連載ベンチャー新卒1年目の教科書

「自分には向いてない」「意義が感じられない」への処方箋──夏が終わると飽きが来る

寄稿者
白鳥 陽太郎
  • スローガンアドバイザリー株式会社 取締役 

千葉県習志野市出身。市川高校を経て、早稲田大学政治経済学部に入学。カンボジアで教育支援に取り組むNPOにて代表を務める。東日本大震災直後から、特定非営利活動法人ETIC.「右腕プログラム」のメンバーとして被災地域のアセスメント業務に取り組む。東北地域で感じた「新しい産業と雇用創出の仕組みづくり」という危機意識にコミットメントするべくスローガンに入社。入社後はスタートアップ企業の新卒採用コンサルティングに従事。Goodfind Magazine編集長も務める。グループ会社であるスローガンアドバイザリーに立ち上げのタイミングで参画し、キャリア面談から、法人セールス、Webマーケティング、ディレクター、採用と幅広く担当。

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ようこそ狂気とカオスの世界へ!暑い日が続くようになってきた。

そろそろ入社から3ヶ月の月日が過ぎようとしている。きっとこんな連載を読んでくれているあなたは、めちゃめちゃに頑張っている。

だからこそなのだが、多くの新卒社員が入社から3ヶ月-6ヶ月経つと、

「この仕事は自分には向いてないんじゃないか」「この仕事にはどんな意味・意義があるのだろうか」

と考えはじめてしまう。

今日はそんな気持ちが「なぜ起きてしまうのか」、そして「どうすればいいのか」という話だ。

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都合の良い解釈をしてしまう不都合

冷静に考えれば分かるはずだ。向いているか向いていないかは、半年程度じゃ分からない。

受験英語を半年しかやってない高校生が「私、英語向いてないです」と言ったら、同じようにツッコむだろう。

意味や意義についても同じだ。本当に意味も意義もなければ、そんな会社もビジネスもとっくになくなっている。

お客様がいて、価値を感じてくれているからこそ、ビジネスが成立していて、だからあなたがそこで働けているのだ。

さて、じゃあなんでそんなことを考えてしまうのだろうか。

それはきっと、あなたが最初の成長の踊り場(プラトー)に足をかけてしまったからだ。

溺れているとき、やることに迷いはない。とにかく泳ぎ方を覚えて、岸辺までたどりつくことに全集中していればいい。

こういう成長は分かりやすい。泳げる人が、泳げるようになるのだ。新社会人はそのようなものだ。はじめての環境、はじめての業務、何もかもがはじめて。日に日に自分の変化が手に取るように分かる。そういった成長は楽しいし、乗り越えた充実感がある。

ただ、残念ながら成長(熟達・マスタリー)とは単直線ではないのだ。人の成長曲線は、心電図のようになっている。

ちょっと成長して、そしてちょっと下がり、プラトー。そして、またちょっと成長する。

そして、多くの人はこの変化のない期間(プラトー)に耐えられないのだ。変化しないのに頑張ることができないのだ。

この成長のトリックに気づかずにキャリアを踏み外す人が多い。思い出してみよう、勉強だってそうだったはずだ。

「こんなに頑張っているのに英語の偏差値があがらない、なるほど私は英語に向いてないんだ。そういう体質なんだ」

「こんなに頑張ってるのに成績があがらない。そもそも受験英語に意味なんてあるのか、将来の役に立つのだろうか」

人はプラトーを嫌う。故に努力から逃げるための都合の良い理由を頭の中ででっち上げてしまう。

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成長を止めてしまう3つのパターン

この健全な成長ラインを登ることができない人には、いくつかのパターンがある。

すぐれた心理学者でありながら、合気道五段の使い手でもあるジョージ・レナードは、著書『達人のサイエンス』のなかで下記の3パターンに分類している。

ダブラー(ミーハー型。心があちこちに移ろいやすいタイプ)

いわゆる青い鳥をずっと探し続けるような人。ちょっと頑張って、最初の成長カーブを超えると、プラトーに入る。ただ、ちょっと頑張ってもなかなか成長しないので、仕事が向いていないと短期での離職を繰り返す。そして、何も上手くならない。

オブセッシブ(せっかち型。考え方が偏狭でゆとりのないタイプ)

