「新興ペイ陣営にも負けない、キャッシュレス領域の巨大プラットフォーマー」
“三井住友カード”が描く“Good Cashless”な社会インフラ構築戦略とは
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ITやベンチャーに興味ある読者が注目する領域の1つに、「キャッシュレス」がある。「●●ペイ」を叫ぶテックカンパニーが、割引やポイント還元を掲げて、ダウンロード数や導入店舗数を激しく競い合う状況が続いていることは、読者もよく知るところであろう。
一方で、「●●ペイ」以外にもキャッシュレス領域に参入する事業者は増え続け、かつ、決済手段も多岐にわたっている現在、「結局、どこが普及するんだ?」「何が起きるんだ?」ということさえよくわからないカオスな状況ということも、また事実。
そのような「キャッシュレス戦争」とも比喩される状況に慌てることもなく、「いいキャッシュレス社会とは何か?」に真摯に向き合い続けている会社がある。50年以上も続くキャッシュレスカンパニー、三井住友カードである。
「金融系のお堅い会社で、チャレンジなどしなさそう」というイメージが先行する同社は、どのようなキャッシュレス社会を、どのような戦略で実現していこうとしているのか?また、50年以上の歴史で培われた「素材」を、どのように「料理」していこうとしているのか?データ戦略部を統括する白石氏に、同社が目指すキャッシュレス社会の方向性や、新たな社会インフラを構築する戦略について話をきいた。
- TEXT BY NAOKI MORIKAWA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
生活者にとって「good」なキャッシュレスとは何か?その追求こそが三井住友カードの最優先課題
「カード会社」という呼び名についてまわる「金融業」のイメージ。それは間違いではないのだが、FinTech、キャッシュレス決済、仮想通貨、AI投資などなど、そもそも「おかね」まわりの世界自体がデジタルテクノロジー導入も伴い劇的に変化・進化を遂げている。
イシュア(カード発行会社)としてもアクワイアラ(加盟店契約会社)としても、日本のクレジットカード関連事業を牽引してきたリーディングカンパニーの三井住友カードもまた、その経営ビジョンを大胆に刷新。
三井住友フィナンシャルグループで執行役専務を務めていた大西幸彦氏が社長に就任した2018年からは、とりわけ未来志向のチャレンジングなアプローチが続いている。現在の同社を表現するスローガンも「Have a good Cashless.」、「いいキャッシュレスが、いい毎日を作る」である。
白石これからの生活者の毎日がキャッシュレスで成立していくことについては、今さら言うまでもないと思います。当社がスローガンで打ち出している「good Cashless」の「good」も、生活者にとっての「good」を指しています。
ですから私たちも、「三井住友カードはクレジットカードの会社だ」「金融機関だ」といった既成概念をいったん取り払い、「どうすればキャッシュレス決済という新しい社会インフラで、人々を豊かにできるか」というテーマに真摯に、真正面から取り組んでいるんです。
こう語った白石氏はデータ戦略部を率いる部長。直近数年の間に、同社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を自ら力業で推し進めてきた人物でもある。だが、今やキャッシュレス決済サービスにはGAFAをはじめとしたITサービス大手を含め、異領域からの参入も相次ぐ。その勢力マップはカオスともいえるほどの混雑ぶりであり、レッドオーシャン化している印象さえある。
決済方法も、カード (クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード)、電子マネー (交通系および流通系を含むICカードやAppleおよびGoogle等のスマホによる非接触決済)、コード決済 (QRコード、バーコード)と、「多彩多様」である反面「雑多に混在」している印象も。
白石そもそもクレジットカードというツールが生み出された時から、各プレーヤーが目指してきたのは「キャッシュを必要としない便利な生活の実現」でした。つまり三井住友カードは、50年前の創業時から「キャッシュレスカンパニー」だったということ。
そういう意味では、IT領域のビッグな企業などが参入して「●●ペイ」と名付けられた決済アプリの普及等を進めている現状は、キャッシュレス市場自体の成長にとって「good」な状況と言えます。
