シリーズAでの事業買収が、スタートアップの新トレンド!?──グローバル進出を加速させるペライチの、Wraptas買収の裏側に迫る

インタビュイー
安井 一浩
  • 株式会社ペライチ 取締役COO 

1981年岐阜県生まれ。東京工業大学土木大学院卒業。新卒でリクルートへ入社、広告・WEB制作に携わる。ケイコとマナブのUIUXリニューアルを担当。その後、ラクスル株式会社に入社、同社でマーケティング部長を務め、2020年9月よりCOOとしてフルコミットでペライチに出向。

渡邊 達明

1988年宮城県生まれ。仙台高専専攻科を卒業後、富士通株式会社にてWindowsOSのカスタマイズ業務に従事する。その後、面白法人カヤックにて受託開発部門を経験後、妻と二人で株式会社クリモを設立。保育園問題の解決のためのメディア運営や、WebフロントエンドやReact Nativeアプリの受託開発を行う。2021年10月、自社サービスであるWraptas事業をペライチ社に事業譲渡するとともに同社へ入社。

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事業買収と聞いて、買い手の企業やその意図にどのようなイメージを持つだろうか。順調に成長してきた大きな企業が、自社の拡大や新たな可能性を広げるために買収する、そんな印象を抱く人が多いのではないだろうか。

事実、買収をする企業の主な目的は、人材やノウハウ、販売網といったあらゆる経営資源の獲得だ。その点においても、既に力のある企業を買収する方がうまみが多い印象を受ける。しかし、実は昨今はそうした買収事例だけではない。まだ発展途上のフェーズにあるスタートアップが、シード、アーリーに近い企業や事業を買収するケースも見られるのだ。

発展途上の企業がシード期の企業・サービスを買収することに、どういった狙いやメリットがあるのだろうか。その答えの手がかりとなる事例を持つ企業が、今回話を伺った株式会社ペライチだ。ペライチは、「世界で一番カンタンなホームページ制作サービス」をコンセプトに掲げるホームページ制作SaaSサービス「ペライチ」を手掛ける。年間売上約5億円、売上ベースで150%成長をしているとはいえ、まだまだ発展途上の企業だ。

そんなペライチが買収したのは、サービス立ち上げからまだ1年と日の浅い、株式会社クリモが運営するNotionを用いたWebサイト編集サービス「Wraptas(ラプタス)」。ペライチのCOO安井 一浩氏曰く、「ひよこがひよこを買ったような買収」だったという。そのような段階で事業買収に至った理由や狙い、同社が見据える先とは。ペライチの安井氏、Wraptasを立ち上げた渡邊 達明氏に話を伺った。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
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市場が未成熟でライバルも少ない。だったら共創した方が早い

「事業買収をするのに、規模感やフェーズにこだわる必要はない」。2020年9月のラクスル - ペライチによる資本業務提携から約1年。ラクスルから出向し、現在はペライチでCOOを務める安井氏はこのように語る。

ペライチがWraptasの事業買収を決めたのは、ラクスルから4.9億円の資金調達を行って間もないタイミングのこと。Wraptasは渡邊氏がひとりで事業を手掛けている小さなサービスであり、対するペライチもまだまだ発展途上のフェーズにある企業だ。拡大に弾みをつけるには、両社ともにまだ力が足りないようにも思える。

安井今回、事業買収を決めた理由には、事業面・渡邊さんという人物面・将来面の3つがありました。まず事業面では、共通のナレッジが効きそうだなと思えたことです。Wraptasはペライチと似たようなサービスなので、うちに入ったとしても違和感なくスムーズにできるだろうと。

人物面では、渡邊さんという技術力の高い人と働きたいという思いと、彼のプロダクトに向き合う姿勢が大きかった。そしてメインの理由となったのは将来性。ペライチもWraptasもグローバル進出を目指していて、事業買収をすることでそのチャレンジがしやすくなると踏んだんです。

株式会社ペライチ 取締役COO 安井 一浩氏

ITリテラシーのない人でも簡単にホームページやランディングページを作れるというのが、ペライチの主なサービスだ。一方のWraptasは、世界中で使われており、日本でもIT界隈を中心にユーザーが増えている「Notion」をベースにサイトを作れるサービスである。

