医療DXに不可欠な「患者とのタッチポイント」に、最も深く入り込むサービスがこれだ──圧倒的なMoatを築きつつあるLinc'wellの戦略とは
Sponsored都心のオフィス街、スマホ一つでクリニックを予約し、昼休憩に診察を受けるビジネスパーソン。遥か彼方、自宅で子育てに忙しい母親が、スマートフォン越しに同クリニックの医師と顔を合わせる。オンラインでもオフラインでもクリニックは同じオペレーションのもと診療を行うことができる──。そんな夢物語のようなこの医療体験は、もはや現実のものとなりつつある。
このイノベーションの先頭に立つのが、Linc’wellだ。2018年創業以来、累計資金調達額は122.3億円にも及び、彼らの挑戦は医療業界に新たな息吹を吹き込んでいる。
その象徴が、同社が支援する医療機関クリニックフォアである。全国主要都市に11院を展開(2023年11月末時点)、15分のWEB予約診察、そして院間カルテ共有による利便性を追求……。
同社発のプロダクトの累計登録者数は100万名以上(2023年11月末時点の、クリニックフォア及びリンクウェルの提供するサービスの累計登録者数)まで増え、今後もさらなる事業の拡大が期待される。
最大のユニークネスは、医療の“本丸”とも言える「診察」への革新的アプローチだ。患者一人一人に合わせたオンライン診療から始まり、一連の医療体験をデジタル化し、根本から変革をもたらそうと試みているのだ。
このチャレンジを、無謀に思う読者もいるかもしれない。しかし、読後はLinc'wellがもたらす医療の未来を待ち望むはずだ。
一筋縄ではいかない医療業界、そこでイノベーションを巻き起こすLinc'wellのチャレンジをとくとご覧あれ。
- TEXT BY REI ICHINOSE
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
医療の“本丸”でイノベーションを起こす
病院や調剤薬局での長すぎる待ち時間、あるいはクリニックの予約の取りにくさなど、“患者体験”と総称できるこれらの体験に課題を感じたことのある人がほとんどだろう。だが一方で「もはやしょうがないもの」だと諦めている人が大半かもしれない。
もちろん最近ではWeb経由の予約システムやオンラインカルテの導入も進んでいる。だが実際にクリニックの中を覗いてみればやはり「紙」が多く存在しており、院内業務のほとんどがアナログなままだ。クリニックで日々使われているツールやシステムはそれぞれが独立していて、例え一部を変えても全体としてなめらかな患者体験は実現しない。
ならば、デジタル化された医療体験をゼロから創ろう──。そんな前例のない挑戦をしているのがLinc'wellだ。
山本「医療DX」というと、既存の医療機関が担っている一部の機能、例えば「予約」「問診」「オンライン診療」「決済」などに対して個別にプロダクトやソリューションを提供する例が多くなっています。もちろんこれらも非常に重要で、未来に向けて必要なアプローチだと思います。
ですが、我々は異なる戦略を取ることにしました。それは、「新たに生まれるクリニックのデジタル化を、ゼロからまるごと請け負うこと」です。これこそが医療のど真ん中でイノベーションを起こすことだと考えました。
こうした前例がなかったのは当然のことかもしれない。医療機関の全機能のデジタル化を実現するためには、ユーザーである患者側の視点だけでなく、事業者である医師・看護師・医療事務の動き方の現状や課題を詳細に理解しなければならない。
だが、この困難を乗り越えた。それが東京都心を中心に11院を展開するクリニックフォアだ。その全院に基幹システムを提供しているのが、社内に医師・看護師・薬剤師等のバックグラウンドを持つ医療のプロフェッショナルと、洗練されたプロダクト開発を実現するチームが集結しているLinc'wellというわけだ。
このシステムを軸に、オンライン診療システムや電子カルテなど、一気通貫でデジタル化された状態を構築しようとしている。類を見ないこの戦略と実行が、これから医療業界にイノベーションを起こしていくための“本丸”になるはずだと力を込める。
山本「言うは易く行うは難し」とはまさにこのことで……医療に限りませんが、実店舗で行われるビジネスというのはデジタルやオンラインだけで完結しません。そのため、“如何にユーザーにとっていい体験を提供できるか”という課題に対しては、プロダクトを作る側が現場のオペレーションを深く理解する必要があります。
医療のさらに難しいところは、様々な規制やルールがあり、他の業界で当たり前にできることができなかったりすることにあります。加えて、長らくアナログな環境で働くのが当たり前な世界であったこともあり、医療のデジタル化はハードルが高くなっていると感じます。
