バーティカルSaaSは“現場業務のプロ”ではなく、“業界変革のプロ”であれ──。“逆張り”で保険業界のペインに挑むhokan。CTO横塚×CPO阿部が明かす、真の顧客のペインを捉えたプロダクトの作り方
Sponsoredユーザーの課題に寄り添い解決に導くため、プロダクト開発においてはしばしばユーザーの現場に入り込み、その分野の専門性をひたすら身につける開発者は少なくない。
しかし、保険業界のアップデートを目指し、InsurTechSaaSを開発するhokanは、この限りではない。「保険のことはわからない。保険商品を売れと言われても、自分には絶対に売れない」と平然と言ってのける。“保険のプロ”でなく、あくまで「プロダクトで保険営業を抜本的に効率化・デジタル化していくプロ」。それゆえ、「現場のペインを把握して開発につなげれば、保険のことがわからなくてもいいプロダクトは開発できる」と話す。
着実にテクノロジー活用やデジタル化が進む銀行や証券に比べ、保険は金融関連領域の中でも最もレガシーな業界と言われている。同社はそこにビジネスチャンスを見出している。保険営業の適正化をすることで生み出されるビジネスインパクトは大きい。社会貢献はその「結果」だ。はじめに社会貢献ありきではなく、結果を出した先にこそ、社会貢献・社会変革がある。そう考え、同社は実直に保険業界の「あるべき姿」を描き、理想主義のプロダクト開発を進めてきた。
こうした姿勢を、少し傲慢に思う読者もいるかもしれない。しかし、彼らの発言の裏側には、並々ならぬプロ意識がある。
保険業界をアップデートするために、いわば「逆張り」で責めるバーティカルSaaS hokan。その事業の優位性やおもしろさ、また見える先の世界について、同社取締役CTO横塚氏、執行役員CPOの阿部氏に話を聞いた。
- TEXT BY TOMOKO MIYAHARA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
保険営業そのものではなく、保険営業の「ペイン」にひたすら向き合う
スタートアップのプロダクト開発、とりわけバーティカルSaaSでは往々にしてユーザーの現場に入り込み、現場並みの専門性を身につけたうえで使いやすいプロダクトをつくる試みがなされる。これに対し、「僕のやり方は真逆ですね」と率直に口にするのは、hokan執行役員CPOの阿部隼氏だ。
あえて定石の“逆”を行く。その意思決定の背景には、保険業界そのもののユニークさが関係しているという。
阿部あまり知られていませんが、保険業界は非常にユニークなところです。
まずわかりやすい点として、現時点で保険事業全体の市場規模が約38兆円と規模がものすごく大きい。
また、保険は銀行や証券といった他の金融業と比べてレガシーな業界で、テクノロジーも浸透していません。調査会社IDCによると、保険会社の約62%は従来のレガシーシステムのみで主要ビジネスを運用しています。
そして、保険のセールスパーソンは、優秀な方だと1人で年間数千万〜数億円の売上をつくれてしまうんです。そんな人々が全国各地に分散して存在しているというのは非常にユニークなところだと思います。
なのでうまく入り込み、一人ひとりの業務を抜本的に効率化してしまうことで、新たに大きな市場をつくることができる。そんな大きなビジネスチャンスと捉えて最適化を図る、誤解を恐れずに言えば、ある種「ゲーム」のようなものだと私は捉えています。
実直に取り組むことで保険業界の適正化が実現すれば、ビジネスインパクトが大きいだけでなく、社会貢献度も高くなる。僕個人としては、社会貢献は後付けであって、ビジネスで結果を出してこその社会貢献、社会変革なんだとすら思っています。
そう語る阿部氏は、そもそも、保険は未だ「身近な存在」にはなっていないと言い切る。
阿部僕は正直、保険商品についてはわかりません。保険商品を売ってこいと言われたところで、絶対に売れない。だから保険営業のプロにはなれません。その代わりに、保険のセールスパーソンの業務を効率化することに重きを置いています。具体的には競合が「事務管理のツール」に注力する中で、我々は「営業現場がノーストレスで効率化されるプロダクト」をつくる。
つまり、営業パーソン一人ひとりが抱える「めんどくささ」といったペインを解くことが最重要なんです。もちろんその結果として各社の事業全体がしっかり管理されるところまでつなげていますが、前提として最重要なのは「管理」じゃないんです。数学の公式の意味はわからなくてもテストで100点が取れるのと同じだと思います。