当初、Wraptasの事業買収話は、「けんすう」こと古川 健介氏(株式会社アル 代表取締役)からラクスルの代表 松本 恭攝氏に持ち込まれたのだという。その後、巡り巡って親和性があると考えられたペライチにやってきた、というのが今回の買収の裏側だ。ひとりでプロダクトに向き合ってきた渡邊氏は、今回の話をどう受け止めていたのだろうか。

渡邊Wraptas以前にもさまざまなプロダクトを作ってきた中で、そろそろスケールさせることを考えたいと思っていました。安井さんと話す中で感じたのは、彼の事業解像度の高さです。今後どうスケールさせていくのかのビジョンがある程度見えていらっしゃるんだなと思い、事業譲渡をすることで、一緒に事業をスケールさせていける環境に身を置けるだろうと考えました。

株式会社クリモ 取締役副社長/CTO 渡邊達明氏

渡邊氏が感じた「安井さんは事業をスケールさせていくビジョンが見えている」という感覚は、事実、安井氏のこれまでのキャリアにも現れている。安井氏の前職は、FastGrowでもお馴染みのラクスル。同氏は2014年にラクスルにジョインし、主に集客支援事業を管掌。当時、立ち上げ間も無く伸び悩みを見せていた事業に携わり、V字回復させた実績を持つ。事業全体で伸ばした売り上げは1年前後でおよそ10倍。大幅なグロースを果たしたのだ。そんな実績を誇る安井氏は、Wraptasと合わさることによるメリットを、次のように語る。

安井ITリテラシーのなさゆえに困っているのは日本人だけではないため、いずれはペライチの海外進出を見据えていました。とはいえ、ペライチはまだまだ日本国内で勝ち切っているサービスでもない。いわば足軽の状態でグローバルに行っても勝てないでしょうから、ペライチ単体としてのグローバル展開は4~5年は先のことだと考えていました。

その点、WraptasのようなNotionベースでサイトを作るサービスの市場は少しずつできてきている段階であり、まだグローバル規模でも強いサービスが存在しない。成熟していないマーケットでグローバルにチャレンジできるタイミングは、意外とないんですよね。だからこそ、今が渡邊さんと一緒にグローバルに挑戦するいいタイミングではないかと。

まだ規模がそこまで大きくないサービスだからこそ、今のフェーズで事業買収をして挑戦しようと思った側面もあります。それに挑戦して失敗したときに負うケガも、まだそこまで重症にはならないでしょうから(笑)。

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事業成長が堅いSaaSモデルゆえ、早期にリスクが取れる

前出の通り、ペライチによる事業買収は、ラクスルから資金調達を行ってすぐのタイミングで行われた。ペライチ、Wraptas双方にとってシナジーがある事業買収だとしても、発展途上な企業同士の事業買収であることに変わりはない。株主からの理解は得られたのだろうか。

安井すんなりとはいきませんでした(笑)。「ペライチ自体ができあがっていないタイミングで、なぜ他の事業を買収するんだ」と目的を聞かれましたね。ペライチとWraptas、2つの事業を同時に展開など、どうしても意識が分散するだろうという懸念を持たれていました。

そうした声に対し、「発展途上ではありながらも、SaaSならではの安定したビジネスモデルである」、「何もせずとも伸びているサービスは、極論事業としてマイナス部分がないとも言える」といった利点を株主に伝え、説得していました。

晴れて事業買収の説得を果たした安井氏。しかし、同時期にぶち当たっていた壁は買収話だけではなかった。安井氏はペライチにジョイン後、1年余りをかけて組織構築に取り組んできたのだという。安井氏がジョインする前からいたメンバーは、安井氏のジョイン前がペライチの「第1フェーズ」であり、今は「第2フェーズ」だと見ている。

第1フェーズのペライチは、技術面こそ強いが、経営面に長けたメンバーがいないという課題があった。それは例えば採用面に現れる。過去ペライチでは採用プロセスを整備できていないがゆえに、事業を手伝ってくれる人を取り急ぎ業務委託などでカジュアルに集めても、彼ら彼女らの本業の状況次第で付かず離れずの関係が続いてしまっていた。また、初期の事業戦略や組織体制が整っていない時期にフルタイムでオーバースペックな人材を招いた結果、フェーズとスペックが合わずに去られてしまうことも。

ペライチに限らず、シード期のベンチャー企業に見られるだろう課題点に気づき始めた時期に、安井氏がジョインしたのだ。そんな当時のペライチの状況を、安井氏は次のように振り返る。

