その環境、もはやズルい!?──競争優位性ある組織づくりで事業を伸ばす成長企業5選

「事業が伸びてさえいれば優秀な人材が集まるのか?」

その答えは読者が一番わかっていることだろう。

事業が伸びていることは大前提。その上で、いかにユニークな組織づくりができているのかも、優秀な人材を招き入れる上では重要なファクターとなる。

「そんなこと分かっている」「何を当たり前のことを仰々しく」──。

今にもそんな声が聞こえてきそうだ。今回は、特に人材育成やキャリアパスの観点で、秀逸な組織づくりを行っている事例を紹介する。すぐに貴社貴殿の組織づくりに反映できるかは定かではないが、先々の持続的な事業成長を考えるならば、知っておいて損はないだろう。

これ以上の余計な能書きは不要。早速みていこう。

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入社2〜3年目でグループ会社の事業責任者、その後はグループ全体の経営を担うプロ経営者へ──ユナイテッド

企業を永続的に伸ばしていきたいと考える際、若手経営人材の育成は避けては通れない壁だ。「経営者視点を持った若手人材を育成したい」、そう考える経営層は多い。

しかし、その育成ノウハウがなかったり、そもそもの育成リソースが整っていないといったことで、多くの企業では中途人材に頼らざるを得ない状況になっているのではないだろうか。

そんな中、再現性をもって20代の若手経営人材を輩出し続ける稀有な企業が存在した。インターネット業界で20年以上、その市場の成長を牽引してきたベンチャー企業・ユナイテッドだ。

「ユナイテッド?会社自体は勿論知っているけれど、若手経営人材の育成に強いイメージはなかったな」。このように感じる読者もいるかもしれない。しかしその実は、経営層一丸となって20代経営者・事業家人材の輩出に熱を注ぐ、経営人材輩出企業だったのだ。

まずはそんなユナイテッドの現状からお伝えしよう。ユナイテッドは現在、「教育」「人材マッチング」「投資」の3つのコア事業を主軸に、複数のグループ会社を経営している。

そしてなんと、これらグループ会社において事業責任者を担っているのが、主に新卒入社2〜3年目以降の若手たちなのだ。それも、早熟な若手優秀人材に限りという話ではなく、「意志ある者であれば誰でも」というのだから驚きだ。

「新卒入社2〜3年目で事業責任者?流石に荷が重くないか…」とは当然の意見。しかし、それに耐えうる基礎トレーニングは入社1〜2年目でみっちりと身につける。また、その後の事業責任者としての日々の事業推進においても、ベテラン経営陣たちによる壁打ちやフォローが徹底しているのだ。

「とはいえ、あまりに経験値が足りなすぎる…。もし失敗したらどうするつもりなんだ?」。これも当然の疑問だが、やはり、ここもユナイテッド経営陣はお見通しだ。むしろ、「一定の失敗を経なければ、プロ経営者・事業家にはなれない」と捉え、許容できる失敗も含めてリスクマネジメントを行っている。

こうした環境のもと、「挑戦したい」という意志があれば、20代のうちからM&A〜PMI〜事業グロースの経験を積むことができるのだ。

そして、30代になる頃にはユナイテッド全体の経営に携わるプロ経営者・事業家へとキャリアを進めていくことができる。現に、ユナイテッドの経営陣に名を連ねる樋口氏は、20代でグループ会社の事業責任者を担い、その後そのグループ会社の代表に就任。そして今ではユナイテッドの取締役も兼務と、まさに今活躍中の20代若手メンバーたちの10年後の姿だ。

このように、若手経営人材育成の仕組みとその実績が揃うユナイテッド。若手読者にとってはチャンスに映り、人材育成に悩む経営層には良き参考になるのではないだろか。

より具体的にその育成風土を学びたい者は、下記の記事をオススメする。

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「事業成長」と「個の自己実現」のクロスポイントを見極めよ──Works Human Intelligence

「自身のキャリアを描く上で、この会社は適切なのだろうか」──。

誰しもが一度は思い悩んだことがあるこの問い。経営者の立場からしても、働くメンバーに対して背負う永遠の課題かもしれない。

今回は、そんな悩みを抱くビジネスパーソンや、組織を率いるリーダーたちに一つの解を持つ企業を紹介したい。HRテックカンパニーとして知られる、Works Human Intelligence(以下、WHI)だ。

