目すべきは、ベネッセとの資本業務提携による、教育事業領域への進出だ。具体的な取り組みはまだこれからというところだが、新時代を切り開くような動きが期待され、目が離せない。
その狙いなどが語られたこの記事も合わせて確認してほしい。
こちらの記事は2023年09月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大久保 崇
連載20代マネージャーのロールモデル
2記事 | 最終更新 2023.11.09おすすめの関連記事
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