安井組織図を見れば、大体その組織の課題が見えますね。当時のペライチは、少人数なのに縦割りで、そのことに驚きました。あとは、せっかくポテンシャルを持った人材がいるのに、不適合な人材配置のせいで各ポテンシャルを活かしきれていなかった。

例えば、エンジニアが全然関係ない部署のマネージャーをやっていたりとか、エンジニアマネージャーがユーザーコミュニティのマネージャーをやっていたりとか、CTOがコーポレートのマネージャーをやっていたりとか。これでは各々のパフォーマンスが下がってしまうと感じましたね。

少人数にも関わらず、当時のペライチが縦割りだったことには理由がある。当時のペライチでは、会社としてのルールやビジョンが固めきれておらず、現場メンバーで判断するには難しい粒度の課題もそのまま当人たちに降りてきていたのだ。その課題を解消するため、マネージャー陣が一旦受け止め、現場で判断できるレベルの粒度に分解するという手順を踏むように。その結果が縦割り組織だった。安井氏は、上に立つメンバーの役割を整理し、制度として整備。縦割りの必要性をなくし、横の繋がりでコミュニケーションを取りやすい状況を整えた。

安井当時は会社全体として、仕事の6割くらいが事業成長に向けてフォーカスすべきではないことで占められていたので、「全部やめて」とお願いしました(笑)。ある意味、ペライチは改善点がわかりやすかった。同社にジョイン後すぐに、全員にヒアリングをして業務上の不満点を洗い出したのですが、人が悪いわけではなく、情報が正しく伝達できていなかったり、制度が固まっていなかったりといった点が多かったなと。

だから、制度や仕組みの改善点を整えてどう事業を進めるか、そしてその一つひとつを丁寧に説明することが必要でした。プロダクトの中長期的なビジョンの話をして、理解して納得してもらった上でプロダクト作りに取り組んでもらったり、よくわからないという声があった評価基準を明確にしたりしてきましたね。

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買い手ではなく、売り手のグローバル化こそペライチの狙い

発展途上ながら、年間売上ベースで150%の成長を続ける安定感を持つペライチ。そして、そんなペライチにシナジーがあるとして、事業買収されたWraptas。社会情勢が大きく変動する中、本当に両サービスは生き延びられる強さを持っているのだろうか。「未熟な企業同士がタッグを組んでも、成功には至らないのでは?」という懸念に対し、安井氏は次のように語る。

安井むしろ、今期はプロダクトの基礎固めに使ったような1年で、グロースのためのプロダクト投資は正直そんなにできていないんです。その状況で150%成長だった、とも言えます。

ペライチは僕が思っていたほどビジネスに寄っていないサービスだったため、ジョイン後にビジネス寄りにしていこうと方向性を切り替えました。ビジネス寄りにスイッチを入れようと思ったのは、課金して使ってくれるユーザーの多くが法人ユーザーだから。我々も売上が上がらないと、継続的にサービスを提供できませんからね。

コロナ禍による世界情勢の変化はペライチにとっていい影響があると見ています。小売以外の業種も強制的にEC化、オンライン化され、顧客のニーズが上がるだろうと。美容業界ではホットペッパービューティーさんなどがWeb予約化を進めていらっしゃいますが、同様にIT化せずアナログのままな業界はまだまだある。そういった業界を徐々にIT化していきたいと思っています。

法人ユーザー向けに切り替えたペライチ。コロナ禍の影響もあり、小売業以外の業種では、どういった層がユーザーになると見ているのだろうか。

安井フィットすると考えているのは、無形商材を扱っている方。塾など教育系のサービスや、オンラインセミナーなどを展開されている方ですね。

これらのサービスは、有形商材のように商品画像をズラリと並べて顧客に訴求することが難しい。ペライチできちんとページを作り、内容についてしっかり説明することで、購買や申込に繋がると考えています。ペライチを導入することで、商材の説明、Web予約、決済機能など、必要な機能をまるっと用意できる点がフィットする理由だと認識しています。

渡邊WraptasはNotionを基にサイトを作りたい人に向けたサービスです。立ち上げたころから、ゆくゆくはグローバルに挑戦したいと思っていまして、現時点ではニーズの高いカスタマイズ希望に対応すべく、デザインテンプレートを増やしているところですね。Notionのユーザー数は世界で2,000万人(2021年10月時点)おり、ユーザー比率は日本より海外の方が圧倒的に多いため、スタートからグローバルに挑戦しやすい土壌だと思っています。