上述の通り、同社はHRテックカンパニーとしてその名を馳せてはいるものの、「キャリアアップに最適」「キャリア支援が充実」という観点で思い当たる企業をイメージした際に、すぐさま読者の脳裏に浮かぶ企業ではないかもしれない。言わば、知る人ぞ知る隠れた名店。まずは同社で活躍するメンバーたちの声を紹介しよう。

WHIのキャリア支援に対するメンバーの声

定期的な上司との1on1ミーティングにおいても「次は社外の広報に携わってみないか」「学生インターンの採用活動をしてみないか」と様々な選択肢を提案してもらいながらキャリアを模索しています。興味関心の幅は着実に広がっていますね。(営業)

WHIからは「自身で業務を調整できるのであれば、正社員として働きながら大学院へ進学してみては?」と提案してもらったんです。僕の意志を尊重してもらえたことがなにより嬉しくて。より一層、WHIでの仕事を頑張ろうと思えましたね。(コンサルタント)

3歳以降の子どもを持つ社員に対する時短勤務を認めている企業はまだ非常に少ないです。しかし、WHIでは私が入社した2009年の時点ですでにその制度を取り入れており、時代を先取りした働き方に対応していました。(コンサルタント部門マネージャー)

人事にまつわるソリューションを提供する中で、「自分が人事の一員となれば私たちの製品を使うお客様の立場となって世の中を見ることができる。その学びは大きい」と感じ、人事へ異動しました。キャリアを積むごとに自分が楽しめる環境を社内で選ばせてもらいながらステップアップができたと思います。(採用マネージャー)

WHIでは、一人ひとりのメンバーが持ち味を発揮できるよう、会社の基盤を活用して様々な仕事に自由度高くチャレンジができる。そんな印象を受けるのではないだろうか。

仮に、今の時点ではまだ明確にキャリアのイメージが湧いていないとしても、こうした環境下で難度の高いチャレンジを繰り返していけば、自ずと自分の強みややりたいことが見つかっていくことだろう。

もちろんこうした取り組みはすべて、「事業成長」にシナジーを発揮するからこそ、全社を挙げて推進されていることは言うまでもない。

そして当然ながら、上述の「社内異動制度」や下記に記す「兼務」などの自由度が高いキャリアを歩むためには、自ら当事者意識を持って主体的にキャリアを考える必要がある。そうした意志あるキャリアを築いてもらうべく、WHIでは「キャリアインタビュー」という制度を用いて、社員が主体的にキャリアを考える機会を提供しているのだ。

WHIで実現できる社内異動やポジション兼務の一例

■異動

  • コンサルタント → エンジニア → 人事
  • 営業 → コンサルタント
  • エンジニア → コンサルタント

■兼務

  • 営業 × 人事
  • コンサルタント × 人事

こうした柔軟性のあるキャリア形成は、事業基盤が整ってはいるものの重厚長大な大手企業や、自由度は高いが事業成長に伸び代があるベンチャー / スタートアップでは真似することが難しい。まさに、両者の良いとこどりな、WHIならではユニークネスだ。

自由度の高い社風は上記の実例からうかがえると思うが、同社の事業基盤の安定性についても最後に触れておこう。WHIと言えば、大手法人向けの統合人事システム『COMPANY』が著名。その名の通り、(従業員3,000名以上の)国内大手法人企業の1/3社が活用(WHI調べ)する、HRテック界のインフラとも言えるサービスだ。(現在、SaaSとしてサービス提供も開始)

このプロダクトこそがWHIの圧倒的な事業基盤を築いており、この屋台骨によって、メンバーたちが自由に、裁量を持って「はたらく」ことができているのだ。

このように、安定した事業基盤の上で、キャリアの展望に不安を覚えることなく事業活動に邁進できる環境は、「贅沢」と言ってもいいだろう。

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800億円越えの事業ポートフォリオを担うは、20代の若手責任者たち──レバレジーズ

  • 国内外で40以上の事業を展開
  • 各事業を率いる事業責任者の80%が20代

と聞くと、「まあそれなりの規模の会社ならあり得るだろう」と思うかもしれない。そこで更に、

  • 2022年の売上高は885億円で、年次成長率は約130%
  • (レバレジーズ、コーポレートサイトより抜粋)

  • 2023年は1,000億円を目指すフェーズ

と聞くとどうだろう。途端に、「売上高800億円越え!?そんな規模の事業を20代中心で運営している会社なんてあるのか…?」とならないだろうか。

なぜレバレジーズではこのような事業経営ができるのか?

