「介護への興味が、あなたのキャリアに役立つ理由」
──22歳からターンアラウンド、DD、PMIを経てきたヤマシタ代表が教える、コスパ最強!若手経営者キャリアを築く術
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私は生まれた時から「あなたは経営者として生きていくんです」と言われて育ってきました──。
福祉・介護業界のサラブレッド・山下和洋氏は、会議室で自身の経歴をスライドに投影しながら、そう言い放った。これまでFastGrowは数々の起業家・経営者を取材してきたが、「生まれた瞬間から経営者キャリアが確定している」人物に出会うことは稀だ。
一体、どんな経営者で、どんな生い立ち、半生を過ごしてきたのか?今回は、そんな福祉・介護業界のリーディングカンパニー、株式会社ヤマシタの山下和洋氏を訪ねた。
福祉・介護領域を身近に感じることがない読者からすれば、既に「レガシーなにおい」を感じ取っているかもしれないが、言語同断。同氏率いるヤマシタは、「福祉・介護業界のラクスル」と形容しても言い過ぎではない程、「テクノロジーによる産業変革」を担う企業であった。
レガシーな産業を変革するモダンなビジネスモデルとは何たるかを、山下氏の切れ味鋭い言葉に載せてお届けしよう。
- TEXT BY YUKO YAMADA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
小学生の時から日本の介護問題を憂う、業界のサラブレッド
山下和洋氏は、祖父の代から続く福祉用具(介護用品)レンタル・販売事業を営むヤマシタの3代目として生まれた。
山下私は創業者である祖父と2代目社長の父から「この会社を継ぐように」と言われて育ってきました。“跡継ぎあるある”として「決められた人生を歩みたくない」と反発する人も多い中、私は物心ついた時から家業を継ぐことに迷いはありませんでした。「祖父や父の期待に応えたい」という気持ちが自ずと芽生えていたんです。
その意気込みや覚悟を示すエピソードとして、彼の小学校時代の卒業論文がある。当時まだ施行されていなかった介護保険制度をテーマに、「国はこれから介護予防にも力を入れるべきだ」という趣旨の論文を書きあげていた。幼少期の頃から介護福祉業界が抱える課題に対して「何とかできないか」と考える、異色の子どもだった。
大学卒業後、新卒で家業のヤマシタに入社した山下和洋氏は、1年目から売上20億円規模の会社(現在はヤマシタの栃木事務所)のデューデリジェンスやM&A後のPMIを経験。また、並行して香川県の新規事業所の立ち上げや、広報、人事採用、企画なども精力的にこなしていく。しかし、入社3年で予期せぬ出来事が彼を襲った。
山下2013年5月、先代社長であった父・山下一平が交通事故により急逝し、私は同年7月に25歳で代表取締役を担うことになりました。将来的に社長を継ぐことは分かっていましたが、こんなにも早くそのタイミングが来るとは予想だにしておらず…。
これからは自分が社長となって約1,600名(2013年当時)の従業員とその家族の生活を守らなければならない。そのために、業績不振であった既存事業を選択と集中で整理しながら、一心不乱にヤマシタの経営基盤を築いてきました。
そこから10年が経ち、山下氏は36歳となった。コロナ禍で一時的に売上は減少したものの、2013年に山下氏が社長に就任以降は右肩上がりで成長。2023年度の売上は300億円を超える見込みだ。
生まれながらにして経営者への道が敷かれていたとは言え、予期せぬ事態から20代前半で一大組織を牽引するリーダーに就任。当時まだビジネスのイロハも掴めていないであろう状況下でデューデリジェンスやM&A、PMIを経験し、事業を拡大させてきた。なかなかに稀有な経営者キャリアを経てきた人物と言えるだろう。
そんな山下氏は、同世代の経営者・リーダーたちとの親交も深い。次世代の若手リーダーが集うグロービス経営大学院の「G1サミット」を通じ、ラクスルの会長・松本恭攝氏とも長い付き合いがある。松本氏が登壇する講演ではしばしば質問を投げかけ、国内外で行われる起業家サミットなどでも顔を合わせる機会があったため、自ずと面識を持つようになった。同じ慶應大学の先輩としても経営者としても敬意を抱く松本氏からの学びや支援は、山下氏にとって大きな励みとなっているそう。
