松本 勇気
株式会社LayerX
代表取締役 CTO三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社
取締役東京大学在学時に株式会社Gunosy入社、CTOとして技術組織全体を統括。またLayerXの前身となるブロックチェーン研究開発チームを立ち上げる。2018年より合同会社DMM.com CTOに就任し技術組織改革を推進。大規模Webサービスの構築をはじめ、機械学習、Blockchain、マネジメント、人事、経営管理、事業改善、行政支援等広く歴任。2019年日本CTO協会理事に就任。2021年3月よりLayerX 代表取締役CTO就任。開発や組織づくり、及びFintechとAI・LLM事業の2事業の推進を担当。
いわゆる技術やR&Dを組織として取り組む際に、投資とリターンをどのような基準で設計して計画を引きますか?(特定の領域を選定した際に、どのレベルまで最終的なアウトプットやそこから得られるリターンを具体化するのか、また撤退する際の基準など伺いたいです)
現在いわゆる大企業(社員数1,000名以上)の組織内にて、デジタル化推進プロジェクトに従事しているのですが、主に経営層とのコミュニケーションギャップが理由でスムーズに物事がすすみません。
デジタル化の前に社内政治というかカルチャー変革がそもそも必要なように感じており、一向に進められる気配がないのですが、DMMさんや他社さんではどのように経営層の理解を得ているのでしょうか。
松本 勇気氏の回答
noteなど拝見していますが、結局現在はいきつくところ、オペレーションエクセレンスでしか差別化できないのかな?と思ったりします。技術力が高い、という理由で市場を席巻し続けられるのでしょうか?それとも模倣しやすい現代社会では、テクノロジードリブンのオペレーションでしか偉大な会社は生まれないのでしょうか?
そもそもスケールする事業の根幹には「テクノロジー」があると思っています。つまり、技術力は土台です。その上に、ビジネスモデルや組織マネジメントなどを総合格闘技的に組み立てて出来上がるのが、オペレーション・エクセレンスであり、最終的にはそれでしか勝てないと思っています。
あらゆるものが模倣されやすくなった世の中で、他社と同じものを提供していても勝てる状態をつくらなければいけないとなったときに、この、外部のアナリストからもわからない「差」こそが勝負を分けます。一つ注意しなければいけないのは、「外野からの分析は間違っていることも多い」ということ。グノシーも「技術力がすごいから伸びた」という感想などを見かけることもありますが、実際は「愚直に数字を見続ける、KPIドリブンの組織だったから伸びた」のだと個人的には思っています。
Twitterや各種メディア、個人が発信する企業分析情報はインプットとして非常に有用ですがそれだけでは見落とすものもあるでしょう。どこまでが事実で、どこからが解釈なのか。そして自分はその事実に対してどう解釈するのか、を意識しながらインプットすることが重要です。
松本 勇気氏の回答
私はエンジニアではないのですが、松本さんのように経営者として会社をリードしていけるようになっていきたいと思っています。その上で、何か特定のスキルを極めることと、マネジメントやPL責任を負う経験、どちらを優先すべきでしょうか?
経営者を目指すのであれば、P/L責任はもちろんのこと、B/Sを意識した計画と実行を経験することは重要です。ただ特定スキル or 会計等の経営スキルの二元論ではなく、いかに自分のスキルを伸ばしつつ、会社も伸ばすことができるか、そこをバランスよく調整できることがより重要ではないでしょうか。例えば、自分が何かのスキルをレベルアップさせていくことと、会社の業績が良くなっていくことを両立させていく、というような具合です。
逆にいうと、自分のためにもなるし会社のためにもなる、といったことを自ら見つけられないと、やりたくないけれど組織に求められたことだけをやる人になってしまうか、組織に貢献しないが好きなことだけをやる人になってしまいます。これらのどちらも、経営視点があるとはいい難い状態かと思いますし、結果的に組織から評価されませんよね。
松本 勇気氏の回答
「経営層」と「マネジャー層」をわけるものは何だと思いますか?いま自分は「マネジャー」ですが、どういう経験を積めば、何を意識したら経営人材になれるか聞きたいです。
「経営者になるために」という観点でお答えすると、大事な視点が3つあります。それらは、事業家、投資家、そして人のマネジメントの3つです。つまり、顧客に貢献し、お金を増やし、社員の成長をサポートする。さらにその延長線上で社会にも貢献する。
これらが経営者の 最低限の役割だと思っているので、もしマネージャーからワンランク上を目指しているのであれば、まずは自社の経営者がそれらに対してどんな課題を持っているのか?と、自分なりに戦略・戦術を考えてみることをおすすめします。また重要なのは、経営者目線を意識するだけでなく、実際の自分や周りが実行する施策にまで落とし込み、実行してみることです。
松本 勇気氏の回答
ビジネス、新規事業の立ち上げの際にどこまで具体的にビジネスモデルを組み立ててスタートしますか?
見込みのある・ない事業の見切り方が自分になく、ビジネスを立ち上げる経験をしたいものの具体化が進めなくて未熟な気分が続いてます。
やりたいことありきでスタートして、見えてくるものをロジカルに整理してビジネスモデルを整えるべきでしょうか?
事業モデルに依存するかと思います。例えばECをやるとなった場合は、すでに市場が存在しているので、類似企業の事業モデルやKPIなどを参考にすれば、大きくブレるものではないので計画も立てやすいと思います。逆にVRやARなどの「まだ明確な市場がない領域」は、不確実性が高く決めづらいでしょう。
まだ市場がないケースでは、検証すべきキーポイント(どこでマネタイズの可能性がありそうか、何の代替が狙えそうか、など)だけ決めた上で、走りながら考えるしかありません。そしてこの時に重要なのが、「知識を積み上げる」ということ。小さな仮説を施策として検証しながら、得た結果を積み上げていくことで、最終的にターゲットやビジネスモデル、そしてつくるべきプロダクトが見えてくると思います。