加えて白石氏は、政府による追い風の存在もあると話す。キャッシュレス社会の確立は今や国家レベルのテーマであり、2019年には消費増税の影響緩和施策の1つとして国の資金が注入された。そしてこれに基づいた値引きサービスによってキャッシュレス決済の利用者数は劇的に拡大した。
こうして市場拡大の側面にフォーカスをすれば、「現状のカオスぶりはむしろポジティブなのだ」と白石氏は言うのである。しかし同時に「もちろん今のようなカオスな状況はいつまでも続かない」という観測も示す。
白石昨年(2019年)10月に始まったキャッシュレス・消費者還元事業がこの6月に終了した今、「ここから。これから」というのが正直な気持ちです。
今まで生活者の皆さんは「お得感」「還元率」に背中を押されるかっこうでキャッシュレス決済を利用してきたわけですし、複数の「●●ペイ」もそのメリットを強烈に打ち出してきました。しかし、これからは真に「good」なキャッシュレスのあり方が問われてきますし、真に「good」なサービスだけが生き残れる局面になるはずです。
サービス内容の幅や有効性といった生活者にとってのメリットの拡充に加え、加盟店にとってのメリットも同時に成立させていかなければ、キャッシュレスが本当の意味で普及し、社会インフラとして機能していく未来はやってきません。そして、こういうフェーズでこそ、当社の強みは生きてくる。そう確信しているんです。
ふり返ればバブルの時代には、クレジットカード自体が百花繚乱、玉石混淆の乱立ぶりだった。いわゆる銀行系カードや信販系カードに加え、小売業をはじめとする非金融の異業種も自社カード発行に乗り出し、差別化競争を繰り広げた。
そんな激戦をくぐり抜け、リーディングカンパニーの座を獲得したのが三井住友カードである。カード社会、カード市場確立の黎明期も戦国期もくぐり抜けた経験の中で、サービサーとしての本質的力量を身につけた同社の強みは、これから激化するキャッシュレス戦国期においても必ず「違い」を見せつけることができる。そう白石氏は言うのだ。
白石単に「歴史があるから有利だ」という話をするつもりはありません。過去の成功体験だけで生き抜ける時代ではないことを、私たち自身が肝に銘じているんです。
じゃあ何が違うのか。どうして三井住友カードならば生活者にとって「good」なキャッシュレスを提供していけるというのかというと、ポイントは2つあります。
1つは、日本最大規模でカードホルダー(生活者)、およびマーチャント(加盟店)の両方とつながっており、「量」で圧倒的なポジションを築いてきた存在だということ。もう1つはデータ活用においても無限の可能性を持っているということです。
ここまでは同社のキャッシュレス戦略の“顔”として“時代”を語ってくれた白石氏だが、そもそもはコテコテの研究者肌だった過去を持ち、社内でも“変わりダネ”と見られてもきた人物。そこで、三井住友カードにおいて彼がどう「データ活用」というフロンティアで格闘してきたのかを尋ねることにした。
バイオ領域の研究に没頭していた男がカード会社で見つけたセキュリティという“面白い”フィールド
大学院で分子生物学というバイオテクノロジーの研究に打ち込んでいた白石氏。修了を控えた1990年代の末には研究職へ進むことも考えたというが、「アカデミックな世界に没入するよりも、研究成果を社会に役立てていくような道がいい」と思ったのだという。
だが、当時の日本は就職氷河期。バイオ分野から急に方向転換して簡単に就職できるほど甘くはなく、なおかつ第二新卒枠などというものも存在していなかった時代でもあり、就活では苦戦を強いられた。そんな白石氏に門戸を開いたのが、「意外にも」三井住友カードだった。
白石そんなわけで、私はこの領域に特別な志を抱いて入社したのではなかったんですよ(笑)。言ってみれば「大学を2年留年した新卒社員」的な扱いで、大阪エリアの営業マンからキャリアをスタートしました。
正直に言うと、「三井住友」とついているだけで、なんだか堅いイメージを持っていたのですが、「こんな私を受入れてくれるんだ」と、良い意味で裏切られましたね。
そうして、文系学部出身の年下同期らとともに、最前線での業務に取り組んだ白石氏だが、学べることは多かったようだ。「リアルな世の中や生活というものを肌で感じられた経験は、今の仕事にも活かせています」と。しかし、心から「面白い」と感じたのは2つめの部署での仕事。カード利用の不正防止のためのセキュリティ業務を担う部署での仕事だったという。