他にも、経営者でありメディアアーティストである落合陽一氏とも親しく、2023年6月にはヤマシタのアドバイザーとして迎え入れる。
山下落合氏とは、U30歳の経営者・起業家の集まりでご一緒する機会が多く、20代の頃に知り合いました。初めは「何だか難しくよくわからないことを言っている人がいるな」という印象でしたが(笑)。
落合氏にアドバイザーを依頼したきっかけは、生成AIの登場です。ChatGPTが出てきた当初、彼がパソコンでプロンプトを打っているのを隣で見ていて、私は「これはどういうことですか?」「なぜ今この指示を出したんですか?」などと気になることをひたすら質問していました。その際に彼は一つ一つ丁寧に教えてくださり、AIを活用した事業アイディアについて多くの気づきや学びを得ることができたんです。
ヤマシタでは、今後生成AIを活用していくにあたって、落合氏の豊富な知見や未来予測をもとに事業成長に繋げていきたいと考え、この度弊社のアドバイザーに就任していただきました。
EX(仕事のやりがい)とCX(お客様体験)の好循環が、非連続な成長を生み出す
1963年創業のヤマシタは、病院、ホテル、介護施設等へ寝具・リネン・カーテン・ユニフォームなどのリースを行うリネンサプライ事業からスタート。1983年には業界初となる福祉用具・介護用品のレンタル・販売事業を開始した。現在は全国78拠点に事業所を構えており、2023年10月には中国への事業展開も成功させている。
山下我々は創業以来、主に福祉用具のレンタル事業を通じて業績を伸ばしてきました。そのため、サービスを長く使い続けていただくことが事業成長のポイントとなり、短期的な目線で利益を追求することはせず、お客様と信頼関係を構築しながら長期的な利益を優先してきました。
従業員の言動を見ていても、短期間で「儲けよう」という発想はなく、「こんな取り組みをすればお客様は長くヤマシタを愛してくれるのでは」といったマインドの人たちが集まっています。
このスタンス、カルチャーこそがヤマシタの良さであり、長年にわたって事業を継続・拡大できている所以だと思います。私は、弟(専務取締役 山下幸彦氏)と共にこれまで祖父や父が大切にしてきた事業と、「人財こそ会社の財産である」という人財育成の考え方から、従業員の人生をより豊かにしていきたい想いで事業を行ってきました。こうした想いがヤマシタの経営の源泉にあります。
そして想いを示す同社の企業理念は、「正しく生きる、豊かに生きる」であり、60年以上にわたって脈々と受け継がれてきた。
山下「正しく生きる」とは何か、「より豊かな社会」とは何かを追求しながら、我々は継続性ある事業モデルで福祉や介護領域に貢献してきました。そして現在、ヤマシタは2030年を見据えた長期ビジョンとして「EX→CXを強みに非連続成長へ」といったメッセージを掲げました。
ここでいうEXとはEmployee Experience、ヤマシタでは「仕事のやりがい、体験」を指し、CXとはCustomer Experience、同じく同社では「お客様の感動体験」と定義されている。
山下このビジョンは、“従業員の仕事のやりがい、体験(EX)の向上が、その先にいるお客様の感動体験(CX)を創出し、結果的に事業成長へと繋がっていく”ことを意図しています。
CXを重視する企業は世の中でも多いと思いますが、我々は非連続成長というビジョンを達成する上で、EXの充実、すなわち人財育成こそが経営における重要項目だと捉えています。
EX(仕事のやりがい、体験)とCX(お客様の感動体験)の好循環を加速させ、非連続な事業成長を実現するヤマシタの経営戦略。概念は理解できたが、具体的にはどのように施行されているのか。ここからはその真相に迫っていく。
同業他社には存在し得ないプロ経営者たちで築く、緻密な組織戦略
山下我々が重視するEXの向上には、従業員の能力開発やスキル向上が含まれています。具体的には、個々人の能力や行動特性といったコンピテンシー、または職種ごとに必要なスキル(職種力)を向上させていくことです。
例えば、セールス職では「提案力」や「傾聴力」が重要ですが、現場の従業員のスキルが5段階評価でレベル2からレベル4に上がると、お客様の体験価値が向上すると考えられます。「この担当者は話をよく聞いてくれるし、提案力も素晴らしい。今後もサービスを依頼したい」と評価が高まれば、受注の確度も高まっていくわけですね。
