「若者のアイデアを見極めるポイントは仲間の有無」
DMM亀山会長×10代起業家が語る“起業のイロハ”

登壇者
亀山 敬司
  • DMM.com Group 会長 

1961年石川県生まれ。19歳でアクセサリー販売の露天商から起業家人生をスタート。 喫茶店など様々な事業を展開後、1980年代後半レンタルビデオ店を開業。 1999年に株式会社デジタルメディアマートを設立(現:DMM.com)。現在は、DMM.comグループの会長として、動画配信、オンラインゲーム、英会話、FX、ソーラーパネル、3Dプリンター、さらにはAIから農業まで、業界の垣根を越え、多岐にわたり事業を展開している。

山内 奏人
  • ワンファイナンシャル株式会社  CEO, Founder 

2001年に東京で生まれる。6歳のときに父親からパソコンをもらい、10歳から独学でプログラミングを始める。2012年には「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞。2016年にはウォルト株式会社(現ワンファイナンシャル株式会社)を創業。

伊藤 和真
  • 株式会社PoliPoli 代表取締役 兼 CEO 

1998年生まれ、愛知県出身。慶應義塾大学卒業。大学進学後、俳句SNSアプリ『俳句てふてふ』を開発し、毎日新聞社に事業売却。18歳当時、2017年の衆院選で政治・行政と人々の距離が遠いという課題を感じ、2018年株式会社PoliPoliを設立。政策共創プラットフォーム『PoliPoli』『PoliPoli Gov』などを開発・運営。その他、経済産業省の「経済産業政策新機軸部会」や総務省の「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」の有識者委員、現役学生として初めて国立大学(九州大学)の非常勤講師を務める。世界経済フォーラム 「Global Shapers」、経済誌 「Forbes」 日本のルールメーカー30人などに選出。

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10代の起業家の活躍が目立つ。2018年6月、17歳の高校生起業家・山内奏人氏は、レシート買取アプリ「ONE」を発表。2017年10月に1億円の調達に成功した。

トークンエコノミーを活用した政治コミュニティー「ポリポリ」を発表して話題となった伊藤和真氏は、現在19歳だ。2018年5月と7月に資金調達を発表している。

彼らは、いかにして起業に踏み切り、事業をグロースさせていったのだろうか?

そんな疑問に答えるべく、F Venturesが2018年8月に開催した「TORYUMON TOKYO」のトークセッションでは、「起業についてのイロハ」について議論が行われた。

今回、伊藤氏と山内氏に加えて、DMM.comグループ会長の亀山敬司氏が登壇。自らの知見をもとに2人の若手起業家にアドバイスを送った。モデレーターは、ヤフー株式会社の伊藤羊一氏が務めた。

  • TEXT BY HITOMI YOSHIDA
  • EDIT BY TOMOAKI SHOJI
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彼らが起業を決意したサービスとは?

山内氏は、現在17歳の高校3年生。10歳から独学でプログラミングを始め、2012年には「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で、最優秀賞を受賞したという経歴を持つ。2016年に15歳で起業し、ウォルト株式会社(現ワンファイナンシャル株式会社)を創業。2018年6月にONEをリリースした。

ONEとは、ガソリンスタンドのレシートや保険証券を撮影した画像を1枚10円で買い取るサービスだ。アプリ内ウォレットに指定の金額が振り込まれ、好きなタイミングで出金が可能になる。出金先は国内ほぼ全ての金融機関に対応しているという。

当初は「レシート買取サービス」としてスタートしたが、2018年9月現在ではガソリンスタンドのレシートや保険証券に限定して画像を買い取っている。同社はレシートを決済データとして捉えており、そのデータを必要とする企業に販売するビジネスモデルをとっている。

一方の伊藤氏は、現在19歳の大学2年生。F Ventures 東京でアソシエイトをつとめ、プログラミングコミュニティのGeekSalonの立ち上げを経て、株式会社PoliPoliを創業した。CEO兼CMOを務め、ポリポリを運営している。

ポリポリとは、トークンエコノミーを使った政治コミュニティだ。アプリ上では、政治トピックについて議論したり、政治家に提言や質問をしたりすることが可能。ユーザーはスレッドを作成し、政治について議論することができる。良い発言をしたユーザーには独自通貨「Polin」が付与され、反対にコミュニティを荒らすようなユーザーはスコアが下がる仕組みとなっている。ポイント制にすることで、荒れないコミュニティ作りを目指している。

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「集めたお金」と「稼いだお金」は全く違う

2017年9月に1億円を調達した山内氏。トークセッションでは、まず資金調達時の苦労について語った。それを受けた亀山氏は、資金調達後の心構えとして「感覚が狂わないように、気を緩めずにふるまうこと」と謙虚な姿勢を貫くことの大切さを挙げる。

山内プロダクトのリリースまでは、資金調達がなかなかうまく進みませんでした。50社に訪問して1社も投資してくれず、非常に大変だったのを覚えています。リリース後は、ありがたいことにプロダクトが注目されたこともあり、無事に資金調達できました。

どんな起業家にも経験があると思いますが、調達した直後は金づかいが荒くなってしまうんです。狂った金銭感覚を戻そうとするのは、大切なプロセスだと思っています。お金を無駄遣いせず事業を成長させられるよう、日々意識していますね。

亀山「集めたお金と稼いだお金は全く違う」と肝に銘じておいた方が良いですね。そういった起業家は今までにも多くいました。稼いでからが初めて価値となるので、集めた金額は何の自慢にもなりません。