阿部氏はこうも自身の保険商品の知識について謙遜するが、もちろん裏側では、保険業法や保険営業のプロセスを研究し尽くしている。取締役CTOの横塚出氏は、そうした裏での努力を間近で見ているメンバーの1人だ。
横塚多くのスタートアップの逆張りをいく。それはある意味、阿部だからできることだとも感じます。これまで何百から何千もの保険代理店で働く人たちと直接対話してきて、代理店のあり方や業務についても誰よりも強く理解しています。代理店の「あるべき姿」を、日本で一番深く語れる人物だと思っています。
あくまで、保険営業をプロダクトで効率化・デジタル化していくプロであろうとする。誇張して言えば、「保険営業を知り尽くそう」と横道に逸れることなく、まっすぐに保険営業のアップデートに向き合っているのが阿部氏であり、hokanの姿勢だ。
「市場規模よりも個人の資産」。
保険のセールスパーソンに重きを置いたプロダクト
日本は世界有数の保険大国であるものの、InsurTech企業数が海外より非常に少ないとされている。その背景には、保険業の厳しい規制や、柔軟・迅速に変更できないレガシーなITシステムなどさまざまな要因が指摘される。また、特筆すべきは、スタートアップとしてこの領域に挑む企業がほぼ存在していないことであろう。
一方、hokanが挑む保険というマーケットは実に大きなビジネスポテンシャルを秘めている。
横塚海外と日本では、保険営業のあり方が大きく異なります。海外はいわゆるブローカー制度で、保険会社と顧客のあいだに立って保険契約の仲介を行う。日本の営業の仕方とは大きなギャップがあります。
こうした大きなギャップがあるからこそ、海外のInsurTechが日本に参入しようと思ってもその障壁が高い。ですから、しっかりと国内シェアを取っていけると考えています。
2017年、InsurTechのスタートアップとして創業したhokanは当初、代理店に対し、顧客がどんな保険を契約し、どういう保障内容で、どう資産形成しているかをビジュアライゼーションするサービスを提供していた。
しかし、そもそも代理店ではビジュアライズすべきデータが正しく管理されておらず、サービスはうまくフィットしなかった。そうした気づきから生まれたのが、「適正な営業活動」と「組織の強固な監査体制」を実現するクラウド型保険代理店システムhokan®』だ。
『hokan®』のプロダクトの立ち上げタイミングからジョインし、このプロダクトの事業責任者を務めてきた阿部氏は、hokanにジョインする以前は全く保険業界に対する理解はなかったという。そこからどのようにして、『hokan®』というプロダクトのリリースに至ったのだろうか。
阿部最初の2〜3年は保険会社と代理店のコミュニケーションや保険業界のデータの流れを掴むために、マーケティングコストは一切かけず、とにかくプロダクトづくりに集中しました。他社のSaaSと比べるとかなりの時間がかかっていると思います。
私が保険に関する知識に乏しかったこともあり、そもそも「保険とはなんぞや?」から入り、保険の契約データ、代理店と保険会社のコミュニケーションの取り方、データの流れなどをつかむことに相当時間を費やしました。
2020年頃になってようやく納得できるプロダクトができて、大々的にリリースしマーケティングを開始しました。現在、直近でプロダクトを使っていただいているID数は6,000以上。直近でもさらに数千ID増加する見込みです。リード数も、リリース時から5倍、10倍と非連続的に伸びています。
『hokan®』のプロダクトリリース後も、順調に事業が伸長した背景には、保険業法の改正があったのだという。
阿部2022年5月9日から施行された改正保険業法は、保険業務の適正化を促す目的で施行されたんですが、これによって代理店側で管理すべきことがものすごく増えたんです。
いちいち意向管理の紙を書かなきゃいけないなど、セールスパーソンの業務範囲はさらに広がり、より煩雑になってしまいました。さらに、保険業界ではDX化が進んでいませんので、これまで紙やExcelで契約データを管理していた代理店が、従来のやり方では回らなくなってきたんです。
法改正により生み出されたシステム化・デジタル化のニーズが高まる前から『hokan®』というプロダクトをリリースできていたからこそ、「いま」の事業成長があると思います。あの頃、寝る間も惜しんで毎晩、保険営業についてキャッチアップしてきたことは間違いではなかったと感じますね(笑)。
事業の展開領域を論ずる際、市況感や市場規模はよく語られる。市場規模が大きく、かつ社会課題を抱えている業界は保険以外にもさまざまあるが、そもそも保険業界に縁もゆかりもなかった阿部氏が保険業界、とりわけ保険代理店営業におもしろさを感じる理由とは一体何だろうか。