それでもなお、患者のUXにこだわった医療体験を目指し、丸ごとデジタル化するアプローチを取ることにこだわったのはなぜか。
山本二つの理由からです。まず、日本では一刻も早く医療業界にイノベーションを起こす必要性があること。高齢化が進んで社会保障費が増える一方で、少子高齢化により財源は減り続けます。今の体制は早々に限界を迎えるため、より少ない負担で、幅広く医療を提供できる仕組みが求められます。
次に、自身が患者として通院した際に、このような体験をしたい、というシンプルな理由です。せっかく医療業界のイノベーションを目指すなら、自身が感動できるようなサービスをいち早く創り、共感の輪を広げていくかたちを目指したいと思い、今のかたちにたどり着きました。
三宅山本の言う通り、クリニックのDXを一気通貫で行うことはものすごくハードルが高いです。しかも今まで紙での作業が当たり前だった世界から、デジタル化やオンライン診療を当たり前のものにしていくわけですから、実現できるかどうかも、それが医療従事者の皆さんやユーザーである患者さんが受け入れてくれるかどうかも、わからない部分が大きい。
それでも、患者さんが触れる部分に限らず、医療現場も含めたデジタル化をする選択をしました。なぜなら、全ての医療は「診察」から始まるからです。自分たちが最前線で、医療の本丸である「診察」に関わるオペレーションを向上できる状態に携わることが、業界全体にイノベーションを起こすプラットフォームの構築には必要不可欠だと考えています。
もちろん、医療業界にイノベーションをもたらすうえで、個々の課題を解決できるSaaSのようなツールを提供する方が良いのか。それとも、我々のように現場から課題を解決するアプローチが良いのか。正直どちらが正解なのかはわかりません。まだ道半ばだからです。
それでも、「診察」を起点にすれば、ビジネスとしての可能性も大きく広がり、我々の目指すプラットフォームの価値も高まると感じています。
一方で、なぜこの大規模なイノベーションを、大手企業や行政ではなく、スタートアップのLinc'wellが担おうとするのか。三宅氏は「資本の本質」という視点から、スタートアップだからこそ医療分野でのイノベーションを実現できる可能性があると語ってくれた。
三宅医療業界のイノベーションは、実はスタートアップこそが担える挑戦だと思っています。患者さんに選択される体験や、医療従事者の仕事効率を高めるツールを創り出すには、優秀な人材に集まってもらう必要があります。
そのためには資本が必要であり、資本を集めるためには投資家にリターンを提供しなければならない。つまり、プラットフォーム自体が価値あるものにならないといけないのです。
世界をリードするビッグ・テックが保有するプラットフォームも、ユーザーとサプライヤーを結ぶ事で大きな価値を生み出しています。我々も規模ははるかに小さいですが、行政、患者さん、医療従事者の皆様に利便性を提供していくことを通して、事業としても価値を創造できるのではないかと考えています。
ただし、テクノロジー基盤の構築や事業化の過程にはリスクが伴うので、行政や大手企業だとなかなか手をつけづらいのだと思います。我々スタートアップだからこそ、リターンのためにリスクをとる「資本の本質」を味方につけることで、行政、患者さん、医療従事者の3方良しをサステナブルに実現する、価値あるプラットフォームの可能性を模索できるんです。
実際に、元ヤフー社長の小澤隆生氏はLinc'wellの創業時から、その他にもインキュベイトファンド、DCM、ベインキャピタルなど名だたる国内外の機関投資家から出資を受けており、期待値は高い。
山本最近、投資家の皆様が我々に懸ける期待のレベルが変わってきた、と感じています。2018年の創業当時は「病院は不便だから、デジタル実装した病院があればいいな」という期待。今は「Linc'wellこそ、医療業界にイノベーションをもたらす」と、高いレベルで期待されています。
先にも述べた通り、医療体制は少なくとも今のままでは成立し続けるのは難しいと考えています。実際、何かと規制が多いこの業界においてもルールは変わり続けており、今後も今以上に市場の競争が白熱することは目に見えている。そんなとき、クリニックという「本丸」を押さえている私達の強みが今以上に発揮できると考えています。
医療業界が抱える課題を点でなく面で捉え、解決に導こうとするLinc’wellは、まさに“スタートアップならでは”の戦略と言えるだろう。では、Linc’wellが目指す価値ある医療プラットフォームは、誰を幸せにするのか?医療業界が抱える課題を、行政・医療従事者・患者とそれぞれの視点を交えながら見ていこう。
行政・医療従事者・患者。
それぞれが抱える課題とは?