大切なのは調達額ではなく、事業を成長させること。投資家からの調達にこだわらず、最初は親や友人からの借金でも良いと思います。そういう手段もあらかじめ考えておいた方が良いですね。

伊藤僕の場合は、ネットエイジ(現ユナイテッド)の西川潔さんから投資を受けました。西川さんとは、出会い方がおもしろかったんですよ。僕がヒッチハイクをしていたときに乗せてくれたドライバーの方が、西川さんにつなげてくれて。すごく運も良かったと思います。

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「出会い」というチャンスをどう生かすか

そこから、起業をするうえでのチャンスの掴み方に議論は移った。亀山氏は「人との出会い」の大切さを指摘する。亀山氏自身も、多くの出会いを事業につなげてきたという。

亀山偶然の出会いがきっかけになることも多いです。隣でバーベキューをやっていた人や、たまたまバーで飲んでいた人と一緒に事業をしたこともありますね。その時に大切なのは「何をやっているか」と聞かれたときに、「自分が今やっていること」と「できること」をどこまで語れるかです。それ次第で、チャンスを生かせるかが決まります。

また、アイデアは持っているだけでは意味がないので、誰かに伝えたり、アウトプットをしたりしてほしいです。私のところに若い人がアイデアを持ってきたら、話を聞いてとにかく挑戦させるようにしています。それは外部の若者でも、DMMの新卒社員でも変わりません。何かやりたいアイデアがあれば、私のところに持ってきてほしいですね。

伊藤若い人のアイデアを見極める上で、どういうポイントを重視していますか?

亀山仲間の有無です。挑戦させてみた若者たちの中でも、仲間を持つ子は強い。それと今のうちから、いかに信用を育てるかを考えていくことが大切だと思います。仲間と信用ができれば、だんだんと大きなお金を動かせるようになってきます。

信用を育てるうえで、事業を成長させるスピードには気をつけた方が良いですね。一気に拡大しようとすると、詐欺まがいのことをしようとしたり、叩かれてしまったりするので。そうなると、信用は簡単に崩れてしまいます。2人は気をつけていることありますか?

伊藤百戦錬磨の政治家と、僕のような若者がお話しする上では、「僕は天才だ」というような思い込みが必要だと考えています。「革命を起こします」と熱く語ると、政治家の方も使ってくださったりとか、「おもしろいね」という言葉を掛けていただいたりします。

自分が足元でやっていることを語れるのはもちろんですが、未来を作っていく起業家としては「どんな未来を作りたいか」を果敢に語っていくことも大事だと思いますね。

山内僕の場合は、チャンスを生かすために、クライアントをパートナーとして捉えるようにしています。自社で前例がない依頼も、技術的に可能なことであれば断りません。一緒にできる方法がないか探って、成功に結びつけるようにしています。

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周囲の協力を受けながら、まずは「やってみる」

最後は、起業に興味を持つ方へのアドバイスが語られた。伊藤氏と山内氏は、起業の目的化に警鐘を鳴らしつつ、挑戦の大切さを語る。亀山氏は、協力を得ることの重要さを強調した。

伊藤皆さんへのアドバイスとしては、とりあえずやってみることが大事だということです。やってみて、その発信を続ければ、情報も人も、場合によってはお金もついてくる場合があります。起業家が一番とは思っていませんが、やってみたいことがあるとしたら、応援してくれる人は一定数いると思うので、ぜひ挑戦してみてください。

山内僕はあえて、「起業しない方が良い」と言いたいですね。「起業するな」と言いたいわけではなく、視野を広く持ってほしいんです。起業しないとできないことは、ほとんどありません。スモールスタートできそうだったら、まず自分一人でやってみても良いのではないでしょうか。ただ、はっきりとした目標があるなら絶対に起業するべきだと思います。そうでないのであれば、小さく始めてみるという選択肢も検討してみると良いと思います。

亀山目標があるのであれば、本当に挑戦してほしい。私はこれから好きな若者に投資をしながら、搾取するのを目標にしてたい(※)と思っています(笑)。みんなも大人を上手く使ってください。若い人たちは体力と知恵はあるけど、お金はないですよね。だから、挑戦するときは、大人の協力を上手く受けたら良いと思います。そんな感じで楽しくやりましょう。

3人に共通していたのは、資金調達に成功しても謙虚にふるまい、事業の成長をひたむきに追う姿勢だった。起業すること自体が目的ではなく、事業を通しての目標があるからこその姿なのだろう。実現したい社会のあり方とは何か、そのために自分は今何ができるのか考え抜くことが、彼らのような起業家となるには必要なのかもしれない。

※DMM.comは、2018年10月に若手起業家の支援を目的とした100億円規模のファンド「DMM VENTURES」設立を発表した。

こちらの記事は2018年10月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

吉田 瞳

1994年生、上智大学文学部新聞学科卒。PR会社で働きつつ、フリーランスのライターとして複数媒体で執筆中。記事を通して、自然、体験、歴史など、「カタチのないもの」の姿を伝えていきたいです。山が好き。

編集

庄司 智昭

ライター・編集者。東京にこだわらない働き方を支援するシビレと、編集デザインファームのinquireに所属。2015年アイティメディアに入社し、2年間製造業関連のWebメディアで編集記者を務めた。ローカルやテクノロジー関連の取材に関心があります。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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