阿部僕はもともと前職でERP導入による業務改革や経営改革に従事していて、いろんな企業さんとお話をする機会があったんです。その経験から、やはり個人が大きな資産を持っているフィールドで商売を行うことが筋の良いやり方では?と感じるようになりました。
そこで、興味を抱いたのが保険というフィールドだったんです。先ほども話したように、保険のセールスパーソンって、1人で数千万円〜数億円稼ぐ方がざらにいる世界なんです。
でもそのセールスパーソンの多くが、自分の人脈をたどって新規顧客を紹介してもらうといった非効率的な営業プロセスを踏んでいる。また、営業のためのものすごいスクリプトが用意されているわけでもありません。そもそも個人事業主や中小企業レベルの組織が多く、バックオフィスも機能していないし、みなさん属人的に営業をしているんです。
保険以外の業界でも、こうした営業のプロセスに良いサービスを当てて適正化して、その対価を得るビジネスモデルがあると思います。一方、その対価として例えば同じ1割取るにしても、一般的なセールスパーソンとして500万円を稼いでくる人と、保険のセールスパーソンとして1億5千万円を稼いでくる人とでは、利益のインパクトが段違いですよね。これが保険業界のビジネスのおもしろさだと思います。
「保険」は身近にあっても、自分ごと化しにくいもの。この記事を読む読者のなかには、保険になじみのない方のほうが多いかもしれない。しかし、これまでに述べてきたように、保険業界が持つポテンシャルの大きさや置かれているフェーズには、意外にもわかりやすい魅力も多い。
横塚前述したように、保険業界のマーケットは魅力的です。たとえば、日本は保険加入率がものすごく高い。グローバルで見ても日本の保険市場は大きいのに、その割にデジタル化が進んでいません。
2016年に保険業法の改正があった際は、「この先3年ほどは様子見期間だな」という雰囲気がありました。例えるなら、「廊下を走らない」というルールがあって、それを破ってもせいぜい先生に注意されるくらいのレベルだったんです。
それが2019年、2020年頃からは本格的に対応が求められるようになった。自分たちはいま、その渦中の中心として存在し、リードできている感覚があります。「いまこの課題を僕らが何とかしなければ」という使命感と、先陣を切って走っている感覚。そんなおもしろさがありますね。
単なる事務管理ではない、営業職が「使いやすい」プロダクトを磨き続ける
2020年のプロダクト刷新からここまで破竹の勢いで伸長を続けるhokanだが、ただ保険営業のプロセスを研究し、業法を勉強してプロダクトをつくるだけではここまでの成長はなかっただろう。やはりその要因は、阿部氏が前章にて語った、保険業法の改正というタイミングをしっかりと先取りし、適切なプロダクトを当てられたことにある。
阿部保険業法に対応した業務に対して他社が提供するシステムは、事務管理システムの要素が強いんです。セールスパーソンとしての顔を持つので僕もよくわかるんですが、営業する人間にとって事務管理システムって正直言って“イヤ”なんですよ。営業中にバックオフィスの人間から「この書類出てないよ」と通知されてもすぐに対応するのが難しい瞬間てよくありますよね。
競合他社はここに対して、セールスパーソンをガッチガチに管理する仕組みを提供しているんです。でも会社の利益を稼ぎ出すのはやはり営業職。つまり、この人たちが「面倒だ」と思うシステムをつくってしまうと、そのうち使われなくなってしまうんです。
我々はそこを逆手にとって、セールスパーソンに重きを置いてプロダクトの開発を行っています。事務員が求めるUIと営業職が求めるUIはまったく違う。セールスパーソンにとって高い操作性を磨き続けている点が強みの1つではないかと思いますね。
事務員でなく、セールスパーソンに重きを置いたプロダクトづくり。前章でも触れた通り、「セールスパーソンが1人当たり数千万円〜数億円稼ぎ出す」という実態に着目してビジネスを展開しているからこその必然とも言える。
とはいえ、保険業界のDXを推し進めるために、スタートアップが外部から参入することは難しい。参入できたとしても、業界の慣習や保険業法を理解し、かつ技術力を集めてプロダクトに落とし込むのは至難の業だ。それをやってのけるところにhokanの凄さ、強さがある。
横塚現状保険業界には、参入障壁の高さから競合となるスタートアップ企業はほとんどいません。また、競合となりそうな企業の多くが外部のエンジニアに開発を任せているようで、「InsurTechプロダクトの開発ノウハウ」という観点では負ける気がしません。