一体どんな若手たちが事業責任者を担っているのか?それぞれ解説していこう。

レバレジーズと言えば、『レバテック』でその名を知るものが多く、「人材×IT」のイメージが強いかもしれない。しかしその実態は、国や業界を厭わないサービス展開を推進する、グローバルメガベンチャーなのだ。海外拠点としては、メキシコ・ベトナム・インド・上海を。事業内容としては、IT・人材の他にも医療・介護・電力などバラエティに富んだラインナップを揃えている。

そして、これらの事業を「独立資本」で行っているというのだから驚きだ。資金調達をした企業の場合、場合によっては新規事業を立ち上げる際、株主の意向でNGとされるケースもあることだろう。しかし、レバレジーズの場合はそうした障壁がなく、文字通り「自由に」若手たちが事業を立ち上げ、推進していくことができる環境が揃っているのだ。

もちろん、レバレジーズは会社全体として若手の育成や新規事業への投資に積極的で、同社の執行役員を務める藤本氏は、「年間10〜20個の新規事業に対し、約100億円の投資を行っている。その殆どの事業責任者を担っているのが、20代の若手たちです」と述べる。

これは言うなれば、アーリーフェーズで3〜4億円の資金調達を行うスタートアップを、年間で10〜20社生み出しているようなものではないだろうか。

「なぜ、このようなことが実現可能なのか?」──。

読者の疑問はここに尽きるだろう。

それはひとえに、レバレジーズには「若手に事業創造という役割を積極的に任せる」というカルチャーがあるからである。

以前、同社代表の岩槻氏へ取材を行った際は、「無茶振りも含め、本人が背伸びをしなければ届かなさそうな仕事を任せる」という育成思想が披瀝された。

また、2023年2月に開催されたばかりのFastGrow Conferenceにおいても、藤本氏より「レバレジーズでは、仕事で10ある内の1〜2までは若手に教えるが、残りの3〜10は本人の意思に任せる」といった育成方針が語られたばかり。

「なぜ、そこまでするのか?」──。

それは、「人は任せられなければ成長しない」というレバレジーズならではの根本思想があるからだろう。そんな環境に魅了され、同社には新卒 / 中途含め事業家志望の20代若手人材がこぞって集まってくるのだそう。

気になる方は是非、下記の記事でその実態を垣間見てはいかがだろうか。

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“経営目線のエンジニア”を育成し続ける、組織開発の仕組みとは──ネットプロテクションズ

ますます激戦化するエンジニア採用市場。企業の資本力やネームバリューがますますモノをいう時代になってしまった……と悲観したくなる経営者も中にはいることだろう。

だが一方で、“育成”に強みを持つことができれば、その壁を突破し、継続的な事業成長を生むことができるかもしれない。そんな印象を抱かせるユニークさを持つのが、ネットプロテクションズの組織づくりだ。ティール型組織の先駆者としてのイメージはあるかもしれないが、エンジニアの育成についてもぜひ、知ってほしい。

それを如実に表すのが、この図だ。

キーワードは、「責任範囲と、意識範囲」。

「組織はある程度綺麗に役割分担をする必要がある」と考えてしまっていないだろうか?特に、ゼロイチフェーズを超え、グロースあるいはスケールを目指す際には、そうした考えも必要になってくる。

だが、そうした“セオリー”に囚われずに挑戦をしてこそ、差別化が図れるというもの。

未上場からいきなり東証一部(現プライム)へ上場したネットプロテクションズ。BNPLの国内フロントランナーとして走り続けるシステムやプロダクトを構築してきたチームメンバーの多くが、実は新卒エンジニアを中心として構成されている。

つまり、“育成”に圧倒的な強みがあるということ。そしてそれは、“セオリー”から離れた組織開発手法によって生み出されているのである。約20年もの間、CTOを務める鈴木氏の思想について、発言を引用するかたちで見てみよう。