責任感が強く、成長志向が強い人に多いパターン。やる気満々なので、自分の思い描いた成長曲線を達成しようとする。ただ、現実には直線的な成長をしないので、さらに自分に発破をかける。その結果、燃え尽きてしまったり体調を崩すのがこの人。

ハッカー(のらりくらり型。意気地がなく熱心さに欠けるタイプ)

おなじ部署にライバルやロールモデルがいなかったり、成長しなかったとしても会社にとって必要なので残り続けるようなタイプの人。自分が成長しなくても問題ないと感じてしまうので、途中で成長する努力をやめてしまう。

さてさて、どうだろうか。きっとどれかのパターンに心当たりがあるはずだ。

ちなみにこのパターン、同じ人でも、仕事はオブセッシブ、プライベートの人間関係はハッカー、というように分かれる人も多い。

ただ、いずれにせよわかっていることは、それでもプラトーと付き合っていくしかない。ということだ。

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プラトーといかに付き合うか

では、この退屈なプラトーといかに付き合いながら、次なる成長を目指していけばいいのか。ぜひ夏の終わりにプラトーを感じたら、ここに戻ってきてほしい。

  • 憧れの人、ロールモデルを見つける

どんなジャンルだって憧れは人を強くする。サッカー少年がスーパースターたちに憧れて日々の練習に励むように、自分のなかのヒーローがいることは退屈なプラトーを面白くしてくれる。

それは社外の人でも、ジャンル違いの人でも構わない。新卒1年目のころ「勉強しなくちゃいけないんだけど、なんだか力が出ない」という、顔が汚れたアンパンマン状態になっていた。

そんなときは尊敬する先生の講義をよく聞きに言った。そしてそのたびに思った。「あー、やっぱり仕事とかキャリアって面白いな」と。

人間は不思議な生き物で、目の前の人の感情や行動をコピーしようとする。目の前の人が楽しそうに仕事をしていると、仕事は楽しくなる。上手なお手本を見せられると、上手くやろうとするものなのだ。困ったらヒーローに頼ろう、ヒーロー見参。

  • 日々の業務のなかに喜びを見出す

結果は大事だ。ただ、どれだけ成長できたとしても負けることはある。だから成果に一喜一憂することはいいが、モチベーションの全てを支配されるのも良くない。

それよりか、昨日より少しうまくなった自分を見つけて、その些細な変化に喜べるようになろう。今日やったことのなかで、新しく取り組んでみた工夫や、改善できたことは何だっただろうか。寝る前にちょっと考えてみたり、書き出したりしてみるといい。精神論じゃない、「エンジョイメント」は学習の技術だ。

意味や意義を見失ったら、上司やマネージャー、可能なら社長と話してみるのもいい。彼/彼女らはきっと、あなたの知らないその仕事の意味や意義を知っているはずだ。

よくある逸話だ。レンガを積んでいるのか、偉大な教会をつくっているのか。ちょっとした視点や視野が変わるだけで意味の解釈は変わってくる。そのためには、目線が上の人と話すことだ。そうすると目の前の仕事の尊さに気づくこともある。

  • 行為そのものを好きになる

もちろんうまく出来た方がいい。なんなら成果が出た方がいい。けれども結局は好きになったもん勝ちだ。

だから目の前の仕事そのものを好きになろう。「いやいや、だから好きじゃないんですって…」ただあえて言おう。好きになろう。

面白いから熱中するんじゃない。熱中したから面白いのだ。「いいよな、打ち込めるものがあって」、いや、そうじゃない。まず打ち込めばいいのだ。打ち込めるものはいま目の前にあるのだ。

とある編集者は本を読むことが好きになったらしい。そのコツを聞いたら、常時数冊をストックしておいて、本を読みたくない時は、本を読みたくない時に読む本を決めていたらしい。もはや意味不明だが、行動すると人の感情はついてくるものだ。

好きになる努力と工夫をすることだ。すぐにはうまくならないかもしれない。ただ好きになるための努力はできる。

夏の終わり、もしあなたの目の前にプラトーが現れたとしたら、こう言ってやろう。「ついに来たなプラトー、だがお前は怖くない、なんならお前ごと愛そうとしている」鬼にも愛を注ぐ炭次郎のような心で、プラトーと対峙してやろうじゃないか。

連載第7回目は、7月2日公開 乞うご期待!

こちらの記事は2020年06月19日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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