安井Wraptasの事業展開については、渡邊さんと話しながら今まさに考えているところです。類似サービスの中での差別化だけではなく、Notionとの差別化も図る必要がありますからね。

なお、ペライチとWraptasは、似ているサービスのようでいてターゲットが明確に違う。ペライチユーザーはNotionと聞いてもピンとこないような方がターゲットで、WraptasはNotionを使うことが前提ですから。そのターゲットの違いは今後もぶれない。その一方で、ペライチとWraptasとで提供機能が融合する部分が出てくるのはありだと思っています。

渡邊WraptasにはWeb予約機能や決済機能がない。しかし、ゆくゆくは追加したい。そうした点において、ペライチの機能やノウハウが活かせると考えています。ペライチに事業買収して1ヶ月ほどしか経っていない今は、ひとまず事業として足元を固めることに注力しています。

これまではほぼ一人での開発だからこそ自由にプロダクトをつくれた部分もありましたが、企業に属した今、ビジネスとしてスケールできるレールに乗せていく必要があります。今は攻める前の準備として、プロダクトを整える段階ですね。目標としては2022年の春頃から攻めに転じて、数年後には海外展開にも挑戦していきたいと思っています。

ペライチ、Wraptasが共に見据えるグローバル展開。ラクスルを経験してきた安井氏は、「ペライチもWraptasもグローバルを狙いやすい」と言う。古巣ラクスルは事業モデル的に仕入れが発生するサービスであるがゆえに、サプライチェーンの開拓という重いステップが必要となる。グローバル展開がしづらい特徴を持つサービスなのだ。

その点、ペライチにはそういった「重さ」はないと安井氏は言う。しかし、ペライチがフィットするユーザー層は無形商材を扱う人、会社だ。有形商材であれば、商材を海外に販売する足掛かりとしてペライチを有効活用できるというイメージが抱けるが、無形商材となるとピンとこない。ペライチ、Wraptasが目指す「グローバル展開」の定義は何なのだろうか。

安井我々がいうグローバルとは、ペライチで作ったサイトからモノを買う買い手ではなく、売り手側を指します。要するにペライチを使ってサイトを作るユーザー側を国内からグローバルにしていくことを目指しています。Wraptasも同様のイメージですね。サービスを英語化し、海外ユーザーにもペライチやWraptasを使ってもらえるようにしたい。渡邊さんが「Notionは海外ユーザーの方が数が多いからグローバルに挑戦しやすい」といったのは、まさにそういった理由からですね。

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元ラクスル安井流、プロダクトグロース術は
ユーザーに"会う"こと

Wraptasの事業買収により、より幅広い層がサイトを作れるようになったペライチ。しかし、類似サービスも世にある中で、果たしてそう上手くプロダクトを成長させていくことができるのだろうか。

その疑問に対し力強くYESと答えられるのが、安井氏が成し得てきた実績だ。安井氏は、前職であるラクスルにおいて、伸び悩みを見せたプロダクトを大幅にグロースさせた実績を持つ。その伸び率は、1年半でおよそ10倍。そんな安井氏は「この施策で、これくらい伸びる」という目算が感覚的に立てられるのだと言う。いわば、「グロースのプロ」なのだ。その秘訣は、一体何なのだろう。

安井他の人も言っているようなことですが、結局のところユーザーが使いやすいサービスであることがプロダクトには最低限必要。ペライチにジョイン後、既存メンバーに中長期的な話を説明したときにも、とにかくユーザーをきちんと見てプロダクトを作るようにと話をしました。これは今でも口を酸っぱくして言っていることですね。

安井新しいUIに変更するときには、きちんとユーザーに触ってもらう。プロダクト設計の際にはユーザーにヒアリングを行う。ユーザーに会うことが大切なんです。実際、僕はラクスル時代からユーザーと会い続けてきました。ユーザー会を開いて、ひたすら使い方を教える場を設けたこともあります。ユーザーが使うプロダクトを作っているのに、ユーザーに会わない、声を聞かないのは意味がわかりませんから。ユーザーと向き合って、とにかくよいプロダクトを作ること。これに勝ることはありません。

営業で売るのではなく、あくまでもプロダクトドリブンである。このペライチの特徴は、渡邊氏もすでに実感しているという。

渡邊プロダクトドリブンと謳って、実際に実行している会社は、案外あるようでないんですよね。サービスにひたすら向き合えるのは、作り手としても楽しい。会社全体でプロダクトを良いものにしていこうという雰囲気があります。ペライチには、エンジニアだけではなく、各部署が独立してプロダクトに向き合っている感じがある。