白石すべてのキャッシュレス決済において、今なお最重要なテーマとも言えるのが不正利用の防止です。「カードホルダーの皆さんがいつでもどこでも安心してカードを使えること」は単に守りのセキュリティ・イシューというだけでなく、当社の実績や信頼につながっていく攻めの領域でもありましたから、やりがいは大きかった。
それに、当時はちょうど、第二次AIブームが終焉した後のいわゆるAIの冬の時代であり、今から考えると「マシンパワーがとても脆弱で、よくもあのレベルの処理に3日間もかかっていたな」というような状況です。今のような機械学習を含むデータサイエンスは未発達であったものの、そんな環境下でも、三井住友カードは積極的にAIの活用を進めていく姿勢をとっていたんです。
私が携わったのも、カードが不正に使われてしまうケースを未然に予測し、状況次第で利用にストップをかけていくためのシステム作り。そこにAIアルゴリズムを採り入れて、0コンマ数パーセントレベルの異常を察知するような仕組みを構築していきました。
ニューラルネットワークなど、当時としては最先端のデータサイエンスを学びながら、リアルな場面で行使していける仕事は、まさに就活時、ぼんやりとしたイメージで望んでいた「サイエンスの社会活用」そのもの。アルゴリズムのチューンアップや、当時の非力なマシンによる解析など、作業自体は地味だったものの、理系脳の白石氏は大いにモチベーションを上げていったのである。
ところが、次の異動ではまったくの異世界と向き合うことになった。経営企画部の行政担当。相手はサイエンスではなく金融経済のロジックでガチガチにものを考える官僚たちだったのである。
白石最初はもう、 ロジックを完璧に使いこなす官僚の方々に対して全く太刀打ちできませんでした(笑)。
もちろん三井住友カードが展開するビジネスは金融機関としての事業ばかりですから、行政との関係性は重要不可欠です。そして、この領域で有効なのは科学的データよりも法規制に即した論理、ロジックですから、私の方が勉強をしてキャッチアップしていくほかありません。
しかし、データ活用の有効性などを理解してもらうケースでも、問われるのはロジックとしての精度ですから、納得してもらうために悪戦苦闘を繰り返しました。でも今、キャッシュレスで社会課題を解決していこうという場合にも、やっぱりロジックを通じて理解納得してもらうアプローチは必須ですし、行政との折衝経験があるからこそ、法規制や社会情勢を捉えた施策を提案できるようになりました。
この当時の経験は、今の私のキャリアに充分すぎるほど活きているんですよ。
「当社はキャッシュレスで生活と社会を変えます」というような謳い文句は、今となっては三井住友カード以外のプレーヤーも主張していたりする。ともすれば、そうしたプレーヤーが発信するのは「こんな最新技術で、こんなに便利」というテクノロジーやサービスの質についての話題に終始する。
だが、キャッシュレス決済で重要な役割を担っているのは、加盟店つまり小売事業者であり、金融領域の様々な法規制やルールもまた遵守しなければいけない。
「最前線での営業」経験で加盟店の本音と向き合い、「行政担当」経験でルールの門番である官僚や法律といったロジックとも向き合った白石氏だからこそ、地に足のついたDXを推進していくことができているのであろう。
「DXに向けたチャレンジは、どこよりも早かった」国内金融企業で初めて、当時日本法人の役員2人だけのスタートアップが開発したAI解析ツールをも導入
AI、機械学習の先端技術も導入したプラットフォーム「DataRobot」は、今や同領域のグローバルスタンダードとも言える存在であり、日本でも多くの企業が導入し、業務の自動化やデジタルマーケティングなどに役立てている。
だがほんの数年前までDataRobotの日本法人には数名の社員がいるだけだった。そしてそんな早期のタイミングで、「保守的」というイメージが付きまとう金融領域の企業として、日本で初めて同プラットフォームを導入したのが三井住友カード。ある意味、日本企業のAI活用において先鞭を付けた形だが、その立役者が白石氏だった。
白石経営企画部では当初、行政担当の仕事で忙殺されていた私ですが、他方で当社のマーケティング領域の変革が待ったなしの状況だという認識もありました。それで現在のデータ戦略部にもつながっていくマーケティング部というデータ活用組織の立ち上げを提案し、ここを任せてもらえることになったんです。2016年のことでした。
