連載メルカリのバリューを受け継ぐ、8名の起業家たち
リアル店舗を持つアパレルから、世界展開するデバイスまで。
世の中にインパクトを与える“メルカリマフィア”(前編)
アメリカのスタートアップシーンでは、Elon Musk(イーロン・マスク)、Peter Thiel(ピーター・ティール)、Reid Hoffman(リード・ホフマン)など、 PayPal出身の大物起業家が、“Paypalマフィア”と呼ばれ注目されている。FastGrowでも過去に日本の大企業を題材に、サイバーエージェントや博報堂出身の起業家を紹介してきた。だが、まだまだ起業家人材を輩出する企業として注目すべき会社がある。第6弾として紹介するのは、2013年に創業しわずか5年で上場を果たした株式会社メルカリだ。
“世の中にインパクトを与えるイノベーションを生み出すため、全員が大胆にチャレンジし、数多くの失敗から学び、実践します。”(メルカリ「バリュー」より)
「世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げるメルカリの出身者には、リアル店舗を展開するD2Cアパレルサイトの創業者から、弁護士出身で世界進出するメーカーのCCOまで、幅広い領域で活躍する経営者がいた。本記事では、メルカリ出身の経営者を8名を取り上げ、前後編に分けて紹介したい。
- TEXT BY HAYATE KAWAJIRI
- EDIT BY MONTARO HANZO
矢本真丈(株式会社10X 代表取締役CEO)
1987年生まれ。東北大学、同大学院時代はアメリカンフットボールに明け暮れる。大学院卒業後は、丸紅株式会社でカザフスタンの資源投資ビジネスの立ち上げを経験し、仕事への“手触り感”を求め、大震災の復興支援を行うNPOの一般社団法人RCFに転職した。
その後、Googleで「Googleマップ」のPMを務めていた河合敬一氏との出会いから、東北のビジネス復興支援を行うプロジェクト「イノベーション東北」の立ち上げに加わる。また、子供服のECを手がける「スマービー」に参画し、PMを務める経験を持つ。
スマービーが株式会社ストライプインターナショナルに買収されたタイミングで、矢本氏はメルカリに転職。同社の育児休暇期間に、現在のプロダクトにつながる構想を練り、2017年、同じくメルカリ出身の石川洋資氏と10Xを創業した。
株式会社10X
主菜・副菜・汁物のレシピを選択すると、料理研究家や料理教室によるレシピが提案される献立作成アプリ「タベリー」を運営する。ユーザーは献立をつくるだけでなく、買い物リストに追加した1週間分の食材をそのままオンライン注文できる。現在はネットスーパーのみに対応しており、今後は各生協などへの対応も検討しているようだ。
社名「10X」には、「10倍の価値を社会実装したい」という意味が込められている。
森雄一郎(株式会社Fabric Tokyo 代表取締役社長CEO)
1986年生まれ。香川大学工学部在学中に、国内外ファッション情報サイトを立ち上げる。卒業後はファッションイベント企画会社にて、大手アパレル企業のファッションショープロデュースに従事した。その後、不動産ベンチャーの株式会社グローバルエージェンツにて、「ソーシャルアパートメント」の事業開発を担当。
2012年にFABRIC TOKYO(旧ライフスタイルデザイン)を創業したものの、「経営者として次元が違う人から、とにかく学びたい」という想いから、メルカリの立ち上げに参画する。2014年から自事業を本格的に取り組み、洋服のサイズで困っていた原体験からFABRIC TOKYOの前身である「LaFabric」をリリースした。
株式会社Fabric Tokyo
「だれもが自分らしいライフスタイルを自由にデザインできるオープンな社会をつくる」をビジョンに掲げ、カスタムオーダーのD2Cサービスを展開。
ユーザーは首都圏や大阪で展開されている店舗(2019年7月現在、全10軒を運営)で採寸データを登録すると、オンラインでいつでもスーツやシャツを注文できる。サイズに迷うことなく、簡単に身体に合う洋服を入手できるのが特徴だ。また受注生産型で工場と直接取引することで、高品質かつ適正価格を実現している。
高橋京輔(株式会社ドクターズプライム 共同創業者)
慶應義塾大学在学中、創業期のCyberAgent Americaにインターンとして参画し、北米向けスマートフォンゲーム事業の立ち上げを経験。その後サイバーエージェントに新卒入社し、国内大型ゲームタイトルのプロジェクトマネジャーを務めた。
2016年よりメルカリにて、アプリのPdMとして、サービス開発に従事する。2017年、「救急車のたらい回しで亡くなる命をゼロにする」ことを目指し、中学高校時代の同級生である田真茂氏とドクターズプライムを共同創業した。
株式会社ドクターズプライム
「人の健康を阻害する、解決策のない課題を仕組みで解決する」をミッションに掲げ、救急車のたらい回しで亡くなる命をなくすべく、事業を展開している。現在、非常勤の医師の情報を病院に提供するサービス「Dr.'s Prime」を運営。従来の医師紹介方法とは異なり、病院の採用コスト削減に寄与しているという。
岡本杏莉(トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 CCO)
東京都出身。慶應義塾大学法学部在学中、司法試験に合格。大学卒業後は西村あさひ法律事務所に入所し、M&A・コーポレート案件を担当する。2013年からはスタンフォードのロースクールに留学。シリコンバレーでスタートアップ関係者から影響を受け、帰国後の2015年にメルカリへ転職した。同社では日本やアメリカでの法務に加え、2度の大型資金調達やIPOをはじめとするファイナンス・IR関連の業務を担当している。
「自分の担当領域をより広げたい」想いから、2019年、トリプル・ダブリュー・ジャパンに参画。CCOに就任する。代表の中西敦士氏とは留学時代からの知人で、岡本氏は以前から法律顧問として同社のサポートを行っていた。
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
下腹部に装着して体内をモニタリングし、トイレに行くタイミングをスマートフォンやタブレット知らせる排泄予測デバイス「DFree」を開発する。同サービスは、世界最大級の家電・テクノロジーの展示会CES2019にて、複数のアワードを受賞。日本だけでなく、アメリカ、フランスにも支社を立ち上げており、サービスは各国で展開されている。
こちらの記事は2019年09月05日に公開しており、
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執筆
川尻 疾風
ライター・編集者(モメンタム・ホース所属)。在学中に、メルマガ・生放送配信やプロデュース・マネジメント支援を経験。オウンドメディアやSNS運用などに携わったのち、現職へ。起業家やクリエイターといった同世代の才能と伴走する存在を目指す。
姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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