「医療業界の課題」という言葉が何度も登場しているが、その正体とは一体何なのだろうか。
両氏曰く、行政、医療従事者、患者の各方面で、それぞれが直面する課題が絡み合っているという。まずは行政が抱える課題を、具体的な数値を元に捉えたい。
2022年度の医療費はなんと“過去最高”の約46兆円。4人に1人が65歳以上となる高齢者の時代。30年後にはさらに増え、約2.5人に1人が65歳以上となる予測があるにもかかわらず、2022年の出生数は“過去最低”の、80万人を割る数値となっている。
高齢化が進行し、医療費*が増大する一方で、少子化により経済基盤は縮小する。この現状こそが医療業界の大きな問題であり、行政の観点からみた深刻な課題である。
三宅日本の財政収支の状態を、1人の人の家計に例えると、「年収500万円の人が年収800万円の人と同レベルの暮らしをしている」という状態。しかも、足りない300万円分は本人ではなく子供や孫が返済しなければならない。私たちはこんな状態を何十年も続けてしまっているんですよね。医療費はその中でも最も大きな支出の一つです。
山本日本の医療制度は、患者視点で見れば海外に比べて恵まれている点もあります。というのも、日本の医療体系は行政の手により一律に制御され、「診療報酬制度」に基づく点数表で医療費が定められています。これにより、全国民が公的保険によって一貫した医療を享受できるのですが、どうしても医療提供者の経済的インセンティブは限定的になりがちなんです。
他国のケースとしてアメリカの医療制度を見てみると、個々人が加入する保険プランによって大きく差異が生まれています。プランによっては、保険料の高さ、カバー範囲の広さ、自己負担額、扱いが異なり、結果として通える病院や受けられる治療に格差が生まれるのです。
結果的に、アメリカでは医療サービスや薬剤の価格が市場原理に基づいて設定されるため、医療機関や製薬会社はサービスの品質や新しい技術の開発に関して競争することになります。とはいえ、これが高額な医療費の一因ともなっているのですが......。
世界に目を向けると、収入によって十分な医療を受けられない人々もいる。この事実に思いを馳せると、日本の医療制度を頭ごなしに否定することはできない。
続いて、医療従事者にとっては一体どんな課題が存在しているのだろうか。両氏曰く、日本では“エリート”というイメージの強い医療従事者であっても、その待遇や労働環境は、世界的に見れば決して恵まれているとは言えないのだという。
三宅外資系コンサルティングファームの一員として、アメリカ中西部の医療現場を担当していた頃のことです。アメリカでは日本対比で患者数が少なくても病院や診療所の経営は回っている事に気づきました。逆に言うと、日本では国民一人あたりの医師数が少ないのに、国民誰もがどの病院・診療所にもいつでも行ける状態になっているんです。あまり医師の数が不足しているイメージはないかもしれませんが...。
山本これにより、医療従事者の疲弊が問題になっていますよね。大きい病院では、医師は寝る時間も惜しんで働くことが強いられ、給与も決して高くないためモチベーションの維持が難しくなっているという声も聞こえてきます。
そしてネット社会で色々な情報がオープンになったことにより、病院を辞めて臨床医以外の道を選ぶ方も増えていると聞いています。キャリアの多様化は良いことですが、結果として、医師がさらに不足する事態となっているのではないでしょうか。
最後に医療を実際に受ける患者。彼らが当たり前に感じている“負”を課題として捉えたからこそ、同社はクリニックにおける医療体験の重要性をより強く認識し、一気通貫でデジタル化するアプローチにたどり着いたとも言える。
山本この記事を読んでくださっている方の中でも、病院に行くのを億劫と感じる方も多いのではないでしょうか?