山下このように、従業員のスキルの数値化に加え、お客様の感動体験も定量的に測定していきます。すると、従業員のどのスキルを育成すればお客様の体験価値が向上し、結果的にどれだけ売上が伸びるのか、ある程度データで予測ができるようになると考えています。
従業員の成長を促進することで、EX→CXの好循環が生まれていく。詳しくは次作以降の記事に譲るが、ヤマシタはこうしたデータを起点に、従業員が早期に成長、昇進できる人事制度の設計にも注力しているのだ。
このように、人財データと顧客データを組み合わせて事業の生産性を上げ、非連続な成長を実現していく企業は、少なくともこの介護福祉業界にはヤマシタを置いて他に存在しないという。
山下この業界は他業界にも増してレガシーな企業が多いため、定量化にこだわり、データドリブンでロジカルな経営を主導していく経営者は少ないと感じています。そして、そのギャップこそがチャンスだと捉えています。加えて、こうした定量化や人事制度の設計などに関しては、私を含め経営全般を理解しているプロフェッショナル人財たちで策定しています。
わかりやすく言えば「人事専門の担当者に定量化や制度設計を任せている」のではなく、「人事以外の事業、組織、ファイナンスなど経営に求められる知見を備えた人物が、そのスキルアセットをもとに人事領域の業務を担っている」という具合です。ですので、戦略や具体の制度はもちろんのこと、それらを管掌する経営陣の顔ぶれという面でも、この業界では他に類を見ない企業であると思っています。
事実、ヤマシタの経営陣にはグローバル企業や外資戦略ファーム出身者らが顔を連ねている。一見すると「介護福祉」領域の企業には見えないかもしれない。が、そのユニークネスこそが同社の強みとなり、差別化要因に繋がっているのだ。
命懸けの勝負を支えたのは、ヤマシタに受け継がれる「心」
ヤマシタがEX→CXを軸に事業を展開している理由は、非連続な成長を実現するためであることは大前提だが、その根本には「人を大事にする」カルチャーが存在する。そして山下氏自身すらも同社のカルチャーに救われた過去があった。
山下25歳で経営者となった最初の1〜2年間は、まともに寝ていた記憶がないほど多忙でした。権限移譲ができていない分、現状把握はできたのですが、隙間のない会議、面接、重大事件の相談、年間6万件に及ぶ稟議書と会計の承認処理を365日対応し、自分の事務作業をスタートできるのは23時を過ぎてから。「ここで頑張らなければいつ頑張るんだ」という気持ちで、会社の事業を立て直すべく命をかけて日々の業務を行っていました。
そうした苦労を乗り越えてきたからこそ、「何が起きても耐えられる精神的な強さが身についた」と山下氏は語るが、一歩間違えたら取り返しのつかない事態になるような状況だ。
山下その当時、私はユニクロの柳井社長の名言である「Change or Die(変革か死か)」という考えに強く共感し、覚悟を持って経営に臨んでいました。
しかし、当然ながら私たちと従業員では事業に対する危機感があまりにもかけ離れていたため、同じモチベーションを従業員に求めると大きなギャップを生んでしまう。
その結果、「この人(私)は、血も涙もなく、業績のことしか考えていないんだ」と、従業員の心がどんどん離れていってしまったことがあります。
本来ならば、組織が崩壊してもおかしくない話。しかし、ヤマシタはそうはならなかった。長年にわたり「人に寄り添うカルチャー」が醸成されていたことで、難を逃れたのだ。
山下私自身、事業を伸ばすプレッシャーを背負いながら寝る間もなく働き続け、心に余裕がなく、周囲に対し厳しい言葉を使ってしまうことがありました。しかし、現在の本部長を含む、先代の時代から在籍しているプロパーの従業員たちは、私たちが命がけでヤマシタの事業変革をしていることを理解してくれていた──。
彼らは大勢の従業員に対して、「今は辛い時期だけど、一緒に乗り越えていこう」「社長の言動の裏には、私たち従業員の未来を想う気持ちがあります。そこを何とか分かってあげてほしい」と自発的にフォローしてくれていたんです。
一時は離職率が上がり厳しい時期もありましたが、こうした心強い仲間たちのお陰で事態を収束することができました。今のヤマシタがあるのは、あの時、社のみんなが一丸となって困難を乗り越えてくれたからだと思っています。