安井それは僕がジョインして1年間、組織体制作りをがんばってきた成果と言えるかもしれない(笑)。プロダクトが勝てるかどうかを決めるのは、地味なところだと僕は思っていて。例えば、メルカリさんも競合がたくさんいる業界で勝っているサービスですが、これはUIを作り込んで、ユーザーをめちゃくちゃ楽にさせることができたからこその成果だと思うんですよね。

ラクスルもそうです。言ってしまえば、ラクスルとライバル企業を比較した際に、必ずしも圧倒的な差別化要素があったわけではないんです。恐らく選ばれていた理由は値段ですが、別に最安値だったわけではないんですよね。ユーザーと向き合い、プロダクトにしっかり反映していった結果、勝ち筋が見えてきたサービスだと言えるでしょう。

安井氏の言う「勝ち筋」。ペライチは、この勝ち筋がすでに見えている段階なのだろうか。その問いかけに、安井氏は「それを今から見つけていく」と答える。

安井僕はマーケットの白地を見つけるのが得意で、あるマーケットに対し、陣地取りゲームのように「今取れているマーケットはここ、次にこの開発をしたらここが取れる」と考えています。そのため、ペライチに関しても勝ちパターンはいくつか頭にありますが、まだ勝ち筋が定まっているわけではない。

そう言うと不安視する人もいるかもしれませんが、プロダクトが強すぎると、それはもはや誰が取り組んでも結果は同じで、事業としてチャレンジするには面白味に欠けるんですよね。

今、業界内でオンリーワンだと思われているサービスの中には、競合他社との陣地取りゲームを経て勝ってきているものが多々あります。そして、こだわってサービスを作り、競合に勝っていく段階を経てしまうと、二度とその段階でのチャレンジングな経験はできない。今キラキラしているベンチャー企業ではもはや経験できないことが、これからのペライチではできると言えます。そのチャレンジこそが面白いんじゃないかと思うんですよね。

このように「競合他社が多い業界において、いかにして勝っていくかを考えることこそが面白い」と安井氏は断言する。しかし、マーケティングを考える際、競合他社の少ないブルーオーシャンを選ぶことを是とする考えも当然ある。こうしたブルーオーシャン、レッドオーシャンといった区分けについて、安井氏は「それって、結局マーケットの切り取り方なんですよ」と答えた。

安井何をもってしてブルーオーシャン・レッドオーシャンとするのか。よくあるのは業種で絞る考え方ですが、競争の寡多はあくまでも他人が決めたマーケットの視点なんですよね。僕らには、僕らにしか見えていないマーケットがある。そうやって自らマーケットを開拓していく方が面白いと思いますし、ここに共感できる人には楽しんでもらえると思います。

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「助けてほしい」1人目のPdMに伝えたいペライチの願い

プロダクトをグロースさせる力を有する安井氏と共に、これからさらなる飛躍を目指すペライチ。現在正社員は35名。アルバイト、業務委託者、入社が決まっているメンバーを合わせ、年内で50名弱の規模になるという。第2フェーズに入り、第1フェーズまでは縦割りだった組織体制を刷新。

現在は横との連携が強固になり、Wraptasを担当する渡邊氏も「別部署の人にヘルプを求めやすい環境にある」と言う。間に人を介さずに済むようになったため、他部署間であってもスムーズに連携しながら事業を進められる環境が整ったのだ。しかし、さらなるグロースを目指すにあたって、安井氏は「人がとにかく足りない」と言う。

安井CMO候補は現在ひとりいるのですが、ビジネスサイドのメンバーが圧倒的に不足しています。今、特に欲しているポジションの一つがプロダクトマネージャーです。現状は専任がひとりもいないんですよ。なので、一人目として即戦力となり得る方に来てほしい。

でも、ベンチャー企業を志す人は、シード期で10人未満の小さいところに入ってカオス状態を何とかしたいという方と、200~300人規模で土台がある程度固まった企業のどちらかに偏りがちで、ペライチはちょうどその中間の規模なんですよね。正直、個人的にはそのどちらかよりも今のペライチのフェーズがジョインするのに面白いタイミングだと思っています。