私ももともと、世の中にある職種でやりたい仕事がなかったんですよ。ビジネスとITの真ん中をやりたいと思っていた。ネットプロテクションズの創業期に、ほとんど1人で開発や企画を担う中で、ハイブリッドな立場をとるに至ったという感じです。

今は規模も大きいので、プロダクトやサービスを構成する機能ごとに、便宜的に組織を分ける手段ももちろんあります。ですが、機能を分けることで、一人ひとりのやれる範囲を限定してしまう恐れがあるので、あまり好ましく思っていません。せっかく能力を持っているのに、機能が分かれることで、伸ばせるはずの能力が減ってしまうかもしれない。

通常、人の興味関心は複数領域にまたがっているはずです。「アプリケーション開発にしか興味がない」とか「サーバーサイドの中でもバグ修正だけが自分の好きな仕事だ」といったことってありえませんよね?

機能分断を起こさない組織にすることで、存分に能力を発揮していけるようにしたいんです。

──FastGrow《まだまだ希少な「事業視点を持つエンジニア」の育て方──CTO歴20年の鈴木氏に聞く組織づくり | FastGrow》から引用

「責任範囲」だけでなく、「意識範囲」を設定することで、一人ひとりの能力拡張を実現してきた。顧客のみならず、金融や決済に関連する事業者がパートナーとなり、非常に多くのステークホルダーが存在するこの事業。中途半端なシステム知識やエンジニアリング力では、スケールさせ続けることなどできないという背景からの実践だ。

もちろん、これを即座にまねすればよいという単純な話ではない。だが、参考にできる部分も多くあるのではないだろうか。

現場の挑戦についても以下の2記事で詳しく扱った。合わせてお読みいただきたい。

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事業家になるための3ステップで経営者・事業家へ──ラクスル

マネージャー、ビジネスユニットのリーダー、会社全体のリーダーと、数年おきに自身のポジションを変えながら真の事業家・経営者を目指していける。これこそがラクスルで働く魅力なのではと思っています。

──FastGrow《「既存のBizDevキャリアはコモディティ化する」──ラクスルCOO福島と“産業変革請負人”第一号の上村が語る、もう1つのBizDev誕生物語 | FastGrow》から引用

「産業の変革」と共に、ラクスルCOO・福島氏がチャレンジを続けていることがある。

それは、若手事業家人材の育成・輩出だ。

これまでFastGrowでは度々、同社で活躍する事業家人材のインタビューを行ってきた。それを受けて、読者においても「ラクスル=事業家人材が集まるスタートアップ」というイメージを持つ者が多いのではないだろうか。

もちろん、外から経験豊富な事業家人材を招き入れることもあるが、福島氏は自社内での育成・輩出にも熱を込める。

「自社内で若手を事業家に育て上げる。ぜひ自社でもやってみたい」と、思う読者も多いはず。今回はそんな読者に向けて、福島氏が具体的にどういった考え、方針で若手人材を事業家・経営者に育て上げているのかを紹介したい。

ラクスルCOO・福島氏が提唱する事業家育成の3ステップ

  1. あるテーマにおいて変革を起こせる人物であるか
  2. その変革を、組織レベルで起こせるか
  3. その変革を、会社全体に起こしていけるか

フェーズ1は、各メンバーに与えた説くべきお題に対し、事業価値に繋がる変革を提案・実行できるのかを問うている。

例を挙げると、前職で品質管理を担当していた人物に、ラクスルのサービスに対して品質管理の観点で変革を起こしてもらう。具体的には、単なるいち業務改善レベルのものではなく、顧客にとって「これはラクスルのサービスにおける新たな価値だ」といえるレベルのものを指す。

そしてフェーズ2では、上記の変革をいち個人としてではなく、チームのマネージャーとして組織全体で起こせるのかを問われる。

それができると最後はフェーズ3。経営メンバーとして、フェーズ2のチャレンジを会社全体で実行できる様に、リーダーシップを発揮してもらうことだ。

文字に書けばシンプルに見えるが、これを実行するには育成側・若手側ともにタフなチャレンジが求められる。読者にはよりその現場感を具体的にイメージしてもらえるよう、下記の若手メンバーの成長ストーリーを紹介しておこう。

福島氏が抱く若手事業家人材の育成・輩出にかける想いと、それに応える若手事業家人材の掛け合いに要注目だ。

こちらの記事は2023年03月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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