キャッシュという“モノ”を用いないキャッシュレスのビジネスでは、あらゆる資産がデータとしてやりとりされる。それゆえに白石氏も冒頭、「これからのビジネスで違いを見せていく鍵を握っているのはデータ活用」と示唆していたわけだが、この思想は何も2020年の今思いついたことではない。
2016年当時、すでにその重要性を社内外で主張していたのだ。そして、かつてセキュリティ部門で自ら生のデータを扱い、アルゴリズム構築に苦労してきた白石氏だけに、まだ日本では注目されていなかったとはいえDataRobotの機能や性能、可能性に出会った時には驚きを隠せなかったという。
白石手作業によるアルゴリズムのロジック作成だけで何ヵ月もかかっていたものが、DataRobotならば簡単な操作をするだけで、誰でも、数時間で出来上がってしまう。
しかも私がデータ活用の現場にいた頃にはなかったような機械学習の手法やマシン側の進化もあって、「あれもできる。これもできそう」という風に可能性の芽をいくつも感じることができたんです。
それで、その凄味をリスクマネジメントの部門にいた仲間などにも伝え、巻き込んでいきながら導入を提言。嬉しいことに、社内から認めてもらうことができたんです。
ここまでの話を聞いてわかる通り、昨今の三井住友カードは今まで以上にチャレンジに積極的だ。しかも世界レベルで「DXがビジネスを変える」という風潮も高まり始め、前例のない機械学習によるデータ活用へのチャレンジにもゴーサインが出たのだという。
しかし一般的な印象だけで言えば、やはり「三井住友」の冠もあるだけに、同社には「金融業=保守的」というイメージがある。なぜこうもチャレンジングなのかを問うと、意外な答えが返ってきた。
白石人事の採用担当の話によれば、もともと当社に参画するメンバーは、いわゆる金融志向人材ばかりではなかったそうなんです。だいたい私自身がその代表みたいなところもありますよね(笑)。
しかも近年のデジタルに対する積極的な姿勢や、キャッシュレスで社会に貢献していくという姿勢も加わって、最近では例えばインフラ系企業や、IT系メガベンチャー・通信キャリアも併願しているような、社会インフラ寄りの志望動機をもってエントリーしてくる学生が増えているそうなんです。
ですから、私が数年前にDataRobot導入を訴えた時だって、「日本で導入事例がないのに何を言う」といった逆風というよりは、世代を問わず「面白そうだね」と共感してくれる社員のほうが多かったんです。
DataRobot導入の許可を得ようとした当時、白石氏は「2年だけ時間をください。それまでに導入コストを超える成果を上げてみせます」と切り出していた。
それだけに、許可をおろしてもらうためにはAI・データ活用に関する賛同者を社内に増やしていく行動も必要だと考え、マーケティングだけに限定しない「AIおよび機械学習の活用」に関する社内アイデアソン、「AI利活用コンテスト」を開催。すると、当の白石氏もビックリしたという約70ものアイデアが寄せられたとのこと。
白石本当に嬉しくなりました。若手社員を中心にしながらも、総務部といった管理部門にいたメンバーからも、アイデアが集まってきたんです。
例えばカードホルダーが引っ越し時に忘れがちな住所変更の手続きを、ストレスを与えずに促していく場面でAIによる予測などを活用するような事例ですとか、私たち関係者が予想もしていなかったような活用可能性を示してくれて、全社的イベントとして大いに盛り上がったんです。
実際に、若手4人が経営陣の前でアイデアをプレゼンすることになり、先程の「引っ越しの発生を予測して住所変更を促す」アイデアは実現され、いまの当社業務を支える重要なファンクションになっています。このようなエピソードもまた、当社のオープン・フラットなカルチャーを体現している事例ですよね。
三井住友カードという巨大プラットフォームに集う「素材」を調理したい、「料理人」人材求む
どうしても「DX」あるいは「データ活用」という単語を見てしまうと、●●ペイを展開するIT系のビッグカンパニーに分があるように思えてくる。しかし、これについても白石氏はこう語る。
白石シンプルに自前の技術力だけの勝負ならば、エンジニアやデータサイエンティストを大量採用しているIT系プレーヤーに有利かもしれません。でも、キャッシュレスという新しい生活手段を実際に使うのは生活者のかたがたですし、それを受け止めるのは加盟店の皆さんです。
