「2024年問題」に直面する建設業界に、未踏採択エンジニアとKaggle Masterらが変革を起こす。プレシリーズAで総額2.2億円の資金調達──株式会社SoftRoid
重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。
FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。
今回は、2024年3月に資金調達を発表したSoftRoidについて、その「横顔」をまとめる。
FastGrow編集部が注目するポイント
注目ポイント1
Kaggle Master・AIエキスパートのDeNA出身 笹木陸氏、ロボットスタートアップで開発部長を務めた曽根大樹氏が、エンジニアとして参画。 また、SLAM技術のリーディング企業「Kudan」で日本事業を統括した千葉悟史氏が、事業開発として参画
注目ポイント2
代表の現場監督経験をもとに、徹底した現場目線のプロダクト開発で高い顧客満足を獲得。本導入後の解約数ゼロ
注目ポイント3
Forbes JAPAN 2024年注目の日本発スタートアップ100選選出
代表を始めとした、同社のメンバーについて
(1)CEO 野﨑 大幹 氏
調達に際してのコメント
今回の資金調達をもとに新規プロダクト「zenshot AI」の開発を加速させます。
既存の「zenshot」と合わせて提供することで、建設業界における生産性改善サイクルを構築し、単純な業務効率化ツールというだけではなく、現場の構造化と業務革新の技術基盤として確立します。
採用強化も進めており、DeNA出身のKaggle MasterであるAIエンジニアや上場AI企業の日本事業統括など人材も集まりつつあります。
プロフィール
慶應義塾大学・大学院にて情報工学を専攻。未踏IT人材発掘・育成事業採択。変形しながら不整地を移動するソフトロボットを研究・開発し、IEEE IROS等ロボット分野の国際会議で複数採択・発表。
卒業後、Arthur D. Little Japanにて、製造業に対する新規事業戦略/中長期戦略の策定支援を行う。2020年7月に株式会社SoftRoidを創業。剣道5段。 建設会社にて数ヶ月間の現場監督見習いを行い、AIとハードウェア技術により現場の課題を解決するサービスの着想を得る。
(2)共同創業者/エンジニア 吉田 岳人 氏
FastGrowからの紹介フレーズ
テックドリブンな組織を支える、東大発AIスタートアップ出身の開発責任者
プロフィール
東京大学・大学院にて知能機械情報学を専攻。深層強化学習によるロボット制御の研究を行い、IEEE AIKEにてBest Paper Award受賞。
卒業後、東大発のAIスタートアップである株式会社DeepXにて建設機械の自動化PJに従事し、アルゴリズムとシミュレータの開発を行う。深層強化学習のOSSの開発にも従事。2020年7月に株式会社SoftRoidを創業し、AI/Web/データパイプラインの開発をフルスタックに行う傍ら、現場サポートや営業を通じ現場理解を深める。
(3)共同創業者/エンジニア 山田 駿 氏
FastGrowからの紹介フレーズ
HCI分野のトップカンファレンスにて発表経験もある、電通出身エンジニア
プロフィール
慶應義塾大学にて情報工学を専攻。3Dプリンタを用いたモノづくりのための設計支援ツールに関する研究を行い、HCI分野のトップカンファレンスACM CHIにて発表を経験。
卒業後、株式会社電通にてナショナルクライアントのブランディングから販促ツール制作に至るまで、制作業務全般に従事。2020年7月に株式会社SoftRoidを創業。
(4)エンジニア 笹木 陸 氏
FastGrowからの紹介フレーズ
AI・データサイエンスに精通したDeNA出身エンジニア
プロフィール
東京大学・大学院にて物理モデルを考慮した機械学習等の研究に従事し、国際学会での発表を経験。卒業後、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社し、データサイエンティストとしてカメラ映像を対象にした機械学習モデルの開発や、ECサイトにおけるレコメンドなどAI導入におけるプロジェクトのPM・コンサルティングなどに従事。2023年11月に株式会社 SoftRoid参画。Kaggle Competition Master。
調達の概要
プレスリリース |
---|
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000108083.html |
調達額 |
---|
2.2億円 |
ラウンド |
---|
プレシリーズA |
主な使途 |
---|
サービス・プロダクトの機能強化 |
採用強化 |
投資家からの評価 |
---|