というのも、当社は社内でエンジニアを自社で抱え、プロダクトをほぼすべて内製化しているからです。どこに課題があるのか、その課題にどのように向き合うのかをしっかり議論しているので、リリースまでのサイクルも短いですし、できあがるものにブレが生じません。
また、エンジニア一人ひとりが保険代理店業務に対して、阿部に負けず劣らず強い興味関心を持って取り組んでいることも強みの一つですね。いわば、開発組織が保険代理店DXのプロフェッショナルエンジニアになっているんです。
保険領域に限らず、ほかのバーティカルSaaS企業は制度面、法律面に関してロビイング活動に注力する場合もある。しかし、同社は“あえて”それをしない。なぜなら、早かれ遅かれ実現される“本来あるべき業界の姿”、つまり「当たり前の方向」に向けて取り組んでいれば、結局潮流の中に身を置くことになるからだ。
しかし、阿部氏らが業界の外から見ると保険業界はこの「当たり前の方向」になかなか向かっていないという。良いプロダクトをつくるのはもちろんだが、代理店も変わらなければならない。それを導くのがhokanのプロダクトが持つ意義だ。
阿部保険業界は、まず意識の持ち方から変えていかなければ、一生変わらない。だから僕は、金融機関に行くときにもあえてジャケットを着ていかず、ラフな服装で臨みます。それくらいのことを受容してもらえなければ、きっとデジタル化を進めるために必要な意識変化なんて起きていかない、というくらいの気持ちでいます。
一般的なセールスパーソンではお客様の顔色を伺うものだと思いますが、僕は保険業界をアップデートするためならたとえ耳の痛い話でもガンガン伝えていく。プロダクトを売り込むよりも、現場の変革を指導する気持ちで向き合っています。
こうした尖り方は、一部の読者の目にはいささか傲慢に映るかもしれない。しかし、阿部氏の振る舞いの裏側には、高いプロ意識がある。
横塚阿部は、競合となるシステムはバーティカルだけでなくホリゾンタルまで、CRM領域で言えば海外のシステムまで、すべてチェックしています。最初はそうしたところを参考にして学習しつつ、つくったプロダクトをお客様に当て、改善を重ねてきました。だからこそいいプロダクトができる。市場に受け入れられるのだと思います。
業界におもねることなく、自分たちが保険業界の業務を、意識を変革する。阿部氏と横塚氏のこのブレない姿勢が、hokanのプロダクト開発の原動力となっているのだ。
業界変革を起こすには、「変革を促すプロダクトをつくるプロ」であれ
セールスパーソンにとって使い勝手のよいUIであることにこだわり、かつ、エンジニアを内製化する。そうした競合を寄せ付けない同社のプロダクトは、既に保険業界のさまざまな課題を解決している。(hokanの導入事例はこちら)
横塚 コンプライアンスに関する規制が年々厳しくなるに伴い、セールスパーソンには自身の営業活動と合わせて整合性あるエビデンスを残すことが求められるようになりました。その分もちろん事務作業は煩雑になっています。
営業メンバーをこうした煩わしさから解放するため、スマホでより直感的に操作できる『hokan®』の導入を決めてくださる保険代理店が多いですね。
結果、事務作業に割かれる時間が軽減し、保険契約者との面談の質も向上。それが最終的には、契約継続率の上昇にも繋がりますので、保険代理店の利益にも、セールスパーソン個人の成績にも直結します。
また、その他、ダッシュボード機能でセールスパーソンの活動を可視化することもできるので、そのセールスマンにとっての商材、マーケットの向き不向きを把握できるようにもなりました。会社側からセールスパーソンに得意とする分野を提案するなど、最適な人材配分も可能となったのです。
ダッシュボード機能でセールスパーソンの営業活動を可視化し、募集の質向上を実現したケース(詳しい記事はこちら)を参照いただきたい。
これらは、まさに同社が推し進める「保険代理店業務の効率化」の好例だ。
繰り返しになるが、hokanは保険代理店を「あるべき姿」にアップデートしようという意識を高く持ち、推進しようとしている。バーティカルSaaSをもって特定の業界に変革を起こすには、必ずしもその業界のプロである必要はないということだ。
「業界変革の仕組みを提供するプロダクト」をつくるプロであること。バーティカルSaaSで業界変革を起こすには、そうしたプロフェッショナリズムを突き詰めることが重要。阿部氏や横塚氏の考え方、姿勢には、それが色濃く表れている。
結果的に、hokanには、しっかりと売上を追求し、結果として業界を変えるような骨太なビジネスがしたいと考えるメンバーが集うという。
