ビジョンが会社の成長スピードを早くする。
SAKURUGが見据える“2030年”構想
SAKURUG(サクラグ)は、もともと広告代理事業からスタートし、現在はHRTechにもっとも力を入れている。
かつては“アンチ・ビジョン”だったという代表取締役の遠藤洋之だが、反省を経て、いまやSAKURUGは、社員全体でのビジョン/カルチャーの浸透度を一番の武器としている。
今は2030年に向けた長期的なビジョンを練っている最中だという同社のメンバーたちに、それぞれが抱く構想を聞いた。
- TEXT BY MISA HARADA
事業内容を説明しづらいのが、“企業の最適なカタチ”
遠藤は2010年、株式会社GOOYAに転職すると24時間365日仕事に没頭した。平日も土日も朝起きると仕事がしたくて仕方がなかった、と遠藤は話す。GOOYAの代表取締役である杉村に見込まれて、2012年10月にGOOYAの子会社を設立。2014年に社名をSAKURUGに変更しMBOした。
アドテクノロジーの領域からスタートして、ECサイトやアプリ開発、メディア事業といろいろ手を広げていった。そして現在キーワードとしているのが、HRTechだ。
オールラウンドな企業に見えるが、遠藤は、「昔は会社の軸がなかった。それが成長が遅かった原因だと思います」と自戒する。彼は、過去の自分を「アンチ・ビジョンだった」と振り返る。何十人もの人間が同じ方向を向いている状況に、気持ち悪さを感じていたのだ。
遠藤世の中に対して斜めに構えていたんでしょうね。でも、メンバーからはよく『この会社のビジョンってなんですか? どこに向かっているんですか?』って聞かれていました。それで振り返ってみれば、自分も会社員時代に同じことを疑問に思っていたんです。やっぱりメンバーからすると、気になることなんですよ。方向を示すのがトップの役割なのに、自分はそれをしてこなかったんだと反省しました。
そこで遠藤は、メンバーを集めて合宿を開いた。それぞれが自分の夢や思いを語り合った結果、生まれたのが「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」というビジョン。多数決ではなく最後は遠藤が決めた。大人数で決めると無難な結果になってしまう、僕はみんなの意見は聞きますが最終的な決断は僕がします、と遠藤は言う。
進むべき道が決まれば、あとは走るだけ。もともと社会貢献への意識が高かったこともあり、HR事業に本格的に注力していくことが決まった。しかし、特定の事業にはそれほどこだわるつもりはない。
遠藤たとえばDeNAやサイバーエージェントって、何の会社か説明しづらいじゃないですか。でもそれが最適な形だと思うんです。新しい才能も力を発揮しやすいと思う。求められる事業内容って絶対変わっていくし、今ある仕事もいずれはなくなる可能性が高い。だから、うちは5年おきくらいに新しい事業を始めて、それを何本も並行して展開していきたいと思っています。
かつてはアンチ・ビジョンだったという遠藤だが、現在は採用においても、ビジョンに賛同してくれるか、会社のカルチャーにフィットするかを非常に重視している。自身の時間の使い方についても、採用に関してが全体の6,7割とのこと。また、2030年を見据えた中期的なビジョンを2018年9月までかけて作っていく予定だという。
遠藤小規模の会社にジョインするメリットは、会社作りのレベルから携われることです。今から大手に入って、『一緒にビジョン作りましょう』なんて無理だと思います。せっかくまだ小さな当社に入ってくれたからには会社作りから一緒に関わって欲しい。2,3ヶ月で描けるビジョンではなく、じっくり1年かけて作り込んだビジョンを掲げて、2030年に向けて走っていきたいと思っています。
新卒が社長と一緒に、会社の未来を語り合う
システムインテグレーション事業部の佐藤明義は、2017年4月入社の新卒。それまではずっと大学院で数学の研究をしていた。趣味も数学というくらい没頭し、週に十数本の論文を読んでは研究結果を発表。国籍問わず数多くの研究者と議論を交わす日々。なんと論文を読み始めて、気づけば丸1日経っていたこともあるという。
しかし、それほど数学に夢中だった佐藤は、なぜアカデミアではなくビジネスの道を選んだのだろうか?