安井シード期はプロダクトが伸びず潰れる可能性もある時期ですから、ある意味リスクも割り切って事業に取り組む必要がある。逆に、200~300人規模となると、極論自分ひとりがワークしなくてもそこまで事業に致命的な問題はありません。事業と組織が成長してきているから、一定の保険があるわけですよね。それらに対し、今のペライチのフェーズはヒリヒリするリスクもありつつ、自分自身で事業を拡大していく過渡期を味わうことができます。

ミドル層の即戦力になり得る人材を求む。そうし方にはぜひ挑戦してほしいと思うが、事業フェーズはもちろん1人目ということで見えない点が多い。これらを聞くと、正直なところ足踏みしてしまう人も多いのではないだろうか。

安井実際お会いしてこの状況を話すと、確かにご縁に至らない方々も多いです。なので、ここで同じく懸念を抱く方は今のフェーズのペライチには合わないでしょう。ただ、即戦力だからといって、いきなりすべてを丸投げするわけではないです。まずは僕とタッグを組んでもらい、一緒に仕事をしていくイメージを描いています。もちろん初めは丁寧にオンボーディングしていきますので、そこは安心してもらえたらと。

また、1年ほどプロダクトマネージャーがいないながらも、何とか事業を回してきたという事実もある。また当然エンジニアの協力も仰げる体制が整っていると知ってもらえたら、心理的ハードルも下がるのではないでしょうか。

渡邊採用に関していうと、ペライチのエンジニアは技術力が高いです。やはり長年やられてきた分、経験値やノウハウがある。ただ、もったいないのがエンジニアとしての発信ができていなかったことですね。現在僕もエンジニア採用に協力していますが、外から見ているだけではエンジニアの姿が見えてこないなと。これは非常にもったいない。今後、ペライチのCTOとも話をしていくつもりです。

安井正直、名前が覚えやすいため、「ペライチ」という名前は知られていても、実態が知られていないという感じはしますね。今のタイミングでジョインしてもらえると、かなり自由に挑戦できますよと伝えたいです。

現状、僕が実質ひとりでディレクションをやっている状況なんです。経営会議のあとにプロダクト会議に出て、そのあと人事の話を詰めたりですとか。正直、頭の切り替えが追い付かなくなってきているので、1番言いたいメッセージは「助けてください!」ですね(笑)。

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ファーストペンギンとなり、
2.3年後の世界戦へと共闘しよう!

Wraptasを迎え入れ、グローバルへの挑戦もより現実的に視野に入ったペライチ。2つのプロダクトとともに飛躍を目指す今、あらためてフィットする人物像について、ペライチに入り1ヶ月が経過した渡邊氏は次のように語る。

渡邊Wraptasはまだ足場を固めている段階です。そこで、どういった打ち手であればどうなっていくのか、安井さんはかなり先手を見ている。一緒に働いていて学びになります。ラクスルでご経験されてきた知見やノウハウが発揮されるのを間近で見られるため、これからジョインされる方も安井さんから盗めるスキルがたくさんあるんじゃないかと思いますね。

チーム全体がプロダクトドリブンなのがペライチの特徴なので、サービス価値を向上し売上に繋げていくことに興味がある人には楽しい環境だと思います。

そして最後に安井氏からは、ファーストペンギンとして飛び込む不安を抱く求職者側の想いに対し、背中を押すメッセージを残してくれた。

安井冒険に慣れているはずのベンチャー企業出身者も、今のフェーズのペライチに入るには勇気がいると思います。挑戦心とリスクを負う勇気の双方を求められますから。あとは、スタートアップということでネガティブに見らがちな、「何でもかんでもやらされるんじゃないか」とか、「背負わされる荷物がとてつもなく重いんじゃないか」といった懸念もあるようです。確かに、大変じゃないとは言いません。

しかし、繰り返しになりますが、今のペライチだからこそ経験できる挑戦は、間違いなく面白い。今、ペライチが採用に取り組んでいるのは、会社・サービスとしてより高みを目指していくからです。ぜひ、一緒にその高みを目指していきたいと感じてくれる方に門を叩いてほしいです。

事業や組織として基礎固めを終え、これから攻めに転じていくペライチ。グローバル進出後、「成功」と判断できる基準について、安井氏は「グローバル比率が50%」だと答えた。ちなみに、現在はほぼ0%。グローバル比率50%を達成する目安時期について、安井氏、渡邊氏両名は「2年後?」「いや、2、3年後にしときましょう」と笑いを交えながらうなずき合う。ペライチというヒナが孵り、大空に羽ばたく大切なフェーズに関われるのは、今このときだけだ。

こちらの記事は2021年11月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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