ラストワンマイルを押さえたプラットフォームビジネスで、無限の事業拡張を狙う
では実際、ヤマシタではどのようなビジネスモデルでEX→CXを創出し、非連続的な成長を目指しているのだろうか。
山下一言で言えば、在宅介護プラットフォームビジネスです。我々は、既存の福祉用具のレンタル事業をチャネルとして、ご利用者に当社のECサイトやオンラインストアのアプリなどを提供し、そのデジタルプラットフォームを起点に事業拡大を目指しています。
具体的には、福祉用具のレンタル時に、ご利用者には契約書や次回訪問予定日、サービス利用履歴などが確認できる弊社のスマホアプリを登録してもらいます。このアプリがあると、ご利用者だけでなくご家族やケアマネージャー間でも必要な情報連携ができるため、関わる人たちの利便性が向上します。
山下さらに、このアプリを通じて、ご利用者一人ひとりの介護状態に応じた商品提案ができるUIUXを構築し、その方が必要としている商品(ECサイト)にたどりつける導線をつくる。
また、ご利用者やご家族へのアンケート調査によると、40代〜50代のご利用者は住宅リフォームを検討している人が多いため、老後を見据えた住宅リフォーム事業でご利用者の暮らしの課題にもアクセスできるんです。ヤマシタでは実際に年間1万件以上のリフォームも実施している程です。
今後は在宅排泄サポートサービスや遺品整理サービスなども検討しており、ご利用者の状況に合わせて必要な情報をアプリからポップアップ形式で提案していけるような、そんなサービスの拡張も進めていく予定です。
独自のアプリやSaaSを起点に経済圏を築くスタイルは、他業界では広く行われてきている。しかし、その対象が介護を要する高齢者の場合、導入ハードルは一気に高まる。そう、デジタルツールの活用に慣れていないケースはもちろんのこと、そもそも自宅にWi-Fiが置かれていないといったことすら、この領域ではよくある出来事だ。しかし、ここでヤマシタの祖業の強みが活きてくるのだ。
同社は福祉用具(介護用品)を利用者の自宅に導入する際、スタッフがアプリの機能についても直接説明し、必要に応じてWi-Fi環境の設定やアプリのダウンロードをサポートすることができる。つまり、一般的にハードルとなりがちな「最初の導入コスト」が極めて低いのだ。ラストワンマイル、顧客との直接点を持っているヤマシタの強みは、まさにこうしたシーンで発揮されるわけだ。
また、こうしたサービスの拡張、OMO(Online Merges with Offline)戦略は、何も介護福祉の領域だけに留まる話ではない。そこには観光や美容など、高齢者が余暇を楽しむサービスへの拡張も視野に入れているという。
山下この話をすると皆さん驚くかもしれませんが、介護福祉の現場では、「恋愛」も大きな関心事として存在しています。例えば、介護施設では「あの人が素敵」「あの人とお話してみたい」「この介護職員がイケメン」といった具合にです。
こうした実態は、まさに我々が現場と直接繫がっているからこそ得られる情報であり、このアセットがあることで次々と新たなサービス構想が生まれてくるわけです。
では、高齢者の方に新しいサービスを利用してもらうにはどうすべきか。高齢者はその特性として、慣れ親しんだ環境を大きく変えてしまうと認知症が進行してしまうと言われています。ですから、ポイントとしては最先端なテクノロジーを導入しつつも、敢えてハイテクに見せないUIUXが肝になると捉えています。
例えば、アプリのUIUXでは、昔ながらのテレビのリモコンの名残りを留めつつ、スマホの画面をタップすれば心拍数の測定結果がでたり、ごみの収集日や近所のスーパーの情報などが確認できるようなサービス展開も考えています。
我々はこういった発想で、日本でのプラットフォームの展開に加え、さらにこのビジネスモデルを、アジア市場にも拡大させようと進めている最中です。(参考事例:中国天津市に福祉用具レンタル事業の日中合弁会社を設立)
顧客と築いてきた長年の信頼関係を起点に、モダンなプラットフォームビジネスを構築するヤマシタ。いかがだろう。本記事を読み始めた当初は「介護福祉の会社」という印象だったであろうヤマシタが、今では「プラットフォームでレガシーな業界変革を担う会社」という印象に変わってきたのではないだろうか。