佐藤このまま研究をずっと続けていたら、外の世界がずっと見られないんじゃないかと思ったんです。研究に年齢は関係ないので、戻ってこようと思えば戻ってこられる。だから1回思い切って外の世界に出て、できることは何でもやってみようと考えました。それで“なんでもできる場所”となると、自分にはベンチャー、なかでもSAKURUGという会社がフィットすると感じたんです。
佐藤がSAKURUGに興味を持ったのは、遠藤からの1通のスカウトメールがきっかけだった。「これは定型文ではない、本気で興味をもってくれているんだ」と感じ、説明会へと足を運んだ。
海外展開していくつもりであること、教育領域で事業を行っていること、他にも魅力的に感じたポイントはいくつもあるが、なにより主催イベントに参加して、「1人1人の個性が活きた会社だ」と感じたことが大きかった。
体育会系や理系集団など、なんとなく会社のカラーというものがあるが、SAKURUGには、系統がバラバラのメンバーたちが揃う。それでも同じ方向を向いていることに素晴らしさを感じたという。佐藤は、「自分もこの中の1人になって、個性を伸ばしていきたいと感じました」と振り返った。
現在は営業を担当している佐藤だが、いずれは新規事業を開発し、自身の知見を活かせるようなことがしたいと考えている。そのためにも月1回の1on1MTGなど遠藤と話し合い、周囲と相談をしながら、今後の方向性を模索する日々。SAKURUGは、新卒が社長と一緒に将来の事業について語り合える環境の会社なのだ。
佐藤やはり大学の同期と話していると、正直なところ視点が合わないと感じる瞬間はあります。私自身は営業として、会社の数字なども全部共有していただいた上で働いていますから。“会社のために自分がどうするか?”というのは、まだ研修段階だったりする同期とは、なかなか話し合えない話題ですね。
遠藤は、これから2030年に向けたビジョンを作っていくと語っていた。佐藤個人は2030年までに、どんなことを達成したいと考えているのだろう?
佐藤最近も資格をひとつ取ったんですが、自分がどんどん知識をつけていって、SAKURUGを最先端の技術力を持つ会社にしたいと思っています。それほどの技術力があれば、どんなエンジニアとも仕事ができるので、どんどん新しいものを生みだして、どんどん社会を便利にしていくことができるんじゃないでしょうか。
あとはエンジニアの教育は海外にも持ち出せるものだと思っているので、2030年には、アジアやアフリカでエンジニア教育をしていたいですね。
ジョインから3年後に執行役員になるスピード感
執行役員の木村良昭は、大学の先輩と学生起業し、自社メディアの運営や代理店事業を行う会社を経営していた。3人だけの小さな会社。自分たちが食べていくことはできても、世の中にインパクトを与えることはできないかもしれない。そんな思いから会社を解散させ、たどり着いたのがSAKURUGだった。
他にもさまざまな会社からオファーを受けたのだが、当時のSAKURUGの「まだ出来上がっていない感じ」、そして遠藤が持つエネルギーに惹かれてジョインを決意した。
入社当時は社員がわずか2、3人だったのが、社員40人が在籍する会社へと成長。木村は、現在のSAKURUGの強みは「ビジョンとカルチャーの浸透度」にあると語る。新卒も含めて社員全体でカルチャーを築いているからこそ、全員の理解度が高く、行動として体現することができているのだ。
採用においてはビジョンにフィットするかどうかを重視しているというSAKURUG。具体的には、どのような人材が同社にフィットするのだろうか?
木村人の可能性を開花させるために、自分の能力を上げることをいとわない人です。だから、とにかくいろんな経験を積みたい人には向いていると思います。その時々のタイミングに合った事業を展開していくので、『この事業がやりたいので入社希望です』というよりは、事業内容が変化していくことを楽しめる人がいいですね。
現在27歳の木村がジョインしたのは22歳のときで、3年後に執行役員になった。現在はチームの管理やマネジメント、採用を担当している。入社からわずか3年、20代にして執行役員に就任するスピード感は、いかにもベンチャーらしい。
木村実績さえ出せれば、若いうちに大きな裁量権を握れますよ。むしろ僕の場合は、『執行役員になるまでに3年かかった』とも言えます。その階段を1年で駆け上がってしまう人、そのマインドがある人は歓迎したいです。
では最後に、木村が思う2030年に向けたビジョンはなんだろうか?
木村やはりSAKURUGのミッションである『ひとの可能性を開花させる企業であり続ける』事業をどんどん成功させていきたいと思います。まず、社内のメンバーの才能を開花させてあげるために、他社に負けないスキルや経験を身につけられる会社にしていきます。そして、もちろん社外の人々の才能も開花させてあげたい。
『SAKURUGのおかげで一皮も二皮も剥けることができました』と感謝されるようなサービスを生み出していきたいですね。
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