阿部僕らの組織には、トレンドだからという理由でSaaSをやりたいと言っている人は一人もいませんね。あくまで“SaaSも手段”なんです。
同じように、社会貢献も目的ではなく「結果」。はじめに社会貢献ありきではなく、結果を出した先にこそ、社会貢献・社会変革があります。hokanのメンバーはそう考え、実直に保険業界の「あるべき姿」を描こうとするマインドを持つ人が多いなと思います。
「新興市場」「衰退市場」に目を向けてSaaSをコンパウンドすることが今後のミッション
プロ並みの業界知識を取り入れることに注力するのではなく、あくまで「業務変革を促すプロダクトづくり」のプロに徹し、ビジネスで結果を残す。そうした強い姿勢で保険業界のアップデートに取り組む、hokan。上記でも述べたように、保険業務の適正化が進むこのフェーズだからこそ、今後の展開からますます目が離せない。
例えば、膨大な数に及ぶ保険業界のデータの「複雑性」「機密性」「永続性」にどう向き合うか。エンジニアとして、ビジネスパーソンとして、実にチャレンジングな領域だ。
この先も事業成長が見込まれるなか、阿部氏は今後のミッションとして、事業をコンパウンド化させていくことを掲げている。
阿部hokanはもともと1つだったプロダクトを6つのオプションに分割しています。1つのお客様が当社の複数のプロダクトを導入するマルチプロダクト構想のもとにこうした分割を行って、足りない機能をあとから追加する形をとりました。
バーティカルSaaSはある程度「面」を取らなければいけないんですが、我々はバクラクさん(LayerX)やSansanさんのように業界を広げていく戦い方ではなく、同じ保険業界の新興市場や衰退市場にアプローチをしようとしています。
新興市場は、例えば電気自動車ですね。電気自動車は今後加速度的に増えていくと思っていて、そのなかで、カーボンレスを追求する動きもある。一方、衰退市場としてたびたび挙がる話題が、代理店の廃業です。跡継ぎ問題で後継者が決まらず、店舗を廃業せざるを得ないことがある。こうしたとき、時価総額の算定などのサポートを展開したいと考えていますね。
同社は「中長期計画−事業構想−」のなかで、保険流通の最適化・活性化に向けて、保険業界のサプライチェーン全体で事業機会を創出することを謳っている。保険業界には代理店だけでなく、契約者や保険会社が存在する。バリューチェーンの上流が保険会社だとすれば、下流は契約者。そこにどうビジネスを展開していくか、仕掛けるタイミングを虎視眈々と狙っている。
横塚いずれは保険業界のバリューチェーンの中で、上流から下流までを一気通貫で支援できるプロダクトができればと思っています。
とはいえ、まずは保険代理店様に喜んでいただけるプロダクトを目指すこと。例えば、「hokanのツールを使っている代理店はしっかり契約管理ができている」と可視化できれば、保険会社から見て信頼感が増すでしょう。保険契約者の視点からも、「hokanのシステムを使っている代理店なら、自分の情報を安心して提供できるし、事故が起きたときの対応が早くて嬉しい」と感じていただきたい。
代理店様にしっかり価値提供することで、さまざまなステークホルダーに喜んでもらえるようなプロダクトをつくり込んでいきたいですね。
そのためには、保険以外の業界からのメンバーのジョインも大歓迎だ。
阿部例えばECやサービス業など、デジタル化が進んでいる業界で活躍していた方に参画していただきたいですね。彼ら彼女らが前職で向き合ってきた「当たり前」が、当社では「当たり前」ではないこともある。保険業界以外で活躍していた人材の「当たり前」をどんどん輸入していきたいです。
市場規模が大きな割に、競合の参入が少ないInsurTech領域。横塚氏が述べたように、「保険代理店営業を効率化するマーケット」には大きなビジネスチャンスがある。一方で、阿部氏が危惧するように、業界を挙げて意識を変えていかなければ業務変革の芽は育たない。
また、「レガシー業界の変革を叫ぶなど生意気だ」と逆風が吹きかねない中、阿部氏はハッキリと「変革を指導する気で立ち向かっている」と言い切る。そんな姿勢にもhokanの本気を見て取ることができるだろう。
保険業法が改正され、業務の適正化に向かって動き出すフェーズにあって、その中心で保険業界の変革に挑む。我こそはと思う方は、ぜひこの挑戦の波に乗ってみてはどうだろうか。
こちらの記事は2023年10月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
宮原 智子
写真
藤田 慎一郎
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