今回、リード投資家となったのはUB Ventures。創業時から泥臭く現場理解を深めてきた強い信念を持つ経営陣によって、建設現場における労働生産性の飛躍的な進化が実現されることを期待する。 インキュベイトファンドは前回ラウンドに続いての投資。複雑なリアルの住宅建築の現場と最新のテクノロジーを掛け合わせたソリューションであることを評価し、大手顧客と共にSoftRoidの構想が実現しつつあることに期待を膨らませる。 |
関連ポスト
UB Venturesから建築系バーティカルSaaS「SoftRoid」に出資いたしました。
— Osamu IWASAWA@UBV (@osamuiwa) March 14, 2024
労働人口の減少に加えて、労働生産性も低い建築業界。
360°カメラを持って建築現場を歩くだけで、画像処理AIが360°ビューを自動作成するサービス「zenshot」を展開しています。… pic.twitter.com/h652NUFMcL
【出資リリース】
— Incubate Fund (@IncubateFund) March 13, 2024
建築工事の全工程を網羅的に記録するクラウド型AIサービス「zenshot」を展開するSoftRoidが、プレシリーズAラウンドで総額2.2億円の資金調達したことをリリースしましたインキュベイトファンドからも追加出資しております。https://t.co/2FyW94kLxb @PRTIMES_JPより
主なサービス・プロダクト
zenshot
カメラを持って建築現場を歩くだけで画像処理AIが360度現場ビューを自動で作成するクラウド型サービス。ITに慣れていないユーザーでも操作できるよう、データの取得を徹底的に簡便化。 クラウドにアップロードされた360度動画像をもとに、AI/画像処理技術で撮影ルートを分析し、図面と整合。ユーザーは、図面に自動配置されたポイントをクリックするだけで現場各所の360度画像を見られるほか、遠隔確認や隠蔽部を含めた網羅的な現場記録が可能となり、現場巡回の移動時間などによる現場監督の業務負荷を下げることができる。
FastGrow編集部の注目ポイント
代表の野﨑氏を筆頭に、優秀なエンジニアメンバーらが持つ最先端の画像処理・AI技術が用いられているサービス。加えて、野﨑氏は建設会社での現場監督の見習い経験もあり、徹底した現場目線のプロダクト設計によって、サービス提供後1年で全国の工務店・大手ハウスメーカーで導入され始めたほか、本導入からの解約数はゼロと、高い顧客満足度を誇る。
働き方の改善が求められる「2024年問題」に直面する建設業界で、業界や社会の課題解決へと導いてくれるサービスの1つとなるだろう。
採用関連情報
主な募集ポジション |
---|
フロントエンドエンジニア |
ML/CVエンジニア |
採用ページ
代表インタビュー
「建設現場を360度ビューに、ロボット開発の断念がAIによる新事業生む | 日経クロステック(xTECH)」
代表インタビュー
「ロボットの国際会議にも論文採択経験のあるエリート集団SoftRoidが「ロボットを止めた」という決断によって得たもの - xTECH」
こちらの記事は2024年03月19日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
次の記事
おすすめの関連記事
「世界基準の評価」で9億円の資金調達、その理由は“万国共通の課題”と“高すぎるユーザー解像度”──クロスビットとEight Roadsが見据える、“働く”の未来
- 株式会社クロスビット 代表取締役
ベンチャーデット、日本上陸──低金利・株式希薄化なしで資金調達。5つの最新事例に見る、スタートアップ金融の新時代
Exitに向けて直面する「壁」の正体とは?急成長スタートアップ“だからこそ”陥るジレンマ。5名の経営者でその突破法を探求する
- 株式会社 UPSIDER 代表取締役
ファクタリングを用いて事業成長するスタートアップが増加?──多様化するスタートアップ資金調達手法のトレンドや活用を、マネーフォワードケッサイに訊く
- マネーフォワードケッサイ株式会社 ファイナンス審査本部 本部長
コンパウンド化への切り札が、デット・エクイティの両刀使いだ!三井物産グループを引き寄せたシリーズB15億円調達の裏側をhokanCFO大竹が語り尽くす
- 株式会社hokan 執行役員CFO
決め手は、経営陣全員の圧倒的エグゼキューション能力──MGPとUTECからシリーズBの評価・累計26.8億円調達した、X Mileのポテンシャルとは
- UTEC 取締役COO パートナー/マネージングディレクター
2023年、資金調達もキーワードは“多様性”だ──事業視点から、マクロ/ミクロに見る資本政策の移り変わり
「PMFまでの苦しい時に、資金と希望を与えてくれた」──ジェネシア・ベンチャーズ × KAMEREO、Tensor Energy、Malmeの3対談にみる、“シード期支援のリアル”
- 株式会社ジェネシア・ベンチャーズ