子会社や買収で「経営」の機会は増加。
20~30代の経営者志望よ集え
こうしたヤマシタの構想をスピーディに実現していくにあたり、今のヤマシタに不足しているものは「若手の経営人材」だという。
たしかに、先に掲げられたプラットフォーム構想を実現していくには多くの事業家、経営人材が必要なことは理解できるが、その人材登用に至ってはまだまだ伸び代が大きいとのこと。
山下お話しした通り、ヤマシタのビジネスモデルや今後の市場・事業ポテンシャルに関して、我々は確固たる自信を持っています。しかし、これまで対外的な発信を積極的に行なってこなかったため、採用に関する取り組みは徹底的に強化していく必要があります。
ヤマシタの「長期ビジョン2030」では売上規模を年間850億円にする目標を掲げており、その実現に向けて新規事業やM&Aなども積極的に行っていく予定です。
そこで我々が今求めている人財こそが、優秀な若手経営人財なんです。特に、マーケティングや経営企画、事業戦略の経験がある方。他にも、テクノロジーに精通したCTO(最高技術責任者)、社内のDXコンサルタント(BPRができ、戦略が描ける人)、複数言語でのアジャイル開発が可能なエンジニアなども求めています。
志向性としては、論理的思考力が高く、マネジメント能力を備えている人です。「20〜30代のうちに早く経営者になりたい」という野心ある人たちが、あと20〜30人、いや、50人いても良いと思っています。
山下ただし、効率や経済合理性だけを優先するビジネスパーソンには我々の業界はおススメしません。なぜなら、効率を追求するビジネスパーソンのスピード感と、在宅で高齢者のご利用者と接する際のスピード感とでは時間の流れが異なり、コミュニケーションのギャップを感じてしまうと思うからです。
ですので、ビジネスマインドと社会貢献の意識がバランスよく備わっている人が活躍できる環境ですね。
では実際、若手メンバーが経営人材として活躍している事例はあるのだろうか。
山下若手経営人財の採用に乗り出したのが最近のため、まさにこれからなのですが、今後は若手メンバーにも活躍できる機会は積極的につくっていきたいと考えています。事実、2024年4月には入社4年目の若手メンバーが、100〜150名を管掌するマネージャーに就任する予定です。
ヤマシタは現在、従業員数が2,550名(うち正社員が1,650名)で、売上は約300億円規模です。それを基に計算すると、実は一人当たりの売上高はそれほど大きくはありません。しかし、100~150名のチームをマネジメントしながら売上を10〜15%伸ばすことができれば、これはかなりのインパクトになる。大多数のチームをマネジメントしながら事業成長の実績をつくることができれば、先々のキャリアにおいて引く手数多な存在になれるのではないでしょうか。
また、ヤマシタでは事業拡大に向け、年間5〜10件のM&Aにも積極的に乗り出している。そこで買収した会社の経営を若手メンバーが担うといったチャンスも、当然ながら見込まれている。
山下想定としては、入社5年目以降から徐々に子会社の経営を任せていきたいと考えています。
前述の通り、私のキャリアは地方の事業所のM&AやPMI、ターンアラウンド(事業再生)からスタートしました。20代前半から泥臭い経営経験をしてきた私が横についているので、若手メンバーが困難な状況に直面すればもちろんしっかりとフォローアップしていきます。
また、ヤマシタ本体から子会社として出資を受け、事業を成長させた暁には、将来上場する可能性もあるでしょう。一般的なスタートアップでは、事業を拡大するために資金や人財の確保に多くのリソースが必要になりますが、ヤマシタでは自社の資金や優秀な本社機能含めたアセットを活用してスムーズに事業・経営に挑戦することができる。将来、経営人財を目指す人にとっては、コスパやタイパの面でも優れている環境だと思いますね。
「介護福祉=自分には無縁」という人、そんな訳がない理由
最後に、そんなヤマシタが属する介護福祉業界の現状をお伝えしておきたい。
2022年3月末の時点で、日本の要介護認定者数は690万人(参考)に及ぶ。65歳以上の高齢者数がピークを迎える2040年頃の要介護認定者数は988万人に達するとも言われており、その数は現在の1.5培相当になる。(参考)