一般的に、医療機関では待ち時間が長いです。かつ、検査結果を聞くなどの簡易な用事でもほとんどの医療機関ではオンラインで完結できず、現地に行かなければなりません。特に我々のような働き盛りの世代は、日常の多忙さから定期的な健診や検診をサボりがち。その結果、症状が重篤化して初めて気が付く、なんてこともありますよね。
さらに、医療機関の情報を参照できるソースは意外と少ない。つまり、実際に通院しないとどのような医療機関か、判断が難しい。これらの要因が、我々にとって病院を訪れるハードルを上げているといえるでしょう。病院選びの難しさや治療へのアクセスの不便さ、これらが現代の医療業界における課題となっています。
行政・医療従事者・患者。それぞれに課題があるだけでなく、さらに様々な規制や業界のしがらみなどの理由が絡み合い、根深い課題となっている。
しかし、山本氏は決して日本の医療の可能性を疑っているわけではない。
山本収入差による治療の格差──。アメリカと比較すると、日本ではこの格差がそれほど顕著ではないと言われています。また、日本の医療制度は、前述のとおり、行政が中心となってトップダウンで制定・運営されています。
しかし、実際の治療内容や、その運営の仕組みは、大きく医療現場に委ねられているのが特徴。そのため、医療現場では新しいアイデアや取り組みが生まれやすい環境が形成されています。そういった背景から、日本の医療業界はイノベーションが起こりやすいのです。
同社が目指す医療のあるべき姿は、どんな世界なのだろう。Linc’wellがミッションに掲げる「全ての人に最高の医療を提供する」とは何か?その具体に迫る。
すべての人が通院しやすい世界は、医療業界に”3方良し”をもたらす
病院の待ち時間が長いということは、受診が億劫になり結果、通院のハードルが上がる要因の一つとなる。Linc'wellは、業務の抜本的な効率化というアプローチにより、診察時間の短縮を目指す。
山本私達の当面のゴールは、サービスを提供する医療機関において、すべての人が通院しやすくなること。
そのためには診察以外の業務をできるだけ効率化し、患者が滞在する時間を短縮する必要があります。さらにオンライン診療をうまく活用できれば、クリニックに行く時間も省けます。待つことなく、あるいはオンラインで受診できれば、通いやすくなる。これにより軽症段階で治療を受け、重症化を防ぐことができれば、医療費もかさみません。業務効率化で医療従事者の負担は今よりも減り、結果として国を圧迫する医療費自体も抑えることができます。
つまり、患者が通院しやすい世界を叶えることが、行政、医療従事者、患者の3方良しに繋がるのです。
新型コロナウイルスの流行によりずいぶんとオンライン診療の認知は高まり、規制緩和も進んだ。楽観的な見方をすると、これを期にデジタル化を進める医療機関も増えていく可能性があり、その結果として同社の目指す「医療の変革」に到達していけるような気にもなる。しかし、現実はそう甘くはないという。
三宅日本でのオンライン診療は、海外と比べるとまだまだ浸透していないんです。コロナ禍でオンライン診療の機会が増えたとはいえ、私達はまだまだ、デジタル化の拡大に貢献していくフェーズです。まずはクリニックフォアへのシステム提供を通じて、サービス品質向上に寄与したいと考えています。
Webやアプリ含むテクノロジー基盤の機能向上、クリニックでのオペレーション改善、薬局等も巻き込んだバリューチェーン強化など、まだまだタスクは山積みです。
予約、問診、診察、服薬指導、会計、薬の受け渡しまでのフローを、医療従事者も患者もなめらかに行うことができれば、オンライン診療の利用は広がると両者は語る。だがその一方で、診療後の課題もあるという。