どういう場面でどんなサービスがあったら嬉しいのか、どんな手続きに不便を感じていて、どう変えて欲しいのか、という声を半世紀にわたって聞いてきた私たちには、使う側が求めるエクスペリエンスについての蓄積とノウハウとネットワークがあります。消費行動で発生するデータ類をどう活用していくことで新たな可能性につながるのか、をずっと考え、実践し、経験値を積んできた強みもあります。
例えばマーケティングにおけるデータ活用の局面で、とかく注目されるのはWeb上で拾えるデータの利用です。そこにキャッシュレス決済事業が加われば消費データも掛け合わせていけるわけですが、加盟店と密接につながっている当社であればオフラインで得られる膨大なデータもまた掛け合わせていける。
こうして、日本最大級のカードホルダー数を誇る当社だからこそ、利用サイドに寄り添ったAI・データ活用において、圧倒的な強みを持っているんです。
白石氏が示した三井住友カードならではの強みは、BtoCだけでなく、BtoBの分析ソリューションを担う新規事業「Custella」にそのまま活かされてもいる。
白石当社だから持ち得るカスタマー、マーチャント双方のキャッシュレスデータを活用することで、顧客の属性分析や行動予測などなどの解析をオンライン、オフライン双方で活かしていただくためのプラットフォームが「Custella」です。
例えばカードホルダーにも、加盟店さんにも、数十年に渡って当社のサービスを使ってきたかたがたがいます。それだけ長いタイムラインを持つデータを当社ならば活かしていくことができるというわけです。
なかなか成功事例が増えていかないO2OやOMOなどによって成果を上げたい企業にしてみれば、「Custella」は強力な味方となるはずだ。これもまた●●ペイを始めとした、異業種参入の競合には真似のできない強み。それだけに、今、三井住友カードではよりチャレンジングで独自性の高い事業開拓や業務変革を担える人材を必要としているとのことだ。
白石流行りの言葉で表すならば、三井住友カードという企業自体が、巨大なプラットフォームなんですよ。toCにおいても、toBにおいても、どこのキャッシュレス関連事業者にも真似できないほどの膨大な「素材」(データ、カードホルダー数、マーチャント数など)がここに集まっています。
そして、DataRobotの導入事例でもおわかりいただけたと思うのですが、可能性のある「料理道具」ならば果敢に採り入れて、全社レベルで使い倒そうというカルチャーも浸透しています。
「素材」があって、「料理道具」があって、好きなように試せる空気があるのですから、あとはポテンシャルの高い「料理人」が集まりさえすれば、どんどん面白い料理手法を編み出して、多くの人に喜んでもらえる一皿を創っていくことができる。
この会社が持っているフィールドを、そんな風に捉え直してくれる学生や、若手社会人が増えたら嬉しいですね。
ちなみに、新型コロナウイルスがあらゆるビジネスに影響を及ぼしている今、三井住友カードでも消費行動レポートを作成。
キャッシュレスがどんな役割を果たしたのかを発信しており、行政や事業者、マーケターの方々からも「リアルな消費行動を取り入れた面白い分析」といった声をいただいたというこの取り組みを担ったのは、入社半年の若手社員だったという。
「大切なのはデータを持っていることではなく、それを生活者一人ひとりや社会のために活かしていく姿勢。データからどれだけ本質的な発見をして、それを役立てていくかが問われる」と語る白石氏は、「それが重要だとわかっているから、キャッシュレス社会への順応が早い若手社員にも、どんどん新しいものを発想し、生み出すチャンスを提供していきたい」と加える。
三井住友カードが三井住友フィナンシャルグループという金融グループの一翼を担う大企業であり、長い歴史を持つ集団なのは事実だ。しかし、そうしたプロフィールから想像される「お堅い」「保守的」「低スピード」といった先入観が、的外れなものであることは、白石氏の話からよくわかったのではないだろうか。
キャッシュレスを世の中に浸透させ、未来の社会形成に爪跡を残すような仕事が、「良い料理人」の手にかかれば、ここで成し遂げられるはずだ。
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こちらの記事は2020年07月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
森川 直樹
写真
藤田 慎一郎
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