しかし、周知の通り介護業界も深刻な人手不足に直面している。2025年には約32万人の介護人材が不足すると予測されている(参考)中で、直近2022年のデータでは約6万人の介護人材が減少。コロナ禍を経て、他業界の採用活動が活性化し、結果として介護業界から人材の流出が起きているのだ。
山下今後、高齢化がますます進んでいく中、高齢者が医療サービスを受ける前に、自立した生活ができるよう支援することが重要になっていきます。また、医療費の問題や介護従事者の不足、住み慣れた自宅で過ごしたいという要望などから、在宅介護のニーズは今後さらに増えていくでしょう。
そんな在宅介護者の約6割が、実は福祉用具のレンタルを利用しているんです。しかも、福祉用具レンタルは、在宅介護の中で人件費率(売上に対してかかる人件費)が最も低い。つまり、ヤマシタの祖業こそが、今後の業界変革においても最も重要な役割を担うと言っても過言ではありません。この点に着目し、福祉用具レンタルを起点にご利用者の数を増やし、プラットフォーム経営で福祉・介護市場のシェアを拡大していきたいと思います。
山下前述の通り、オフラインとオンラインを交えた事業展開や、DX、M&A、人的資本経営(EXとCXの組み合わせ)などを経営に取り入れている会社は同業界にはほぼいません。その意味では、ヤマシタは「世の中に存在しないものをつくっていく」集団と言えるでしょう。
だからといって、知見の出し惜しみはしません。先日、福祉用具レンタルの業界団体向けに生成AIの話をする機会があったのですが、ヤマシタの最新の取り組みもお伝えしています。そこで、「なるほどヤマシタはそんな取り組みをしているのか」と周囲に知れ渡った方が、業界全体に対しても良い刺激になると思うんです。
ただし、事業や経営は他社との厳しい競争でもありますので、決して遠慮せず、正々堂々とライバルたちに勝負を仕掛けていき、圧倒的な顧客からの支持を得たいとも考えています。
介護業界の人手不足や介護職員の処遇改善など、介護問題は日本社会の喫緊の課題であることは誰もが知っている。とはいえ、読者の中には、まだ介護福祉業界が自分とは縁遠いものだと感じている人もいるかもしれない。
そんな読者に向けて、最後に山下氏からメッセージをもらった。
山下現在の日本の人口ピラミッドを考慮に入れると、「介護に接点がない人」はほぼ存在しないと言っても過言ではありません。
これから医療費の負担が増えることは確実で、保険料や税金の増加は避けられないでしょう。同時に、生産年齢人口の減少により税収が減少し、若い世代の生活にも必ず影響が及びます。このような状況の中、20〜30代の優秀な人財の力で業界の生産性を上げなければ、日本の未来を考えることは難しいと思います。
また、親世代の高齢化が進むにつれ、若い世代もやがては介護の問題に直面することになります。現時点で介護や福祉に対する実感がない方々も、問題に直面してからでは対応が遅れる恐れがあります。日本は今、世界に先駆けて高齢化しており、世の中で誰も解決していない課題に直面しています。この課題に挑み、解決することには大きな意義がありますし、生み出す社会的なインパクトも大きい。だからこそ、共に力を合わせ、世界標準の解決策を一緒に構築していきませんか?
介護・福祉業界の産業構造に変革をもたらす存在となるであろうヤマシタ。創業から60年以上にわたって信頼を構築してきた顧客基盤の上に、生成AIなどの先端テクノロジーや、EX/CXを用いた組織戦略、そして拡張性の高いビジネスモデルが加わった。そしてそれを主導するのは、業界変革に命を懸ける若き経営リーダー・山下氏。
これだけの環境下で20〜30代のうちから経営の機会が得られるというのだから、事業家・経営者を目指す若手にとっては美味しすぎる環境と言えるのかもしれない。
伸びゆく福祉・介護業界について知る
2/10にヤマシタとオイシックスの対談セッション実施
こちらの記事は2023年12月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
山田 優子
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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