三宅シームレスな医療体験を作るためには課題が山積しています。ほんの一つの具体例を挙げると、オンラインで医師と話したあと、どう薬を受け取るのかという点が患者さんにとってまだまだ不明確です。これによりオンライン診療を試すハードルが上がっています。
クリニックフォアでは試行錯誤が繰り返されており、現在は薬を最短翌日には自宅に届けるサービスを提供しています。しかし、まだまだ十分とは言えず、近隣の薬局との協力や、システム連携、オペレーションの整備などやるべきことは多いです。
山本オンライン診療後、すぐに処方箋を薬局に送信し、数分で患者が薬を受け取れると言う状態がベストですが、まだまだ課題ばかり。ただ、最近になってようやく潮目が変わり始めているのも事実です。
直近ではAmazonがネットでの処方薬販売を検討していると発表していますし、今後さらに“あるべき姿”に向かっていくと考えています。
一方で、オンライン診療だけが広がれば、「すべての人が通院しやすい世界」は訪れるのだろうか。
三宅もちろん、オンライン診療だけが良いと言いたいわけではありません。お医者さんに会いに行くこと自体に、すごく価値があります。そのうえで、もっとオンライン・オフライン両方のアプローチで患者体験をブラッシュアップすることが重要なのです。
例えば、「花粉症」と検索して医療機関にたどり着いた方と、「腹痛」と検索してたどり着いた方には明らかに違いがあります。花粉症は中期的な取り組みが必要ですが、腹痛は今すぐに対処する必要がある症状かも知れない。両者に上質な患者体験をしてもらおうと思ったときに、アプローチは変えるべきですよね。
このように患者さんのニーズを捉えつつ、私達が目指すゴールに近づいていくイメージを持っていますね。
山本なにか体のことで悩んだら、まずは当社が提供しているサービスを開く、という世界を今は目指しています。
その先に、“将来日本の大半の人がクリニックフォアも含めたLinc'wellのサービスを利用している”という目標に近づいていく。そして全ての人が通院しやすくなる。そんないくつものゴールを、一つずつしっかり達成していきたい。
「すべての人が通院しやすい状態」を叶えるためには、薬の受け取りを含んだオンライン・オフラインでの患者体験の最適化が不可欠となる。
行政、医療従事者、患者の3方良しをサステナブルに実現しながら、「日本の医療体験こそ最高だ」と自信をもって宣言できる日が来るまで、同社が追求する医療業界のイノベーションの足跡は絶え間なく続くのだ。
他のヘルスケアIT企業との違い、差別化
Linc'wellの他にも、日本にはヘルスケアIT企業が多数存在する。
筆頭は、多くの医療従事者が登録する医療情報サイトを中核に事業を展開するエムスリーだろう。もちろん、MICIN・メドレーのようにオンライン診療サービスを手掛ける企業もある。さらにはシーユーシーなど、Linc'well同様に医療や介護の現場に近い企業も増えてきている。
Linc'wellは競合にどのような思いを抱いているのか。
山本医療系のベンチャー企業やスタートアップは様々存在しますが、私達とターゲットやアプローチが酷似する企業が存在しているとは思っていません。むしろ、私達だけで盛り上がるほど小さな業界ではないため、競合の存在は必然と捉えています。
三宅他社と比べ、私達が力を入れるのはとにかく「患者体験」です。例えば、あるクリニックで対面の来院があり、同時刻にオンライン診療の予約が入り、オフラインとオンラインが混在しながら混み合っても、患者さんにとってスムーズで納得できる診療が行えるようなシステムを裏側に用意しています。
早くから「診察」という現場を事細かに見て事業を展開してきたので、他社にはなかなかコピーしづらいオペレーションが創れていると思います。
決してブルーオーシャンとはいえない業界。それでも医療業界イノベーションの“本丸”と言える「診察」を起点に事業を進めてきた同社には、他の追随を許さないオフライン・オンラインを融合させたオペレーションの磨き込みという強みがある。そんな同社の熱が、あらゆる機能に波及し、いよいよ時代の潮目が変わりつつあるのだ。
そんな同社は今後どんなプランを描いているのだろう。
山本我々が創業したのは5年前の2018年です。正直「5年後どうなっている?」と聞かれても具体的なイメージはありません。
ただ、日本の医療制度が抱える課題は今よりもさらに現実味が増し、環境は変化しているでしょう。そうなっても、医療は医師と患者さんの関係、つまり「診察」から始まります。スムーズに医療を受けられるサービスへのニーズは変わらないと確信しています。
三宅新しい取組み、提供サービスの拡充などいくつかスタートさせているところです。現在はオンライン診療システムの提供や、クリニックDX支援サービスの印象が強いかもしれませんが、将来的には、異なる領域に参入しているかもしれません。成長し続けるためにはやってこなかったことにトライしなくてはいけませんからね。人材獲得も急務です。
同社発のプロダクトの累計登録者数は100万名以上(2023年11月末現在)*におよび、今後もスピード感ある事業展開を予定しているという。
山本氏は人材獲得も急務というが、現在同社ではどんな人材が活躍しているのだろうか、そして求める人材とは一体。
山本私達は周囲から「今いるスタッフをどうやって採用したのか」と頻繁に聞かれます。それくらい、メンバーには恵まれているんです。多くのスタートアップでは「エース」と呼ばれるコア人材が事業を牽引することが多いと思いますが、我々はいい意味でも悪い意味でも、皆がコア人材。フラットすぎるほどの組織で、自走できるメンバーが集まっているんです。
三宅そんなメンバーに対する魅力もさることながら、やはり社会的な意義を感じて入社する方がほとんどですよね。
私たちはオンライン・オフライン両輪のアプローチを持って、特に医療業界の現場に重きを置いているので、“スマートなスタートアップ”とは言えないかもしれません。コツコツ、泥臭く小さな改善を繰り返す必要がありますからね。
一方、エンジニアであっても「すごく便利になりました!」と医療従事者の方から直接喜びの声が聞けるほど、現場にも根ざすのが我々のユニークネスです。例えば、システムが改善したら、すぐに現場の医療従事者の方々の声が聞けるのも醍醐味ですよね。
山本私も三宅も前職がコンサルタント。その際に製薬会社や医療機器メーカー等とお仕事をしてきましたが、正直あまりそのときの知識や経験は活かせていません。つまり、医療知識がなくともやっていけますし、実際Linc'wellには多様なバックグラウンドのメンバーが活躍しています。
共通項は“医療体験を良くしたい”という想い。もしそんな気持ちがある方であれば、ぜひ一度お会いしましょう。
Linc'wellは、医療の“本丸”である「診療」を核に据え、オンライン・オフライン双方のアプローチから、前例のないデジタル化された医療体験をゼロから創り上げている。その挑戦は行政、医療従事者、そして患者にとっての“3方良し”を現実化し、医療の在り方そのものを一新する可能性を孕んでいるのだ。
これらは、もはや“技術革新”の域を超え、全ての人が通院しやすい世界を創るという、医療業界における“パラダイムシフト”の一翼を担っているとも言えるだろう。
冒頭でも語られた、朝の忙しい時間にスマートフォンで医師と対話し、薬を手にする光景──そんなシームレスな医療体験は、ただの夢物語ではなく、私たちの日常にすぐそこまで迫っていると感じされらた。
こちらの記事は2023年12月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
いちのせ れい
写真
藤田 慎一郎
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